平成14年度水産の動向に関する年次報告

第1部 水産の動向 概要

目次

はじめに

トピックス 〜水産この一年〜

  1 資源回復計画の実施
  2 漁業協同組合(漁協)の合併
  3 WTO新ラウンド交渉
  4 鯨類を含む海洋生物資源の持続的利用に向けて
  5 水産生物の人工種苗生産技術の進展
  6 指定漁業の許可の一斉更新
  7 食品安全基本法制定 食品安全委員会設立へ

I 特集 水産物の安全・安心を求めて

  1 水産物の安全・安心の確保の重要性
  2 水産物の安全性確保の基本的枠組みと取組の強化
  (1)安全確保のための基本的枠組み
  (2)安全性確保のための取組
  (3)リスク分析の考え方に基づく新たな食品安全行政
  3 消費者の不安解消に向けた積極的な情報提供
  (1)水産物の消費の変化と水産物に関する情報
  (2)表示の信頼性確保

II 平成13年度以降の我が国水産の動向

  1 我が国の水産物の需給
  (1)国内漁業生産
  (2)水産物貿易
  (3)水産物の加工・流通
  (4)水産物消費と自給率
  2 我が国漁業をめぐる国際動向
  (1)二国間の漁業関係
  (2)多国間の漁業関係
  3 漁業経営
  (1)漁業経営体の動向
  (2)漁業経営の状況
  (3)漁業労働者の状況
  (4)漁業協同組合
  4 漁村の現状と活性化への取組
  (1)漁村の生活環境の改善と活性化への取組
  (2)都市と漁村の共生・対流
  5 水産業・漁村の有する多面的機能

むすび

 
 
 
 
 

はじめに

平成14年度の水産の動向に関する年次報告(水産白書)は、13年6月に制定された水産基本法に基づく2回目の白書となります。
水産基本法が基本理念として掲げる「水産物の安定供給」という国民全体の利益を実現するためには、行政や水産関係者だけでなく、広く国民一般の理解と協力が不可欠であり、白書には、従来以上に国民と水産行政を結ぶ窓口としての役割が期待されます。
このため、昨年、冒頭に「トピックス−水産この一年−」を設け、第1章で特集テーマを設定するなど、一層国民に親しまれる白書とするべく、従前の白書から見直しを行ったところです。 14年度白書も、昨年度に準じた構成とし、全体的に簡潔で平易な記述に心がけ、わかりやすい内容となるよう努めました。
冒頭のトピックスでは、14年度から実施に移されている「資源回復計画」など、1年間に生じた水産をめぐる大きな動きとして7項目を取り上げ、紹介しています。
第1章では、13年に発生したBSE(牛海綿状脳症)問題等を契機として食品の安全性に対する国民的関心が高まっていること、水産物が日本人の食生活の中で重要な地位を占めていることから、特集として「水産物の安全・安心を求めて」を取り上げ、水産物の安全性確保の基本的枠組み、生産現場等における安全性確保や消費者の不安解消に向けた取組などについてまとめています。
第2章では、我が国の水産物需給、我が国漁業をめぐる国際動向、漁業経営等、13年度以降の我が国水産の動向について記述しています。

トピックス 〜水産この一年〜

1 資源回復計画の実施

平成14年度から、我が国周辺水域の水産資源について、「資源回復計画」が実施に移されています。
我が国周辺水域はもともと水産資源の豊かな海でしたが、近年、この水域に生息する魚介類の多くが減少しており、資源回復計画は、こうした減少傾向にある魚種について、幅広い範囲の関係漁業者、都道府県、国などが協力して、必要な対策を計画的、総合的に行い、その回復を図ろうとするものです。
各地で資源回復計画の作成及び実施のための取組が進められていますが、14年度は、「瀬戸内海のサワラ資源」、「伊勢湾・三河湾の小型機船底びき網漁業対象種資源」、「日本海西部のアカガレイ資源」及び「太平洋北部の沖合性カレイ類資源」の4つの計画が作成され、関係者によって実施されています。これらの魚種をTAE(漁獲努力可能量)制度の対象とし、効果を担保していくことにしています。
計画の中には、減船や休漁といった漁業者にとっては経営に直接影響する厳しい内容も含まれ、関係者間の実施内容の調整も必要となることから、計画作成には関係者による十分な話し合いが不可欠です。今後、このような取組をさらに拡大していくことが重要となっています。
 
資源回復計画実施状況の図
 

2 漁業協同組合(漁協)の合併

平成14年度は、過去最高の132漁協(15年3月1日現在)が合併に参加し23漁協が新設されました。
漁協は、水産物の安定供給、漁村地域の活性化など漁業・漁村における中核的組織としての役割を適切に果たしていくことが期待されており、合併等によって組織の体質強化を図ることを漁協系統組織の自らの課題としていますが、漁業権をめぐる隣接漁協との感情的対立や漁協間の財務格差などが障害となり、15年3月現在の漁協数は約1,600と、漁協系統組織が5年前(10年度)に策定した14年度末に約700漁協にする計画とは大きくかけ離れた現状となっています。
しかしながら、近年の漁獲量の減少等により漁協の事業収益が悪化していること、合併後の漁業権管理に対する不安が13年の漁業法等の改正により解消されたことなどを背景に、急速に合併の機運が高まってきています。
最近では県全域を対象とする秋田県漁協、大分県漁協をはじめとして、三重県くまの灘漁協、志摩の国漁協、鳥羽磯部漁協などこれまで以上に広域的な漁協が次々と設立されています。14年11月の全国漁協代表者集会においても、「自立漁協の早期構築、経営の健全化等に向けて不退転の決意で改革に取り組む」旨決定されました。こうした状況を踏まえて、15年3月末が期限となっていた漁業協同組合合併促進法が5年間延長され、合併の一層の進展が期待されます。

3 WTO新ラウンド交渉

平成13年11月、世界貿易機関(WTO)ドーハ(カタール)閣僚会議で、世界貿易の新しいルール作りのため、今後3年間かけて交渉(新ラウンド)していくことが決定され、水産物関税等の市場アクセス問題や漁業補助金問題が取り上げられることとなりました。
これを受けて、14年12月、我が国は、ドーハでも確認された持続可能な開発を促進するための貿易ルールの確立をめざす観点から、WTOに対して「持続可能な開発と林水産物貿易に関する日本提案」を提出しました。
水産資源は適切に管理しなければ枯渇する有限天然資源です。世界の水産資源が年々悪化している状況で貿易を一律に自由化すると、乱獲を助長し、水産業の持続的開発につながりません。このため提案では、WTOは水産資源の持続的利用に貢献する貿易の在り方を検討すべきであり、その際、水産業・漁村の果たす様々な役割についても配慮することが必要であるとしています。
また、漁業補助金を、削減・撤廃すべきとの主張については、漁業補助金が資源の持続的利用に貢献する役割も評価しつつ、FAO(国連食糧農業機関)等専門機関の議論を十分踏まえ、WTOでの取扱を検討すべきであるとしています。
水産物については、多くの国が輸出国の立場にあって、貿易自由化を求めており、厳しい状況にありますが、我が国は水産資源の持続的利用の考え方に基づき、WTO交渉に対処していくこととしています。

4 鯨類を含む海洋生物資源の持続的利用に向けて

平成14年5月、国際捕鯨委員会(IWC)年次会議、11月には、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)締約国会議が開催されました。
これらの会議は、「鯨類資源の保存と有効利用、捕鯨産業の秩序ある発展」や「絶滅のおそれのある種についての国際的な取引の規制」を目的とする条約に基づくものです。
しかしながら、例えばIWCにおける商業捕鯨モラトリアムやCITESにおける大型鯨類の附属書への掲載に見られるように、現時点ではIWC科学委員会においても資源が豊富にあり、一定の条件の下での捕獲を認めても絶滅のおそれがないと判断している種についても商業捕獲ができない状況になっているなど、捕鯨問題については科学的事実以外の要素が資源管理に持ち込まれる傾向が見られます。
海洋生物資源は、自ら子孫を残す能力を持っていることから、科学的な根拠に基づき資源管理を行うことで、いつまでも利用し続けることが可能です。漁業は、このような海洋生物資源を利用することによって成り立っている産業であり、人類は古来から海洋生物資源を食料として利用し、それぞれの地域、置かれた環境などにより、食習慣・食文化が形成されてきました。
我が国としては、科学的根拠に基づく海洋生物資源の持続的利用を進める観点から、国際的な資源管理等に主体的かつ積極的に取り組み、広範な国際的理解が得られるよう一層努めていくこととしています。

5 水産生物の人工種苗生産技術の進展

平成14年6月、近畿大学水産研究所が、世界で初めて、人間の飼育管理の下で、クロマグロのライフサイクルを完成させることに成功しました。
人工種苗生産技術の確立が望まれているものの、なかなか実現しない難しい魚種として、クロマグロとウナギがありますが、同研究所は、昭和45年以来クロマグロの養殖・研究に取り組み、これまでに、天然のクロマグロ幼魚を成魚になるまで飼育し、産卵させ、得られた仔魚を飼育して成魚にまで成長させることに成功していました。今回、産卵時点から飼育を続けてきた魚が成魚となって産卵したことにより、産卵→ふ化→仔魚→稚魚→幼魚→成魚→産卵というライフサイクルが完成したものです。
ウナギの種苗生産技術については、天然のシラスウナギ(稚魚)から飼育した魚を用いて、産卵→ふ化→プレレプトケファレス(前期柳葉幼生)→レプトケファレス(柳葉幼生)まで飼育できるようになっており、次の段階であるシラスウナギにまで成長させることを目指して研究が続けられています。
我が国の栽培漁業や養殖業は、水産生物の人工種苗生産技術の向上とともに発展してきました。現在、人工種苗生産技術の開発が行われている種類はマダイ、ヒラメなど約80種にのぼります。開発された技術を活かし、マダイ養殖のように生産量が過去の数倍になっているものもあります。
養殖生産の安定や魚種拡大のみならず、天然資源の維持・増大を図っていく上でも、多くの魚種で人工種苗生産技術が一層向上することが期待されます。

6 指定漁業の許可の一斉更新

平成14年8月、指定漁業の許認可が、沖合底びき網漁業、大中型まき網漁業、遠洋かつお・まぐろ漁業等8漁業種類、2,489隻に対し一斉に行われました。
これは、漁業法に基づき、5年に1度、我が国の主要な漁業種類について、農林水産大臣が、操業海域や資源状況等の面で全国的観点から、漁業種類ごとに許認可をすべき船舶の総隻数を公示し、その枠内で許認可を行うものです。水産資源の持続的利用を確保し、資源水準に見合った漁業生産体制を確立していく上で、重要な意味を持っています。
一斉更新に当たっては、近年の我が国漁業の実情に即して、対象となる資源や他の漁業に与える影響が大きく、国が統一的に隻数等の管理を行うことが適当な漁業種類を追加する等の見直しを行いました。
公示隻数(許可枠)については、資源水準が総じて低位にあり、引き続き漁獲努力量の抑制が必要であるため、5年前に比べ、従来からの漁業種類で約2割縮減した枠内で許認可を行いました。その際、経営の自由度を高める観点から、資源管理や漁業調整に与える影響も十分勘案し、動力漁船の性能基準の原則廃止やトン数階層区分の簡素化等、許可に係る諸規制の緩和を併せて行いました。
これらの措置が、既に実施されている許可の承継の見直しとも相まって、効率的かつ安定的な漁業経営の育成に貢献し、指定漁業の活性化につながっていくことが期待されます。
 
指定漁業の見直しと一斉更新の図
 

7 食品安全基本法制定 食品安全委員会設立へ

平成15年2月、第156回国会に「食品安全基本法案」が提出されました。
これは、「BSE問題に関する調査検討委員会」報告(14年4月)の提言を受けて開催された「食品安全行政に関する関係閣僚会議」において、14年6月、今後の食品安全行政のあり方について、食品安全委員会(仮称)の設置や食品安全基本法(仮称)の制定等により、見直しを図ることが決定され、その後、政府内で具体的内容の検討が続けられてきたものです。
「食品安全基本法案」には、食品の安全性の確保は、このために必要な措置が国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下に講じられることにより、行われなければならないことが定められているほか、食品安全行政にリスク分析の考え方を導入し、食品の安全性に関するリスク評価を一元的に行う「食品安全委員会」を内閣府に設置することなどが盛り込まれています。
水産物の安全性も含めて食品安全行政が大きく転換されることとなります。
 
 
 
 

I 特集 水産物の安全・安心を求めて(報告書p.8〜29)

1 水産物の安全・安心の確保の重要性(報告書p.8〜9)

水産物は、国民が摂取する全たんぱく質の2割(動物性たんぱく質の4割)を占める重要な食料。また、近年では、水産物の優れた栄養特性が改めて見直されているところ。
日本人の食生活に占める水産物の地位は諸外国と比べても大きく、我が国の食の安全・安心を図る上で、水産物の安全・安心の確保は非常に重要。

2 水産物の安全性確保の基本的枠組みと取組の強化(報告書p.10〜23)

(1)安全性確保のための基本的枠組み

(食品衛生法を中心とする安全性確保)
食品の安全性確保は食品衛生法に基づく食品などの規格基準等の基本的枠組みを中心に行われているところ。こうした枠組みの中で、安全な食品の供給に第一義的責任を有する生産者・事業者は、法を遵守し、安全性確保に努める必要。水産業も例外ではない。
 
食品衛生法を中心とする安全性の確保
 
(食中毒発生状況と最近の傾向)
食中毒事件は長期的に減少傾向。しかし、近年、腸管出血性大腸菌O157等による大規模な事件が発生。
魚介類及びその加工品に起因するものでは、主な原因である腸炎ビブリオによる食中毒の減少に伴い全体として減少。
しかし、10年、11年と腸炎ビブリオによる食中毒が再び増加。13年6月に、切り身・むき身の生食用生鮮魚介類、ゆでがに等について、食品衛生法に基づく規格基準制定。また、カキの生食等による小型球形ウィルス(SRSV)による食中毒が増加。発生源を特定しやすくするため、11年に食品衛生法が改正され、容器包装された生食用カキの採取海域の表示が義務。
(化学物質の長期的継続的な摂取による影響)
総水銀及びメチル水銀やPCBについては、魚介類等について暫定規制値が定められ、規制値を超える魚介類の流通・販売等が禁止、一部水域での蓄積状況の監視や採捕自主規制を実施。
ダイオキシン類については、WHO専門家会合の基本的な考え方に基づき、耐容一日摂取量(4pg-TEQ/kg体重/日)。日本人は食事からダイオキシン類の90%以上を摂取。うち約8割が魚介類を介して摂取と推定。
魚介類中の実態調査(中間報告14年9月)によると、魚介類の種類や生息環境などにより、蓄積程度に違いが見られ、個体差が大。いろいろな産地からの多様な魚種を食べ、偏った食べ方を避ければ、耐容一日摂取量を十分下回る。食品からの一日摂取量は、昭和52年から平成10年までに3分の1程度に減少。
 
 
ダイオキシン類の食品からの一日摂取量調査の結果
ダイオキシン類食品からの一日摂取量調査結果
 
 
11年7月に「ダイオキシン類対策特別措置法」制定。焼却炉等の基準が強化され排出量の削減が進展。
 
 
(輸入品の安全性確保)
販売又は業務用に輸入される食品等は、食品衛生法に基づく輸入届出が義務。輸入国、品目、製造者等をもとに審査、必要に応じて検査を実施。水産品は、輸入届出件数の約2割(13年、重量では約1割)。
我が国の水産物消費は、国産品と輸入品が拮抗し、国産品とともに輸入品の安全性確保が重要。
輸入冷凍ホウレンソウなどから基準値を超える残留農薬が度々検出されたこと等を契機に、14年7月に食品衛生法が改正。厚生労働大臣が食品衛生上の危害の発生を防止するため、特に必要があると認めるときは、特定の国、地域で製造された特定の食品について、検査を要せずに輸入を禁止できることとなったところ。
食品等の輸入届出件数は、最近の10年間でほぼ2倍に増加しており、輸入品の安全性を確保するため、検査の充実・強化を図ることが重要。
 
 
輸入届出の品目別合(13年)
輸入届出の品目別割合
 

(2)安全性確保のための取組

(水産物の生産状況)
生産段階は安全・安心な食品供給の出発点。以後の各段階での取組の前提。
養殖水産物は、我が国の水産物生産量の約2割で比率は年々増加。魚種によっては7〜8割。人為的管理によって安全性が左右される度合大。
残りの約8割は天然生物の捕獲。安全な水産物の供給には、海や川などの水域環境が良好に保たれることが不可欠。
(養殖水産物の安全性確保)
水産物の養殖は、同一の水域を多数の漁業者が利用して実施。一つの生簀に多数の魚を飼育。一旦病気が発生すると被害が拡大しやすく、漁場環境は水域全体の養殖に影響。魚病対策や漁場環境の保全は、養殖業にとって重要な課題。
【水産用医薬品】
魚病の対策のため、魚類養殖等で水産用医薬品を使用。
重要な魚種(ブリ、マダイ、ウナギなど11魚種)の残留に注意が必要な医薬品については、使用基準を定めており、違反した場合には使用者に罰則。
養殖魚種の多様化が進展していることから、今後、すべての魚種・医薬品に包括的に使用基準を設定。
漁場環境の改善と適正飼育を前提とする、病気の予防に重点をおいた魚病対策への移行を促進していくことが必要。近年、病気を予防するためのワクチンの開発が進展中。また、11年に制定された「持続的養殖生産確保法」に基づき、全国各地で漁場改善計画を策定し取組中。
【養殖水産動物用飼料】
「飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(飼料安全法)」に基づき、主な養殖対象魚種(7魚種)の飼料及び飼料添加物の製造や使用方法の基準等。抗生物質の含有は禁止。13年10月には、肉骨粉等の含有禁止。
養殖魚種の多様化に対応し、今後、すべての魚種に包括的に規格・基準等を設定。
【漁網防汚剤】
漁網に付着生物が着生し、生簀内の海水流動が低下するのを防ぐために使用。防汚剤の有効成分として使用されていた各種の有機スズ化合物は、平成元年から2年にかけて、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」に基づく製造・輸入等の規制対象となり、漁網防汚剤には使用されなくなっているところ。
【貝毒】
麻ひ性貝毒と下痢性貝毒それぞれに規制値が定められており、食品衛生法により規制値を超える貝の採取、流通・販売等は禁止。
生産海域では、都道府県及び漁業者等が、原因となる植物プランクトンの発生状況や貝毒の蓄積状況の監視を行い、規制値を超えるおそれがある場合には、漁獲や出荷の自主規制を実施。

(3)リスク分析の考え方に基づく新たな食品安全行政

(食品安全委員会の設置等)
14年6月、食品安全行政に関する関係閣僚会議において、今後の食品安全行政のあり方について、食品安全委員会(仮称)の設置や食品安全基本法(仮称)の制定等により、見直しを図ることが決定。
15年通常国会に「食品安全基本法案」提出。国民の健康の保護が最も重要であるという基本認識を規定。また、食品安全行政にリスク分析の考え方を導入、リスク評価を一元的に行う「食品安全委員会」の設置を規定。
(リスク管理部門の産業振興部門からの分離・強化)
リスク管理を担当する行政機関についても、リスク管理部門の産業振興部門からの分離・強化、リスク管理体制の見直しを実施。
農林水産省においても、業振興部門から分離されたリスク管理を行う独立した組織の設置などの再編。水産関係分野では、水産用医薬品や養殖水産動物用飼料に関する業務が、リスク管理を担う新たな部局に移行予定。

3 消費者の不安解消に向けた積極的な情報提供(報告書p.25〜30)

(1)水産物の消費の変化と水産物に関する情報

ライフスタイルの変化に伴う食の外部化の進行、購入先の変化(魚屋→スーパー)、輸入品の増加によって、消費者は、食材や調理過程に関する情報を得にくくなっており、表示に頼らざるを得なくなってきている。

(2)表示の信頼性確保

(食品表示の実効性確保と消費者の参加)
食品表示の実効性確保のため、14年6月にJAS法を改正し、不正表示に対する罰則強化等を実施。
監視体制強化の取組として、「食品表示110番」を設置。消費者の協力を得て食品表示の適正化を図るため、「食品表示ウォッチャー」により監視を強化。
(水産物表示の改善と充実)
魚介類の表示名称や標記の仕方等について引き続き改善を実施。
生鮮品については、12年7月から、「名称」、「原産地」のほか、「解凍」や「養殖」の表示を義務付け。生産された水域名の表示の仕方について見直しを検討中。
水産加工食品については、14年2月以降、塩蔵サバなどの6品目について、「原料の原産地」表示を義務付け。今後、対象品目を増やしていく予定。
さらに、魚介類は、大きさにより名称が変わったり、地域によって名称が異なる等の特殊事情があることから、表示名称のガイドライン策定に向け検討中。
 
魚介類の名称のガイドライン(中間取りまとめ)のポイント(抄)

【一般ルール】
・「種名」(標準和名)を記載することを原則とする。
・他方、消費者に馴染みのない名称等により混乱しないよう、属名、科名、広く一般に知られている名称等を勘案して、魚介類の内容を的確に表し一般に理解される名称がある場合は種名に代えてその名称を記載できる。

【成長名、季節名】
・成長段階や季節に応じた名称がある魚介類については、その名称が内容を表すものとして一般に理解されるものである場合は記載できる。

【地方名】
・地方名がある魚介類は、その地方名が一般に理解される地域においては記載できる。ただし、地元地域以外でも販売される場合は、消費者がその魚介類の種を識別できるよう、地方名に標準和名を併記する。

【外来種】
・消費者に優良誤認を生じさせないよう、一般ルールに従ってその内容を最も的確に表し一般に理解される名称を記載する。

資料:水産庁「魚介類の名称のガイドラインについて(中間取りまとめ)」(15年3月)
 
 
 
 

II 平成13年度以降の我が国水産の動向(報告書p.30〜75)

1 我が国の水産物の需給(報告書p.30〜45)

(1)国内漁業生産

(漁業・養殖業生産量)
平成13年の我が国の漁業生産量は、前年に比べて4%減少し613万トン。漁業生産額は、5%減少して1兆7,803億円。
 
漁業・養殖業生産量(単位:万トン)

12年
(A)
13年
(B)
増減率(%)
B/A
合計
 海面漁業
  遠洋漁業
  沖合漁業
  沿岸漁業
海面養殖業
内水面漁業・養殖業
638
502
86
259
158
123
12
613
475
75
246
155
126
12
△4
△5
△12
△5
△2
 2
△5
資料:農林水産省「漁業・養殖業生産統計年報」
 
 
漁業・養殖業生産額(単位:億円)

12年
(A)
13年
(B)
増減率(%)
B/A
合計
 海面漁業
  遠洋漁業
  沖合漁業
  沿岸漁業
海面養殖業
内水面漁業・養殖業
18,753
12,340
2,120
4,456
5,765
5,272
1,133
17,803
11,651
2,009
4,206
5,435
5,029
1,116
△5
△6
△5
△6
△6
△5
△2
資料:農林水産省「漁業・養殖業生産統計年報」
 
(周辺水域の水産資源の状況)
我が国周辺水域の主な水産資源について行われた14年の資源評価結果によると、資源評価が行われている魚種・系群の約半数の資源水準が低位。
14年度から、「瀬戸内海のサワラ資源」等の資源回復計画を実施。今後、このような取組を拡大していく必要。
(水域環境の状況)
漁業や養殖業にとって重要な沿岸域等の水域環境には、工業排水や生活排水等の流入、藻場・干潟の減少、埋立や海砂利の採取等が影響。
藻場の消滅要因の約4割が要因が不明。これまでの調査では消滅の人為的要因として、埋立などによる直接消滅、構築物等の影響による流れの停滞や水中の砂の分布変化等の間接的影響が示唆。一方、自然的要因として、透明度の低下及び水温の上昇が挙げられ、この他に、食害も指摘。また、衛星画像の解析により広域的な藻場の分布を把握するための技術開発調査を実施中。
水質について、有機汚濁の代表的指標であるBOD、CODの過去10年間の推移をみると、河川や湖沼では改善が見られるのに対して、海域ではほぼ横ばい。
赤潮の発生件数は減少しているが、1件当たりの漁業被害は甚大化。青潮の発生、座礁船から流出する油等による水産資源への悪影響が問題となっているほか、内分泌かくらん物質の影響も懸念。
内水面においては、ブラックバス等の外来魚が人為的に移植されて生息域を拡大し漁業や生態系に悪影響。問題解決のためには、漁場環境や生態系保全に対する国民的理解が不可欠。

(2)水産物貿易

(水産物輸入)
13年の水産物輸入は、前年に比べて8%増加し382万4千トン、増加分の約半分は魚粉の輸入増。金額は、ほぼ前年並みの1兆7,237億円。
国際的にみると、我が国は、世界の水産物貿易において、輸入額の26%、輸入量の13%を占め(12年)、金額・数量ともに世界最大の水産物輸入国。
また、我が国の水産物の輸入先としては、中国が、10年以降、数量・金額ともに最大。13年では、金額の大きい順に、ウナギ調製品、エビ及びカニ調整品が輸入されており、加工品の輸入が増加。中国は、近年、水産物輸出国としての地位を高め、12年には金額ベースで世界第2位の輸出国。
(水産物輸出)
13年の我が国の水産物輸出は、数量ベースでは前年に比べて9万1千トン(41%)増加し31万3千トン、金額ベースでは32億円(2%)減少し1,352億円。

(3)水産物の加工・流通

ア 水産加工
(水産加工品の生産量)
水産加工品の生産量は、13年には、塩蔵・塩干サバが増加し、塩蔵・乾製品等の生産量が増加したものの、売れ行き不振や原料供給の不安定等により総じて減少傾向。
(水産加工経営体の経営状況)
10年前と比べ、経営上の課題として、「人件費の上昇」等の労務面の課題を挙げた経営体は減少。一方、「売れ行き不振」等の販売面の課題を挙げた経営体が増加。「原料魚介類の減少」を挙げた経営体は約半数と依然多い。また、一般的衛生・品質管理の徹底、HACCP方式による衛生管理の導入促進も課題。
(産地市場)
13年の主要産地漁港の上場水揚量は、前年より4%減少。平均価格は前年並の204円/kg。
都道府県において、産地市場の機能の強化や経営合理化を図るための市場統合に向けた取組を実施。

(4)水産物消費と自給率

13年の水産物の国内消費への仕向量は、前年に比べ4%増加し1,126万トン。このうち食用仕向量は、前年より3%増加して880万トン。純食料ベースでは、前年より4%増の年間1人当たり38.7kg。
食用魚介類の13年の自給率は前年と同じ53%、海藻類は1ポイント低下し62%。
食用魚介類の自給率等の推移
 

2 我が国漁業をめぐる国際動向(報告書p.46〜54)

(1)二国間の漁業関係

(韓国・中国との関係)
我が国と韓国との間では、相互に相手国水域において操業。14年漁期は、韓国サンマ漁船が北方四島周辺水域での操業を行なわないことが確認されたため、三陸沖での韓国サンマ漁船の漁獲枠を設定。
我が国と中国との間では、相互に相手国水域において操業。
違反操業の増大と悪質化が目立っており、我が国周辺水域の取締りの充実・強化が課題。
14年2月、日韓中海洋水産資源シンポジウムを開催。日本海、黄海・東シナ海における水産資源に関する研究について意見交換を実施。
 
水産庁による周辺国・地域漁船の立入検査・違反現認・拿捕件数
拿捕数グラフ
 
 
(ロシアとの関係)
地先沖合漁業協定に基づき、相手国200海里水域内に入漁。
また、日ソ漁業協力協定に基づく北洋サケ・マス漁業、北方四島周辺操業枠組み協定に基づく我が国漁船が操業。

(2)多国間の漁業関係

ア カツオ・マグロ類をめぐる動き
(便宜置籍漁船等IUU漁船による操業の廃絶に向けた取組)
大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)、みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)等の地域漁業管理機関において、IUU漁船廃絶に向け精力的に取組。
ICCATやインド洋まぐろ委員会(IOTC)では、加盟各国の正規許可を得た漁船をリスト化し、このリストに掲載されていない漁船の漁獲物を国際取引から排除するための枠組の構築に取組。
イ 国際捕鯨委員会(IWC)
2002年(14年)5月、山口県下関市で年次会議開催。我が国沿岸小型捕鯨地域への暫定捕獲枠要求は否決。米国・ロシア先住民による2003年以降のホッキョククジラ捕獲枠提案についても否決。
10月のIWC特別会合では、米国・ロシアに対するホッキョククジラの捕獲枠
設定提案は、米国が資源評価の結果による捕獲枠の再考の義務化に同意し最終的に合意。また、アイスランドは商業捕鯨モラトリアムへの留保付きで正式加盟をIWCとして受入。我が国の沿岸小型捕鯨地域の窮状を解決するための議案は否決。
ウ 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)締約国会議
2002年(14年)11月の締約国会議において、我が国が資源の豊富なミンククジラ及びニタリクジラについて、ダウンリスティング提案を行ったが否決。ジンベイザメ、ウバザメ、タツノオトシゴなどが附属書Uに掲載。我が国は条約の規定に基づき、これに留保を付したところ。
エ 国際連合食糧農業機関(FAO)
2002年(14年)4月のFAO水産委員会・養殖小委員会においては、養殖一般について、環境の保全を含めた持続性の確保及び養殖産品に関し消費者の健康の確保の必要性を確認。
また、マグロの蓄養について、統計情報の改善が必要と報告書に記載。
オ 持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)
2002年(14年)9月、持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)が開催。水産部門については、世界の食料安全保障の観点からの水産物の重要性を確認。また、国際的に取り組みの必要な分野として、海洋生物資源の持続的利用及び保全が挙げられ、魚類にとどまらず、鯨類を含む広く海洋生物資源が持続的利用の対象であることが確認。

3 漁業経営(報告書p.55〜68)

(1)漁業経営体の動向

13年の海面漁業の漁業経営体数は、前年に比べ3%減少し14万2千。そのうち、沿岸漁業経営体が13万4千、中小漁業経営体が7千、大規模漁業経営体が124。

(2)漁業経営の状況

ア 沿岸漁家
(沿岸漁船漁家の収支状況)
13年は、漁業収入が前年に比べ10%増加。漁業支出が5%増加し、漁業所得は前年より16%増加し226万円。その経営内容は、資源状態の違い等から海域ごとに大きく異る(北海道区の漁業所得342万円、東シナ海区の漁業所得163万円。
(海面養殖業漁家の収支状況)
13年度の漁業所得は、各養殖業の加重平均では前年度に比べマイナス16%と大幅に減少し687万円。タイ類、ホタテガイ養殖、ノリ養殖、ワカメ養殖は前年より所得増。一方、ブリ類養殖が価格が低下により漁業収入が大幅に減少し赤字。真珠(真珠母貝)養殖、カキ養殖で前年より所得減少。
イ 中小漁業の経営
(中小漁業の収益状況)
13年度は、中小漁業全体では漁業収入が前年度に比べ8%減少したが漁業経営費も11%減少し21万円の黒字。漁業種類により経営内容は大きく異る。
(中小漁業の財務状況)
13年度は、漁船、漁具等が約5割を占める固定資産が前年度に比べ8%減少、預貯金等の流動資産が9%減少。総資産は8%減少し149百万円。一方、負債は、約7割を占める借入金が14%減少、全体で8%減少して134百万円。
10年前と比較し、自己資本比率及び売上高対借入金比率は改善。漁船建造等の設備投資が抑制されたことによるもの。漁船の建造隻数は大幅に減少しており、漁船の高齢化が進行。
 
 
主要魚業種類の漁船船齢分布
漁船船齢分布
 
 

(3)漁業労働者の状況

ア 漁業就業者
13年の漁業就業者数は、前年に比べ3%減少し25万2千人。このうち、男子漁業就業者に占める65歳以上の割合は、2ポイント増加して34%となり、高齢化が一層進行。
 
 
漁業就業者数の推移
漁業就業者数
 
 
イ 漁船労働
13年の沖合・遠洋漁業雇用労働者は、前年に比べ5%減少し3万3千人。
日本人漁船労働者の不足に対応して、「マルシップ方式」等による外国人漁船部員の乗船が認められているところ。

(4)漁業協同組合

漁協の事業は、漁業生産量の減少、産地魚価の伸び悩み等の漁業環境の悪化を反映し、横ばい又は縮小傾向にあり、漁協の経営は悪化。
合併による体質強化、信用事業譲渡に取組。

4 漁村の現状と活性化への取組(報告書p.69〜73)

(1)漁村の生活環境の改善と活性化への取組

ア 漁村の生活環境の改善
漁村は、辺地、離島、半島等条件不利地域に立地するものも多く、都市と比較して生活環境の整備が立ち後れ。12年度から、国、地方公共団体、関係団体の連携により漁村生活環境改善推進運動(漁村リフレッシュ運動)を実施。
イ 漁村の活性化への取組
漁村においては、近年、新鮮な魚介類、豊かな自然環境、優れた景観等の地域資源を活用した地域活性化を図るためのさまざまな取組。

(2)都市と漁村の共生・対流

漁村には、都市住民に対する健全なレクリエーションの場の提供、子供たちの漁業体験学習の場、癒し・健康の場の提供等の役割も期待。
政府は、14年10月、都市と農山漁村の双方向で人々が行き交うライフスタイルを実現すべく、「都市と農山漁村の共生・対流プロジェクトチーム(PT)」を設置。双方の交流によって、生産者の高齢化や担い手不足に悩む農山漁村を活性化させるとともに、都市住民のゆとりある生活を実現させるための国民運動を推進。

5 水産業・漁村の有する多面的機能(報告書p.74〜75)

(水産業・漁村と国民生活)
水産業・漁村は、国民に対する水産物の供給という役割のほかにも、漁業者をはじめとして地域住民が居住し、漁業生産活動が継続的に行われることを通じて、豊かで安全な国民生活を実現する上で様々な機能。
水産業・漁村について、国民がどのような認識を持っているかを把握するため13年に実施したアンケート調査によると、多くの人々が大きな関心や理解を示す結果。
(多面的機能の評価)
多面的機能について、農業・森林の分野においては研究や施策の積み重ねがあるのに対し、水産分野については十分な議論や調査の積み重ねがなく、その評価はいまだ定まっていないのが実情。
「所得と雇用の機会の場の提供」等、大きく5つの分野に分けて評価を進めていくこととしているところ。
 
水産業・漁村の多面的機能の評価分野とその内容
評価分野 内容
所得と雇用の機会の場の提供 漁村の多くが半島域や離島にあり、その地理的条件から、水産業以外に代替産業が無く、その地域にとって重要な、雇用の機会と所得の場を提供
環境の保全 生活排水等が様々な経路を経て、最終的には海に流入。海に流れ込んだ栄養分は生態系を通じて有用な水産物に形を変え、漁業活動を通じて陸上に回収されており、水産業は海から陸への物質循環の役割
生命財産の保全 日本沿岸域では約23万隻の漁船が操業、約3,000の漁港、約6,200の漁業集落が存在。これによって、沿海域における周辺監視の巨大なネットワークが形成され、海難や災害時の発見、救助活動や国境監視、緊急避難、防災などの機能
保養・交流・学習の場の提供 沿岸域は、海水浴、潮干狩り、釣り等の多岐にわたるレクリェーションを通じた国民の安らぎの場。また、体験漁業や環境学習など、都市と漁村の交流活動の場を提供
文化の継承 水産業・漁村は、その営みを通じて様々な食や祭り等の生活文化、漁労文化、独自の漁村景観を形成。これらは、漁村やそこに生活する漁業者によって維持、継承
  資料:水産庁
 
 
 
 

むすび

我が国では、平成13年から14年にかけて、BSE(牛海綿状脳症)問題をはじめとして、食品の安全性を脅かす重大事件の発生が相次いだことから、国民の間に食品の安全性に関する大きな不安が広がるとともに、行政の対応に対する不信感が高まりました。
これらの事件は、我が国の食品安全行政を抜本的に見直す契機となり、食品安全基本法の制定により、「リスク分析」手法の導入や食品安全委員会の設置など、大幅な食品安全行政の転換が図られることとなりました。
人の命を支える食品の安全性の確保は社会生活の大前提であり、食品安全基本法にしたがって、国民の健康の保護を第一とし、食品供給行程の各段階において、科学的知見に基づいて措置を講じ、国民の健康への悪影響が未然に防止されるよう、国、地方公共団体、事業者が各々の責務を着実に果たしていくことが必要です。
水産物は、日本人にとって、古来から重要な食料となってきましたが、現代においても、国民が摂取する全たんぱく質の2割(動物性たんぱく質の4割)を占めており、我が国の食の安全・安心を図る上で、水産物の安全・安心の確保は非常に重要となっています。このため、本報告では、「水産物の安全・安心を求めて」を第1章の特集テーマとして、生産現場等における取組に重点を置いて取り上げました。
安全な水産物の供給には水域環境が良好に保たれることが不可欠ですが、これに加えて、養殖生産物については、人為的管理によって安全性が左右されることから、漁場環境の改善と適正飼育、水産用医薬品や飼料の安全性確保等に一層努力してくことが必要です。また、こうした取組と併せて、消費者に対する情報提供にも積極的に取り組んでいくことが求められています。
水産物の安全性を確保するためには、様々な取組が必要であり、着実に進めていかなければなりません。そのためには、行政、関係者、消費者間の対話が促進され、今後の施策に反映されていくことが重要であり、本報告が、その一助となることを期待するものです。
 
 
 
◎ 本件に対するご質問・お問い合わせは、下記までお願いします。
水産庁漁政部企画課動向分析班
電話(直通)03−3502−7889
FAX    03−3501−5097