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水産庁

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(2)水産物消費の状況

(水産物消費の動向)

○水産物消費量の変化

我が国における魚介類の1人当たりの消費量は減少を続けています。「食料需給表」によれば、食用魚介類の1人1年当たりの消費量*1は、平成13(2001)年の40.2kgをピークに減少しており、平成28(2016)年度には、前年より1.1kg少ない24.6kgとなりました(純食料ベース、図2-4-3)。これは、昭和30年代後半とほぼ同じ水準です。我が国では、近年、1人当たりのたんぱく質の消費量自体も減少傾向にあり、この背景には、高齢化の進行やダイエット志向等もあるものと考えられます。

  1. 農林水産省では、国内生産量、輸出入量、在庫の増減、人口等から「食用魚介類の1人1年当たり供給純食料」を算出している。この数字は、「食用魚介類の1人1年当たり消費量」とほぼ同等と考えられるため、ここでは「供給純食料」に代えて「消費量」を用いる。

図2-4-3 食用魚介類及び肉類の1人1年当たり消費量(純食料)とたんぱく質の1人1日当たり消費量の推移

魚介類,肉類,たんぱく質の消費量の年次推移を示した図。魚介類は、平成13年の40.2kg/人をピークに減少し、平成28年は24.6kg/人。肉類は増加しており、平成28年は31.6kg/人。たんぱく質全体では減少傾向にあり、平成28年は77.8g/人。

また、「国民健康・栄養調査」に基づいて年齢階層別の魚介類摂取量をみてみると、若い層ほど摂取量が少なく、特に40代以下の世代の摂取量は50代以上の世代と比べて顕著に少なくなっています(図2-4-4)。ただし、近年では、50~60代の摂取量も減少傾向にあります。

図2-4-4 年齢階層別の魚介類の1人1日当たり摂取量

1~6,7~14,15~19,20~29,30~39,40~49,50~59,60~69,70歳以上の魚介類の摂取量の年次推移を示した図。40代以下の世代ほど摂取量が少ない。ほとんどの世代で減少傾向にある。

近年、日本人の1人当たり生鮮魚介類の消費量は減少し続けていますが、消費される生鮮魚介類の種類も変化しています。平成元(1989)年にはイカやエビが上位を占めていましたが、近年はサケ、マグロ及びブリが上位を占めるようになりました(図2-4-5)。切り身の状態で売られることの多い生鮮魚介類の購入量が上位になっています。

図2-4-5 生鮮魚介類の1人1年当たり購入数量及びその品目別割合の変化

1人1年当たり生鮮魚介類別購入量(サケ,マグロ,ブリ,エビ,イカ,アジ,サンマ),1人1年当たり生鮮魚介類の購入量の年次推移を示した図。購入量は減少を続けている。生鮮魚介類別では、イカ,エビが上位を占めていたが、近年はサケ,マグロ,ブリが上位を占めている。

これを地域別にみてみると、生鮮魚の購入量が少ない都市では、サケ、マグロ及びブリの3魚種の購入割合が高くなっている一方、生鮮魚の購入量が多い都市では、他の色々な生鮮魚も購入しており、これら3魚種の割合が低くなっている傾向にあります(図2-4-6)。サケ、マグロ、ブリ等のような人気が定着している魚種以外にも目を向けてもらうことが、消費者に魚をより買ってもらうことにつながると期待されます。

図2-4-6 平成29(2017)年における都道府県庁所在都市別の1人1年当たり鮮魚購入量と、それに占めるサケ、マグロ及びブリの3魚種の割合

県庁所在都市別の1人1年当たり鮮魚購入量と鮮魚購入量に占める購入量上位3魚種(サケ,マグロ,ブリ)の割合を示した相関図。購入量が少ない都市では上位3魚種の割合が高い傾向があり、購入量が多い都市では上位3魚種の割合が低い傾向がある。

事例アニサキスに冷静な対応を!~正しい知識を身に付けよう~

以前よりアニサキス幼虫による感染症は知られていましたが、平成29(2017)年に、アニサキス幼虫による感染症が報道で多く取り上げられました。日本チェーンストア協会が発表した「2017年チェーンストア10大ニュース」においても1位に「アニサキス、O-157報道(ポテトサラダ食中毒)の影響で売上げに大きな影響」が選ばれるなど、流通関係者からも魚の売上げが減少したとの声が多く聞かれました。農林水産省が平成29(2017)年12月~30(2018)年1月に実施した「食料・農業及び水産業に関する意識・意向調査」によると、「2017年になってからアニサキスを知った」人は、「2016年以前から知っていた」人よりも、アニサキス等の魚介類に関する食中毒の問題をマスコミ等で見たり聞いたりした際に購入を控える傾向が強いようです(図)。

魚介類は日本人にとって重要なたんぱく源・エネルギー源であり、有用成分も多く含まれているため積極的な消費が望まれます。一方で、アニサキス幼虫は広く魚介類に寄生する寄生虫であるため、アニサキス幼虫感染症を防ぐためには寄生が知られている魚介類を生食する場合は注意することが重要です。このため、生鮮魚介類を取り扱う事業者に対して、アニサキス幼虫感染症を防ぐための注意喚起が行われています。具体的には、<1>新鮮な魚を選び、内蔵を取り除くこと(アニサキス幼虫は鮮度が落ちると、内臓から筋肉に移動することが知られています)、<2>魚の内臓を生で提供しないこと、<3>目視で確認して、アニサキス幼虫(2~3㎝)を除去すること、<4>冷凍・加熱を十分に行うこと(アニサキスは60℃で1分、70℃以上で瞬時に死滅し、マイナス20℃以下で24時間冷凍すると感染性を失う*1)です。家庭でも同様の対策を取ることで感染の確率を下げることができます。購入又は釣った丸の魚介類を生で食べる場合には、魚が新鮮なうちにできるだけ速やかに内臓を除去し、十分に洗浄すること、魚の内臓を生で食べないこと、アニサキス幼虫がいないことを目視で確認することが重要です。また、十分な加熱・冷凍によりアニサキス幼虫は感染性を失うので、焼き魚や煮魚として食べる場合は、そもそもアニサキス幼虫に感染する心配はありません。

2016年以前からアニサキスを知っていた人,2017年になってからアニサキスを知った人において、購入を控えるかどうかを示した図。前者は、控える24%,控えない68%。後者は、控える35%,控えない51%。
  1. 内閣府食品安全委員会「ファクトシート(科学的知見に基づく概要書)」による。

○水産物の価格と消費の動向

生鮮魚介類の1世帯当たりの年間支出金額と購入量では、購入量が一貫して減少する一方、近年の支出金額はおおむね横ばい傾向となっています。水産物の価格が上昇傾向にある中で、購入量は減少しているものの、消費者の購買意欲自体が衰退しているわけではないとも考えられます(図2-4-7)。

図2-4-7 生鮮魚介類の1世帯当たり年間支出金額・購入量の推移

生鮮魚介類の1世帯当たりの購入量,支出金額の年次推移を示した図。近年は購入量が減少し、金額は横ばい傾向となっている。

平成25(2013)年以降、食料品全体の価格が上昇していますが、特に生鮮魚介類及び生鮮肉類の価格は大きく上昇しています(図2-4-8)。また、生鮮魚介類の購入量は、価格の上昇と相反して減少しています(図2-4-9)。

図2-4-8 食料品の消費者物価指数の推移

生鮮魚介類,生鮮肉類,調理食品,食料品全体の消費者物価指数の年次推移を示した図。いずれも上昇傾向にあるが、特に生鮮魚介類,生鮮肉類の価格が上昇している。

図2-4-9 生鮮魚介類の消費者物価指数及び1人1年当たり購入量の推移

生鮮魚介類の消費者物価指数,購入量の年次推移を示した図。物価指数が上昇するにつれて、購入量が減少している。。

そこで、消費者物価指数と購入量の関係を主な魚介類別で見てみると、多くの魚介類で購入量が減少していますが、サケ及び塩サケについては、他の魚種に比べ、購入量はさほど減少せず高い水準を維持しています(図2-4-10)。これは、サケのように、切り身で売られることが多く調理がしやすい魚種は、水産物の消費が減少する中でも比較的安定的に消費され、価格が上昇しても購入量が大きく減少しないと考えられます。

図2-4-10 主な魚介類の消費者物価指数と1人1年当たり購入量の推移

サンマ,イカ,ホタテガイ,エビ,サケ,塩サケの消費者物価指数,購入量の年次推移を示した図。物価指数が上昇するにつれて、購入量が減少しているが、サケ,塩サケの購入量の減少は緩やかである。

コラム日本各地で広がるサケ・マス類の養殖

総務省の「家計調査」によると、日本人の1人当たり魚種別購入量の1位はサケであり、また、マルハニチロ株式会社の調査でも、好きな魚種の1位がサケになるなど、今や日本人にとってサケ・マス類は欠かせない水産物となっています。国内の生食用サケ・マス類市場は約10万トンと言われるほど、大きな市場になっています。

しかしながら、国内で消費されるサケ・マス類の多くがノルウェーやチリ等から輸入される外国産によって占められており、特に生食用のサケ・マス類については、ほとんどが外国産で占められていると考えられます。

主に養殖されたものが生食用として提供されますが、日本の海面でサケ・マス類を養殖しようとすると、夏の高水温に耐えられないため、晩秋から初夏にかけての短期間での養殖となり、サケ・マス類のサイズを外国産ほど大きくできないなどの課題があります。その課題を克服するため、ある程度の高水温にも耐性のある種苗や効率良く育つ飼料の開発など、日本の海洋環境に適応した養殖手法の開発が求められています。

日本の生食用サケ・マス類市場の多くがこれまで外国産で占められてきましたが、日本各地で「ご当地サーモン」という形でサケ・マス類が養殖され、生食用市場に参入しようとする動きが盛んになってきています。

(水産物に対する消費者の意識)

水産物消費量は減少し続けていますが、消費者の間にはもっと魚を食べたいという意識も根強くあります。主菜となる各食材について、今後の摂取量に関する意向を尋ねた株式会社日本政策金融公庫による調査では、魚介類の摂取量を増やしたいとの回答が肉類を大きく上回りました(図2-4-11)。

その反面で、調理することについての考え方では、「できるだけ簡単にしたい」との回答が「おいしいものを作りたい」等を上回って最も多くなり、簡便化志向が強いことがうかがわれます(図2-4-12)。

図2-4-11 主菜となる食材の今後の摂取量に関する消費者の意向

魚介類,大豆・大豆製品,鶏肉,豚肉,牛肉の摂取量についての消費者の意向を示した図。魚介類,大豆・大豆製品を増やしたい消費者が4割ほどになっており、肉類の2割弱を上回っている。

図2-4-12 消費者の「調理すること」に関する考え方

調理の考え方(できるだけ簡単にしたい,おいしいものを作りたい,なるべく手作りしたい,お金がかからないようにしたい,栄養バランスがとれたものにしたい,豪勢なものを作りたい,その他)を全体,男性,女性別に示した図。「できるだけ簡単にしたい」が最も多く、「おいしいものを作りたい」がその次に多い。

近年、生鮮・冷凍の食用魚介類の消費仕向量が減少傾向にある中で、加工用の食用魚介類の消費仕向量は下げ止まりの兆しがみられます。結果として、消費仕向量全体に占める加工用の食用魚介類の割合が上昇しています(図2-4-13)。

図2-4-13 生鮮・冷凍及び加工用の食用魚介類と、消費仕向量全体に占める加工用の食用魚介類の割合の推移

消費仕向量,加工用,生鮮・冷凍の魚介類の年次推移を示した図。いずれも減少傾向にあるが、加工用については下げ止まりの兆しがある。なお、消費仕向量全体に占める加工用の食用魚介類の割合が上昇傾向にある。

コラム魚食生活が運ぶ幸せな家庭生活

調理にあまり時間をかけたくないと答える人が多かったり、加工品向けの水産物の割合が増えたりしていますが、この背景には、女性の就業率の増加や、それに伴う家庭での女性の家事の時間の減少も影響していると思われます。その一方で、男性の家事の時間は増加しています(図1)。

図1:女性就業率と平日の男女別家事の時間の推移

成人男性の家事の時間,成人女性の家事の時間、及び女性就業率の年次推移を示した図。女性就業率が上昇するにつれて、成人女性の家事の時間が減少している。成人男性の家事の時間が増加傾向にある。

マルハニチロ(株)の調査では、「恋愛において、魚を自分でさばける人はカッコイイ」と回答した女性の割合が約8割となっています(図2)。また、魚を週に2日以上食べる人は週に1日以下しか食べない人よりも、「夫婦仲がいいと思う」と回答する割合が高くなっています(図3)。女性の職業生活における活躍を国が推進している中、男性の家事の時間が増えていることに着目し、男性に対して魚食の意義を訴えることも魚食普及につながるかもしれません。

図2:「恋愛において、魚を自分でさばける人はカッコイイ」と答えた女性の割合

「恋愛において、魚を自分でさばける人はカッコイイ」と答えた女性の割合(非常にあてはまる,ややあてはまる,どちらともいえない,あまりあてはまらない,全くあてはまらない)を20代,30代,40代,50代別に示した図。いずれも、「非常にあてはまる」,「ややあてはまる」を合わせて8割前後になっている。

図3:「自分たち夫婦は仲がいいと思う」と答えた人の割合

「自分たち夫婦は仲がいいと思う」と答えた人の割合(はい,いいえ)を魚食喫食頻度が週に2日以上,週に1日以下の夫婦別に示した図。「はい」と答えた割合は週に2日以上のほうが高くなっている。

(水産物の健康効果)

水産物の摂取が健康に良い効果を与えることが、様々な研究から明らかになっています(図2-4-14)。魚の脂質に多く含まれているドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)といったn-3系多価不飽和脂肪酸は、胎児や子どもの脳の発育に重要な役割を果たすことが分かっています。妊娠中にDHAやEPA等のn-3系多価不飽和脂肪酸を摂取した妊婦から生まれた子どもの知能指数は、摂取しなかった子どもに比べ高くなるといわれています。また、DHAを添加した人工乳を生後まもない乳児に摂取させることで、網膜や視神経の発達が促され、発達指数や知能指数を上昇させることが明らかになっています。他にも、すい臓がん、肝臓がんや男性の糖尿病の予防、肥満の抑制、心臓や血管疾患リスクの低減等、様々な効果があることが明らかにされています。

図2-4-14 水産物の摂取による健康効果に関する研究例

たんぱく質に関するもの

○血栓の形成抑制効果((独)水産総合研究センター)

魚食には、魚油の血液凝固抑制作用に加え、魚肉タンパク質の血栓溶解作用がある。

(平成16(2004)年10月、欧州の栄養学雑誌「Annals of Nutrition and Metabolism」に掲載)

○体脂肪の蓄積や血糖の上昇を抑制(愛媛大学)

スケトウダラのたんぱく質の摂取により筋肉量が増加し、体脂肪の蓄積や血糖の上昇を抑制。

(平成22(2010)年12月、日本の医学雑誌「Biomedical Research」に掲載)

不飽和脂肪酸に関するもの

○心筋梗塞の予防(厚生労働省研究班)

日本人で魚を週に8回食べる人は1回しか食べない人に比べ、心筋梗塞の発症リスクが6割低い。

(平成18(2006)年1月、米国の医学雑誌「Circulation」に掲載)

○男性の糖尿病予防効果((独)国立がん研究センター)

小・中型魚や脂の多い魚の摂取により、日本人男性の糖尿病発症リスクが低下。

(平成23(2011)年8月、米国の栄養学雑誌「American Journal of Clinical Nutrition」に掲載)

○肝臓がんの予防((独)国立がん研究センター)

肝臓がんの発生リスクは、n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚を多く摂っているグループで低い。

(平成24(2012)年6月、米国の消化器病学雑誌「Gastroenterology」に掲載)

○脳卒中や心臓病の予防(厚生労働省研究班)

食事から摂取した魚介類由来の脂肪酸が多いほど、その後の循環器疾患死亡リスクが低い。

(平成26(2014)年2月、欧州の動脈硬化学会誌「Atherosclerosis」に掲載)

○膵臓がんの予防((研)国立がん研究センター)

魚由来のn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量が多いグループは、少ないグループに比べ、膵臓がんの発生リスクが3割低い。

(平成27(2015)年11月、米国の栄養学雑誌「American Journal of Clinical Nutrition」に掲載)

図2-4-15 DHA・EPAを多く含む食品の例

クジラ・本皮(生),クロマグロ・脂身(生),サバ類・開き干し(生),シロサケ・すじこ,ブリ・成魚(生),ウナギ(かば焼),サンマ・皮つき(焼き),カツオ・秋獲り(生),マイワシ(生),イカ類(加工品・塩辛),マダイ・天然(生),中型種豚・かたロース・脂身つき(生),成鶏肉・もも・皮つき(生),和牛肉・かたロース・脂身つき(生)において、DHA,EPAの含有量を示した図。クジラ・本皮(生),クロマグロ・脂身(生),サバ類・開き干し(生)の含有量が多い。

魚肉たんぱく質は、畜肉類のたんぱく質と並び、私たちが生きていく上で必要な9種類の必須アミノ酸をバランス良く含む良質のたんぱく質であるだけでなく、大豆たんぱく質や乳たんぱく質と比べて消化されやすく、体内に取り込まれやすいという特徴もあり、離乳食で最初に摂取することが奨められている動物性たんぱく質は白身魚とされています。また、魚肉のたんぱく質は、健康上の機能も有している可能性が示唆されています。例えば、魚肉たんぱく質を主成分とするかまぼこをラットに与える実験では、血圧や血糖値の上昇の抑制等の効果が確認されています。さらに、鯨肉に多く含まれるアミノ酸物質であるバレニンは疲労の回復に、イカやカキに多く含まれるタウリンは肝機能の強化や視力の回復に効果があることなどが示されています。

カルシウムを摂取する際、カルシウムの吸収を促進するビタミンDを多く含むサケ・マス類やイワシ類などを合わせて摂取することで骨を丈夫にする効果が高まります。また、ビタミンDは筋力を高める効果もあります。

小魚を丸ごと食べ、水産物も摂取することにより、カルシウムとビタミンDの双方が摂取され、骨密度の低下や筋肉量の減少等の老化防止にも効果があると考えられます。

水産物は、優れた栄養特性と機能性を持つ食品であり、様々な魚介類をバランス良く摂取することにより、健康の維持・増進が期待されます。

コラム魚を食べると「抑うつ状態」になりにくい?(エコチル調査*1

富山大学では、平成28(2016)年に、環境省が実施しているエコチル調査の追加調査から、血中のEPA濃度が高い人ほど抑うつ状態になりにくい可能性があることを報告しました。

そこで、平成29(2017)年に、エコチル調査に参加している妊娠中のお母さん約7.5万人と、お父さん約4万人について、魚食の状況と「抑うつ状態」との関連を調べました。

その結果、妊娠期に魚をあまり摂取しない群よりも多く摂取している群の方が「抑うつ状態」にある人が少ないこと、また、魚から摂取されるDHA・EPA類との関連も同様の傾向があることが明らかになりました。

しかしながら、妊娠中や妊娠を考えている人は、水銀濃度が高い魚ばかりを摂取することは控え、水銀濃度が低い魚も摂取することが推奨されている研究報告もあり、魚そのものの摂取量を減らさずにバランス良く摂取することが良いとされています。

魚に含まれる水銀量や摂取頻度については、下記の厚生労働省ホームページを御覧ください。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin

妊娠中後期での魚食と抑うつとの関連
魚介類摂取量(少ない,やや少ない,中程度,やや多い,多い)別に抑うつ状態のなりやすさを示した図。少ない人を1.00とした時、やや少ないが0.75、中程度が0.78、やや多いが0.71、多いが0.87となり、多く摂取している人の数値が低い。
  1. 子どもの健康と環境に関する調査:環境省が、平成23(2011)年より実施している、全国10万組の子どもたちとその両親が参加している大規模な調査。

コラム食機能に配慮した新しい介護食品「スマイルケア食」

我が国の高齢化が進む中、健康寿命を延ばすことが大切ですが、介護の現場でも高齢者にあった食の提供が求められています。高齢化に伴い、健康な体を維持し活動するために栄養補給を必要とする人やむこと飲み込むことに問題がある人の増加が見込まれています。農林水産省では、このような人の需要に対応した介護食品をスマイルケア食として、健康栄養上、たんぱく質等の栄養補給が必要な人向けの食品に「青」マーク、噛むことに問題がある人向けの食品に「黄」マーク、飲み込むことに問題がある人向けの食品に「赤」マークを表示する制度の運用を、平成28(2016)年に開始しました(図)。

若い時と比べて食べる量が減少する高齢者は、摂取するたんぱく質量も減少しますが、実は、高齢者には、若いときと同程度のたんぱく質量が必要とされています。水産物は良質なたんぱく質として注目されており、水産物を使用したスマイルケア食も登録されています。

図:スマイルケア食のロゴマーク

スマイルケア食の「青」マーク(噛むこと、飲み込むことに問題はないものの、健康維持上、栄養補給を必要とする人向けの食品),「黄」マーク(噛むことに問題がある人向け食品),「赤」マーク(飲み込むことに問題がある人向け食品)を示したロゴ
表:水産物が使用されているスマイルケア食の例

分類

企業名

商品名

「青」マーク

松岡水産株式会社

骨とりさば味噌煮 等

海商株式会社

まぐろ照焼き

株式会社YSフーズ

さんまのトマト煮 等

株式会社スグル食品

鯛入り磯焼き蒲 等

秋田県立男鹿海洋高等学校

サバ水煮缶詰 等

「黄」マーク

キューピー株式会社

紅鮭雑炊 等

(魚食普及に向けた取組)

○学校給食等での食育の重要性

近年、若年層の魚介類の摂取量が減少しています。食に対する簡便化・外部化志向が強まり、家庭において魚食に関する知識の習得や体験などの食育の機会を十分に確保することが難しくなる中で、若いうちから魚食習慣を身に付けるためには、学校給食等を通じ、子どものうちから水産物に親しむ機会をつくることが重要です。

しかし、水産物の利用には、一定の予算内で提供しなければならず、事前に献立を決めておく必要があります。また、大量の材料を利用するために水揚げが不安定な魚介類をその日に確実に提供できるのかという供給の問題や、加工度の低い魚介類は調理に一定の設備や技術が必要となること等の問題があることから、安価で安定供給が期待でき、規格の定まった食材として、輸入水産物も使われているのが現状です。

これらの問題を解決し、おいしい国産の魚介類を給食で提供するためには、地域の水産関係者と学校給食関係者が連携していくことが必要です。そこで、近年では、漁業者や加工・流通業者等が中心となり、食材を学校給食に提供するだけでなく、魚介類を用いた給食用の献立の開発や、漁業者自らが出前授業を行って魚食普及を図る活動が活発に行われています。

また、「第3次食育推進基本計画」においては、学校給食における地場産物の使用割合を30%以上にする目標値が定められるなど、地産地消の取組が推進されています。この方針の下、地元産の魚介類の使用に積極的に取り組む自治体も現れ、学校給食の栄養士、調理師等から漁業者や加工・流通業者へ地元の魚介類の提供を働き掛ける例も出てきています。

事例1人当たりの魚介類の消費量が日本一少ない沖縄県の生徒たちが取り組む魚食普及活動「石垣島いしがきじまモデル」

総務省の「家計調査」によると、沖縄県は意外なことに、四方を海に囲まれているにも関わらず、日本で1人当たりの魚介類の消費量が最も少ない都道府県となっています。その中でも特に魚介類の消費量が少ないと懸念している石垣市では、若者の魚食離れに着目し、若者を対象にした魚食普及が重要であると考えています。そのため、石垣市が導入した石垣市地域おこし協力隊では、島の若者と一緒に2つの取組を行っています。

1つ目は、地元の伊原間いばるま中学校の生徒と共同で、若者が地元の水産物に目を向けるよう、同世代向けのPOP広告を作成して、地元スーパーマーケットの鮮魚コーナーに貼り出しました。

2つ目は、地元で多く水揚げされているマグロやシイラを天ぷらにした「沖縄天ぷら」を地元で紹介するため、地元の八重山商工高等学校の生徒と共同で、この商品の販売に協力してくれる「さしみ屋(天ぷら屋)」マップ作りに取りかかっています。

これらの取組は、若者に向けた消費促進・情報発信を若者自身に担ってもらう仕掛けとなっており、その新しい試みが評価され、全国漁業協同組合連合会の専門誌に「石垣島モデル」として、全国の手本になるような事例として紹介されています*1

  1. 全国漁業協同組合連合会(JF)「漁協(くみあい)」163号pp. 22-25 2017
伊原間中学校のワークショップで作られたPOP広告の写真
八重山商工高等学校のワークショップ風景の写真

○「魚の国のしあわせ」プロジェクト

「魚の国のしあわせ」プロジェクトは、消費者に広く魚食の魅力を伝え水産物消費を拡大していくため、漁業者、水産関係団体、流通業者、各種メーカー、学校・教育機関、行政等の水産に関わるあらゆる関係者による官民協働の取組として、平成24(2012)年8月に開始されました。

このプロジェクトの下、水産物の消費拡大に資する様々な取組を行っている企業・団体を登録・公表し、魚食普及を目的に個々の活動の更なる拡大を図る「魚の国のしあわせ」プロジェクト実証事業を行っています。平成30(2018)年3月末までに取組を行っている114の企業・団体が登録され、優良な取組は「魚の国のしあわせ」推進会議によって魚の国のしあわせ大賞として表彰されています。

「魚の国のしあわせ」プロジェクトのロゴマークイメージ

また、全国各地には、<1>学校での出前授業や親子料理教室の開催等を通じて、子どもやその家族に魚のおいしさを伝える、<2>魚料理に関する書籍の出版やテレビ番組の企画、出演等、メディアを活用した消費者への日常的な魚食の推進をするなど、様々な活動を展開している方がいます。このような方々を後押しするため水産庁長官による「お魚かたりべ」の認定を行っており、平成30(2018)年3月末までに140名の方が任命されています。さらに、平成30(2018)年2月15日には、長期間魚食普及のために活躍されている「お魚かたりべ」の方々に感謝の意を込めて、水産庁長官より感謝状が授与されました。

一般に調理が面倒だと敬遠されがちな水産物を、手軽・気軽においしく食べられるようにすることも魚食普及の1つです。電子レンジで温めるだけだったり、フライパンで炒めるだけだったりと、ひと手間加えるだけで手軽においしく食べられるような商品及びその食べ方を選定する「ファストフィッシュ」の取組も「魚の国のしあわせ」プロジェクトの一環として行われています。これまでに3千を超える商品が「ファストフィッシュ」として選定され、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで販売されています。さらに、市場のニーズが多様化してきている中で、単に手軽・気軽というだけでなく、ライフスタイルや好に合う形の商品を提案することにより、魚の消費の裾野を更に広げていくことが期待されます。このため、子どもが好み、家族の食卓に並ぶ商品や食べ方を対象とする「キッズファストフィッシュ」、国産魚や地方独特の魚を利用した商品や食べ方を対象とする「ふるさとファストフィッシュ」というカテゴリーを平成28(2016)年度から新たに設け、従来の「ファストフィッシュ」と合わせて3つのカテゴリーで選定を行っています。平成30(2018)年3月末現在で、延べ3,322商品が「ファストフィッシュ」、19商品が「キッズファストフィッシュ」、54商品が「ふるさとファストフィッシュ」に登録されています。

国では、このような取組を、消費者にとって身近なものにするため、日頃の活動の様子や、「お魚かたりべ」の名簿、「ファストフィッシュ」の選定商品等を利用者のニーズに合わせ、見やすく・検索しやすいような形で、ホームページ等によりPRしています。

「ファストフィッシュ」のロゴマークイメージ

○「プライドフィッシュ」の取組

新鮮な旬の魚を日常的に食べる機会を持たない消費者もいる中で、魚介類の本当のおいしさを消費者に伝えることは、魚食普及に不可欠です。全国漁業協同組合連合会では、平成26(2014)年度より、地域ごと、季節ごとに漁師自らが自信を持って勧める水産物を「プライドフィッシュ」として選定・紹介する取組を始めました。全国各地のスーパーマーケットや百貨店でのフェアやコンテスト等を開催するとともに、「プライドフィッシュ」を味わえるご当地の飲食店や購入できる店舗をはじめ、魚食普及に関する様々な情報をインターネットにより紹介する取組も行っています。

コラム第5回Fish-1グランプリ

年に1度の魚の祭典「Fish-1グランプリ」が、平成29(2017)年11月19日、国産水産物流通促進センター(構成員JF全漁連)の主催により東京都内で開催され、全国各地の漁師自慢の旬の魚を使った「プライドフィッシュ料理コンテスト」と、国産魚を使った手軽・気軽に食べられる「国産魚ファストフィッシュ商品コンテスト」やステージイベント等が行われました。来場者による投票の結果、プライドフィッシュ料理コンテストでは、旨味濃厚なイカの「刺身」と「秘伝のたれ漬け」をダブルで堪能できる「いか様丼」が、国産魚ファストフィッシュ商品コンテストでは、解凍してさっと炒めれば食べられるCAS凍結の「剣先イカレモンオイル漬」が、それぞれグランプリを獲得しました。

こうしたイベントを通して、多くの人々に水産物の魅力が伝わり、消費拡大につながることが期待されます。

プライドフィッシュ料理コンテストのグランプリ賞を授与する礒崎農林水産副大臣の写真
JF静岡漁連(JF伊豆仁科(にしな)支所)いか様丼の写真
プライドフィッシュ料理コンテストの受賞者の写真
JF佐賀げんかい剣先イカレモンオイル漬の写真

○小売現場での取組

かつては、いわゆる街の魚屋さんが魚介類の旬や産地、おいしい食べ方等を消費者に教え、調理方法に合わせた下処理のサービス等も提供して人々の食生活を支えていましたが、鮮魚専門の小売店の数は減少し、消費者の多くはスーパーマーケット等の量販店で魚介類を買うことが多くなっています(図2-4-16)(図2-4-17)。大手量販店を中心とする流通では、定量・定時・定規格・定価格での供給が重要とされますが、我が国の国産水産物は、沿岸漁業を中心として、魚種構成やサイズが多様である上、生産量も日により変化します。こうしたことも背景として、量販店の店頭には安定供給が可能な冷凍輸入品が多く並ぶ状況になっています。

図2-4-16 全国の鮮魚小売業の食料品専門店の数の推移

鮮魚小売業の食料品専門店の事業所数の年次推移を示した図。減少を続けており、平成6年は24,811、平成26年は7,520となっている。

図2-4-17 消費者の魚介類購入先の変化

魚介類購入先(スーパー,一般小売店,生協・購買,百貨店,通信販売,その他)の割合の年次推移を示した図。スーパーの割合が最も多く、一般小売店は減少している。

しかしながら、南北に長い海岸線を有し、世界でも有数の好漁場に恵まれた我が国では、多種多様な魚介類が水揚げされます。また、四季がはっきりしており、魚種ごとに旬もあります。安定供給や規格の面では不利に働きますが、旬の魚を食べることで季節を感じ、同じ魚でも調理の仕方で食感や風味も変わるなど、食の楽しみにつながる側面もあります。そこで、近年では、特色ある売場づくりを目指す地域の食品スーパー等において、国産魚介類の販売拡大を目指した取組が成果を上げる例が出てきています。また、消費者は食べ方が想像できないとなかなか商品を買ってくれないことから、魚介類の調理に詳しい人が店頭に立って、消費者との対面販売を試みたり、地産地消をスローガンに、地域の新鮮な魚介類を提供する曜日を設けたりしているところもあります。こういった様々な関係者による魚食普及の取組が、私たちが健康で豊かな食生活を送る一助となることが期待されます。

コラム水産・鮮魚部門の人手不足を解決するために

近年、日本人の水産物消費量の減少が問題となっていますが、売る側にも特有の課題があります。平成29(2017)年6~8月に、全国の小売団体3協会が発表した「スーパーマーケット年次統計調査報告書」によると、正社員が不足している部門として、水産・鮮魚売場部門が最も多い回答でした(図)。水産物は、そのままで売る野菜等と違い、店頭に並べる際に内臓を除去したり3枚におろしたりすることが多くなります。また、魚種が多くしかもいろいろなサイズを扱うため、魚に対する幅広い知識と魚をさばく技術が求められますが、そのような知識と技術を有する人は少なく、また技術を有する人の業務が固定化され、休みが取りづらくなってしまうといった課題もあるようです。

株式会社フーディソンは、魚を加工する技術を有する人と、魚を加工する技術を有する人材を求める企業のニーズをマッチさせるため、平成29(2017)年から、魚の加工技術に特化した人材紹介・派遣サービスを行う「さかな人材バンク」の取組を始めました。同社が転職希望者の技術を客観的に評価し、企業側は、求める人材に合った技術を持つ人材を選べるというわけです。

このような人材を確保する取組が、水産・鮮魚部門の労働力不足の問題を解決する一助となることが期待されます。

図:スーパーマーケットの部門別の正社員人手不足の割合

水産・鮮魚部門,惣菜部門,レジ部門,精肉部門,青果部門,グロサリー部門,総務・経理部門,日配部門,情報システム部門,商品・仕入れ部門,販売促進部門,その他の正社員人手不足の割合を示した図。水産・鮮魚部門の不足が7割に達している。
「さかな人材バンク」のロゴマークイメージ