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水産庁

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(3)消費者への情報提供や知的財産保護のための取組

(水産物に関する食品表示)

消費者が店頭で食品を選択する際、安全・安心、品質等の判断材料の1つとなるのが、食品の名称、原産地、原材料、消費期限等の情報を提供する食品表示です。食品表示は、食品を摂取する際の安全性の確認や自主的かつ合理的な食品の選択を確保する上で重要な役割を担っています。水産物を含む食品の表示は、平成27(2015)年より「食品表示法*1」の下で包括的・一元的に行われています。

  1. 平成25(2013)年法律第70号

(原料原産地表示に関する動き)

食品表示のうち、加工食品の原料原産地表示については、平成28(2016)年1月に設置された「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」において検討が行われ、同年11月、国内で製造されている全ての加工食品について、製品に占める重量割合上位1位の原材料の原産地を表示義務の対象とすることなどを内容とする中間取りまとめが公表されました。

その中で、国民食であるおにぎりののりについて、重量割合としては低いものの、消費者が商品を選ぶ上で重要な情報と考えられること、表示義務付けの実行可能性があると見込まれることなどから、表示義務の対象とすることが盛り込まれました。

この取りまとめを踏まえ、平成29(2017)年9月1日に「食品表示法」に基づく「食品表示基準」の一部を改正する内閣府令が公布・施行され、原料原産地表示の充実化が図られています。

(機能性表示食品制度の動き)

機能性を表示することができる食品は、これまで国が個別に許可した特定保健用食品(トクホ)と国の規格基準に適合した栄養機能食品に限られていましたが、機能を分かりやすく表示した商品の選択肢を増やし、消費者の方々がそうした商品の正しい情報を得て選択できるよう、平成27(2015)年4月に、新しく「機能性表示食品」制度が始まりました。

機能性表示食品制度では、「生鮮食品を含め全ての食品」*1が対象となり、平成29(2017)年11月に、生鮮食品の水産物としては初めて、DHA・EPAの機能が表示されたカンパチが届出されました。

  1. 特別用途食品(特定保健用食品を含む。)、栄養機能食品、アルコールを含有する飲料や脂質、コレステロール、糖質(単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないものに限る。)、ナトリウムの過剰な摂取につながるものを除く。

事例「よかとと 薩摩さつまカンパチどん」(マルハニチロ株式会社)

マルハニチロ(株)がブランド展開している養殖カンパチが、「機能性表示食品」のうち生鮮食品区分の水産品として初めて、小売店などで売り出すときに、食品が持つ機能性を表示することができるようになりました。「機能性表示食品」とは、国の定めるルールに基づき、事業者が自らの責任において科学的根拠を説明し、食品が有する機能性について表示するというものです。

このカンパチには、中性脂肪を低下させる機能が報告されている成分として、DHAとEPAがそれぞれ100gあたり620mg、240mgの合計860mgが含まれていると表示されます。このカンパチは、養殖生産管理工程手法(GAP)という、より適切に衛生管理を実施する管理手法を取り入れている養魚場で生産されたもので、出荷に当たっては脂質測定器を用いた脂質含量測定による選別を経て、基準を満たすものにDHAとEPAの機能が表示されて店頭で販売されることになります。

この機能性を表示するためには、消費者庁に届出を行うことが必要です。届出において、マルハニチロ(株)は、DHA・EPAを食べたときに中性脂肪の値が低下するのか否かについて国内外から研究成果を集めた資料をまとめ、DHA・EPAを1日当たり133mg以上摂取すると中性脂肪が低下する効果が期待できる、ということを説明しました。このような、魚などに含まれる機能を消費者にわかりやすく伝える水産物関連の商品が増えることで、水産物の魅力が消費者に伝わり、消費拡大にもつながることが期待されます。

薩摩カンパチどんの写真

(水産エコラベルの動き)

エコラベルとは環境に配慮した商品であることを示すラベルの総称です。水産物についても、生態系や資源の持続性に配慮して生産されたものであることを示す「水産エコラベル認証」を取得・活用する動きが、欧米を中心として、世界的に広がりつつあります。

世界には民間の運営団体による様々な水産エコラベル認証が存在します。英国に本部を置く海洋管理協議会(MSC:Marine Stewardship Council)による「MSC漁業認証」では、世界30か国以上の338漁業が認証を受けており、2016年度のMSCの報告書によれば、「平成28(2016)年の世界の天然漁獲量の12%がMSC認証漁業による」とされています。我が国では、これまで、北海道におけるホタテガイの垂下式養殖及びけた網漁業、京都府におけるアカガレイの底びき網漁業並びに宮城県におけるカツオ及びビンナガを対象とした一本釣り漁業の4件が認証を取得しています。また、流通加工段階で非認証水産物の混入がないことを認証する「CoC(Chain of Custody)認証」は、147件が認証を受けています。

一方、MSCの認証取得には、費用が高額であり小規模漁業者による取得が難しい、多魚種を漁獲対象とする漁業を想定していないといった問題が指摘されてきました。そこで、我が国においては、水産業界、流通加工業界、環境保護団体及び消費者団体の代表が参画する一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会(MELメル協議会)によるマリン・エコラベル・ジャパン(MEL)が運営されています。MEL協議会による漁業認証は、多様性に富んだ我が国の漁業実態を十分に考慮しつつ、科学的根拠に基づく生態系の保全や資源管理を重視していることが特徴となっており、国際機関であるGSSI(Global Sustainable Seafood Initiative)からの承認を受け国際的な認証とすることを目指しています。平成30(2018)年3月末現在でMELの「漁業認証」は44件、「CoC認証」は62件が認証を受けています。

また、養殖を対象とする水産エコラベルとして、オランダに本部を置く水産養殖管理協議会(ASC:Aquaculture Stewardship Council)による「ASC養殖認証」、我が国においては、一般社団法人日本食育者協会による「養殖エコラベル(AEL)」等が存在しています。平成30(2018)年3月末現在、ASC養殖認証は、世界30か国以上の600養殖場が認証されており、日本では、3養殖業(9養殖場)が認証されています。また、AELは3養殖業が認証されています。MEL協議会は、漁業認証規格、CoC認証規格に加え、養殖認証規格を策定し、前述のGSSIから承認を受け国際的な認証とすることを目指しています。

このほか、消費者が水産物を購入する際の判断の参考となる情報を提供するため、(研)水産研究・教育機構が「SH“U”N(Sustainable, Healthy and “Umai” Nippon seafood)プロジェクト」を始動させており、魚種ごとに資源や漁獲の情報や健康と安全・安心といった食べ物としての価値に関する情報を、順次ウェブサイトに公表しています。

コラム養殖種苗の認証制度

海外市場に水産物を輸出しようとする場合は、その水産物が持続可能であるかどうかがよく問われますが、我が国の水産物の多くは持続可能であることを示すエコラベル等の認証を取得していません。しかしながら、水産物の輸出を拡大するためには、そのような現地のニーズに応えていく必要があります。そこで、新たな認証制度の1つとして、近畿大学等の水産研究者が設立したNPO法人「持続可能な水産養殖のための種苗認証協議会(SCSA)」が、世界で初めて人工種苗に対する認証制度を確立しました。平成30(2018)年3月末現在、「種苗生産・養殖業に対する認証」を1社、「CoCに対する認証」を2社が取得しています。

養殖の種苗は、自然界で漁獲した稚魚を利用する天然種苗と飼育下でふ化した人工種苗に分けられますが、人工種苗には選抜育種*1ができることによる餌の節減や薬の低減といった効果が期待されます。また、天然資源量が低位な高級魚等であっても、人の手で種苗を生み出す人工種苗であれば、ほぼ天然資源に頼らない持続可能な水産物となります。したがって、この人工種苗の認証制度により、海外のニーズに応え、我が国の水産物の輸出の拡大につながることが期待されます。

  1. 自然に獲得されているものの自然状態では偶然によってしか発現しない優良形質について、その形質が発現しているもの同士を交配させるなどによって、その形質が常に発現するような系統を作出するもの。
SCSAマークイメージ

(地理的表示保護制度)

地理的表示保護制度は、品質や社会的評価等の特性が産地と結びついている産品について、その名称を知的財産として保護する制度です。我が国では、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)*2」に基づいて平成27(2015)年からスタートしました。この制度により、生産者にとっては地域ブランド産品としての付加価値の向上やその名称の不正使用からの保護が図られるほか、消費者にとっても、地理的表示保護制度により保護された名称の下で流通する一定の品質が維持された産品を選択できるという利点があります。また、地理的表示と併せて「GIマーク」*3を付すことで我が国の真正な特産品であることが明示され、海外展開にも寄与することが期待されます。

  1. 平成26(2014)年法律第84号
  2. 登録された産品の地理的表示と併せて付すもので、産品の確立した特性と地域との結び付きが見られる真正な地理的表示産品であることを証するもの。

さらに、諸外国と地理的表示を相互に保護することを可能にする地理的表示法の改正が行われ、平成28(2016)年12月26日に施行されました。平成29(2017)年12月8日に交渉妥結した日EU・EPAにおいても日本の48のGI産品が協定発効後、EUで保護される見込みです。このように、海外でも我が国の地理的表示産品が保護されることで、農林水産物・食品の輸出促進が期待されます。

水産物に関しては、平成30(2018)年3月末までに、「下関しものせきふく」、「十三湖じゅうさんこ大和やまとしじみ」、「みやぎサーモン」、「田子たごうらしらす」、「若狭わかさ小浜おばま小鯛こだいささづけ」、「岩手野田村のだむら荒海あらうみホタテ」及び「小川原湖おがわらこ大和やまとしじみ」の7件が地理的表示に登録されています(表2-4-1)。

表2-4-1 登録されている水産物の地理的表示(平成30(2018)年3月末現在)登録商品一覧(水産関係)

登録
番号

特定農林水産物等の生産地

特定農林水産物の特性

19

下関ふく

下関ふくの写真

山口県下関市及び福岡県北九州市門司区

活かし込みにより身質が引き締まり、高い技術により高い鮮度を保ったみがき処理(除毒等)が行われているみがきふぐ(とらふぐ)。全国各地からの集荷と仲卸業者の確かな目利きにより、全国の需要者のニーズに応じた出荷が可能となっている。

23

十三湖産大和しじみ

十三湖産大和しじみの写真

青森県五所川原市(十三湖を含む。)、つがる市、北津軽郡中泊町

汽水湖であり、生息環境に優れた「十三湖」で漁獲されたヤマトシジミ。しじみの出汁、旨味が良く出ることが特徴。その品質の高さと年間を通しての安定した出荷は市場からも高く評価されている。

31

みやぎサーモン

みやぎサーモンの写真

宮城県石巻市、女川町、南三陸町、気仙沼市

おいしさを保つため活け締め処理を施した高鮮度な養殖ギンザケ。身にツヤと張りがあり、包丁を入れると刃をつかむような感触。生鮮で刺身で食べられるほか、生臭くなく、他の食材や様々な調理法にも合わせやすい。

36

田子の浦しらす

田子の浦しらすの写真

静岡県田子の浦沖(富士市沖、沼津市沖)

鮮度が良く、形の良い状態で水揚げされるため、透明でぷりぷりした食感が特徴。冷凍したものを解凍しても水揚げ時と区別がつかない。新鮮で身に傷が少ないため、釜揚げにすると「し」の字の形となり、ふっくらとした旨味の濃いものができる。

45

若狭小浜小鯛ささ漬

若狭小浜小鯛ささ漬の写真

福井県小浜市

日本海産の小鯛を三枚におろして薄塩にし、酢あるいは調味酢に漬けた後、樽詰め等にしたもの。皮の色が美しいピンク色に輝き、身はつやを伴った淡い飴色または透明感のある白色で身の締まりと適度な塩気と酸味を有している。塩や酢の使い方により保存性を有しながら生に近い風味を持つ。

47

岩手野田村荒海ホタテ

岩手野田村荒海ホタテの写真

岩手県野田村野田湾

プランクトンが豊富で自由に泳ぎ回れる環境下で養殖されたホタテガイ。身は肉厚で旨味が濃く、貝柱は繊維がしっかりとして弾力がある。貝殻は表面に付着した生物が丁寧に除去されているため美しい。

52

小川原湖産大和しじみ

小川原湖産大和しじみの写真

青森県上北郡東北町(小川原湖を含む。)、上北郡六ヶ所村、三沢市

大粒で濃厚な出汁が出るだけでなく、身もしっかり味わえることが特徴のヤマトシジミ。外見も良く、出荷後にも鮮度の良い状態が保持できる。また、しじみ専用の市場で品質がチェックされるため、品質にばらつきがなく安定した品質を維持。