5 消費者との信頼のネットワークの構築を通じた水産物消費の拡大と食育の推進

(1)水産物の安全及び消費者の信頼の確保

(生産・流通・消費各段階における取組)

(1) 水産用医薬品の適正使用を確保するため、養殖衛生管理技術者の育成や養殖業者に対する巡回指導を行います。また、流通関係者・消費者に対して養殖業におけるリスク管理の取組みなどの生産情報の発信を行います。

(2) 貝毒検査とその結果に応じた出荷自主規制の指導を実施するとともに、貝毒等の検出技術の向上に必要な研究開発を行い、生産段階でのリスク管理体制の強化を図ります。また、有害化学物質の有効なリスク管理手法を検討するため、水銀、ダイオキシン類等について含有実態調査を実施します。さらに、マガキの生産段階におけるノロウイルスの汚染リスクを低減させるための研究を行い、有効なリスク管理手法を検討します。

(3) 生産段階から産地市場、水産加工場に至る品質管理の取組を推進するため、漁船及び養殖場を対象とした品質管理ガイドライン、産地市場の特徴に応じた品質管理ガイドラインや小規模加工業者を対象とした品目別危害分析・管理実施指針を策定します。

(4) 食品事故発生時の的確な対応が可能となるトレーサビリティの普及を図るため、食品事業者の取組状況を調査・分析し、各事業者の状況に応じた導入を推進します。

(5) 都道府県等が、国の定める指針に基づいて策定した都道府県等食品衛生監視指導計画により、食品供給行程の各段階における監視指導を実施するとともに、衛生管理に関する助言を行います。また、食品の安全の確保のための自主的な取組が推進されるよう食品の採取、製造、輸入、販売を行う食品事業者に対し、引き続き協力を求めます。

(輸入食品に対する取組)

 全国の検疫所において、輸入食品監視指導計画に基づき、輸入食品の衛生上の実態を把握することを目的とし、食品の種類ごとに輸入量、違反率を勘案して計画的に行うモニタリング検査を実施するとともに、違反の蓋然性の高いものについては、輸入の都度、検査を命令し、検査に合格しなければ輸入・流通が認められない検査命令を実施します。

 また、輸入水産物の安全性に関する情報の収集・提供の取組の充実を図ります。

(消費者を始めとする関係者とのリスクコミュニケーション)

 食品の安全の確保に関する施策の策定に国民の意見を反映し、その過程の公正性及び透明性を確保するため、消費者、生産者、事業者等の関係者に分かりやすい情報を積極的に提供し、意見交換等を行うリスクコミュニケーションを推進します。

(2)消費者への情報提供の充実

(1) 消費者の鮮度・安全志向の高まりに対応して、トレーサビリティ・システムも活用しつつ、漁法や養殖方法、漁獲日等の情報の提供を促進します。

(2) 水産物を含めた食品の安全に関する情報を分かりやすく紹介したウェブサイトの運営やメールマガジン「食品安全エクスプレス」の発信を行うなど、インターネットやマスメディアの活用により、水産物の栄養特性や安全性に関する情報提供の充実を図ります。

(3) 水産エコラベル(生態系や資源の持続性に配慮した方法で漁獲された水産物であることを表すラベル)について、我が国の資源管理の特徴や優れた点を十分に反映したシステムの導入や、漁業者の取組を促進します。

(4) 消費者の立場に立った分かりやすい食品表示を実現するため、食品の表示に関する共同会議*1において、水産物を含む食品の表示基準全般の調査審議を行うとともに、新たなニーズに対応したJAS規格の制定・普及を推進します。

 全国の地方農政局等の職員や食品表示ウォッチャー*2、DNA分析を始めとする科学的な検査技術の活用により、水産物を含む食品表示の適正化と監視・指導の強化に努めます。

 このほか、意見交換会の開催やパンフレット配布等により食品の表示制度の普及・啓発を推進します。

*1 食品の表示に関する共同会議:農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律に関する調査会と食品衛生法に関する審議会の共同開催

*2 食品表示ウォッチャー:消費者が日常生活の中で食品表示を常時点検し、国等に対して不適正表示等に関する情報を提供する仕組み

(5) 農林水産省本省や地方農政局等における消費者の部屋において、消費者からの水産業や食生活に関する相談を受けるとともに、テーマごとの展示を通じて、水産行政に対する消費者の理解を推進します。

(3)食育の推進

 生産・流通・消費の各段階において食育を推進し、米を中心に水産物を含めた多様な副食から構成され、栄養バランスが優れた「日本型食生活」の実践を促進します。