3 ワシントン条約第14回締約国会議 〜適切な漁業管理と国際取引の規制を通じた水産資源管理の強化を目指して〜

(絶滅のおそれのある野生動植物を保護)

 『絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約』(いわゆるワシントン条約)は、野生動植物の国際取引の規制を輸出国 と輸入国が協力して実施することにより、採取・捕獲を抑制して、絶滅のおそれのある野生動植物の保護を図ろうとする国際条約です。

 19年6月3日から15日にかけてオランダのハーグ市で開催されたワシントン条約第14回締約国会議において、サメの仲間やヨーロッパウ ナギなどの水産生物に関する国際取引の規制について話し合われました。

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(サメ類の国際取引規制提案を否決)

 ヨーロッパ周辺海域において資源量が減少しているニシネズミザメとアブラツノザメの国際取引の規制が提案されました。しかし、他の 海域では資源量が豊富であり、世界的に絶滅のおそれが生じているとは科学的に認められないこと、また、たとえワシントン条約による国際取 引規制をかけても、その主な市場であるヨーロッパの国々の間の取引はワシントン条約による規制の対象とならないため、ヨーロッパ周辺海域 での資源減少の歯止めにはならないことから、これらの提案は認められませんでした。

(ヨーロッパウナギ資源の回復のため、国際取引を規制)

 ヨーロッパ全域から北部アフリカ地域にまで分布するヨーロッパウナギは、稚魚(シラスウナギ)や成魚の過剰漁獲、ダムや水力発電所 による河川への回遊経路の妨害などのために、稚魚の量が1970年代後半の1〜5%程度にまで減少しています。現在、必ずしも絶滅のおそれは ないものの、その取引を厳重に規制しなければ絶滅のおそれのある種になることが懸念されています。こうした状況を踏まえ、欧州議会は、本 種の国別管理計画の策定・実施や漁獲された稚魚の一部を河川等への再放流に使用すること等を内容とする資源回復計画を策定しました。これ を受け、締約国会議においては、違法な国際取引により資源回復計画の効果が損なわれることのないよう、国際取引にあたり輸出国が事前に発 給する輸出許可書を必要とするワシントン条約の附属書Uに掲載することが決定されました。この国際取引規制は、21年3月から効力が生じま す。

(適切な漁業管理と国際取引の規制を通じた水産資源管理の強化)

 近年、ワシントン条約においては、水産生物への関心が強まっています。我が国は、水産生物の保護については、第一に漁業管理によっ て行い、それを補完する上で必要な場合に国際取引の規制を行うべきであるとの考えのもと、国連食糧農業機関(FAO)や地域漁業管理機関* 1の全面的な関与の下での検討を推進しています。今回のヨーロッパウナギのように、絶滅のおそれに関する科学的な証拠があり、また、漁業 管理措置を補完する上で有効であると判断される場合には、ワシントン条約による国際取引の規制を行うことも必要です。

*1 地域漁業管理機関:ある一定の広がりをもつ水域の中で、漁業管理をするための条約に基づいて設置される国際機関。関係国の参加 により、対象水域における対象資源の保存・管理のための措置を決定する。