このページの本文へ移動

水産庁

メニュー

(3)沖合域におけるICTの活用

沖合域においては、1980年代から衛星情報の利用が始まり、近年は漁場予測システムに加え漁労活動へのICTの活用が始まっています。沖合域の漁場で操業する比較的規模の大きな漁船では国際競争力の確保が課題であり、ICTを活用した漁場予測の精度向上による燃油使用量の節約や生産性の高い漁具の導入などによって、漁業経営の安定化が図られることが期待されます。

事例遠洋かつお・まぐろ漁業でのICTを活用したビッグデータ化の取組

漁船上で取得される海洋環境や漁獲物に関するデータは、リアルタイムで電子的に記録や通信がなされておらず、有効に活用されていないのが現状です。このため、(研)水産研究・教育機構では、これらのデータを集約して陸上に伝達し、分析すること(ビッグデータ化)により、海況予測や資源評価、魚群の来遊予測等様々な分野に活用することを目指して、以下のような技術開発を進めています。

<1>漁船上のデータを集約して陸上のサーバーに送信するシステムの試行を行っています。

<2>漁船上のデータの中で、魚種別漁獲量データは最も基本で重要なデータですが、漁船上では漁獲量も魚種組成も、漁業者が目視で推測しているのが通常です。より正確に推定するため、船上にベルトコンベアを設置し、その上を通過する魚を撮影し、画像解析と機械学習により、個体数・魚種・サイズをリアルタイムで把握する試験を行っています。

<3>カツオ自動釣り機の実用化につなげていくため、乗組員の釣獲動作を3Dモーションセンサーにより測定し、上級者と初心者の違いなどを数値化しています。将来的には、上級者の動きを自動釣り機に取り込んで釣獲成績をアップさせることを視野に入れています。

<4>かつお漁では、最初に魚を狙う海鳥をレーダーで探索し、その後海鳥がいる海域まで船を移動させて魚群を探しています。このため、カメラを搭載したドローンを海鳥のいる海域に向かわせて魚群の有無を確認する技術の検討を進めており、実現すれば操業の省力化、船の燃料節約、漁獲量の増加などが期待できます。

<5>マグロの脂肪含量を瞬時に測定するための脂肪測定器を開発しました。こうした品質情報を電子化して流通業者に提供することによって、魚価の向上につながることが期待されます。

ベルトコンベアを通過する魚を撮影して画像解析による自動計測を行う写真
乗組員の釣獲動作を3Dモーションキャプチャして上級者と初中級者を比較している写真

事例北西太平洋のアカイカ漁場予測システム

夏季における北太平洋日付変更線付近のアカイカ漁は、漁場が遠方かつ広域であることに加え、漁船隻数の減少により効率的な漁場探索が難しくなっています。

このため、漁海況情報を基にアカイカの好適な生息域を推定する漁場予測モデルを開発し、予測結果を漁船に配信するとともに、現場の漁獲状況をリアルタイムに漁船から研究機関に配信することにより漁場予測のずれやその原因を操業期間中に把握することでアカイカ漁の推奨海域を漁船にフィードバックするアカイカ漁場予測システムが試行されています。さらに、報告された漁獲状況を人工知能技術を活かして予測の改良に役立てる研究開発も進んでいます。

これらにより、漁場探査の効率化や燃油削減に繋がることが期待されています。

図:漁業情報の双方向通信システム

アカイカ漁船からの漁海況情報(操業位置、漁獲量)をリアルタイムで収集し、アカイカウェブサイトから予測情報(水温・塩分・流速予測をもとにしたアカイカ漁場予測)を提供するシステムの図

図:水深150m水温分布図と漁場予測図(リアルタイムで配信)

水深150mの水温分布図と漁場予測図の画面を表示した図。東日本の太平洋側の予測が表示されている。