English

このサイトの使い方

サイトマップ

ホーム > 水産白書 > 平成25年度 水産白書 全文 > 平成25年度 水産の動向 > 第1部 平成25年度 水産の動向 > 第Ⅰ章 特集 養殖業の持続的発展〜 > 第2節 養殖生産をめぐる課題 > (1)養殖業の経営


ここから本文です。

(1)養殖業の経営


(養殖水産物の価格動向の特徴)

養殖による生産が約6割を占めるブリ類について過去10年間の生産量と単価の動向をみると、養殖ブリは生産量が増加すると単価が下落する傾向にあります。また天然ブリの生産量は増加傾向にありますが単価は一貫して下落傾向にあります。特に平成元(1989)年以降、養殖ブリの年平均単価が天然ブリを大きく上回る状態が続いています。この価格差は、安定した仕入れができる養殖ブリは主に刺身用商材として扱われ、仕入れが不安定な天然ブリは主に加熱用商材として扱われてきたほか、天然ブリには水分が多いため商品価値が劣る小型魚の割合が大きいこと等によるものと考えられます。このため、近年まで養殖ブリと天然ブリは独立した値動きを示し、天然ブリの豊漁は天然ブリの単価に対してのみ影響しています(図Ⅰ−2−1、図Ⅰ−2−2)。

養殖による生産が8割前後を占めるマダイについて過去10年間の生産量と単価の動向をみると、養殖マダイは養殖ブリと同様に生産量が増加すると単価が下落する傾向にあります。一方、天然マダイの生産量は横ばい傾向にあるものの、単価は一貫して下落傾向にあります。その結果、かつては養殖マダイの倍の単価であった天然マダイの単価は、近年では養殖マダイと差が無くなっています。これは、養殖マダイと天然マダイの市場が重なっており、安価で供給量が多い養殖マダイが価格の基準となったためと考えられます。

養殖による生産がほぼ100%を占めるホタテガイ(*1)、カキ類及びノリ類では、養殖によるものの価格動向が全体の価格動向を決めています。ホタテガイ及びカキ類について生産量と単価の動向をみると、近年では生産量の増減にかかわらず100円/㎏台で安定的に推移しています。これは、近年ではどちらも冷凍品等への加工向けが増え、保存が可能となったためと考えられます。一方、ノリ類では生産量が減少傾向にあるものの、単価も同様に下落する傾向を示しています。これは、全般にノリ需要が高級ノリを中心に減少しているためと考えられます。

*1 オホーツク海沿岸等における地まき式によるホタテガイ生産を含む。

図1-2-1 ブリ類・マダイ生産量・額に占める天然・養殖の割合(平成24(2012)年)


(養殖対象種ごとに異なる養殖業の経営状況)

魚類養殖と貝類・藻類養殖ではえさ代の有無等により経営の状況が大きく異なります。さらに、貝類・藻類養殖においても、ノリ養殖で使われるノリ乾燥機のように高額な機械が必要なものや、カキ養殖のように殻を外す作業の人件費がかかるなど、養殖対象種によって経営状況が異なります。

ここでは、代表的な業種として、魚類養殖業ではブリ類養殖業及びマダイ養殖業、貝類養殖業ではホタテガイ養殖業(垂下式)、藻類養殖業ではノリ類養殖業について、それぞれ経営状況をみていきます。

(ブリ類養殖業の経営状況とコスト構造)

ブリ類養殖業(個人経営体)は平成20(2008)年以降赤字経営が続いており、平成24(2012)年の漁労所得は671万円の赤字となっています(表Ⅰ−2−1)。会社経営体は各年の差が大きいものの、平成24(2012)年度は2,342万円の赤字となっています。

魚類養殖業は種苗に餌を与え、成長させて高く売ることを目的とした産業です。このためブリ類養殖業の経営はコスト(漁労支出)に占めるえさ代及び種苗代の割合が大きく、個人経営体では概ね8割、会社経営体でも7割以上を占める状況が続いています。さらに、えさ代及び種苗代がコストに占める割合が最も低かった平成21(2009)年(度)と最も高かった平成24(2012)年(度)を比べると、個人経営体で11ポイント、会社経営体で20ポイント上昇しており、特にえさ代の上昇が経営を圧迫している状況にあります。漁労収入に対するえさ代の割合も最近数年は上昇傾向にあり、これらの価格上昇分が販売価格に反映できていない状況にあります。

表1-2-1 ブリ類養殖業の経営状況の推移

中央卸売市場における養殖ブリの入荷量及び単価の状況をみると、全体としては入荷量が減少する夏に単価が上昇し、入荷量が増加する冬に単価が低下する動きがみられます。このような中、前年及び前々年より夏の入荷量が多かった平成23(2011)年では、夏の単価上昇がみられず、前年冬の安い時期と同じ800円/㎏の水準にとどまり、翌冬に入荷量が増加するとそのまま単価が低下しました。さらに平成24(2012)年夏の入荷量は前年夏をやや上回る水準にとどまり、単価の上昇は弱く、前年を下回る水準までしか上昇しませんでした。一方、平成25(2013)年の夏は前年より入荷量が減少し、単価も平成22(2010)年の水準まで回復しました。このように、市場における養殖ブリの単価は入荷量との間で相関関係がみられます(図Ⅰ−2−3)。


また、養殖ブリ類の種苗の量と養殖ブリ類の単価の関係をみると、養殖ブリの単価は2年前にブリ類養殖業者が養殖し始めた種苗の総量と関係がみられ、単価が安い年の2年前は種苗を多く養殖し始めた傾向にあります。これは、ブリ類養殖では育成期間が概ね2年間であるため種苗を多く導入した年から2年後の生産量が多くなり、その結果価格が低迷するものと考えられます。このためブリ類養殖の経営を計画的に行うに当たっては2年後の需要を見据えて種苗の導入量を検討することが重要となっています(図Ⅰ−2−4)。

図1-2-4 ブリ類養殖における養殖し始めた種苗の総量と2年後の単価の関係

(マダイ養殖業の経営状況とコスト構造)

マダイ養殖業(個人経営体)は、平成23(2011)年及び平成24(2012)年は黒字経営となっており、平成24(2012)年の漁労所得は1,088万円の黒字となっています(表Ⅰ−2−2)。会社経営体においても、平成23(2011)年度及び平成24(2012)年度は黒字経営であり、平成24(2012)年度の漁労利益は244万円の黒字となっています。

コスト(漁労支出)に占めるえさ代及び種苗代の割合はブリ類と同様に大きく、その割合は平成18(2006)年(度)以降では約7割かそれ以上の水準となっています。個人経営体ではえさ代及び種苗代が上昇傾向にありますが、会社経営体では平成20(2008)年度をピークに低下傾向にあり、会社経営体では養殖マダイの生産量を減らしている傾向がみてとれます。

過去5年間のマダイ養殖業の経営状況は、平成20(2008)年(度)から平成22(2010)年(度)までが赤字、平成23(2011)年(度)以降が黒字経営となっています。ここで、中央卸売市場における養殖マダイの入荷量及び単価の状況をみると、平成22(2010)年春頃までは毎月概ね600トン入荷があり、単価は700円/㎏を下回る水準で推移してきました。しかし、平成22(2010)年夏以降は毎月概ね500トンを下回る入荷量となり、単価は800円/㎏を上回る水準となっています(図Ⅰ−2−5)。この単価の上昇により、平成23(2011)年(度)及び平成24(2012)年(度)の養殖マダイ経営は黒字となっていると考えられます。これにより、漁労収入に対するえさ代の割合も最近数年では低い水準になっています。

表1-2-2 マダイ養殖業の経営状況の推移


(近年のブリ類養殖業とマダイ養殖業の経営上の相違点)

近年では、ブリ類養殖業の経営は赤字が続いているのに対し、マダイ養殖業の経営は平成23(2011)年(度)及び平成24(2012)年(度)の両年で黒字になるなど、両者の経営状況は対照的となっています(表Ⅰ−2−1、表Ⅰ−2−2)。

両者の相違点としては、養殖ブリの単価が概ね低迷しているのに対し、養殖マダイの単価は平成22(2010)年以降比較的高値で推移しており、一方で入荷量は養殖ブリは増加傾向、養殖マダイは減少傾向にあることがあげられます(図Ⅰ−2−3、図Ⅰ−2−5)。

両魚種とも、そのコスト構造は、えさ代及び種苗代が大部分を占めており、構造的に利幅が小さく、単価の低下が直ちにコスト割れにつながりやすくなっています。このため、生産量が多いため単価の低下が生じているブリ類養殖業では赤字経営が続き、生産量が減少し単価が上昇したマダイ養殖業では黒字経営に転じたものと考えられます。

(ノルウェーのタイセイヨウサケ養殖業におけるコスト構造)

世界的商材になっているノルウェーのタイセイヨウサケ養殖では、えさ代及び種苗代がコストに占める割合は66%と我が国の養殖業に比べ低くなっています。餌となる魚粉の供給は我が国と同様にペルー等からの輸入に頼っており、価格も両国間で大きな差がみられませんが、ノルウェーのタイセイヨウサケ養殖では増肉係数が1.2と日本の養殖に比べ非常に良く、このことがえさ代に反映されていると考えられます(表Ⅰ−2−3)。

さらにノルウェーでは、1970年代からタイセイヨウサケの育種研究を行い、成長速度が在来種の2倍で、餌の摂取量が25%少ない品種を作出し、平成4(1992)年から商業養殖用に供給しています。

また、種苗の育成期間中に光の当て方を調節することにより、海中に活け入れできる大きさまで成長する期間を調整しています。これにより、1年中冷涼な環境の中、いつでも海中に活け入れできるため、一定の大きさのタイセイヨウサケを周年出荷したり、ちょうど需要期に収穫できる時期に合わせた活け入れを行うなど、計画的な経営がしやすい飼育環境が整えられています。

(我が国の魚類養殖業とノルウェーのタイセイヨウサケ養殖業の比較)

我が国の主要養殖魚種であるブリ、マダイ及びギンザケとノルウェーの主要養殖魚種であるタイセイヨウサケを比べると、タイセイヨウサケは増肉係数が高く効率的な養殖が可能であるほか、種苗を生簀(いけす)に入れてから出荷サイズになるまでの期間が短く、また人工種苗である強みを活かし、産卵時期を人為的にコントロールすることで年中いつでも種苗の活け込みを可能にしています。

活け込みから出荷までの時期が短いことで給餌(きゅうじ)量を減らせるばかりでなく、成長中に斃死(へいし)するリスクを減らし、出荷時の需要予測がより容易になるメリットがあると考えられます。

また、活け込み時期が特定の時期に偏っていると、出荷時期が集中し価格の下落を招くおそれがありますが、周年での種苗の活け込みが可能であるため生簀(いけす)ごとに出荷時期に合わせて必要な量の種苗を活け込み、出荷サイズに育った魚を生簀(いけす)ごとに順次出荷できるので、価格の維持につながる利点があります(表Ⅰ−2−3)。

表1-2-3 ブリ、マダイ、ギンザケ、ノルウェーのタイセイヨウサケの比較


(魚粉価格の動向とその対策)

養殖用の配合飼料の主原料である魚粉は大半を輸入に頼っていますが、魚粉は魚類養殖だけでなく養豚・養鶏用等の畜産飼料としても利用されており、魚類養殖や畜産業が世界的に盛んになっている中、魚粉の需要は世界的に増大し、価格も上昇を続けています。近年の魚粉輸入価格の動向をみると、平成16(2004)年に平均76円/㎏であったものが平成25(2013)年には154円/㎏と約2倍になり、過去最高の水準に達しています(図Ⅰ−2−7)。

このため、国では平成22(2010)年度から漁業者と国が一定の割合であらかじめ積立てを行い、配合飼料価格が一定以上上昇した際にその積立金から補塡金を交付する「漁業経営セーフティーネット構築事業」を実施しています。平成26(2014)年3月末で加入率は64%、加入件数は749件となっており、配合飼料価格が高騰した平成25(2013)年に購入した配合飼料1トン当たり4~6月期3,550円、7~9月期11,610円、10~12月期11,560円をそれぞれ補塡しました。また、本事業では養殖業者の負担に対応した補塡となるよう補塡基準を見直すなど情勢に応じた柔軟な対応をとっています。

魚粉は需要の増大だけでなく、資源変動の大きいカタクチイワシ等の多獲性浮魚類を原料としているため資源変動による生産量の増減が激しく、価格の動向を一層不安定なものとしています(図Ⅰ−2−8)。

このため、飼料メーカーや研究機関では、国の支援の下、魚粉を植物たんぱく原料等で代替した飼料の開発等を進めています。


事例:魚粉を使わない養殖用配合飼料の開発


飼育期間中のブリの体重増加
養殖用配合飼料の主要原料である魚粉の価格が世界的に高騰し、我が国の養殖経営を大きく圧迫しています。したがって、魚粉を使用しない配合飼料の開発は喫緊(きっきん)の課題です。(独)水産総合研究センターでは、大学、県及び飼料会社との共同研究により、濃縮大豆タンパク、ポークミール(*1)又はフェザーミール(*2)に嗜好(しこう)性物質等を混合することにより、魚粉を使わない配合飼料を試作して、中間サイズのブリに給餌(きゅうじ)して飼育試験を行ったところ、魚粉を主体とする配合飼料とほとんど遜色なく成長することを実証しました。

*1 ラード精製後の豚肉かす。
*2 食鳥を加工する際に副産物として得られる羽毛を高温高圧下で処理し、乾燥したもの。
 

(ホタテガイ養殖業(垂下式)の経営状況とコスト構造)

貝類養殖業は基本的に給餌(きゅうじ)する必要がなく種苗代も非常に安価であることから、経営状況は魚類養殖業と大きく異なります。

ホタテガイ養殖(垂下式)では、ある程度貝が大きくなった際に行われるネットから耳づりに移す作業の機械化が難しいこと、また貝殻を外す作業も機械化されていないことから、雇用労賃がコスト(漁労支出)の22%と大きな部分を占めています(平成24(2012)年)。また、貝を海中深くに出し入れするための機械が必要となることから、漁船を含めた機械に要する費用(修繕費及び減価償却費)も同様にコストの20%(平成24(2012)年)と大きな部分を占めており、近年ではこれらのコストは概ね4割前後で推移しています(表Ⅰ−2−4)。

また、漁労収入が伸びない中で雇用労賃、修繕費及び減価償却費が増加しており、その結果、ホタテガイ養殖業(垂下式)の漁労所得は黒字が続いているものの、平成24(2012)年は120万円と平成19(2007)年の498万円に比べ大きく減少しています。

表1-2-4 ホタテガイ養殖業のコスト構造(個人経営体)

(ノリ類養殖業の経営状況とコスト構造)

ノリ類養殖業も基本的に給餌(きゅうじ)する必要がなく種苗代も非常に安価です。

我が国のノリ類養殖業は養殖業者が収穫したノリをある程度まで加工して販売しているため、加工に必要な大型乾燥機等の機器を運転するための油費、修繕費及び減価償却費がコスト(漁労支出)の大きな部分を占め、近年ではこれらのコストは概ね4割前後で推移しています。一方、機械化が進んでいるため、雇用労賃はコストの8%(平成24(2012)年)にとどまっています。また、漁労支出のうち修繕費が増加傾向にあり、既存の機械を修理しながら長く使う傾向になっていることが示されています(表Ⅰ−2−5)。

その結果、ノリ類養殖業の漁労所得は黒字経営が続いており、平成24(2012)年は684万円と過去5年間では最も高くなっています(表Ⅰ−2−5)。

一般に藻類養殖では貝類養殖に比べ従業員一人当たりの設備投資額が2倍から3倍となっており、資本集約型の産業構造になっています。

表1-2-5 ノリ類養殖業のコスト構造(個人経営体)

(養殖業の収入安定対策)

養殖生産物の価格が不安定である一方でコストが高止まりしていることから、無理な過密養殖等が行われ、その結果漁場環境の悪化や価格の更なる下落を招き養殖業がたち行かなくなる恐れがあります。このため、国では養殖漁場の適切な管理と漁業経営の安定を両立するため、「持続的養殖生産確保法」に基づき養殖生産量を従来の水準から5%以上減らす取組等により、漁場の環境負荷を軽減し、養殖漁場の改善に計画的に取り組む養殖業者を対象として、漁業共済制度を活用した資源管理・収入安定対策を実施しています(図Ⅰ−2−9)。他方、養殖漁場の改善に取り組まない養殖業者は、環境面や価格面で安定的な養殖経営を目指していないと考えられることから、資源管理・収入安定対策の対象にはなりません。

この仕組みにおいては、養殖数量の5%以上等の削減等を行う漁業者と国が1対3の割合であらかじめ積立てを行い、一定以上の減収があった場合、基準となる生産額の90%から80%の間の10%を限度に積立金から減収の補塡がなされます。また、平成26(2014)年度から、漁場改善の取組みを一層促進するため、養殖数量の平均10%の削減を行う場合に基準となる生産額の95%から80%の間の15%を限度に支援を行う仕組みを導入しています。

平成24(2012)年度における養殖業への積立金の払戻金額の実績は、有明海等のノリ養殖業に30億円、鹿児島県・愛媛県等のブリ養殖業に18億円等、総額58億円となっています。

図1-2-9 資源管理・収入安定対策の概要

お問い合わせ先

漁政部企画課
担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344
FAX:03-3501-5097

ページトップへ


アクセス・地図