数字で理解する水産業
知っているようで知らない漁業の知識を令和元(2019)年度版から紹介します。

海面:4,364、漁業:3,359、遠洋漁業:349、沖合漁業:2,042、沿岸漁業:968、養殖業:1,005、内水面:57、漁業:27、養殖業:30、合計442万トン /[生産額](億円)海面:14,438、漁業:9,379、養殖業:5,060、内水面:1,141、漁業:185、養殖業:956、合計1兆5579億円](images/sec1_img01.png)
資料:(左)農林水産省「漁業・養殖業生産統計」、(右)農林水産省「漁業産出額」に基づき水産庁で作成
平成30(2018)年の日本の漁業・養殖業の生産量は、442万トン。これは前年からは12万トン(3%)増加した数字で、サンマやカツオ類の漁獲量とホタテガイの収獲量が増加したことによります。一方、生産額は前年から482億円(3%)減少し、1兆5579億円でした。減少の理由としては、アニサキスによる食中毒が発生し、カツオ類の価格が大幅に低下したことや、スルメイカの漁獲量が減少したことなどが挙げられています。
遠洋漁業
大西洋や太平洋、インド洋など、世界の海が舞台の漁業。長い日数をかけて行われる。代表例は、まき網漁業、マグロのはえ縄漁業やカツオの一本釣漁業。
沖合漁業
一般的に2~3日で帰ることができるエリアで行う漁業。20~150トンほどの動力漁船を使い、まき網漁法で、イワシ、サンマ、サバ、アジ、底びき網漁法でエビ、タコ、ズワイガニなどを獲る。
沿岸漁業
日帰りできる範囲で行う漁業。家族経営で行っていることが多く、獲る魚の種類は季節や地域によって特色がある。漁法もさまざま。
ピークは昭和59年。その後はゆるやかな減少傾向に

資料:農林水産省「漁業・養殖業生産統計」
日本の漁業は、第2次世界大戦後、沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へと漁場を拡大することで発展しました。しかし、昭和50年代には、沿岸から200海里(約370km)の水域で外国船は勝手に入って漁をしてはいけない、というルール設定を世界各国が次々と行い、遠洋漁業が難しくなっていきました。その結果、遠洋漁業の漁業生産量は、かつては漁船漁業全体の4割を占めていましたが、平成以降は1割ほどになりました。
遠洋漁業の生産量が減った分、沿岸漁業の割合が2割から3割へと増えました。しかし、沿岸の開発による水産生物の減少や、サケやマスの回帰率の低下など、環境の変化によってその生産量自体は次第に減っています。
一方、沖合漁業の生産量は昭和から平成を通じて、漁船漁業全体の6割を占めています。沖合漁業で獲る主な魚は、イワシ、アジ、サバ、サンマなどです。これらは一度に大量に漁獲できるため、「多獲性浮魚類(たかくせいうきうおるい)」と呼ばれます。ただし、これらの魚は海水の温度など、環境の変化の影響を大きく受けやすいため、漁獲量は時々で大きく変わります。


資料:農林水産省「漁業センサス」に基づき水産庁で作成
平成30(2018)年、漁業で働く人は15万1701人で、65歳以上の人がもっとも多くなっています。特に沿岸漁業においては、75歳以上でも仕事をする人が大勢います。一方、遠洋漁業や沖合漁業などで雇われて働く人たちは40~59歳が多くなっています。これは肉体的な限界を感じたり、定年で退職したりするためです。
漁業で働く人の数は減少傾向にあり、平成期の30年間で61%も減りました。年齢の面では、65歳以上の人の割合が一貫して増加してきましたが、平成後期からは39歳以下の割合がゆるやかながら増えています。近年は仕事や生き方の価値観がさまざまになったため、違う仕事から漁業に転職をする人が増えたりと、多様な人々が就業先として漁業に関心を持っているのが理由といえます。
漁業就業者
満15歳以上で過去1年間に漁業の海上作業に30日以上従事した者をいう。
漁業経営体
過去1年間に生産物を販売する目的で、海面において水産動植物の採捕や養殖の事業を行った世帯、または事業所のこと(作業日数が年間30日に満たない場合は除く)。
個人経営体、団体経営体
個人経営体は、個人で漁業を自営している人のこと。団体経営体は、漁業を行っている会社、漁業協同組合、漁業生産組合、共同経営などを指す 。


資料:農林水産省「平成29年度食品流通段階別価格形成調査」
一般的に水産物は、漁業者の手を離れてから産地の卸売市場、消費地の卸売市場、小売業者や外食業者を経て、消費者のもとに届きます。二つの卸売市場にはそれぞれの機能があります。産地の卸売市場では、漁業者が水揚げした漁獲物の集荷、選別、卸売などが行われます。消費地の卸売市場では、各地の卸売市場から集まったさまざまな水産物を集荷し、用途別に仕分けて、食品卸売業者や小売業者、外食業者に販売します。
漁業者から加工・小売・外食業者などへの直接取引、インターネットを通じた漁業者から消費者への直売など、近年では卸売市場を介さない販売も増えています。こうした販売法では、漁業者にとってはより多くの利益が入り、消費者にとっては生産者の顔が見えるのが利点です。


資料:農林水産省「食料需給表」
平成30(2018)年度、1人1年当たりの魚介類消費量は23.9kg。一方、肉類の同消費量は33.5kgでした。グラフを見るとわかるように、平成13(2001)年を境に魚介類の消費量は減り、平成23(2011)年以降は肉類の消費量が魚介類消費量を上回っています。
令和元(2019)年12月下旬~2(2020)年1月中旬に農林水産省が実施した「令和元年度食料・農業及び水産業に関する意識・意向調査」でも、64.9%の人が肉類をよく購入する、と答えています。また、この調査によると、健康に良い効果への期待や味を理由に魚を好んで買う人が多い一方で、家庭における魚介類の人気が低かったり、価格の高さや調理の手間から魚を食べることが難しくなっていると感じる人も多いようです。

![[輸入品目]令和元年(2019)1兆7404億円、上位からサケ・マス類、カツオ・マグロ類、エビ、エビ調製品、カニ、イカ、タラ類、その他。[輸出品目]令和元年(2019)2873億円、上位からホタテガイ、真珠、ブリ、ナマコ調製品、サバ類、カツオ・マグロ類、その他](images/sec5_img01.png)
資料:財務省「貿易統計」(令和元(2019)年)に基づき水産庁で作成
令和元(2019)年、日本は1兆7404億円の水産物を輸入し、2873億円を輸出しました。輸入品目のベスト3は、サケ・マス類(12.7%)、カツオ・マグロ類(11.0%)、エビ(10.5%)。サケ・マス類(2218億円)はチリやノルウェーから、カツオ・マグロ類(1909億円)は台湾、中国、マルタなどから、エビ(1828億円)はベトナム、インド、インドネシアなどから輸入しました。
輸出品目のベスト3は、ホタテガイ(15.5%)、真珠(11.5%)、ブリ(8.0%)。ホタテガイ(447億円)は中国や台湾、香港などが約8割を占めます。真珠(329億円)は香港が86.6%でダントツ。ブリ(229億円)は約7割を米国に輸出しています。
水産調製品
複数の原料を混合したり、加工を施した食品。例えば、エビ調製品は、水または塩水で煮た後に冷却したものなどを指す。
世界で一人当たりの魚介類の消費量が半世紀で2倍に!

資料:FAO「FAOSTAT(Food Balance Sheets)」(日本以外)、農林水産省「食料需給表」(日本)
日本では魚介類の消費量は減少傾向にありますが、日本以外の世界では逆に増加の傾向にあります。FAO(国連食糧農業機関)によると、1人当たりの食用魚介類の消費量は過去半世紀で約2倍となっています。
その理由には、輸送技術の発達や都市人口の増加、健康志向の高まりなどが挙げられます。特に経済の発展が進む新興国や発展途上国では、いも類などの伝統的な主食から、たんぱく質を多く含む肉類や魚類を含む食生活への移行が大きな要因となっています。
お問合せ先
漁政部企画課
担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344
FAX:03-3501-5097