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水産庁

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(1)「国連海洋法条約」に基づく国際的な漁業管理の枠組み


(「国連海洋法条約」による海洋秩序)

今日の国際的な海洋秩序の礎を成しているのは、「国連海洋法条約」です。「国連海洋法条約」は海の憲法とも呼ばれ、領海から公海、深海底に至る海洋のあらゆる領域における航行、海底資源開発、科学調査、漁業等の様々な人間活動について規定する極めて包括的なものです。昭和57(1982)年に採択され、平成6(1994)年に発効した本条約は、これまでに我が国を含む168か国が締結しており、海洋における普遍的なルールとなっています。

漁業に関しても、「国連海洋法条約」が基本的なルールを提供しています。EEZ内の水産資源については、沿岸国がその開発、保存及び管理について主権的権利を有しており、入手可能な最良の科学的証拠に基づき、自国のEEZ内の資源を適切に管理します。ただし、二つ以上の国のEEZ又はある国のEEZと公海水域にまたがって分布する資源(以下「ストラドリング魚類資源」といいます。)については、関係国がその保存等のための措置について合意するよう努力することとされています。マグロ類等の高度回遊性魚類の資源については、EEZの内外を問わず、関係国が保存・利用のため国際機関等を通じて協力することとされています。公海では全ての国が漁獲の自由を享受しますが、公海における資源の保存・管理に協力すること等が条件として付されています。また、公海上の漁船に対し管轄権を行使するのは、その漁船の船籍国(旗国)です。


(「国連公海漁業協定」による資源管理の枠組み)

「国連海洋法条約」におけるストラドリング魚類資源及び高度回遊性魚類に関する規定については、「分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する魚類資源(ストラドリング魚類資源)及び高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する1982年12月10日の海洋法に関する国際連合条約の規定の実施のための協定(国連公海漁業協定)」が、更に実施のための詳細を規定しています。平成13(2001)年に発効した「国連公海漁業協定」は、これまでに我が国を含む85か国が締結し、公海における漁業や国際的に利用される水産資源の管理についての基礎的な枠組みとなっています。

「国連公海漁業協定」は、地域漁業管理機関の加盟国又はその保存管理措置の適用に合意する国のみに公海水域におけるストラドリング魚類及び高度回遊性魚類の漁獲を認めています。このことにより、国際的に利用される資源の保存・管理においては、地域漁業管理機関が中心的な役割を果たすことが明確に示されました。また、沿岸国がEEZ内において実施する保存管理措置と、地域漁業管理機関等が公海において導入する保存管理措置との間で一貫性を保つため、沿岸国と公海における漁業国が、地域漁業管理機関等を通じて協力することも定められています。

「国連公海漁業協定」は、こうした国際的な水産資源管理の基本的枠組みを提示すると同時に、情報が不十分な場合であっても、入手可能な最良の科学的情報に基づいた保存管理措置を予防的にとる「予防的アプローチ」、漁獲対象となる種と同じ生態系に属する他の生物種についても考慮する「生態系アプローチ」等のコンセプトを漁業の管理における基本的な考え方として取り込んでいます。


(IUU漁業問題と「違法漁業防止寄港国措置協定」)

国際的な資源管理に向けた努力が払われる一方で、IUU(Illegal, Unreported and Unregulated:違法、無報告及び無規制)漁業が、各国や地域漁業管理機関によるこうした努力に対して深刻な脅威を与え続けています。

FAOが平成13(2001)年に策定した「違法な漁業、報告されていない漁業及び規制されていない漁業を防止し、抑止し、及び排除するための国際行動計画」では、無許可操業、国内法や地域漁業管理機関の保存管理措置に反する操業、報告されていない又は虚偽報告された操業、無国籍の漁船や地域漁業管理機関の非加盟国の漁船による操業など、各国の国内法や国際的な操業ルールに従わない無秩序な漁業活動をIUU漁業としています。

IUU漁業は、過剰漁獲を引き起こし、水産資源に直接的な影響を与えるだけではありません。漁業から得られる科学データを歪曲(わいきょく)して資源評価の不確実性を増大させ、適切な資源管理を阻害するおそれがあります。また、資源管理措置を遵守するための様々なコストを負担しないで操業を行うことから、公正な競争を害し、ルールに従って操業する漁業者に経済的な損失を与えます。このため、抑制・廃絶が国際的な課題となっています。

IUU漁業の撲滅に向け、国際機関や各国による様々な取組が行われてきました。例えば、各地域漁業管理機関においては、正規の漁業許可を受けた漁船等のリスト化(ポジティブリスト)と並んで、IUU漁業への関与が確認された漁船や運搬船等をリスト化する措置(ネガティブリスト)が導入されており、さらに、ネガティブリストに掲載された船舶の一部に対して、国際刑事警察機構(ICPO)が各国の捜査機関に注意を促す「紫手配書」を出すなど、IUU漁業に携わる船舶に対する国際的な取締体制が整備されてきています。また、いくつかの地域漁業管理機関においては、漁獲証明制度(*1)によりIUU漁業の漁獲物の国際的な流通を防止しています。さらに、二国間においても、日露間で平成26(2014)年にロシアで密漁されたカニが我が国に密輸出されることを防止する二国間協定が発効したほか、我が国はEU、米国のそれぞれと共同声明を発表し、IUU漁業対策の推進に向けた協力を確認するなど、IUU漁業の抑制・廃絶を目指した取組を行っています。

こうした中、平成28(2016)年6月には、「違法な漁業、報告されていない漁業及び規制されていない漁業を防止し、抑止し、及び排除するための寄港国の措置に関する協定(違法漁業防止寄港国措置協定)」が発効しました。「違法漁業防止寄港国措置協定」は、締約国の港に寄港しようとする外国漁船や運搬船の情報を寄港国の当局が確認し、IUU船の寄港を原則的に禁止すること等を旨とするものです。IUU船といえども、漁獲物を陸揚げし、また、燃料や食料等を補給するためにどこかの港に寄港しなければ、操業を続けることができません。このため、寄港地において取締りを行えば、広い洋上でIUU漁業に従事している船を探すより、効率的・効果的な取締りが可能です。IUU漁業対策を世界的に推進する上で、「違法漁業防止寄港国措置協定」が果たす役割には大きな期待が集まっています。我が国としても、早期に締結すべく、平成29(2017)年2月、締結について国会の承認を求めるため、当該協定を国会に提出しました。


*1  漁獲物の漁獲段階から流通を通じて、関連する情報を漁獲証明書に記載し、その内容を関係国の政府が証明することで、その漁獲物が地域漁業管理機関の保存管理措置を遵守して漁獲されたものであることを確認する制度。

事例:南極海のIUU漁業

南極海において日本漁船が回収したIUU漁船の底刺し網漁具と漁獲されていたメロ
南極海において日本漁船が回収した
IUU漁船の底刺し網漁具と
漁獲されていたメロ
(当該海域での底刺し網漁具の
使用は禁止)

南極を取り巻く南緯40度以南の海域は、「吠(ほ)える40度、狂う50度、叫ぶ60度」と称されるほど風や波が強く厳しい海域ですが、かつて、この海域でもIUU漁業が横行していました。南極海には、脂のよく乗った大型の白身魚であるメロが生息しています。南極海における漁業は、南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR(カムラー))により国際的に管理されていますが、1990年代、CCAMLRの対象水域では、IUU漁船によるメロの漁獲量が正規の許可を受けた漁船による漁獲量の6倍以上に上っていたと推測されています。

こうした状況を踏まえ、CCAMLRはIUU漁業対策を強化してきました。例えば、メロは主にEUや米国等の先進国市場で高価で取引されることから、CCAMLRではメロの漁獲証明制度を導入し、違法に漁獲されたメロの国際流通を防止しています。また、近隣各国の取締船だけでなく、正規の許可を受けて操業する漁船がIUU活動の疑われる漁船を見かけた際にもその情報をCCAMLRに通報し、広大な南極海におけるIUU漁船の活動の検知に努めています。IUU漁船の情報はリスト化され、寄港国における取締り活動に役立てられています。

関係国による様々な努力もあり、南極海におけるIUU漁業の規模は大きく縮小しているものとみられていますが、依然として、CCAMLRの対象水域ではIUU漁船の活動が視認され続けています。正規のメロ漁船は、メロの資源と南極海の海洋環境保全のためのCCAMLRによる厳格な措置に従って操業を行っています。こうした正規の漁業者による資源管理の努力をないがしろにするIUU漁業に対しては、引き続き、厳しい対処が求められます。

 

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