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水産庁

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水産業・漁村地域の活性化を目指して −平成28(2016)年度農林水産祭受賞者事例紹介−


天皇杯受賞(水産部門)


技術・ほ場(多面的機能・環境保全)
唐桑町浅海(からくわちょうせんかい)漁業協議会青年部(代表:小野寺 芳浩(おのでら よしひろ)氏)

唐桑町浅海漁業協議会青年部

宮城県最北東端に位置する気仙沼市(けせんぬまし)唐桑町は、静穏な入り江を活用したカキやホタテの養殖が盛んな地域です。漁業者による植林運動、「森は海の恋人運動」は、この地から始まりました。

平成16(2004)年、気仙沼市立唐桑小学校から同校の学校支援委員となっている唐桑町浅海漁業協議会青年部に、「総合的な学習の時間」の一環として、カキ養殖を題材とした学習を実施したいとの依頼がありました。これを契機として、同青年部では、地域の子どもたちの海離れが進む中、基幹産業であるカキ養殖やふるさとのすばらしさを認識し、理解と知識を深めることが重要と考え、カキ養殖に関する学習支援事業を開始しました。青年部内に専任の担当者を置き、小学校と連携して毎年改良を重ねつつ、この取組を行ってきました。東日本大震災により一時中断を余儀なくされましたが、翌年平成24(2012)年夏には再開しました。

青年部が実施する学習支援事業は、漁場に専用の養殖筏(いかだ)を設置し、小学校4年生から6年生までの各学年ごとに作業やテーマを変えて、カキの養殖の生産サイクルである3年間を通して種挟み(種ガキを養殖用のロープに挟み込む作業)から販売まで行える体系的なプログラムになっています。

学習支援事業を開始した当初は、学外の体験は、青年部の部員のみが指導等に当たっていましたが、近年は、保護者や漁業者OB等青年部以外の地域住民の参加が増加しており、漁業関係者だけでなく、地域を巻き込んだ活動に成長・発展しつつあります。今後この取組が地域活動へ発展することによって、将来的な漁業後継者の育成や、漁業への理解者の創出といった効果が期待されます。

 

内閣総理大臣賞受賞(水産部門)


技術・ほ場(資源管理・資源増殖)
一般社団法人京都府機船底曳網(きせんそこびきあみ)漁業連合会(代表:嶋田 安男(しまだ やすお)氏)

一般社団法人京都府機船底曳網漁業連合会

京都府北部に位置する舞鶴市(まいづるし)、京丹後市(きょうたんごし)の底びき網漁業者から構成される京都府機船底曳網漁業連合会では、11人の会員全員が京都府沖合で操業しており、ズワイガニが重要な対象種となっています。

水揚げされるズワイガニの雄は、甲羅の堅い「たてガニ」と甲羅の柔らかい「水ガニ」に大別されます。水ガニは、脱皮直後で身入りが悪く、味も良くないため、市場での価格もたてガニの1/10と安く、更に未成熟で繁殖能力が低いため、水ガニの漁獲は、資源の持続的利用と漁業経営の面からも非効率でした。

そのため、同連合会では平成18(2006)年から水ガニの保護に向けた検討を開始。事前調査として、京都府農林水産技術センター海洋センターの協力を得て、水ガニの漁獲尾数や再放流した水ガニの生残率等の科学的データを収集・解析し、科学的根拠に基づいて水ガニ全量再放流(水揚げ全面禁止)という全国初の取組を実施することを決めました。

この取組を実行に移すに当たっては、影響を受ける地元の仲卸業者や、同じ漁場を利用する兵庫・福井両県の底びき網漁業者の合意を得ることが重要であるため、科学的根拠を示しながら粘り強く説得を行い、合意形成を図りました。その結果、平成20(2008)年から水ガニの水揚げ全面禁止が始まりました。

取組を開始する前と比べ、漁業者はたてガニの増加を実感しているそうです。また、実際に1隻当たりの漁獲量や、水揚金額は増加しています。

同連合会による水ガニの水揚げ全面禁止の取組以降、石川県から島根県までの1府5県のズワイガニ漁業団体による組織である「日本海ズワイガニ特別委員会」においても、水揚げ期間の短縮等、水ガニ保護が重要視されるようになりました。さらに、平成25(2013)年からは石川県においても水ガニの水揚げが全面禁止となる等、この取組は、日本海の広域に波及しています。

 

日本農林漁業振興会会長賞受賞(水産部門)


産物(水産加工品)
マルカサフーズ有限会社(代表:笠井 健司(かさい けんじ)氏)

マルカサフーズ有限会社

氷見市(ひみし)は、富山県の北西部に位置し、全国有数の良好な漁場である富山湾に面しています。氷見市では昔から漁業が盛んで、全国ブランドとなっている「ひみ寒ブリ」等の冬場のブリが、氷見漁港における漁獲金額の大きな割合を占めています。

氷見で寒ブリが水揚げされるのは、冬場のわずかな時期ですが、観光客等から一年中氷見のブリを食べたいというニーズがあったことから、マルカサフーズ(有)では、「骨なし」、「魚臭くない」、「簡単調理」及び「地元の前浜の魚の利用」の4つをコンセプトに、氷見のブリを熟成させた「ぶりステーキ」を通年商品として開発しました。

「ぶりステーキ」は、地元氷見港で水揚げされたブリを、骨を抜き、切り身にカットした後、塩麹(しおこうじ)に浸けて魚臭さを取ると同時に熟成させ、冷凍します。独自性を出すため、熟成には富山県農業試験場が育種開発した「黒むすび」という米を使って作った塩麹を使用。フライパンで5分程度焼けば火が通るよう、切り身の大きさや厚みにもこだわっています。また、消費者が楽しんで商品を選べるよう、味付けは照り焼き、西京味噌漬け、レモンペッパー漬けなど常時8種類、その他に季節商品として2~3種類用意する等の工夫もしています。

マルカサフーズ(有)では、基本理念である「地産(地元原料を使用する)、地工(地元で、工夫と愛情を注いで加工する)、小売(加工した人が地元で思いを伝えて適正な価格で購入してもらう)」の下、今後、店舗販売体制の拡充と併せて、ブランドのサイトを開設し、顧客との交流を活発化させて、双方向の情報交流を通じて販売の拡大をしていきたいとしており、このような取組は、全国の水産加工業者の参考となると考えられます。

 

日本農林漁業振興会会長賞受賞(むらづくり部門)


ゆかい村風間浦鮟鱇(かざまうらあんこう)ブランド戦略会議(代表:駒嶺 剛一(こまみね ごういち)氏)

ゆかい村風間浦鮟鱇ブランド戦略会議

風間浦村(かざまうらむら)は、本州最北端青森県下北(しもきた)半島の北西部に位置し、津軽海峡に面した沿岸漁業、林業、及び下風呂(しもふろ)温泉郷を中心とした観光業が基幹産業となっている村です。

漁業者の高齢化や後継者不足、観光客の減少による漁業と観光業の衰退が課題となっていたため、平成22(2010)年の新幹線駅開業を見据え、漁業と観光業の連携による交流人口の増加に向けて検討が始まりました。

平成21(2009)年に、下風呂、易国間(いこくま)及び蛇浦(へびうら)の村内3つの漁業協同組合の組合員、観光関係者、村、県などを構成員とする「風間浦きあんこう資源管理協議会(後の「ゆかい村風間浦鮟鱇ブランド戦略会議」)」を発足させ、下北地域のにぎわい創出、地域資源の付加価値向上等を目指して活動しています。

地元で漁獲されたキアンコウのブランド化に取り組み、平成26(2014)年に「風間浦鮟鱇」として地域団体商標に登録しました。これにより魚価が向上しました。認証基準として、<1>体重5㎏以上であること、<2>12~3月に漁獲されたものであること、<3>生きたまま水揚げされたものであること、及び<4>胃の洗浄を行ったものであること、の4項目を満たしたもののみにブランドタグを付けて出荷しています。<1>は産卵に加わる前の未成魚を、<2>は産卵期に接岸する親魚をブランド認証から外すことで、漁獲を制限し保護する狙いがあります。さらに、2㎏未満のキアンコウを再放流する等、資源管理型漁業により持続的な漁業を展開しています。

また、「ゆかい村風間浦鮟鱇ブランド戦略会議」が中心となって、全国的にも珍しい生きたまま水揚げされるキアンコウを起爆剤に、漁業と観光を融合させた「風間浦鮟鱇まつり」を毎年開催しています。まつりの期間中は下風呂温泉郷の宿泊施設で風間浦村でしか味わえないアンコウ料理が提供されるほか、雪の上でアンコウをさばく風間浦村の伝統的なさばき方「雪中切り」の実演イベントも行われ、販路拡大や冬場の観光振興に結びつき、地域一帯の取組に発展しています。

 

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