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水産庁

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(2)水産物消費の状況

ア 水産物消費の動向

(水産物消費量の変化)

我が国における魚介類の1人当たりの消費量は減少し続けています。「食料需給表」によれば、食用魚介類の1人1年当たりの消費量*1は、平成13(2001)年度の40.2kgをピークに減少傾向にあり、平成29(2017)年度には、前年より0.4kg少ない24.4kgとなりました(純食料ベース、図3-4-3)。これは、昭和30年代後半とほぼ同じ水準です。我が国では、近年、1人当たりのたんぱく質の消費量自体も横ばいとなっている一方で、肉類の消費量は増加傾向にあります。

また、「国民健康・栄養調査」に基づいて年齢階層別の魚介類摂取量をみてみると、若い層ほど摂取量が少なく、特に40代以下の世代の摂取量は50代以上の世代と比べて顕著に少なくなっています(図3-4-4)。さらに、近年では、50~60代の摂取量も減少傾向にあります。一方で、20歳未満では摂取量が横ばい傾向にあります。

  1. 農林水産省では、国内生産量、輸出入量、在庫の増減、人口等から「食用魚介類の1人1年当たり供給純食料」を算出している。この数字は、「食用魚介類の1人1年当たり消費量」とほぼ同等と考えられるため、ここでは「供給純食料」に代えて「消費量」を用いる。

図3-4-3 食用魚介類及び肉類の1人1年当たり消費量(純食料)とたんぱく質の1人1日当たり消費量の推移

図3-4-3 食用魚介類及び肉類の1人1年当たり消費量(純食料)とたんぱく質の1人1日当たり消費量の推移

図3-4-4 年齢階層別の魚介類の1人1日当たり摂取量

図3-4-4 年齢階層別の魚介類の1人1日当たり摂取量

近年、我が国の1人当たり生鮮魚介類の購入量は減少し続けていますが、消費される生鮮魚介類の種類は変化しています。平成元(1989)年にはイカやエビが上位を占めていましたが、近年はサケ、マグロ及びブリが上位を占めるようになりました(図3-4-5)。切り身の状態で売られることの多い生鮮魚介類の購入量が上位になっています。

図3-4-5 生鮮魚介類の1人1年当たり購入量及びその上位品目の購入量の変化

図3-4-5 生鮮魚介類の1人1年当たり購入量及びその上位品目の購入量の変化

サケ、マグロ及びブリの3魚種の1世帯1年当たりの地域ごとの購入量を平成元(1989)年と平成30(2018)年で比較すると、地域による購入量の差が縮まっています(図3-4-6)。かつては、その地域で獲れる魚を中心に食べていましたが、流通や冷蔵技術の発達により、以前は、それほど食べなかった地域でも購入しやすくなったことや、調理の簡便化志向が高まり、調理しやすい形態で購入できる魚種の需要が高まったことなどにより、全国的に食べられるようになったと考えられます。特にサケは地域による大きな差が見られなくなっています。

図3-4-6 都道府県庁所在都市別のサケ、マグロ及びブリの1世帯1年当たり鮮魚購入量(平成元(1989)年及び平成30(2018)年)

図3-4-6 都道府県庁所在都市別のサケ、マグロ及びブリの1世帯1年当たり鮮魚購入量(平成元(1989)年及び平成30(2018)年)

(水産物の価格と消費の動向)

生鮮魚介類の1世帯当たりの年間購入量は一貫して減少する一方、近年の支出金額はおおむね横ばい傾向となっていましたが、ここ2年は減少傾向がみられます(図3-4-7)。

図3-4-7 生鮮魚介類の1世帯当たり年間支出金額・購入量の推移

図3-4-7 生鮮魚介類の1世帯当たり年間支出金額・購入量の推移

平成25(2013)年以降、食料品全体の価格が上昇していますが、特に生鮮魚介類及び生鮮肉類の価格は大きく上昇しています(図3-4-8)。また、生鮮魚介類の購入量は、価格の上昇と相反して減少していますが、サケについては、価格が上昇しても購入量は大きく減少していません。これは、切り身で売られることが多く調理がしやすい魚種は、水産物の消費が減少する中でも比較的安定的に消費されていると考えられます(図3-4-9)。

図3-4-8 食料品の消費者物価指数の推移

図3-4-8 食料品の消費者物価指数の推移

図3-4-9 生鮮魚介類全体とサケの消費者物価指数と1人1年当たり購入量の推移

図3-4-9 生鮮魚介類全体とサケの消費者物価指数と1人1年当たり購入量の推移

コラムみんなが好む「サケ・マス類」

現在、「サケ・マス類」は主に刺身などで食する生食用とムニエルや焼き鮭などで食する加熱用に分類され流通しています。

元々日本では、サケを生で食べる習慣はほとんどありませんでした(北海道ではサケを凍らせたものを食べるアイヌ料理(ル・イペ)がありました。)。1980年代まで国内で流通しているものは国産シロサケ(秋サケ)や北米から輸入されるベニザケがほとんどであり、これらは主に加熱料理向けでした。1990年代以降、ノルウェーやチリの海面養殖による生食用のアトランティックサーモンやトラウトサーモンが国内に流通するようになって、「サーモン」という言葉と生食が徐々に定着してきたと考えられます。また、日本国内に生食用のサーモンの流通が増えたことに伴い、塩蔵物(塩サケ)よりも生鮮物(生鮮サケ)の購入量の占める割合が増え、サケ・マス類に対する嗜好も変化してきたと考えられます。

図1:世界のサケ・マス類養殖生産量

図1:世界のサケ・マス類養殖生産量

図2:日本のサケ・マス類国別輸入量

図2:日本のサケ・マス類国別輸入量

図3:1世帯当たりのサケ購入量の変化

図3:1世帯当たりのサケ購入量の変化

日本国内でのサーモン人気は年々高まっています。家計調査によると、近年、生鮮魚介類別の1人当たり購入量で第1位はサケ類となっています。また、株式会社マルハニチロによる「回転寿司に関する消費者実態調査」では、よく食べているネタの第1位は7年連続で「サーモン」となっています。なぜ、これほどサーモンの人気があるのでしょうか。

株式会社オレンジページが実施したアンケート調査によると、「サーモンが好きかどうか」のアンケートでは特に20代から30代の層で「大好き」と答える人が多くなっています。また、「子供が好きな刺身・生食の魚介類」のアンケートでもサーモンが第1位となっており、子供の頃からサーモンを生で食べる習慣があった若い世代を中心にサーモンが人気であることがわかります。

図4:「サーモンが大好き」と答えた人の割合

図4:「サーモンが大好き」と答えた人の割合

近年、女性の社会進出が進み、共働きの家庭が増える中で、家事や料理にかける時間が短くなっており、調理に手間や時間がかからない料理や素材が求められています。主に切り身や刺身の形で販売されているサーモンはこのようなニーズに合っており、人気が定着したと考えられます。サーモンを購入する理由としては、「自分が好き」に次いで、「手に入りやすい」と「料理しやすい」が多く、サーモンの便利さが購入につながっていることがうかがえます。

図5:サーモンを購入する理由

図5:サーモンを購入する理由

図6:購入するサーモンのタイプ

図6:購入するサーモンのタイプ

日本では、これまでギンザケ以外のサケ・マス類の海面養殖はほとんど行われてきませんでしたが、サーモンの人気を受け、日本各地で「ご当地サーモン」という形でサケ・マス類が養殖され、これまで外国産で占められてきた生食用市場に参入しようとする動きが盛んになっています。

イ 水産物に対する消費者の意識

水産物消費量は減少し続けています。その一因として、消費者の食の志向の変化が考えられます。株式会社日本政策金融公庫による平成31(2019)年1月の調査では健康志向、経済性志向、簡便化志向が上位を占めています。これまでの推移を見てみると、健康志向、簡便化志向の人が増加している一方、安全志向、手作り志向は減少しています(図3-4-10)。

図3-4-10 消費者の現在の食の志向(上位)の推移

図3-4-10 消費者の現在の食の志向(上位)の推移

コラム需要が増す中食、支持を広げる魚惣菜

近年、食の簡便化志向が高まる中で中食なかしょく*1の需要が高まっています。

平成30(2018)年7月に(株)日本政策金融公庫が実施した調査によると、中食を「週に2回程度」以上食べると回答した人の割合は4割近くあり、平成15(2003)年の調査と比べて約1.6倍に増えています。

  1. レストラン等へ出かけて食事をする外食と、家庭内で手作り料理を食べる内食の中間にあって、市販の弁当や惣菜等家庭外で調理・加工された食品を家庭や職場・学校等でそのまま食べること、又はこれら食品(日持ちしない食品)の総称。

図1:中食の利用頻度

図1:中食の利用頻度

「1年前と比べた中食と外食の利用頻度」については、中食は「増えたと思う」と「少し増えたと思う」の合計(22.6%)が、「減ったと思う」と「少し減ったと思う」の合計(13.4%)を大きく上回ったのに対し、外食については「増えたと思う」と「少し増えたと思う」の合計(17.5%)と「減ったと思う」と「少し減ったと思う」の合計(18.4%)はほぼ同じでした。また、「今後の利用頻度」について、外食が「今後は増えると思う」が「今後は減ると思う」を下回ったのに対し、中食は「今後は増えると思う」が「今後は減ると思う」の約2倍となりました。このことから、中食の需要は増加しており、今後も増え続けると考えられます。

中食が増えた理由としては「料理や後片付けの手間が省けるから」という回答が最も多く、中食に簡便性が求められていることが分かります。

図2:中食と外食の利用頻度の変化

図2:中食と外食の利用頻度の変化

図3:中食が増えた理由

図3:中食が増えた理由

鮮魚の売上げが伸び悩む中、中食需要の増加に伴い、買ってすぐ食べられる調理済みの魚惣菜や、レンジや湯煎で温めるだけで食べられる魚惣菜の人気が高まっています。大手コンビニエンスストアチェーンによると、魚惣菜の売上げが前年より1~2割増えており、今後、おつまみや洋風メニューなどを新たに展開することも検討しているとのことです。「手間をかけずに簡単においしい魚料理を食べたい」という消費者のニーズに対応した商品を販売することで、今後、魚介類の需要の増加が期待できます。

コラム正月と魚 ~地域によって異なる魚料理~

日常、魚をあまり食べない人でも正月には魚を使った料理を食べることが多いと思います。

正月に使われる魚は「ブリ」「タイ」「サケ」などが多いですが、これらは縁起物として使われており、例えば「ブリ」は成長とともに名前を変えることから「出世魚」と呼ばれ、また、「サケ」も「栄える」に通じることで縁起が良いとされています。

表1:正月によく食べられている魚介類と普段よく食べられている魚介類(喫食件数)

表1:正月によく食べられている魚介類と普段よく食べられている魚介類(喫食件数)

正月によく食べられているブリ、タイ及びサケの喫食件数について都道府県別にみると、総じて、東日本は「サケ」、西日本は「ブリ」が多いようです。また秋田県の「ハタハタ」や宮城県の「カレイ」のようにその地域独自の魚料理もあります。まだ冷蔵・冷凍技術が発達していない高度経済成長期以前、東ではサケが、西ではブリが冬によく獲れていたことが、このような分布になっていると考えられます。これらの魚は塩漬けして保存性の高い新巻鮭あらまきざけ塩鰤しおぶりにして、海から遠く離れた山間部を含めて各地へ届けられました。

日常生活においては流通の発達等による生活の標準化や「魚離れ」が進んでいますが、正月は伝統的に各地で魚中心の料理が受け継がれています。

図:正月によく食べられている魚(ブリ・タイ・サケ)の分布(都道府県別)

図:正月によく食べられている魚(ブリ・タイ・サケ)の分布(都道府県別)

近年、生鮮・冷凍の食用魚介類の消費仕向量が減少傾向にある中で、加工用の食用魚介類の消費仕向量は下げ止まりの兆しがみられます。結果として、消費仕向量全体に占める加工用の食用魚介類の割合が上昇しています(図3-4-11)。調理に対する簡便化志向が強まる中、生鮮・冷凍の食用魚介類に比べて、加工用の食用魚介類のニーズが高まっていると考えられます。

図3-4-11 生鮮・冷凍及び加工用の食用魚介類の消費仕向量等の推移

図3-4-11 生鮮・冷凍及び加工用の食用魚介類の消費仕向量等の推移

コラム今、注目を集めるサバ缶

平成30(2018)年、サバ缶が大きな話題となりました。多くのメディアで取り上げられ、その世相を反映する「今年の一皿*1」にも選ばれています。サバ缶は今や水産缶詰の中で最も多く生産されています。なぜ、サバ缶はこんなにも注目されるようになったのでしょうか。

  1. 食に関する調査研究を行う株式会社ぐるなび総研が選定・発表する、その年の日本の世相を最も反映・象徴する料理。

図1:主な水産缶詰の生産量

図1:主な水産缶詰の生産量

平成23(2011)年の東日本大震災を受け、日本全体で非常食の備蓄を心がけるようになり、備蓄食の1つである缶詰に大きな注目が集まりました。その際、手ごろな価格で手に入る「サバ缶」が多く購入され、平成24(2012)年のサバ缶生産量が増えたと考えられます。

その後もサバ缶の生産量は緩やかな上昇傾向にあります。サバ缶人気が続いた理由の1つは、サバが栄養豊富な青魚であるということです。サバにはDHAやEPAが豊富に含まれています。これらの健康面への効果がメディアで大きく取り上げられ、サバ人気に火をつけました。そして、魚、特にサバのデメリットである「傷みやすいため日持ちしない」点や「調理が面倒である」点を克服し、料理をするときに下ごしらえをする必要がなく、様々な料理に応用できる「サバ缶」が特に注目を集めたのです。

また、「サバ缶ブーム」が続いているのは、サバの漁獲量の安定も大きな理由です。サバの漁獲量は大きく減少していた時期がありましたが、漁業者によるサバの資源管理の取組により、資源量が回復してきました。サバの需要が高まる中、それを支える供給量があったためと考えられます。

図2:缶詰原料に使われる主な魚種の漁獲量の推移

図2:缶詰原料に使われる主な魚種の漁獲量の推移

「サバ缶ブーム」により、洋風の味付けやおしゃれなデザインのサバ缶など様々なサバ缶が発売されるだけでなく、サバそのものの人気にも波及しており、最近では、サバ料理専門店やサバ料理専用の日本酒などが出現しています。一方で、このようなサバの需要の高まりにより、価格が高騰したり、地域によってはサバ缶が手に入りにくくなっていたりしていることもあり、同じくDHAやEPAが豊富なイワシ缶など他の水産缶詰にも注目が集まっています。日本では「魚離れ」が続いていますが、このようなブームをきっかけに再び日本で魚が多く食べられるようになることが期待されます。

コラムニーズをつかんで魚食の復権を!

商品がよく売れるには消費者のニーズを的確につかむことが重要です。平成30(2018)年にサバ缶が大ブームとなったのは、消費者の「健康に良いものを食べたい」や「調理に手間をかけずに手軽に食べたい」といったニーズに合致していたからだと考えられます。生鮮魚介類は家に帰ってから調理することもあり、購入量が減少傾向にある一方で、魚惣菜は手軽に食べられることから人気が高まっています。

生活情報誌『オレンジページ』は例えば、掲載する料理であれば、全て事前に社内で実際に調理してから掲載し、また、事前に読者に詳細なアンケートをとって「読者のくらし」を把握するというリサーチ力の下、30年以上の間、「読者のくらし」を分析してきました。「次のくらしデザイン部」では、これらの蓄積されたデータやノウハウを用いて、消費者の実態やニーズ、「次のくらしのヒント」を企業等に提供しています。

このようなツールやデータを活用して消費者のニーズをつかむことができれば、新たな魚商品のブームが生まれるかもしれません。

「次のくらしデザイン部」のロゴマーク

ウ 水産物の健康効果

水産物の摂取が健康に良い効果を与えることが、様々な研究から明らかになっています(表3-4-1、図3-4-12)。魚の脂質に多く含まれているドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)といったn-3系多価不飽和脂肪酸は、胎児や子供の脳の発育に重要な役割を果たすことが分かっています(図3-4-13)。妊娠中にDHAやEPA等のn-3系多価不飽和脂肪酸を摂取した妊婦から生まれた子供の知能指数は、摂取しなかった子供に比べ高くなるといわれています。また、DHAを添加した人工乳を生後まもない乳児に摂取させることで、網膜や視神経の発達が促され、発達指数や知能指数を上昇させるといわれています。他にも、すい臓がん、肝臓がんや男性の糖尿病の予防、肥満の抑制、心臓や大動脈疾患リスクの低減等、様々な効果があることが明らかにされています。

魚肉たんぱく質は、畜肉類のたんぱく質と並び、私たちが生きていく上で必要な9種類の必須アミノ酸をバランス良く含む良質のたんぱく質であるだけでなく、大豆たんぱく質や乳たんぱく質と比べて消化されやすく、体内に取り込まれやすいという特徴もあり、離乳食で最初に摂取することが勧められている動物性たんぱく質は白身魚とされています。また、魚肉のたんぱく質は、健康上の機能も有している可能性が示唆されています。例えば、魚肉たんぱく質を主成分とするかまぼこをラットに与える実験では、血圧や血糖値の上昇の抑制等の効果が確認されています。さらに、鯨肉に多く含まれるアミノ酸物質であるバレニン*1は疲労の回復等に、イカやカキに多く含まれるタウリンは肝機能の強化や視力の回復に効果があることなどが示されています。

カルシウムを摂取する際、カルシウムの吸収を促進するビタミンDを多く含むサケ・マス類やイワシ類などを合わせて摂取することで骨を丈夫にする効果が高まります。また、ビタミンDは筋力を高める効果もあります。小魚を丸ごと食べ、水産物も摂取することにより、カルシウムとビタミンDの双方が摂取され、骨密度の低下や筋肉量の減少等の老化防止にも効果があると考えられます。

海藻類は、ビタミンやミネラルに加え食物繊維にも富んでいます。その1つのフコイダンは抗がん作用や免疫機能向上作用、アレルギー予防の効果が期待されており、モズクやヒジキ、ワカメ、昆布等の褐藻類に多く含まれます。

水産物は、優れた栄養特性と機能性を持つ食品であり、様々な魚介類や海藻類をバランス良く摂取することにより、健康の維持・増進が期待されます。

  1. 詳細は144ページ

表3-4-1 水産物に含まれる主な機能性成分

表3-4-1 水産物に含まれる主な機能性成分

図3-4-12 水産物の摂取による健康効果に関する研究例

図3-4-12 水産物の摂取による健康効果に関する研究例

図3-4-13 DHA・EPAを多く含む食品の例

図3-4-13 DHA・EPAを多く含む食品の例

エ 魚食普及に向けた取組

(学校給食等での食育の重要性)

食に対する簡便化・外部化志向が強まり、家庭において魚食に関する知識の習得や体験などの食育の機会を十分に確保することが難しくなっていることも、若年層の魚介類の摂取量減少の一因になっていると思われます。

若いうちから魚食習慣を身に付けるためには、学校給食等を通じ、子供のうちから水産物に親しむ機会をつくることが重要ですが、水産物の利用には、一定の予算範囲内での提供や、あらかじめ献立を決めておく必要性、水揚げが不安定な中で一定の材料を決められた日に確実に提供できるのかという供給の問題、加工度の低い魚介類は調理に一定の設備や技術が必要となること等の問題があることから、安価で安定供給が期待でき、規格の定まった食材として、輸入水産物も使われているのが現状です。

これらの問題を解決し、おいしい国産の魚介類を給食で提供するためには、地域の水産関係者と学校給食関係者が連携していくことが必要です。そこで、近年では、漁業者や加工・流通業者等が中心となり、食材を学校給食に提供するだけでなく、魚介類を用いた給食用の献立の開発や、漁業者自らが出前授業を行って魚食普及を図る活動が活発に行われています。

また、「第3次食育推進基本計画」においては、学校給食における地場産物の使用割合を30%以上にする目標値が定められるなど、地産地消の取組が推進されています。この方針の下、地元産の魚介類の使用に積極的に取り組む自治体も現れ、学校給食の栄養士、調理師等から漁業者や加工・流通業者へ地元の魚介類の提供を働きかける例も出てきています。

事例未利用魚を有効に活用する学校給食(横浜市神奈川区)

横浜市中央卸売市場の卸売業者・仲卸業者等で構成する魚食普及推進協議会は、横浜市神奈川区内の小学校と連携し、魚体の小ささや不揃い、漁獲量の不足で流通ルートに乗らない「未利用魚」を活用した学校給食を実施しました。平成30(2018)年11月には9校で「小イワシのカレー揚げ」が、同年12月には3校で小サバを使用した「サバのあんかけ」が給食に出され、いずれも児童から大好評でした。

また、未利用魚への理解を深めてもらうため、漁港での水揚げの様子を映像で見せたり、水産業の概要を説明したりする出前授業も併せて行いました。流通に乗る通常サイズのサバと利用されない小さいサイズのサバも実際に見せ、「未利用魚も、そのおいしさに変わりはない。どうすれば未利用魚を食べることができるかを考え、もったいないをなくそう」と呼びかけました。

未利用魚を活用した学校給食の取組は「水産資源の有効活用」、「魚食普及」、「水産に関する教育」、「地産地消」など様々な側面を持っており、今後も継続した取組を検討しているとのことです。

横浜市立西寺尾第二小学校での出前授業の写真
イワシを活用した学校給食の写真
横浜市立幸ケ谷小学校での出前授業の写真

(「魚の国のしあわせ」プロジェクト)

「魚の国のしあわせ」プロジェクトは、消費者に広く魚食の魅力を伝え水産物消費を拡大していくため、漁業者、水産関係団体、流通業者、各種メーカー、学校・教育機関、行政等の水産に関わるあらゆる関係者による官民協働の取組として、平成24(2012)年8月に開始されました。

このプロジェクトの下、水産物の消費拡大に資する様々な取組を行っている企業・団体を登録・公表し、魚食普及を目的に個々の活動の更なる拡大を図る「魚の国のしあわせ」プロジェクト実証事業を行っています。平成31(2019)年3月末までに取組を行っている115の企業・団体が登録され、優良な取組は「魚の国のしあわせ」推進会議によって魚の国のしあわせ大賞として表彰されています。

また、全国各地には、1)学校での出前授業や親子料理教室の開催等を通じて、子供やその家族に魚のおいしさを伝える、2)魚料理に関する書籍の出版やテレビ番組の企画、出演等、メディアを活用した消費者への日常的な魚食の推進を図るなど、様々な活動を展開している方がいます。このような方々を後押しするため、水産庁長官による「お魚かたりべ」の認定を行っており、平成31(2019)年3月末までに142名の方が任命されています。

一般に調理が面倒だと敬遠されがちな水産物を、手軽・気軽においしく食べられるようにすることも魚食普及の1つです。電子レンジで温めるだけだったり、フライパンで炒めるだけだったりと、ひと手間加えるだけで手軽においしく食べられるような商品及びその食べ方を選定する「ファストフィッシュ」の取組も「魚の国のしあわせ」プロジェクトの一環として行われています。これまでに3千を超える商品が「ファストフィッシュ」として選定され、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで販売されています。

さらに、市場のニーズが多様化してきている中で、単に手軽・気軽というだけでなく、ライフスタイルや嗜好に合う形の商品を提案することにより、魚の消費の裾野を更に広げていくことが期待されます。このため、子供が好み、家族の食卓に並ぶ商品や食べ方を対象とする「キッズファストフィッシュ」、国産魚や地方独特の魚を利用した商品や食べ方を対象とする「ふるさとファストフィッシュ」というカテゴリーを平成28(2016)年度から新たに設け、従来の「ファストフィッシュ」と合わせて3つのカテゴリーで選定を行っています。平成31(2019)年3月末現在で、延べ3,288商品が「ファストフィッシュ」、26商品が「キッズファストフィッシュ」、78商品が「ふるさとファストフィッシュ」に登録されています。

国では、このような取組を、消費者にとって身近なものにするため、日頃の活動の様子や、「お魚かたりべ」の名簿、「ファストフィッシュ」の選定商品等を利用者のニーズに合わせ、見やすく・検索しやすいような形で、webページ等によりPRしています。

(「プライドフィッシュ」の取組)

新鮮な旬の魚を日常的に食べる機会を持たない消費者もいる中で、魚介類の本当のおいしさを消費者に伝えることは、魚食普及に不可欠です。全国漁業協同組合連合会では、平成26(2014)年度より、地域ごと、季節ごとに漁師自らが自信を持って勧める水産物を「プライドフィッシュ」として選定・紹介する取組を始めました。全国各地のスーパーマーケットや百貨店でのフェアやコンテスト等を開催するとともに、「プライドフィッシュ」を味わえるご当地の飲食店や購入できる店舗をはじめ、魚食普及に関する様々な情報をインターネットにより紹介する取組も行っています。

コラム第6回Fish-1グランプリ

年に1度の魚の祭典「Fish-1フィッシュワングランプリ」が、平成30(2018)年11月25日、国産水産物流通促進センター(構成員JF全漁連等)の主催により東京都内で開催され、全国各地の漁師自慢の旬の魚を使った「プライドフィッシュ料理コンテスト」と、国産魚を使った手軽・気軽に食べられる「国産魚ファストフィッシュ商品コンテスト」の2つのコンテストやステージイベント等が行われました。来場者による投票の結果、プライドフィッシュ料理コンテストでは、1尾ずつ丁寧に釣り上げられたキンメダイを特製のタレで甘辛く煮た後、香ばしくあぶった「銚子つりきんめ煮炙り丼」が、国産魚ファストフィッシュ商品コンテストでは、レンジで温めてすぐに食べられる「呼子よぶこ剣先いか三色しゅうまい」が、それぞれグランプリに輝きました。

こうしたイベントを通して、多くの人々に水産物の魅力が伝わり、消費拡大につながることが期待されます。

プライドフィッシュ料理コンテストのグランプリ賞を授与する高野農林水産大臣政務官の写真
JF銚子(JF千葉漁連) 銚子つりきんめ煮炙り丼の写真
プライドフィッシュ料理コンテストの受賞者の写真
JF佐賀げんかい 呼子剣先いか三色しゅうまいの写真