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東日本大震災


(地震・津波による被害の状況)

平成23年3月11日午後2時46分、三陸沖(北緯38.1度、東経142.9度、牡鹿半島の東南東130km付近)を震源として、「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」が発生しました。国内観測史上最大のマグニチュード9.0(暫定値)を記録したこの地震の断層は長さ約450km、幅約200kmに及び、大規模な津波を引き起こしました。この津波は、東北地方太平洋岸をはじめとして全国の沿岸に到達し、震源に近い岩手県、宮城県、福島県の3県には、特に大きな津波が押し寄せました。気象庁の観測(痕跡等による推定を含む)によると、津波観測地点における津波の高さ(最大の高さ)は、岩手県の宮古で8.5m以上、大船渡で11.8m以上、釜石で9.3m以上、宮城県の石巻市鮎川で7.7m以上、福島県の相馬で9.3m以上とされています(速報値)。この地震・津波による死者は約1万5千人、行方不明者は約9千人(平成23年5月16日現在)に上り、漁業者を含む多くの人命が失われました。建造物の被害は、全壊約9万戸、半壊約3万7千戸、一部損壊約25万9千戸(5月16日現在)となっており、多くの方々が家や家財道具を失いました。いまだに約11万6千人(5月16日現在)の被災者が避難生活を余儀なくされています。そのほか、東北地方で約440万世帯が停電し、関東地方でも約405万世帯で停電するなど、電力、水道、ガス等のインフラに多大な支障が生じました。

堤防に乗り上げた漁船(岩手県釜石市)
堤防に乗り上げた漁船
(岩手県釜石市)
絡まり漂流する漁具(岩手県洋野町)
絡まり漂流する漁具
(岩手県洋野町)
 

手前から、被災した製氷施設、冷蔵庫及び水産加工場(宮城県南三陸町)
手前から、被災した製氷施設、冷蔵庫及び水産加工場(宮城県南三陸町)

津波を受け崩壊した高さ約10mの防波堤(岩手県山田町)
津波を受け崩壊した高さ約10mの防波堤
(岩手県山田町)
水産業関係では、漁船・漁具、養殖施設、岸壁や護岸等の漁港施設、荷さばき所、給油施設、製氷・貯氷施設、冷凍庫・冷蔵庫、漁具倉庫、水産加工場、ヒラメ、アワビ等の種苗生産施設、サケふ化場、造船所など、水産業を支えるあらゆる生産基盤に甚大な被害がもたらされました。また、大量の瓦礫や泥が漁港内や港につながる航路、漁場等に堆積する、漁船が市街地に打ち上げられる、冷凍庫・冷蔵庫に保管されていた水産物が停電のため腐敗する、といった被害も生じています。陸路でのアクセスが困難な被災地が多数あったことから、水産関係の被害状況の全容把握には、なお時間を要しています。
 
瓦礫などの漂流物が覆う漁港(宮城県石巻市)
瓦礫などの漂流物が覆う漁港
(宮城県石巻市)
今回の地震の震源に近い、宮城県中部以北から岩手県にかけての三陸地域は、海岸線が複雑に入り組んだリアス式海岸が連なっており、天然の良港に恵まれるとともに、養殖生産に適した波の静かな湾を多数有しています。このため、本地域には、宮古・大船渡(岩手県)、気仙沼(宮城県)など、かつお・まぐろ漁業や大中型まき網漁業をはじめとする沖合・遠洋漁業の基地として、水産加工場も集積した水産都市が立地しています。また、ホタテ、カキ等の貝類、コンブ、ワカメ等の藻類、ギンザケ等の魚類の養殖が盛んに行われています。このような漁業を支えるため、県の試験研究機関、市町村や漁業協同組合が設置した種苗育成施設なども多数設置されています。
 
岸壁が崩壊した漁港(岩手県大槌町)
岸壁が崩壊した漁港
(岩手県大槌町)
壊滅的な被害を受けた市場建屋(宮城南三陸町)
壊滅的な被害を受けた市場建屋
(宮城南三陸町)
 
このように、本地域は、我が国有数の漁業生産地域として発展してきましたが、漁業面での有利性は、津波の危険性を併せもつといった面があります。湾が奥深いという地形を有するため、今回、高さ15mを超える津波に襲われた地域もありました。さらに、本地域は極めて平地に乏しく、漁業集落の多くは、津波の被害を受けやすい海岸線のわずかな平地に密集して立地していました。防潮堤の建設や津波ハザードマップの整備などの防災対策が講じられてきましたが、千年に一度ともいわれる今回の津波は、三陸地域のほとんどすべての水産都市や漁業集落の生活基盤と漁業生産基盤に壊滅的な被害をもたらしました。

壊滅的な被害を受けたカキ処理場(宮城県石巻市)
壊滅的な被害を受けたカキ処理場
(宮城県石巻市)
三陸地域に接する宮城県中部から千葉県外房地域にかけて、また青森県八戸市以北の本州太平洋沿岸は、おおむね平坦な海岸線が続き、沿岸では、アサリ、ホッキ等の貝類やヒラメ、カレイ等の底魚類、カタクチイワシ等の漁業や、カキ、ノリ等の養殖が盛んに行われています。また、八戸(青森県)、石巻・塩釜(宮城県)、小名浜(福島県)、銚子(千葉県)等は、大中型まき網漁業、沖合底びき網漁業、北太平洋さんま漁業、かつお・まぐろ漁業などの沖合・遠洋漁業の拠点となっています。これらの港には、アジ、サバ、サンマ、カツオ・マグロ等の国民生活に欠かせない魚類が大量に水揚げされ、卸売市場や水産加工場なども集積しています。

これらの地域においても、想定を超える津波により、漁業集落、漁船・漁具、養殖施設、漁港施設、流通・加工施設等に大きな被害がもたらされています。また、千葉県内房地域では、地震により流出した石油製品がノリ養殖施設に流れ付き、ノリの摘み取りができなくなるという被害も生じています。
 

市街地まで流されてきた漁船(青森県八戸市)
市街地まで流されてきた漁船
(青森県八戸市)
今回の津波は、東北、関東以外の地域にも広範囲に押し寄せ、北海道渡島森港で1.6m以上、三重県鳥羽で1.8m以上、高知県須崎港で2.8m以上の高さの津波が観測され、大きな被害をもたらしました。波浪に弱い養殖施設の被害は特に広範囲に及び、例えば、北海道の噴火湾のホタテ養殖では、養殖施設が流されたことにより、浮き玉やロープが絡んで使用不可能となるなどの甚大な被害が発生しました。また、三重県、和歌山県、徳島県、高知県、大分県、宮崎県、沖縄県などでも、ノリ、カキ、クロマグロ、マダイ、ハマチ、カンパチ、モズク等の養殖施設に大きな被害が生じています。
 

東日本大震災による水産関係の被害状況1
東日本大震災による水産関係の被害状況2

(農林水産省の対応)

政府は、震災の発生を受けて、3月11日、直ちに内閣総理大臣を本部長とする「緊急災害対策本部」を設置するとともに、政府調査団の派遣、全国を対象とした激甚災害の指定、緊急災害現地対策本部の設置を行いました。

農林水産省においても、同日、農林水産大臣を本部長とする「農林水産省地震災害対策本部」を設置しました。同日中に、被災地付近の海域で行動する水産庁漁業取締船を現場へ急行させ、自衛隊や海上保安庁と連携のうえ、捜索活動に当たりました。また、3月14日に、水産庁漁業取締船「東光丸」(2,071トン)が東京港を出港したのを皮切りに、水産庁漁業取締船・調査船計9隻が被災地(八戸、釜石、気仙沼等)に向かい、陸上アクセスが困難となっている主要漁港とその周辺施設の被災状況の把握を行うとともに、粉ミルク、水、軽油等の救援物資の輸送を行いました。さらに、南極海における調査から帰還した調査捕鯨母船「日新丸」(8,044トン)も、水産庁の要請を受け、民間漁船の協力のもと、その大規模輸送能力を利用して、大量の食品、生活用品、A重油等を被災地に運搬しました。

金融関係では、地震・津波による被害を受けた漁業者等への既貸付金の償還猶予及び資金の円滑な融通について関係金融機関に要請しました。また、漁業共済団体及び漁船保険団体に対し、被害の早期把握、迅速な損害評価の実施及び共済金・保険金の早期支払を依頼しました。

また、水産庁は4月5日、「復興プロジェクト支援チーム」を庁内に設置しました。チーム員を現地に派遣し、被災地の漁業関係者と直接話し合うことにより、現状やニーズを把握し、地域の水産業の復旧・復興を支援しています。

村井宮城県知事の説明を受ける鹿野農林水産大臣(平成23年4月2日)
村井宮城県知事の説明を受ける
鹿野農林水産大臣(平成23年4月2日)
被災地へ救援物資を輸送した「日新丸」
被災地へ救援物資を輸送した「日新丸」
 

(被災地支援の取組)

全国の水産関係団体も迅速に被災地支援に取り組みました。漁業者の全国団体である全国漁業協同組合連合会と(社)大日本水産会は、それぞれ地震発生直後に対策本部を設置し、被害状況の把握や現地への支援の取組を開始しました。

全国漁業協同組合連合会では、被災地に向けて緊急車両による支援物資の輸送を行ったほか、山形県酒田油槽所に保管されていた漁業用A重油を自家発電用の燃料の払底が懸念された宮城県内の病院へ提供するなどの取組を行いました。(社)大日本水産会も支援物資の提供や義援金の募集を行いました。この義援金募集には、韓国や台湾など海外の漁業団体からも多くの寄付が集まっています。また、全国水産加工業協同組合連合会は、3月12日、全国の会員に支援物資の提供を呼びかけました。この呼びかけにこたえ、全国の水産加工業者から多くの支援物資が被災地に届けられました。(社)海外まき網漁業協会所属のまき網漁船は、3月13日以降、計26隻が被災地へ向かい、水産庁の漁業取締船等と協力し、船に搭載された小型艇を用いて大型船が接岸できない地域に食料、軽油、毛布等を搬入しました。さらに、船員の全国団体である全日本海員組合は、小規模な港湾施設にも直接入港可能な200トン弱のイカ釣り漁船をチャーターし、被災地に水や食料等を提供しました。

~水産関係者による様々な支援の取組~


とどけ!全国の漁師の想い号(JFグループ)

被災地へ向け出発するトラック
被災地へ向け出発するトラック
JFグループ*1は、「JFグループ東北地方太平洋沖地震・漁村災害・復興対策本部」を立ち上げ、被災地に水や食料等の緊急支援物資を緊急車両トラックで届けています。平成23年3月15日には「とどけ!全国の漁師の想い号」と名付けたトラックが東京から岩手へ向けて出発しました。この取組は、その後、搬送先を変えながら、第4弾まで実施されています。

また、「がんばれ漁業10億円募金」と題して各県のJFグループを通じて全国の漁業者・水産関係者や国民に義援金の提供を呼びかけています。

*1 全国の沿海地区漁業協同組合系統組織。
 

震災直後から市民の食を支えた卸売市場

停電中のため外から光が入る場所で行われたセリ(3月16日)(宮城県仙台市)
停電中のため外から光が入る場所で
行われたセリ(3月16日)
(宮城県仙台市)
仙台市中央卸売市場は、震災による仙台市民の食料不足の懸念に対応するため、「食は命」を合言葉に、震災の翌朝から半月間、休日返上で市場を開け続け、市場の社会的使命を果たしました。
 

水産加工団体による支援

現地で水産加工品を引き渡す関係者(岩手県釜石市)
現地で水産加工品を引き渡す関係者
(岩手県釜石市)
岩手県釜石市長からの支援物資搬送の要請を受けた全国水産加工業協同組合連合会は、平成23年3月30日、関連団体の協力を得て、水産加工業者が製造する缶詰、佃煮、煮干しなどの水産加工品をトラックで搬送しました。
 

支援物資を漁船で海上輸送

支援物資の積み降ろし(宮城県気仙沼市)
支援物資の積み降ろし
(宮城県気仙沼市)
全日本海員組合は、中型イカ釣り漁船「幸雄丸」(184トン)をチャーターし、支援物資の輸送に当たりました。函館市民や道民の皆さんなどから提供された物資を満載して、3月23日に函館港を出港。岩手県の宮古港、宮城県の気仙沼港、石巻港に入港し、支援物資を届けました。
 

「さんま祭」が縁で締結した災害における相互援助協定に基づき救援物資を輸送

毎年産地の協力により開かれている「さんま祭」(東京都目黒区)
毎年産地の協力により開かれている
「さんま祭」(東京都目黒区)
東京都目黒区、品川区では、毎年、産地から直送されたサンマを焼いてふるまう「さんま祭」が開催されています。この祭りが縁となって、目黒区が宮城県気仙沼市と、品川区は岩手県宮古市と災害における相互援助協定を締結しています。これらの協定に基づき両区では、協定の締結相手の市に救援物資を搬送するなどの支援を行っています。
 

民間漁船との連携による水産庁漁業取締船・調査船の救援活動等

水産庁漁業取締船「白竜丸」による物資陸揚げの様子(宮城県石巻市)
水産庁漁業取締船「白竜丸」による
物資陸揚げの様子
(宮城県石巻市)
宮城県牡鹿半島では、地震発生後、陸路での交通が途絶し、安否確認や救援物資の供給が十分できない集落が発生していました。このため、水産庁の漁業取締船「白竜丸」は、民間漁船と協力しつつ、海路から救援物資を運搬するとともに、住民の方々から安否情報をお預かりし、3月15日、石巻市役所に伝達しました。また、水産庁は、この安否情報をホームページにも掲載し、情報を求める皆さんに広くお知らせしました。
 

(東京電力福島第一原子力発電所の事故について)

東京電力株式会社福島第一原子力発電所周辺では、地震、津波の被害に加え、同発電所の事故により避難指示や屋内退避指示が発令された地域の漁港が利用できなくなるとともに、同指示を受けて航行危険区域とされた海域では、漁業の操業断念を余儀なくされました。

3月15日以降、福島県の各漁協は、福島県海域でのすべての操業を自粛しました。さらに、サンプリング調査の結果、食品衛生法上の暫定規制値*1を超過する放射性物質が検出される事例が出ていたイカナゴの稚魚(コウナゴ)について、4月19日に暫定規制値を大幅に超える放射性物質が検出されたことから、4月20日、原子力災害対策本部長(内閣総理大臣)は魚介類として初めて、福島県知事に対し、福島県で水揚げされるコウナゴの出荷・摂取制限の指示を出しました。また、茨城県の各漁協は、4月5日、県からの要請を受け、コウナゴの出荷・販売を自粛し、4月30日には、操業再開がないままに、今漁期の操業の終了を決定しました。さらに福島県では、5月13日、県内で採取されたシラス、アユ及びワカサギから暫定規制値を超える放射性物質が検出されました。

今回の原子力発電所の事故は、周辺海域の漁業に多大な影響を及ぼしただけではなく、水産物の安全性に対する内外の消費者の不安を呼び起こし、関係地域に限らず水産物が敬遠されるといった風評被害も生じました。

水産庁は、3月29日に、都道府県、漁業団体、水産加工業者、輸出業者、報道機関等を対象とする勉強会を開催し、専門家も招き、放射性物質が水産生物に与える影響等についての情報を提供しました。さらに、農林水産省ホームページにQ&Aを掲載し、広く一般に情報提供しています。

また、水産庁では、5月2日付けで「水産物の放射性物質検査に関する基本方針」を都道府県等に通知しました。今後とも都道府県等との連携のもと、放射性物質のモニタリングを強化し、国民の皆さんが安心して水産物を食べることができるよう正確な情報提供に努めていきます。さらに、水産物を含む日本産食品の輸出に当たり、輸出先国による規制の強化や風評被害等により、輸出が困難になるという事態が生じていることに対応し、各国に対し、我が国の水産物の安全性についての正確な情報を伝達するとともに、過剰な規制措置をとらないよう要請しています。また、我が国から輸出される水産物について輸出先国が証明書(原産地証明、放射能安全証明等)の発行を要求していることに対応するため、水産庁による証明書を発行しています。

*1 厚生労働省は、魚介類中の放射性物質に関し、放射性セシウムについては500ベクレル/kg、放射性ヨウ素については2,000ベクレル/kgを食品衛生法上の暫定規制値として設定している(それぞれ3月17日、4月5日に設定)。

水産物の放射性物質検査について

なお、今回の事故によって生じる損害については、一般論として、事故との相当因果関係が認められるものについては、原子力損害の賠償に関する法律に基づき、適切な賠償が行われることになります。農林水産省としても、被害者の方々が適切かつ速やかな賠償を受けられるようできる限りの支援を行う考えです。5月12日には、原子力発電所事故経済被害対応チーム関係閣僚会合において、政府による避難等の指示及び同指示を受けての航行危険区域の設定又は政府等による出荷制限指示等により漁業者等が被った営業損害について、東京電力株式会社が、当面の必要な資金を可及的速やかに支払うことが決定されました。

また、出荷制限や風評被害等を受けた漁業者等に対して、東京電力株式会社からの賠償がなされるまでの間のつなぎ資金の融資が、JFグループ等の主体的な取組として実施されています。農林水産省としても、より円滑に資金の融通がなされるよう、つなぎ融資について平成23年度補正予算による無担保・無保証人保証の対象としているところです。

コラム:「食べて応援しよう!」~被災地を応援する取組~

東日本大震災の被災地及びその周辺地域で生産・製造されている農林水産物、加工食品(以下、「被災地産食品」という)を販売するフェアや社員食堂・外食産業でこれを優先的に利用しようという取組が全国に広がっています。

農林水産省でも、被災地産食品の積極的な消費を通じて被災地の復興を応援するため、多様な関係者の一体感を醸成する取組を平成23年4月に開始しました。

この取組では、自治体や企業などの食堂等で被災地産食品を積極的に食材として利用する場合や食品小売業・外食産業において被災地産食品フェア等を行う場合等に共通のキャッチフレーズ「食べて応援しよう!」の利用を呼びかけています。また、この趣旨に賛同いただいた取組について農林水産省のホームページで積極的に情報発信しています。食を通じた被災地応援の取組の輪がますます拡がっていくことが期待されます。

農林水産省ホームページ掲載「食べて応援しよう!」

農林水産省ホームページ掲載「食べて応援しよう!」:http://maff.go.jp/j/soushoku/eat/

(我が国の水産業への影響)

今回の東日本大震災によって甚大な被害を受けた地域は、全国の水産物供給に大きな役割を果たすとともに、他の地域の水産業も支える様々な機能を果たしてきました。

被害が多く報告されている青森県から千葉県にかけての漁業・養殖業*1について、平成21年の数値をみると、我が国全体の生産量の24%(127万トン)、生産額の17%(2,319億円)を占めています。品目別に見ると、例えば秋の風物詩であるサンマの40%(12万6千トン)がこれらの地域の漁業者により漁獲されています。このほか、サバ類38%(17万8千トン)、養殖カキ29%(6万2千トン*2)、養殖ワカメ79%(4万8千トン)など、全国の生産量に対して相当の割合を占めるものも少なくありません。また、気仙沼のフカヒレ、大船渡の干しアワビなど、高級中華食材として輸出され、香港などで高い評価を得ている品目もあります。さらに、養殖用種苗販売量についてみると、本地域の全国に占めるシェアは、カキ類種苗で全国の81%、ワカメ類種苗で30%となっており、これらの種苗が全国の養殖生産を支えています。

沿岸部の主要な都市は、沖合・遠洋漁業の水揚げ港*3として発展し、地元の漁船だけでなく、多数の他地域の漁船が水揚げを行い、燃油、氷、水・食料等の補給拠点や荒天時の避難港としても機能しています。例えば、富山、三重、高知、大分、宮崎等のかつお・まぐろ漁船は気仙沼及び塩釜を、静岡、石川、三重等の大中型まき網漁船は八戸、気仙沼、石巻、小名浜及び銚子をそれぞれの活動拠点としています。これらの漁業基地の後背地には、水産加工場が集積しており、冷凍のサンマ・サバ、塩辛、かまぼこ等のねり製品、新巻鮭等の塩干品等の製品を全国に供給しています。水産加工場数は全国の16%(1,627か所)、水産加工品の製造量は全国の33%(423万トン)に及びます。

さらに、この地域には造船所も多く立地し、全国の中・大型漁船のうち2割*4が当地域で建造されるなど、我が国の漁船勢力を支えています。

*1 内水面を除く。漁業・養殖業の生産量及び養殖用種苗販売量については、個人等に関する秘密を保護する観点から、農林水産省が統計数値を公表していない数値を除く。
*2 殻付き重量。
*3 八戸、宮古、大船渡、釜石、気仙沼、女川、石巻、塩釜、小名浜、大津、波崎、銚子など。
*4 平成14年から21年までの間に建造された大臣管理漁業及び20トン以上の漁船(265隻)のうち、当地域に所在する造船所で建造された漁船(46隻)の割合。水産庁調べ。

(被災地域の水産業の復旧・復興に向けて)

被災地域の水産業の早期の復興を図ることは、地域経済や生活基盤の復興に直結するだけでなく、国民に対する豊かな水産物の供給を確保するうえでも、極めて重要な課題です。

被災した水産関係者の皆さんが、困難を乗り越え、将来への希望と展望をもって水産業を再開できるよう、政府としても、漁業・加工流通業の再建や、漁港、漁場、漁船、養殖施設、さらには、漁村全体の復旧・復興に取り組む方針です。

農林水産省としては、当面の復旧対策として、平成23年度補正予算により、漁港、漁場、漁村等の復旧(漁港、漁場、海岸等の災害復旧及びこれと併せて行う再度災害防止等のための災害関連事業の実施等)、漁船、市場、加工施設、関連施設等の回復(被災した漁船・定置漁具の復旧のため、漁協等が行う漁船・定置漁具の導入、被害を受けた養殖施設の復旧支援等)、漁業活動再開・継続への支援(低下・喪失した漁場の機能や生産力の回復を図るため漁業者等が行う漁場での瓦礫等の回収処理等の取組支援等)等の対策を講ずることとしています。


また、政府では、有識者をメンバーとする東日本大震災復興構想会議を設置し、復興に向けた指針策定のための復興構想について幅広く議論を行っています。同会議は、平成23年6月末ごろまでを目途に、「提言」の取りまとめを行う予定です。農林水産省としても、被災地域の本格的復興、食料供給機能の再生等に向け、地方と国が一体となってどのように取り組んでいくか等について検討していくこととしています。水産分野についても、復興の主体である地域の意向を踏まえながら、活力ある水産地域の復興、防災機能強化による安全で安心できる漁村づくりなど、水産業の本格的復興に向けたビジョンとその実現のための政策メニューを示していく方針です。

水産業の本格的復興のイメージ例

お問い合わせ先

漁政部企画課
担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-3502-8415
FAX:03-3501-5097

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