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水産庁

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(4)安全な漁業労働環境の確保

(漁船の事故及び海中転落の状況)

平成29(2017)年の漁船の事故隻数は543隻、漁船の事故に伴う死者・行方不明者数は45人となりました(図2-2-18)。漁船の事故は、全ての船舶事故隻数の約3割、船舶事故に伴う死者・行方不明者数の約5割を占めています。漁船の事故の種類としては衝突が最も多く、その原因は、見張り不十分、操船不適切、居眠り運転といった人為的要因が多くを占めています。

図2-2-18 漁船の事故隻数及び事故に伴う死者・行方不明者数の推移

漁船の事故隻数,死者・行方不明者数の年次推移を示した図。いずれも減少傾向にあるが、平成27年以降の死者・行方不明者数は増加している。

漁船は、進路や速度を大きく変化させながら漁場を探索したり、停船して漁労作業を行ったりと、商船とは大きく異なる航行をします。また、操業中には見張りが不十分となることもあり、さらに、漁船の約9割を占める5トン未満の小型漁船は大型船からの視認性が悪いなど、事故のリスクを抱えています。

船上で行われる漁労作業では、不慮の海中転落*1も発生しています。平成29(2017)年における漁船からの海中転落者は87人となり、そのうち56人が死亡又は行方不明となっています(図2-2-19)。

  1. ここでいう海中転落は、衝突、転覆等の船舶事故以外の理由により発生した船舶の乗船者の海中転落をいう。

図2-2-19 海中転落者数及び海中転落による死者・行方不明者数の推移

海中転落者数,死者・行方不明者数の年次推移を示した図。いずれも増減を繰り返しているが、平成27年以降は増加傾向にある。

また、船舶事故や海中転落以外にも、漁船の甲板上では、機械への巻き込みや転倒等の思わぬ事故が発生しがちであり、漁業における災害発生率は、陸上における全産業の平均の6倍と、高い水準が続いています(表2-2-6)。

表2-2-6 船員及び陸上労働者災害発生率(単位:千人率)

 

26年度

(2014)

27

(2015)

28

(2016)

船員(全船種)

9.7

8.7

8.5

 

漁船

13.5

11.9

12.8

一般船舶

7.3

7.0

6.5

陸上労働者(全産業)

2.3

2.2

2.2

 

林業

26.9

27.0

31.2

鉱業

8.1

7.0

9.2

運輸業(陸上貨物)

8.4

8.2

8.2

建設業

5.0

4.6

4.5

(漁業労働環境の改善に向けた取組)

漁業労働における安全性の確保は、人命に関わる課題であるとともに、漁業に対する就労意欲にも影響します。これまでも、技術の向上等により漁船労働環境における安全性の確保が進められてきましたが、漁業労働にはなお、他産業と比べて多くの危険性が伴います。このため、引き続き、安全に関する技術の開発と普及を通して、より良い労働環境づくりを推進していくことが重要です。

このため、国では、全国で「漁業カイゼン講習会」を開催して漁業労働環境の改善や海難の未然防止に関する知識を持った「安全推進員」を養成し、漁業者自らが漁業労働の安全性を向上させる取組を支援しています。

また、海中転落時には、ライフジャケットの着用が生存に大きな役割を果たします。平成29(2017)年のデータでは、漁業者の海中転落時のライフジャケット着用者の生存率(82%)は、非着用者の生存率(38%)の約2.2倍です(図2-2-20)。しかしながら、「かさばって作業しづらい」、「着脱しにくい」、「夏場に暑い」、「引っかかったり巻き込まれたりするおそれがある」等の理由からライフジャケットを着用しない漁業者も依然として多く、海中転落時におけるライフジャケット着用率は約3割であり高いとは言い難い状況です。また、国土交通省は、小型船舶におけるライフジャケットの着用義務の範囲を拡大し、平成30(2018)年2月1日以降、原則、船室の外にいる全ての乗船者にライフジャケットの着用が義務付けられることとなりました。なお、着用義務に違反した場合、小型船舶であっても、船長(小型船舶操縦士免許の所有者)に違反点数が付与され違反点数が行政処分基準に達すると最大で6か月の免許停止(業務停止)となる場合があります。このため、国では、より着用しやすく動きやすいライフジャケットの開発を促進するとともに、引き続き着用率の向上に向けた周知啓発活動を行っていくこととしています。

図2-2-20 ライフジャケットの着用・非着用別の漁船からの海中転落者の生存率

ライフジャケット着用,非着用別の生存,死亡・行方不明者の割合を示した図。着用時は生存が81.7%、非着用時は生存が38.0%と差がついている。

近年、北朝鮮によるミサイル発射が過去に例を見ない頻度で行われており、我が国漁業者の安全に対する不安が生じています。水産庁では、漁業安全情報を漁業無線局等に発出して漁船に対する注意喚起を促すとともに、漁船の安否確認を実施しています。

陸上では、大容量の情報通信インフラの整備が進み、家族や友人等とのコミュニケーションの手段としてSNSなどが普及しています。一方、海上では、衛星通信が利用されていますが、海上需要の密度など陸上と異なる制約があるため、ブロードバンドの普及に関して、陸上と海上との格差(海上のデジタル・ディバイド)が広がっています。

このため、平成29(2017)年2月に海上ブロードバンド対応関係省庁連絡会議を設置し、船員・乗客が陸上と同じようにスマートフォンを利用できる環境を目指し、利用者である船舶サイドのニーズも踏まえた海上ブロードバンドの普及方策等を検討し、平成30(2018)年3月に課題の整理と今後の普及に向けた取組について報告書を取りまとめました。

コラム平成29(2017)年度 漁船の安全対策に関する優良な取組に対する表彰

毎年、漁船からの海中転落や衝突事故等により、多くの漁業者が命を落としており、このような事故を減らすため、安全対策の推進が求められています。

このため、水産庁では、漁船の安全対策に関する優良な取組を行っている漁業関係団体を表彰し、実践事例を積極的に広報することにより、漁業者の安全に関する意識の向上と取組の推進を促すため平成28(2016)年度より「漁船漁業の安全対策に関する優良な取組に対する表彰」を実施しています(表)。

平成29(2017)年度は、長年にわたり漁船事故に伴う死者・行方不明者及び漁船事故を伴わない海中転落による死者・行方不明者が発生していない宗谷漁業協同組合(北海道)(通算5年10か月)、いとう漁業協同組合(静岡県)(通算7年)、高砂たかさご漁業協同組合(兵庫県)(通算32年9か月)に対してその功績を称えブロンズ賞を授与しました。

表:賞種類と受賞要件

ブロンズ賞

ライフジャケット着用義務等漁業者の安全に関する取組を概ね3年以上継続し、かつ、漁船事故に伴う死者・行方不明者及び漁船事故を伴わない海中転落による死者・行方不明者が3年以上発生していない団体

シルバー賞

ブロンズ賞受賞後引き続き2年以上にわたり同様の取組を継続している団体

ゴールド賞

シルバー賞受賞後引き続き2年以上にわたり同様の取組を継続している団体