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(3)我が国の漁業管理のルーツ


(奈良時代に生まれていた漁業管理の思想)

水産資源は、石油、鉱物等の非再生資源と異なり、資源の再生に悪影響のないように適切に漁獲していけば資源は枯渇することなく、持続的な利用が可能になる自律再生資源です。一方で、水産資源は一般に特定の個人や企業によって私有されるのではなく、誰でも漁獲に参加できる無主物先占※1 の利用形態であるため、自由な競争に委ねると、漁獲競争の激化を免れないという性質を持っています。

このため、水産資源の保全と持続的利用を図ることが必要であり、現在、我が国でも漁業法に基づく免許・許可をベースとしつつ、漁獲可能量(TAC)制度や、漁業者が主体となった資源回復計画等を適切に組み合わせた資源管理を推進しています。

このような考えは、奈良時代にさかのぼることができるといわれています。当時、漁業生産力の増大や私的所有の拡大により、水産資源の私的独占や、池を乾かしたり、毒を河川に流して魚を根こそぎ獲る「酷漁(こくぎょ)」が問題になり、現代の漁業法のルーツといわれる「山川藪沢之利(さんせんそうたくのり)、公私之(こうしこれ)を共(とも)にす」の勅令が出されたとされています。これは、山や川で獲れるものを個人が独占してはならないということを意味しています。

江戸時代になると、「磯猟(いそりょう)は地付根付(じつきねつき)次第なり、沖は入会(いりあい)」という原則が示されました。これは、海浜の地付漁場については、周辺漁村が管理する「総有」※2 とする一方、外海については原則自由な漁場の利用を認めるもので、現在の漁業権制度の基礎となる考えが確立しました。こうした中、漁村住民の間では、組合を結成し、漁船、漁具、漁期、漁区、魚(うお)つき林(りん)の保護などに関する規則を定める例も生まれたといわれています。

※1 無主物先占:所有者が存在しない動産を所有の意思を持って占有した者が所有権を取得できること。
※2 総有:共有の一形態。物の管理・処分などの権限は団体自体に属し、各団体員はその物を使用・収益する権限を有するにとどまる。

コラム:江戸時代の浦・磯付村(いそつきむら) ~江戸前の漁業政策~

江戸湾の漁業
出典:「江戸湾の漁業」(神奈川大学非文字資料研究センター蔵)
現在の東京湾は、江戸時代には幕府の天領でした。当時、江戸前には84の浦と、18の磯付(いそつき)村があったといわれています。

江戸前の漁業政策に関し、幕府は、農民が専業的な漁民になることを制限し、従来からの漁業従事者のみに専業的な漁業を許しました。このような専業的な漁業従事者が暮らす集落は浦と呼ばれ、排他的な漁業権や税の軽減措置などの特権が与えられる代わりに、幕府や旗本等に対して水産物などを一定量献上することが求められました。

一方で、浦のような専業の漁村ではなく、船を使用しない自家消費用の採捕だけが認められる、いわゆる半農半漁の世帯が中心の集落もありました。このような集落は磯付村と呼ばれていました。

このように、漁業者や漁村の数を限定したり、磯付村での漁獲物の売買を禁止したりするなど、江戸時代にも漁場管理の始まりがみられます。
 

(漁村の共同体原理と漁業管理の思想)

「磯猟は地付根付次第なり、沖は入会」という現代の漁業制度につながる思想は、農村とは異なる漁村特有の共同体原理が影響しているものと考えられます。農業生産の基本となる土地は、技術の進展によって生産力が向上すると、私有や分割が進みます。一方、漁業生産の基本となる水産資源は、自然環境に左右され、移動、変動するという性格を有し、また、私有や分割が困難であるため、共同で管理せざるを得ないという性質を有しています。

このため、土地所有権が個人に帰属することが明確な農業と異なり、漁場や水産資源については、個人が分割所有するのではなく、地域として総有するという考えが生まれました。

例えば、江戸時代の漁村では、村落又は村落の有力者である長百姓(おさびゃくしょう)が漁場、入漁者、漁具や漁法、漁労日数の限定、漁場の輪番使用などについてルールを定め、共同体で漁場を管理・使用することが行われていたといわれています。

現在の漁業法でも、地先の共同漁業権の管理を地元の漁業協同組合に委ね、漁業協同組合が漁業権行使規則を定め、漁業を営む権利を有する者の資格を定めたり、漁具・漁法、操業期間の制限を設けるなどの方法により漁場の管理を行っています。
 

お問い合わせ先

漁政部企画課
担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344
FAX:03-3501-5097

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