む す び

 第 I 章特集でみたとおり、食のグローバル化や消費者ニーズを反映した流通業の発展により、国内外の水産物を安価に入手できる便利な食生活となった反面、国産水産物を食べる機会が減少しました。また、世界的な水産物に対する需要の高まりに伴い、資源の回復力を上回る漁獲によって資源の減少が進むとともに、便利で豊かな生活と引き換えに地球温暖化や藻場・干潟の減少といった環境問題も生み出しました。

 日本が築き上げてきた魚食文化とそれを支えてきた我が国周辺の海は、今、新たな局面に立たされています。

 このような厳しい現実にも立ち向かい、未来を切り拓く人々がいます。共通していることは、海の生産力を高めるとともに、そこから得られる恵み(水産資源)を無駄なく、持続的に利活用するための努力です。

 漁業は、水産物の安定供給だけではなく、沿岸域の管理や環境保全等に重要な役割を担ってきました。しかし、漁業が置かれた厳しい現実においては、漁業者だけではなく地域住民を含めた「協働」でこの役割を担っていく必要があります。

 そのためには、まず現状を知ることが重要です。漁業関係者は漁業が果たしてきた役割や魅力を発信し、国民はその声に耳を傾けて海とのかかわりを知るとともに、日ごろの食生活を見つめ直すことが必要です。

 次に、具体的に行動に移すことが重要です。漁業者の資源管理や環境保全活動、流通業者が行う安全性や持続性といった付加価値の提供、そしてそれを理解し、選択する消費者の行動が求められています。

 さらに、森・川・海の連携や漁業者、流通業者、消費者、行政の相互間の働きかけによる「協働」で、相乗効果も期待されます。

 我が国の豊かな魚食文化とそれを支える海を次の世代に引き継ぐため、それぞれの役割と能力に応じた行動の積み重ねが、今、求められています。

 水産業をめぐる情勢は変化の速度を速めています。この「水産の動向」が国民の皆様と水産行政を結ぶ架け橋としての役割を果たすことができるよう、今後とも重要なテーマを選び、わかりやすい説明を行っていきたいと考えております。