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ホーム > 水産白書 > 平成22年度 水産白書 全文 > 平成22年度 水産の動向 > 第1部 平成22年度 水産の動向 > 第1章 私たちの水産資源 ~持続的な漁業・食料供給を考える~ > 第4節 国民全体で支える水産資源管理 > (2)多様な形での資源管理への参画


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(2)多様な形での資源管理への参画


(密漁品を流通させないことも資源管理への支援)

アワビ、ウニ、ナマコなどの磯根資源は、漁業協同組合に免許される漁業権の対象となっており、漁業者自らが禁漁期や禁漁区の設定、種苗放流による増殖などの資源の保全・管理措置を行っています。しかしながら、これらの資源は、高価なものが多いうえ、簡易潜水機(スキューバ)など比較的簡単な装備で採捕可能なため、レジャー客等による採捕のほか、犯罪組織が資金源として密漁を行う事件も多く発生しています。水産資源の保全・管理に対する市民の理解の促進や流通業者との連携による密漁漁獲物の流通の阻止など、密漁の防止に向けた一層の対策が求められています。

事例:市場と生産者の連携により密漁アワビを市場から排除


密漁アワビ流通防止に向けた協議会の様子

築地市場アワビ取扱基準発表記者会見の様子
写真上:密漁アワビ流通防止に向けた協議会の様子
写真下:築地市場アワビ取扱基準発表記者会見の様子
各地の漁業協同組合では、漁業権の対象となっているアワビ等の密漁を防止するため、地元警察等と連携して、漁業権の設定について市民に啓発するための掲示やポスターの設置、漁業者による監視活動などを行っていますが、漁業者だけの取組には限界があります。こうしたなか、北海道、青森県、岩手県、宮城県の漁業協同組合連合会では、流通段階も含めた密漁防止を図ろうと、平成21年7月、東京都水産物卸売業者協会と確認書を締結し、各生産者団体が発行する原産地証明書が添付されていないアワビを築地市場では取り扱わない旨の取扱基準を推進することにつき、申合せを行いました。この動きは、他の水産物卸売市場にも広がり、平成21年中に札幌、仙台、盛岡、青森の水産物卸売市場との間でも、同様の確認書が締結されました。

これらの取組の結果、(1)漁協が実施している密漁監視活動によって発見される密漁船の減少、(2)確認書を締結した市場におけるアワビの取扱量と価格の上昇などの効果が現れています。
 

(遊漁者に資源管理への理解を求める取組が行われている)

釣りを楽しむ遊漁者に資源管理や海洋環境の保全への理解を高めてもらおうという取組も行われています。

漁業センサス(2008年)によると、遊漁関係団体との間で資源の保護・増殖、漁場環境の保全等の海面利用に関し連携活動を行っている漁業協同組合は全国に211組合あります。これらの連携活動においては、遊漁禁止区域の設定や体長制限、採捕時期の規制等の海面利用のルールづくりや遊漁者も参加した海岸・漁場の清掃活動などが行われています。

(水産資源を守り育てる多様な連携)

資源管理の取組は、食料の安定供給や漁業経営の安定だけをもたらすものではありません。水産資源をはぐくむ環境づくりが漁業者と消費者の交流の場になっている事例や、漁業者による資源管理の取組が地域経済の活性化の呼び水となっている事例が全国各地で生まれています。

事例:キアンコウ資源管理の成果を活かして村おこし(青森県風間浦村)


青森県むつ水産事務所による標識放流調査の様子
青森県むつ水産事務所による標識放流調査の様子
青森県
青森県の下北半島にある風間浦村では、キアンコウを刺し網やはえ縄で漁獲していますが、漁獲量が多い春~夏には価格が安く、冬場との価格差は5倍以上となっていました。キアンコウ資源の有効利用を目的として、県むつ水産事務所が平成17年から実施している標識放流調査の結果、キアンコウは大半が青森県沿岸で再捕されることや成長が極めて早いことなどの生態が判明し、適切な資源管理を行うことでキアンコウの資源を増やすことが可能であることが分かりました。そのため、地域の漁業者の間で、資源管理を行う気運が盛り上がり、平成21年に「風間浦村きあんこう資源管理協議会」が発足し、(1)2kg未満の小型魚の再放流、(2)産卵親魚の保護のための自主的な禁漁期間の設定、(3)鍋料理向けの需要が高まる冬場への操業期間の移行などに取り組みました。この結果、単価の高い大型魚の漁獲割合が増加し、平成17年に5,700万円だったキアンコウの水揚げ金額が、平成21年には1億2,300万円にまで増加しました。これらの動きを受け、村ではキアンコウを地域資源として活用し、村の活性化を図ろうと、平成22年に漁業者、観光業者等からなる「鮟鱇まつり実行委員会」を設立しました。「下北ゆかい村鮟鱇まつり」の開催や加工品の開発など、キアンコウ資源の有効利用を進めながら、ブランド化に向けて取り組んでいます。
 

コラム:魚を育てる森づくり

ポスター「国際森林年」
漁業者の間では、古くから海の近くの森が魚を集めることが知られており、神社を設けて立ち入りを制限したり、藩が留山として伐採を禁じるなど、海の近くの森の保全を図ってきました。現在でも、森林法に基づく魚つき保安林として全国で5.8万haが指定され、伐採の制限などの保護措置が講じられています。さらに、近年では、磯焼けなど沿岸域の環境問題が顕在化するなかで、山の栄養塩が川を通じて海にもたらされ、魚の生育をもたらすという考えが広まり、漁業関係者の間では川の上流部に植林を行う取組が盛んに行われるようになりました。北海道の各漁協女性部では、「100年かけて100年前の自然の浜を」をキャッチフレーズに、昭和63年より「お魚殖やす植樹運動」を開始し、都市住民の参加を得ながら、これまで90万本以上の植林を行っています。

平成23年は「国際森林年」です。これを契機に、水産資源を育てる森と川の役割や漁業関係者による植林の意義について、市民の理解が一層進むことが期待されます。
 

(むすび:我が国周辺水域の水産資源の持続的利用のために)

海流や地形の条件に恵まれた世界有数の豊かな海に囲まれ、森や川や湖にも恵まれた日本人は、古来より地域や季節に応じて多種多様な水産資源を漁獲し、また、水産物を美味しく食べるための様々な調理法や魚食文化を発展させてきました。

このような歴史を有する日本人にとって、水産物は、食生活上重要な地位を占めており、日本人は動物性たんぱく質摂取量の約4割を魚介類から摂取しています。水産物は、栄養バランスに優れた日本型食生活の重要な構成要素として、世界に誇る日本人の長寿を支えています。

水産物は多くが国際取引の対象となっており、現在、我が国は、食用に供給される水産物の4割を輸入していますが、水産物需要の世界的な増加が見込まれるなか、今後、我が国周辺の水産資源を保全し、持続的かつ有効に利用していくことが、ますます重要になってくるものと考えられます。

我が国周辺水域の水産資源の適切な管理とその持続的利用は、漁業者だけではなく、それを取扱う加工・流通業者や、水産物を食する消費者にも関係する問題です。食料安全保障の観点からも、国民全体で取り組むべき課題です。

我が国の漁業には、漁獲対象魚種や漁業種類が多種多様であるという特徴があります。このため、我が国の水産資源管理では、公的規制とあわせ、漁業者の知識と経験を活かした自主的な取組が重視されています。このような我が国の水産資源管理は、「資源管理型漁業」を旗印として推進されてきました。この言葉は、各国が排他的経済水域を設定し、200海里元年といわれた昭和52年に初めて提唱されました。当時、世界で操業していた日本漁船の漁場が失われたことから、我が国周辺水域の水産資源を適切に管理することが、今後の漁業のあるべき姿であるという考えがその背景にありました。以来、30年以上にわたり、全国各地の漁業者の創意工夫による資源管理の取組が進められてきましたが、これらの取組は、概して漁業関係者の間にとどまっています。消費者や加工・流通業者と連携した活動は、第4節で紹介した事例のように各地で生まれてきているものの、まだ拡大の余地が多くあります。

水産資源の持続的利用を国民全体で支えていくといった段階にまで発展させるため、下の図のように、それぞれの立場で実行可能なことに連携しつつ取り組んでいくことが重要です。

図1-4-6 関係者による取組の例

例えば、(1)漁業者・漁業団体は、資源管理の取組について積極的に情報発信することで、流通業者や消費者の理解を促進する、(2)流通業者は、適切に資源管理された水産物について表示や説明を加え、積極的に販売する、(3)消費者は、このような水産物を積極的に購入することで漁業者の資源管理を応援する、といったように、生産、流通、消費が連携することで資源管理はより強固なものとなります。

序節で紹介しているように、水産資源に関する国民の関心が高まってきています。この関心を具体的な行動につなげるため、まずは、漁業者・漁業団体、加工・流通業者、行政・研究機関が協力し、消費者への情報発信・普及啓発に取り組み、連携の輪を拡げていくことが重要ではないでしょうか。

お問い合わせ先

漁政部企画課
担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-3502-8415
FAX:03-3501-5097

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