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ホーム > 水産白書 > 平成20年度 水産白書 全文 > 平成20年度 水産の動向 > 第1部 平成20年度 水産の動向 > 第1章 特集1 新たな取組で守る水産物の安定供給 > 第2節 国産水産物の安定供給に影響を与えた要因と構造 ~我が国水産業の現状と課題~ > (3)水産物の価格形成、流通取引等における変化


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(3)水産物の価格形成、流通取引等における変化


(小売業における構造変化と水産物輸入の増加)

総務省の調査結果によると、昭和49年以降、魚介類の購入先が一般小売店(鮮魚店)からスーパーマーケットに大きく移行したことがわかります。


量販店は多くの消費者に均質的・安定的に商品の販売を行うため、生産者や卸売業者に、一定の時間に一定の品質・規格のものを一定の価格で一定量供給すること(いわゆる「四定条件」)を求める傾向を強めました。また、この傾向は大型化・チェーンストア化する中食・外食産業においても強まりました。昭和50年代に入ってからは、200海里体制の定着と国際漁業における資源管理の強化等を背景に、海外漁場を失った遠洋漁業の漁獲量が減少しました。さらに、60年のプラザ合意以降、日本は円高時代を迎え、国内生産ではまかないきれない水産物の供給を補ったり、代替する形で輸入が増加しました。流通の川下に当たる小売業によるいわゆる「四定条件」の要求と輸入水産物の増加は、国産水産物の価格形成と流通取引に影響を与えました。

(国産水産物の価格形成に与えた影響)

以前は、流通の川下に当たる小売での価格は、流通の川上に当たる産地価格と連動しながら設定されていました。魚価は通常、水揚量が増加した場合には下落し、水揚量が減少すると上昇します。この基本的な傾向は変わらないものの、総じてみた場合、3年から18年までは水揚量が減少傾向で推移したにもかかわらず魚価の大きな上昇はみられません。ただし、個々の魚種によって差があります。

この全体的な傾向は、低価格の輸入水産物が増加したこと、需要と生産とのミスマッチが生じたこと、一定の価格で供給することを求める量販店が小売業の中心となり価格に影響を及ぼしていること等が複雑に絡み合っているものと考えられます。



輸入水産物は国産水産物に比べて一般に安価であることが多く、取引形態が量販店が求めるいわゆる「四定条件」にマッチし易かったため、国内供給に占める輸入水産物の占める割合が増加しました。その結果、マグロやサケ等の価格低下を招いた一つのきっかけになったと考えられます。

図1-2-11 マグロ類の実質産地価格と輸入量(左)及び供給量(右)との関係

図1-2-12 サケ・マス類の実質産地価格と輸入量(左)及び供給量(右)との関係

図1-2-13 水産業をめぐる主要な出来事とマグロ類の漁獲量・輸入量の推移

(流通取引に与えた影響)

元来、水産物は天然資源であり季節性を有することから生産量の変動が大きい上、特に我が国の場合は少量多品種のものが分散して生産されるという特徴を有しています。また、同じ魚種でもサイズや鮮度等によって用途が異なってきます。さらに、水産物は腐敗しやすく、消費者は鮮度に対する要求が高いため、迅速で適切な温度や品質管理の下で集中出荷し、都市の消費態様に合わせて分荷・分散し流通させることが必要となります。水産物の流通においては、こうした我が国水産業の産業特性や商品特性を踏まえて生産者と消費者をつなぐ必要があることから、産地市場と消費地市場という二段階の市場を介した流通制度が形成されてきました。そして卸売市場は、「公開・公平・公正」という基本理念の下で、各地から集められた多種多様な水産物を、せり等により適正な価格付けをして消費者へ迅速かつ効率的に安定供給する役割を果たしてきています。

図1-2-14 生鮮水産物の流通経路

しかし、水産物流通を取り巻く情勢は変化しています。消費者の利便性・簡便性の追求や低価格志向の高まりに応じて、量販店や中食・外食産業では、輸入水産物の取扱量が増加しました。また、冷凍・加工技術の普及や養殖生産物の増加によって、以前に比べ計画的な出荷が行いやすい状況になりました。さらに、物流技術やIT技術の高まりによって、少量多品種の生鮮魚介類についても多様な形態での流通の道が開かれました。一方、こうした情勢の変化がみられる中で、国産水産物を中心に取り扱ってきた卸売市場の取扱量及び市場経由率は徐々に低下しています。


16年には卸売市場法が改正され、商物一致規制の緩和や買付集荷の自由化、卸売手数料の弾力化、第三者販売・直荷引きの弾力化等によって、流通機構の転換が図られています。

このような中、市場関係者の間では、安全で信頼できる水産物を供給するためのトレーサビリティ等の導入や、産地ブランドの積極的な育成、加工・配送機能の強化などに取り組む業者もみられてきています。

(消費動向の変化)

近年のスルメイカ及びアジの消費動向の変化についてみると、それぞれの1人1年当たりの購入数量は減少傾向にあり、それとともに小売価格は横ばいから低下傾向にあります。また、産地水揚量と実質産地価格の関係をみると、産地水揚量と産地価格の相関関係を示すグラフが左下に向かう傾向にあることから、水揚量が減少しても産地価格に反映されづらくなっていることが分かります。



消費者の消費形態は、社会情勢の変化による「低価格志向」や「簡便化志向」の高まりも影響して、「少量多品種・季節性・生鮮・一尾のもの」での消費から、マグロやサケといった「少品目・通年・冷凍・切り身」の消費へ変化しました。このことが、先にみた水産物流通の変化とあいまって、我が国周辺で漁獲される多種多様な水産物の消費量が減少している要因の一つになっていると考えられます。

(コスト上昇と小売価格との関係)

燃油価格の高騰やとうもろこし、小麦、畜産物の価格上昇によって、食品産業にかかるコストは上昇しています。水産業においても16年以降、燃油価格の高騰の影響を受けて操業にかかる燃油費が増加しました。しかしながら、小売価格は上昇していません。


小売段階では、消費者の支出の傾向等から値頃(ごろ)感、販売戦略などが勘案されて売値が決定されています。総務省の「家計調査年報」によると、1人1年当たりの食品支出額は約29.2万円(1日当たり約799円)、魚介類の支出額は2.8万円で減少傾向にあります。

現状において水産物の消費に減少がみられる中、売値に生産・流通コストの増加分を転嫁すると、消費者は水産物の購入回数を減らすことが懸念されます。また、小売業者間では相互に顧客獲得競争が行われている実態から、小売段階に価格を転嫁しづらくなっている面があります。

しかし、こうした状況の中でも、消費者に旬(しゅん)や調理方法を伝えたり、魚の下処理をしたり、個性あるメニュー提案をするといったサービスの提供をその店の魅力・個性とし、他店との差別化や水産物の付加価値向上につなげる努力もみられます。

コラム:生産者の受取価格
小売価格は生産者の受取価格と卸売、仲卸、小売の各段階の流通コスト及び利潤を合わせたもので構成されています。20年に行われた農林水産省の調査において、全国で販売された水産物の小売価格に占める生産者受取価格の割合は、約25%程度となっています。一方、水産物は青果物に比べ、小売段階の割合が高くなっていますが、これは、温度管理や切り身への調理等が必要であること、小売段階での売れ残りや腐敗減耗等のリスクが大きいことも要因であると考えられます。

図1-2-19 水産物平均及び青果物平均の流通経費等の割合


(産地における販売力の強化)

産地においては、こうした社会情勢、流通・消費構造の変化を踏まえ、需要者(消費者、量販店等小売業者、中食・外食産業)のニーズにどのように応えていくかが課題となっています。これら川下の需要を的確にとらえ、フィレにするなどの一次加工を行って産地での付加価値を高めたり、利用度が低かった資源についても、川下の需要者や外部の専門家の助言を取り入れるなどして新たな商品開発を行うなど、創意工夫による販売力の強化が必要となっています。

お問い合わせ先

漁政部企画課
担当者:動向分析班:大橋・太田
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-3502-8415
FAX:03-3501-5097

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