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水産庁

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29水管第546号
平成29年6月9日

都道府県知事宛

  水産庁長官

漁場計画の樹立について


平成30年9月から予定されている定置漁業権並びに特定区画漁業権及び漁業法(昭和24年法律第267号。以下「法」という。)第6条第5項第5号に規定する琵琶湖、霞ヶ浦等以外の内水面における区画漁業権(真珠養殖業を内容とする区画漁業権を除く。)の次期一斉切替えに当たり、法第11条の規定に基づきあらかじめ行うこととされている免許の内容等の事前決定(以下「漁場計画」という。)等について、「漁場計画の樹立について」(平成24年6月8日付け24水管第684号水産庁長官通知。以下「平成24年漁場計画の樹立通知」という。)を基本としつつ、留意すべき点を、下記のとおり取りまとめましたので通知します。

また、漁業権の免許事務及び漁業権行使規則の認可事務の具体的な処理については、「漁業権の免許に関する事務処理について」(平成24年9月7日付け24水管第1417号水産庁長官通知)及び「漁業権行使規則等の作成及び認可について」(平成24年9月7日付け24水管第1418号水産庁長官通知)に、引き続き留意してください。さらに、今回は内水面における第5種共同漁業権の一斉切替えの時期ではありませんが、当該漁業権の免許をする場合には、「遊漁規則の作成及び認可について」(平成24年9月7日付け24水管第1419号水産庁長官通知)に留意してください。

なお、この通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言です。また、本通知の中で引用されている法第11条第6項に基づく農林水産大臣の指示は、地方自治法で定められた技術的助言等、自治事務への関与の基本類型とは別に、都道府県知事に対して義務を課す「指示」であることに注意してください。

                                                                                   記

第一 全般的事項について

1.基本的考え方

漁場計画は、公共水面につき、その漁業上の総合利用を図り、漁業生産力を維持発展させるためには漁業の免許をする必要があり、かつ、当該免許をしても漁業調整その他公益に支障を及ぼさないと認められるときは、必ず定めなければなりません。

漁場計画は、より合理的かつより高度な漁業上の総合利用を図るために定めるものであることから、現在免許をしている漁業権についても、時日の経過によって自然的及び社会経済的条件が変化しているということを十分考慮しつつ、水面を漁業上総合的に利用し、漁業生産力を積極的に発展させるという観点から再検討しなければなりません。

例えば、従来漁業権の対象としていた漁業であっても、漁業権を整理統合した方が良い場合や、操業実態の変化等から許可漁業等として取り扱うことが望ましい場合もあるため、漁業権の内容として免許すべきかどうか慎重に検討することが必要です。

一方、東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「原発事故」という。)の影響により、現在、操業が制限されている水域又は自粛している水域においては、放射性物質による影響が順次解消されれば、漁業を再開させていくことになるため、漁場計画を樹立すべきです。

また、太平洋クロマグロをはじめとした広域的な回遊を行う魚種に対しては、これまでの資源管理の取組に加え、漁業権の内容たる漁業についても、関係の都道府県が協調して資源管理の取組を進めていく必要があります。

現に漁業権の免許が行われていない沖合の水域又は都道府県境付近の水域の全部若しくは一部を漁場の区域として新たに漁場計画を樹立する場合には、漁業管理主体(国又は都道府県)の異なる漁業との調整問題の発生等を防止することが必要であることから、必ず当該管理主体との間で然るべき協議を経て、了解を得た上でこれを行うこととしてください。  なお、このことについては、既に法第11条第6項の規定に基づき別途指示(平成14年8月6日付け農林水産省指令14水管第1746号)しているので、十分に注意してください。

2.スケジュール

漁業権の一斉切替えの予定は各都道府県のそれぞれの事情によって相違すると思われますが、例えば、平成30年8月31日に現漁業権の存続期間が満了するものについては、次のようなスケジュールが適当と思われますので、これを参考として手続を進めてください。

○漁業関係者の要望及び漁場条件の調査 平成29年10月末まで

○漁場計画の原案作成 平成29年12月末まで

○委員会への諮問 平成30年1月初旬

○委員会からの答申 平成30年2月中旬

○漁場計画の決定及び公示 平成30年3月1日

○免許の申請期間 平成30年3月1日から5月31日まで

○適格性、優先順位の審議及び答申 平成30年8月中旬まで

○免許 平成30年9月1日

なお、法第11条の2の規定により、現漁業権の存続期間の満了日又は免許予定日の3か月前までに必ず漁場計画を樹立し、これを公示しなければならないことになっているので、知事は、委員会における公聴会の開催、答申の作成等に要する期間を勘案の上、早めに漁場計画の諮問をする必要があります。

また、公示の時期については、申請者が漁業協同組合(以下「組合」という。)及び漁業協同組合連合会(以下「組合等」という。)である場合は、公示後漁場が確定された後に漁業権の取得等につき総会の議決をする必要があるので、十分余裕をもって定める必要があります。

第二 区画漁業について

1.総論

区画漁業の営まれる水面は、独占排他されることとなるため、漁場計画の樹立に当たっては、その水面の総合利用という観点に立って、その地区の漁業関係者全体の生業に注意し、特に共同漁業との関係を慎重に考慮する必要があります。

また、本年4月28日に閣議決定された水産基本計画においては、国内向けには需要の拡大を図るとともに、需要に見合った生産を行い、積極的な輸出拡大を目指す取組を更に進めつつ、消費者ニーズに合致した質の高い生産物の供給や6次産業化による養殖業の成長産業化を推進するとされているところです。

こうしたことを踏まえ、沿岸漁場においては、漁業者の減少・高齢化の進行等を背景に、漁場の持つ生産力を十分に利用できていない可能性があるため、漁場の有効利用を促進し、養殖業の成長産業化を推進する観点から、今回の切替えに当たっては、自然的現状や社会的経済的現状とともに、特に漁場の利用状況の十分な調査点検を踏まえ、漁場計画を樹立してください。なお、切替え後にあっては、別添の調査票に必要事項を御記入の上、速やかに水産庁資源管理部漁業調整課宛てに調査結果の提出をお願いします。また、民間企業による参入ニーズもあるところ、これらのニーズに応え得る漁場環境、当該漁場における区画漁業の実績、漁場周辺のインフラ等、参入の際に参考となる情報の積極的な発信に努めるとともに、漁業者や関係組合等の意向を的確に把握しつつ、漁業者や組合等と企業とのマッチングを推進し、漁場計画を柔軟に検討していくことも必要です。

また、養殖場として利用されていない地先沖合水面について、漁業関係者から漁場計画の樹立について要望がある場合には、同水域で操業を行う漁船漁業関係者との調整や漁場の調査を行い、水面の総合利用を図り漁業生産力を発展させるという観点から妥当であれば、合理的な漁場計画を策定するよう努めてください。

なお、特定区画漁業権について、一漁場に一行使者を念頭に漁場計画を樹立し、組合管理漁業権として免許しているケースがありますが、このような漁場計画は、多数の漁業者が参入しやすく、参入する者を一部の者に特定させるべきではない組合管理漁業権たる特定区画漁業権の性格からみて、適切ではありません。このため、経営者に直接免許されるよう調整に努めることや、組合管理を念頭において漁場計画を樹立する場合は、漁場利用の態様、行使者の数、組合管理の必要性等を十分勘案してください。

2.震災被害への対応

東日本大震災(以下「震災」という。)や、原発事故による影響により漁業者が一時的に他地域に避難している場合がありますが、地元地区の定め方は、震災前の地元地区の設定をそのまま維持することもできます。この場合、法第14条第8項の免許についての適格性の住所要件が問題となってきますが、一時的に避難生活をしている沿岸漁業者が当該地元地区での操業を継続する意思を表示している場合は、同地区に住所を有している者として取り扱うことは差し支えありません。

他方、漁村集落が高台に移転するなどしており、従来と異なる地元地区を定める場合には、漁業権行使規則に「行使する資格を有する者は平成○○年○○月○○日の漁業権の免許の切替時点において○○地区に住所を有していた者に限る。」との項を入れるなど対応に留意してください。

3.漁業法の特例

東日本大震災復興特別区域法(平成23年法律第122号)第14条に規定する「漁業法の特例」は、法が想定していない例外的な状況についての措置であり、特定区画漁業権に係る免許の優先順位に関する部分について特例を定めています。この運用については、既に、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、埼玉県、千葉県、新潟県及び長野県知事に対して「漁業法の特例について」(平成23年12月26日付け水漁第1563号水産庁長官通知)で通知したとおりであり、漁場計画の樹立に当たり、漁業関係者の懸念にも配慮し、その適切かつ円滑な運用に留意してください。

4.クロマグロ養殖業への対応

太平洋クロマグロの管理強化を図る観点から、既に、法第11条第6項に基づき、「免許の内容たるべき事項の決定又は変更に当たり、漁業種類及び漁業の名称においてくろまぐろ養殖を内容とするものと、くろまぐろ養殖業以外の養殖業を内容とするものとを区別して決定又は変更するものとする」旨の指示(平成22年7月29日付け農林水産省指令22水管第861号  )をしたところであり、漁場計画の樹立に当たっては、この指示の内容に従い対応してください。

クロマグロ養殖業については、まぐろ資源の保存及び管理の強化に関する特別措置法(平成8年法律第101号)第2条に基づく基本方針(平成8年10月28日農林水産省公表)及び「くろまぐろを対象とする養殖の実態把握に必要な資料の提出について」(平成22年7月29日付け22水推第451号農林水産大臣通知)に基づき、クロマグロを対象とした養殖場を国に報告するとともに、クロマグロ養殖業者に対して養殖実績の提出を求め、その取りまとめ結果を毎年3月に公表するなど、管理体制を強化しています。

クロマグロ養殖業に供給されている種苗は主に天然種苗であることから、活込尾数の増加を前提とした漁場の新たな設定、生け簀の規模拡大については、全体としてみれば未成魚の漁獲圧力の急激な増加につながることから、太平洋クロマグロ資源の管理強化のため、既に法第11条第6項の規定に基づく指示(平成24年10月26日付け農林水産省指令24水管第1698号)をしているところであり、当該指示の内容に従い対応してください。人工種苗を対象とした漁場はこれの対象外ですが、その場合は、制限又は条件により、例えば人工種苗による活込みに限る旨の適切な規定を明記するとともに、活込みの際に職員が立ち会う、納品書により人工種苗の購入先を確認するなど実効ある遵守措置により人工種苗のみであることが担保されるようにしてください。また、実効ある管理に資するため、明確な識別が困難な状況で天然種苗と人工種苗を同一の養殖生簀で養殖しないよう、免許の制限又は条件等により担保してください。

このことに関連して、クロマグロを対象とする養殖の実態把握については、既に地方自治法第245条の4第1項の規定に基づき、各都道府県知事に対して資料の提出を求めていますが(平成22年7月29日付け22水推第451号農林水産大臣通知)、当該通知に基づき、クロマグロ養殖場について、正確かつ迅速な資料の提出に、引き続き留意してください。

なお、太平洋クロマグロをめぐる情勢については、引き続き、関係者に対して情報提供を行い、認識の共有を図ることにしていますので、留意してください。

5.漁業権管理費及び漁業権管理費以外の支払金の徴収に関する透明性の向上

組合管理漁業権の管理に要する経費(以下「漁業権管理費」という。)及び漁業権管理費以外の支払金については、関係者の相互理解が十分に図られ、地域の実情に即した漁業及び養殖業が円滑に行われるよう、以下の(1)及び(2)を踏まえ、管下の組合等に対して周知及び指導の徹底をしてください。
(1)漁業権管理費
漁業権管理費については、法第8条第2項の規定に基づき、行使規則において、「当該漁業を営む権利を有する者が当該漁業を営む場合に遵守すべき事項」として、行使者たる組合員に対し、行使料として負担を賦課することができます。

この場合、組合等は、定款の定めるところにより、組合員に負担を求めることとなり、その額及び徴収方法については、総会の議決が必要です(水産業協同組合法(昭和23年法律第242号。以下「組合法」という。)第22条第1項及び第48条第1項第4号)。

具体的な漁業権管理費には、組合管理漁業権に係る監視・取締り、漁場環境保全、資源管理、資源増殖、施設維持管理等直接漁場の管理に必要な経費のほか、当該漁業権の管理上必要な通信費等間接的な経費も含めて差し支えありませんが、内容が合理的かつ妥当なものとなるよう組合等への指導に努めてください。漁業権管理費にその目的を歪曲した不要の経費が含まれることは、厳に避けなければなりません。

行使料は、賦課金の一種であることから、組合員が支払いの義務に応じない場合には、総会の議決により、当該組合員を組合から除名することができるなど厳しい措置を採ることができます(組合法第27条第2項第2号)。

漁業権管理費の算定に当たっては、例えば、各組合員の漁場利用の程度を反映する算定式を用いて具体的金額を明示した上で総会で決定する、決定した行使料を公表する、行使規則の中に具体的な算定根拠と金額を明示するなど、各組合員の理解を得つつ、合理的かつ透明性が確保されたものとなるようにしてください。また、総会で定めた行使料の額、徴収時期及び徴収方法は組合等が公示するなど、組合員に広く周知してください。

なお、当然のことながら、組合管理漁業権ではない場合に組合等が漁業権管理費を徴収することはできません。

(2)漁業権管理費以外の支払金
公共水面を利用する漁業や養殖業においては、他の漁業等とトラブルが生じやすいものであることから、一般的に組合等の役職員が必要な調整を行って対処しています。例えば、養殖施設の設置により漁場を占有するため、他の漁業活動が制約されることから、養殖の実施に当たり、こうした他の漁業者の意見等を組合等の役職員が調整する場合があり、それには一定の経費が発生します。こうした事業に要する経費に係る負担については、受益者が応分の負担をしなければ成り立たない場合もあります。

また、漁場を持続的に利用するためには、地先水面における漁場の管理等を行う必要があり、組合等が漁場環境調査、漁場環境維持、漁場監視等の役務を行っている場合があります。具体的には、藻場造成、海岸清掃、赤潮調査、漁場巡回活動、灯浮標の設置、密漁防止の看板設置等を行う場合があり、それには一定の経費が発生します。こうした経費に係る負担についても、受益者が応分の負担をすることには合理性があります。

このため、組合等が行う調整に係る経費や、漁場の管理等を行うための役務に係る経費についての支払金は適当ですが、(ア)実施されていない役務に対する支払金を徴収すること、(イ)支払金の名目と実際の使途が異なること、(ウ)支払金の内容が合理的でないことに係るものについては、適当ではありません。

6.養殖業への円滑な新規参入の促進

水産基本計画においては、魚類・貝類養殖業等への企業の参入に関して、漁業者が、必要とされる技術・ノウハウ・資本・人材を有する企業との連携を図っていくことは重要であるとされているところです。

こうしたことから、地先水面を総合的かつ高度に利用するため、漁業者の利害を調整し、管理するという役割を担っている組合等と調整しながら、企業等の新規参入が円滑に進むよう留意してください。この際、新規参入を希望する企業等のニーズと地元地区・関係地区の組合等との間の仲介・マッチ
ングの推進に積極的に取り組むことが重要です。

第三 定置漁業について

1.総論

定置漁業は、漁具を敷設する位置がその漁獲を大きく左右し、その周辺において操業する他種漁業及び他の定置網の操業によって大きな影響を受ける一方、広い漁場を独占し、他漁業にも影響を及ぼす性格のものです。したがって、漁場の位置、区域及び統数を定めるに当たっては、他種漁業との調整を十分に行った上で特に慎重に検討してください。

2.震災被害への対応
定置漁業の地元地区についても、第二の2の「震災被害への対応」の箇所を参照の上、定置漁業の特性を考慮して定めてください。

3.資源管理の取組について

(1)クロマグロの漁獲抑制
太平洋クロマグロ資源の管理強化のため、定置漁業については既に法第11条第6項の規定に基づき「くろまぐろの漁獲量が増加することのないよう十分に配慮されたい。特に、当分の間、くろまぐろを主たる漁獲物とする定置漁業については、現に免許されている数を超える新たな決定を行ってはならない」旨の指示(平成22年1月29日付け農林水産省指令21水管第1998号)をしているところであり、当該指示の内容に従い対応してください。
また、クロマグロが入網する蓋然性の高い定置漁業を対象として、法第134条第1項の報告徴収規定の活用を図るなどにより、より正確かつ迅速に漁獲実績を把握してください。

(2)ウミガメの混獲回避
ウミガメ類は、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の附属書A.掲載種であり、保護の機運が世界的に高く、国内においても絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令(平成5年政令第17号)において国際希少野生動植物種に指定されています。ウミガメは、その生活史のほとんどを海洋で過ごすため、偶発的な捕獲による死亡をいかに減らしていくかが、漁業とウミガメの保護との両立のために重要です。

近年、定置漁業におけるウミガメの混獲実態の把握及び回避技術の開発・普及を行ってきたところであり、ウミガメの産卵地周辺等、混獲が多い水域に設置され、かつ、中底層網を使用する定置網においては、ウミガメの脱出口の設置等を免許の制限又は条件とすることについて積極的に検討してください。


特定区画漁業権における漁場の利用状況調査票(様式)

お問合せ先

資源管理部漁業調整課
担当者:沿岸調整班
代表:03-3502-8111(内線6701)
ダイヤルイン:03-3502-8476
FAX:03-3595-7332