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干潟を守る漁業者の活動(干潟環境保全の取り組みの紹介)

全国約110の漁協で漁業者による干潟の保全活動が行われています。

保全活動等に関するアンケート調査(水産庁,2006年)より

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漁業者による干潟の維持管理活動

 

干潟の場の維持 1. 干潟地盤の保全・維持
2. 海底の耕耘(底質環境改善)
3. 死殻の除去・回収
4. 漂着ゴミの回収
5. 被覆性生物の除去
干潟資源の維持 6. 稚貝・母貝の移殖放流
7. 稚貝の沈着促進
8. 稚貝の分散移動
9. 害敵生物の駆除・侵入防止
10. 資源管理
11. 漁場監視と保護区の設置
その他 12. 研修会や環境学習・体験漁業の実施
13. 広報等による啓発活動
14. 漁業者以外との連携

15. その他

 

 

1. 干潟地盤の保全・維持

客土

アサリなどの二枚貝類は干潟の漁業生産と水質浄化に大きな役割を果たしています。二枚貝類の稚貝は浮遊幼生期の後、足糸で底質中の砂等に固定されます。また、二枚貝類は底泥中に潜って成育することから、稚貝や成貝の生息のためには一定の砂質分が必要不可欠となります。客土活動は、干潟の底質を改善し、二枚貝類が棲みやすい環境を整えるための重要な活動です。

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人力による砂客土作業

砂の移動防止

近年、海に供給される土砂の量の減少に伴い、干潟が後退する現象が見られるようになり、公共事業による人工干潟の造成も行われています。干潟の底泥は潮流や波浪によって移動しますが、人工造成した干潟の場合、底泥は不安定な状況となります。安定した底泥と干潟生物の生息環境の創出のため、干潟の表面にノリ網を張ったり土嚢袋を敷くことによって潮流と波浪を抑制し、砂の移動を防止する対策が行われています。

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ノリ網や土嚢による砂の移動防止

 

2. 海底の耕耘(底質環境改善)

干潟の泥を攪拌する(掘り起こす)ことで泥中に酸素が供給され、生物の生息環境を良好に保つことができます。漁業活動が衰退すると、干潟を掘り起こす機会が減ることから、底泥は固く絞まり嫌気的な状態となり生物が棲めなくなります。また、悪臭の軽減やチッソ・リンの回収による水質改善の効果も期待されます。漁業者が中心となった人力による地道な取り組みによってアサリやクルマエビが増えている例もみられます。規模の大きい干潟ではトラクターも導入され、最近では生物への影響に配慮した改良トラクターも開発されています。

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漁業者による人力の耕耘作業

干潟耕耘用のトラクター

 

3. 死殻の除去・回収

日常的にあるいは様々な突発的な要因によって斃死した二枚貝等の死殻が干潟に堆積した状態は、干潟生物の生息環境にとって好ましい状態ではありません。底泥の中に貝殻が混ざっていると内在性ベントスの生活場を奪われるだけでなく、大量斃死によって極端な場合、干潟表面が貝殻だらけとなり、干潟の機能は著しく低下することになります。

全国各地の干潟では漁業者等による死殻の回収活動が行なわれています。突発的な大量斃死の場合には一斉に回収活動が行われたり、長期にわたり貯まった死殻の場合は、期日を決めて定期的に回収する方法や、通常の操業の際にバケツで死殻を持ち帰り除去する方法がとられています。

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干潟での回収作業と回収された死殻

 

4. 漂着ゴミの回収

干潟はもともと河川が運んだ土砂によって形成された場所であるため、陸上から流出する漂着物による被害が最も生じやすい環境といえます。また、沿岸域の富栄養化によって増加するアオサなどの海藻類も波浪や潮汐によって干潟に打ち上げられることが多く、一時期に大量に漂着した場合には大きな環境問題となります。こうした漂着物が大量に干潟に堆積すると、景観を損ねるだけでなく、腐敗による悪臭や酸素濃度の低下、生物の生息環境の悪化など、干潟環境に大きな悪影響が及びます。全国各地の干潟で漂着ゴミの回収活動が行なわれています。

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漂着した植物を回収する漁業者(満潮時に集まった状態で回収)

 

5. 被覆性生物の除去

アオサ類やアオノリ類、ホトトギスガイなどは広範囲に干潟の表面を覆う生物として知られています。こうした被覆性の生物が干潟表面に繁殖すると、覆われた下には酸素が少なくなったり、餌のプランクトンなどが供給されなくなることから、生物は棲みにくくなり干潟全体の生態系が撹乱されることになります。このような事態が広範囲に拡大する前に干潟から取り除くことが干潟の環境・生態系保全のために重要となります。

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漁業者によるアオサの除去作業

 

6. 稚貝・母貝の移殖放流

二枚貝の幼生は海中を浮遊し、潮の流れの弱い場所に集中して着底し稚貝になります。幼生の着底と稚貝の発生が多い海域は昔から「種場」と呼ばれます。一方、地形条件等から稚貝の沈着が少ない水域もあります。種場から資源を移送・分散を行わないと、種場では二枚貝の成長とともに過密状態となり、斃死や成長不良の原因ともなります。一方の稚貝の発生が少ない水域では資源の加入がなく生産性の低い干潟となります。漁業者は稚貝を干潟全体に均一に拡散・移殖することで、水域全体の漁場としての価値を高め、二枚貝資源の維持に努めています。

また、何らかの原因で二枚貝資源が壊滅的に減少してしまった水域では、母貝(成貝)を移植して保護し、産卵・発生した幼生を周辺に沈着させて資源再生を図っている例もあります。

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アサリ稚貝の放流

 

7. 稚貝の沈着促進

漁業者にとっては地先資源の再生産によって二枚貝類の生産力を確保するのが理想的です。発生初期の幼生は浮遊生活をしていることから、潮流を制御し、地先に沈着しやすい環境を整えることで、稚貝の沈着を促進することができます。平坦な地形である干潟では、基本的に障害物がなければ潮汐によって一様で単調な流れとなりますが、障害物があると複雑な流れとなり過流が発生しやすくなります。この原理を利用した様々な稚貝の沈着促進の活動が行われています。自然材である竹を利用するのが一般的となっています。

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稚貝の沈着促進のための割竹(左)や竹柴(右)の設置状況

 

8. 稚貝の分散移動

二枚貝の地種が発生する海域では稚貝の分散移動の活動が行われています。稚貝の沈着量は同一の干潟内でも不均一です。そこで稚貝が多く発生した水域から、地区内の干潟全域に分散させ二枚貝の分布密度を均一にすることが必要となります。これによって二枚貝類の成長が促進され、資源の有効活用を図ることができます。

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稚貝の採集と放流作業

 

9. 害敵生物の駆除・侵入防止

干潟で大量発生しやすく生態系の撹乱が危惧されている害敵生物として、殻に穴を開けてアサリなどの二枚貝を捕食するツメタガイ類やヒトデ類、近年西日本沿岸で増加しているナルトビエイがあげられます。ツメタガイ類には外来種のサキグロタマツメタガイの分布が拡大しています。ナルトビエイは21世紀に入って見られるようになり、捕食量はツメタガイ類やヒトデ類の比ではなく、一度に大量の二枚貝が捕食されます。こうした害敵生物を駆除する活動は、干潟の安定的な漁業生産を維持し、かつ干潟の浄化機能と生態系を保全する上で重要な意義をもっています。

ツメタガイ類は砂の中に潜っているものを採貝漁業時に採取するのが一般的で、ツメタガイ類の卵塊が干潟表層にあるため、産卵期に一斉に徒歩での回収が行われることもあります。ヒトデの駆除は満潮時に船での曳網や、船上からヤスやタモを用いて採取しています。ナルトビエイは刺網によって捕獲されます。

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ツメタガイの卵塊を採取する漁業

ツメタガイと採取された卵塊

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刺網によって捕獲されたナルトビエイ

ヤス突きでヒトデを採取する活動

 

10. 資源管理

干潟資源の持続的利用のためには一定のルールに基づく適切な資源管理を行うことが重要です。採貝漁業の資源管理は、1日の漁獲量の総量規制、殻長(高)規制、漁期規制、操業日・操業時間規制、漁具規制がありますが、規制内容は漁場によって様々です。操業する区域を潮時に合わせて変更し、共同意思に基づいて漁場利用を調整している場合もあります。

 

11. 漁場監視と保護区の設置

干潮時に陸から徒歩によるアクセスが容易となる干潟では、違法採取を防ぎ漁業資源を守るため、漁場の監視活動が不可欠となります。監視活動は監視小屋を設けた本格的な活動と漁業者が干潟を巡回監視する活動に大別されます。監視小屋にレーダー、サーチライトを装備し昼夜にわたる監視体制をとっている漁協もあります。

また、資源回復のため産卵用母貝を放流している漁協では、放流区域を保護区域に設定して採取を禁止する措置をとっている例もみられます。

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漁場監視のための施設(東京湾)

保護区域を告示するための看板(大分県)

 

干潟の重要な役割を知ろう

干潟の働きと現状

 

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