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水産庁

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(7)捕鯨をめぐる国際情勢

(IWCの状況)

国際捕鯨委員会(IWC)は、鯨類の適切な保存と捕鯨産業の秩序ある発展のために設立された国際機関であり、我が国は、魚類と同様、鯨類は最良の科学的知見に基づいて持続的に利用できる重要な食料資源であるとの考えの下、IWCの下で鯨類資源の持続的利用を目指しています。

しかしながら、IWCでは、長年にわたって、資源管理のための意思決定が何もできない機能不全の状態になっています。

このような状況の中、我が国は商業捕鯨モラトリアムを撤廃して持続的な商業捕鯨を再開するために必要な精度の高い科学的知見を得るため、南極海及び北西太平洋で鯨類科学調査を行ってきています。

コラムIWCを「資源管理機関」に戻すために

健全な資源管理機関として最も重要な機能は何でしょうか。それは、最良の科学的根拠に基づき、適時適切に水産資源の保存管理措置を決定できる意思決定機能です。IWCでは、鯨類の持続的利用を支持する国々と、いかなる商業捕鯨の再開にも反対する国々の間で対立が常態化し、鯨類の資源管理について何ら決定が出来ない異常な状態が続いています。

「鯨類資源の適切な保存と捕鯨産業の秩序ある発展」という国際捕鯨取締条約の目的が、立場の違いによる対立のために無実化しているIWCの現状は、「科学的根拠に基づく国際的な資源管理の推進」という我が国の基本的立場からも看過できるものではありません。

平成28(2016)年の前回IWC総会では、我が国が主導して、平成30(2018)年9月の次回IWC総会で結論を得るべく、鯨類に関する根本的な立場の違いを踏まえたIWCの「今後の道筋」の議論を行うことが合意されました。しかしながら、我が国が各国に、透明性のある形で「今後の道筋」を議論することを呼びかけてきたにもかかわらず、反捕鯨国は議論への参加すら拒んでいるのが現状です。このため、我が国は、平成30(2018)年9月に予定されているIWC総会に向け、引き続き「今後の道筋」の議論への参加を反捕鯨国を中心に、全ての関係国に働き掛けています。

図:IWC加盟国の推移

IWC加盟国(持続的利用支持国,反捕鯨国,欠席・投票権停止国)の年次推移を示した図。昭和23年にIWCがスタートし、昭和57年に商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)が採択されて加盟国が増加してきたが、近年は横ばいとなっている。

(鯨類科学調査をめぐる動き)

○新南極海鯨類科学調査計画(NEWREP-A)

クロミンククジラの捕獲枠算出のための生物学的及び生態学的情報の高精度化等を目的とする新南極海鯨類科学調査計画(NEWREP-A)を平成27(2015)年度から実施しています。

表2-3-1 新南極鯨類科学調査計画(NEWREP-A)の概要

(1)調査期間

平成27(2015)年度~2026年度

調査海域(南緯60度以南、経度0度~西経120度)を示した図

(2)調査目的

<1> RMP(改訂管理方式)を適用したクロミンククジラの捕獲枠算出のための生物学的及び生態学的情報の高精度化

<2> 生態系モデルの構築を通じた南極海生態系の構造及び動態の研究

(3)調査海域

南緯60度以南、経度0度~西経120度(右図参照)

(4)捕獲調査

・クロミンククジラ 年間333頭

(5)非致死的調査

  • バイオプシー(皮膚標本)採取
  • バイオプシー(皮膚標本)を用いた年齢査定・栄養状態把握
  • 衛星標識、データロガー

(6)餌生物(ナンキョクオキアミ)資源量調査

(7)妨害活動、悪天候等への緊急対応策の策定

(8)外部調査機関等との連携強化

○北西太平洋鯨類科学調査計画(NEWREP-NP)

日本沿岸域におけるミンククジラのより精緻せいちな捕獲枠の算出と、沖合域におけるイワシクジラの妥当な捕獲枠の算出を目的とする新たな計画である北西太平洋鯨類科学調査計画(NEWREP-NP)を、平成29(2017)年から実施しています。

表2-3-2 北西太平洋鯨類科学調査計画(NEWREP-NP)の概要

(1)調査期間

平成29(2017)年~2028年

北西太平洋を示した図

捕獲調査海域:水色の海域

非致死的調査海域:赤枠の海域
(ただし、我が国領海、EEZ及び公海のみ)

(2)調査目的

<1> 日本沿岸域におけるミンククジラのより精緻な捕獲枠算出M
(既にIWC科学委員会で算出済みの捕獲枠を精緻化)

<2> 沖合におけるイワシクジラの妥当な捕獲枠算出
(これまでIWC科学委員会では捕獲枠を算出していない)

(3)調査海域

北西太平洋(右図参照)

(4)捕獲頭数

  • ミンククジラ:47頭(網走沿岸域)、80頭(太平洋側沿岸域)、43頭(沖合域)
  • イワシクジラ:134頭(沖合域)

(5)非致死的調査手法の実行可能性・有用性の検証

  • バイオプシー(皮膚標本)採取
  • バイオプシー(皮膚標本)を用いた年齢査定棟
  • 衛星標識

(6)外部調査機関等との連携強化

(「商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律」の成立)

平成29(2017)年6月23日に、「商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律*1」が公布されました。

  1. 平成29(2017)年法律第76号

本法は、商業捕鯨の実施による水産業等の発展を図るとともに、海洋生物資源の持続的利用に寄与することを目的とし、鯨類科学調査をその達成のための手段として位置付けています。

この法律において、政府は、鯨類科学調査の基本方針の策定、財政上の補助、実施体制の整備に必要な措置、妨害行為への対応に対する支援等の施策を行うこととされています。

(反捕鯨団体による鯨類科学調査への妨害活動)

これまで、反捕鯨団体である「グリーンピース」及び「シー・シェパード」が、南極海で活動する我が国の鯨類科学調査船団の乗組員の生命を脅かすような危険な妨害行為を行ってきました。

関係府省庁が連携し、調査船団の妨害対策に努めた結果、平成28(2016)年度の調査において、調査船や乗組員の安全を脅かすような妨害行為はありませんでした。一般財団法人日本鯨類研究所等が「シー・シェパード米国」に提起していた妨害差止請求訴訟は、平成28(2016)年に和解が成立しました。この和解では、「シー・シェパード米国」による妨害活動が禁止されるとともに、他のシー・シェパード関係団体への調査妨害を目的とした資金提供が禁止されており、今回の調査の状況に鑑みても、妨害活動への抑止力として一定の効果があったと考えています。

平成29(2017)年8月には、シー・シェパードの創始者であるポール・ワトソンは、毎年行ってきた妨害行為を平成29(2017)年度の調査においては行わないとの声明を発出しましたが、我が国は引き続き状況を注視し、関係府省庁連携の下、十分な安全対策を講じて鯨類科学調査を実施します。

コラム鯨とともに生きる~地域の取組~

紀伊きい半島に位置する和歌山県の太地町たいじちょうは、古式捕鯨発祥の地といわれ、江戸時代初頭に組織的な捕鯨を発展させました。明治に入り古式捕鯨に代わって近代式捕鯨が発達してからも、小型捕鯨業の基地として栄えるだけでなく、南極海の母船式捕鯨業等に数多くの人材を輩出してきました。さらに、産業としての捕鯨は、捕鯨の歴史と文化を伝える有形・無形の文化を生み、脈々と受け継がれてきました。

このように捕鯨業や関連産業が町の一大産業であった太地町にとって、IWCにおいて昭和63(1988)年に、我が国も商業捕鯨モラトリアムを受け入れたことは大きな打撃であり、苦渋の末に、IWCの規制の対象外であるイルカなどの小型鯨類を対象とした漁業に活路を見出すこととなりました。反捕鯨団体の妨害活動に住民の生活が脅かされたこともありましたが、法令と科学的根拠に基づきいるか漁業を続けてきており、将来的に我が国における鯨研究の拠点となることを核とした町づくりを目指しています。

こういった歴史を背景に、熊野灘くまのなだ地方では、小型鯨類の捕獲のほか、日常の食卓に供される鯨料理、もりに見立てた棒を使って捕鯨の様子を表現するくじら踊り、航海安全や大漁を祈願する神事、鯨に対する感謝と慰霊のための鯨供養祭、そして博物館における勢子せこ船や古式捕鯨道具といった貴重な資料の保護・展示など、日々の生活の中でごく自然に捕鯨文化を継承しています。また、このような伝統を観光に活かすなど、鯨の町として町おこしを進めています。

これらの取組が評価され、和歌山県の新宮しんぐう市、那智勝浦町なちかつうらちょう、太地町及び串本町くしもとちょうの捕鯨文化に関するストーリー「鯨とともに生きる」が日本遺産に認定されました。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」とともに、地域の誇りとして、活性化の一翼を担っています。

太地浦くじら祭において、特設舞台で鯨に関する郷土芸能を披露している写真
太地浦勇魚(いさな)祭において、太地浦で行われていた古式捕鯨を鯨模型と勢子船で再現している写真
盆供養花火大会において、養父(やぶ)でのくじら踊り(綾踊り)を披露している写真