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水産庁

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(3)世界の漁業・養殖業生産


(漁業・養殖業生産量の推移)

水産物に対する需要の拡大と呼応して、世界の漁業・養殖業生産量は増加し続けています。平成27(2015)年の漁業・養殖業生産量は前年より3%増加して1億9,977万トンとなりました(図1−1−10)。このうち漁船漁業は、長年にわたり世界の魚介類供給の過半を支え続けてきましたが、1980年代後半以降は横ばい傾向で、平成27(2015)年には、9,377万トンとなっています。一方で、過去20年ほどの間に養殖生産量が爆発的に伸び、平成27(2015)年には1億601万トンと、全体の53%を占めるまでになりました。



(頭打ちとなった漁船漁業生産)

世界の漁船漁業生産量は、全体としては、1980年代後半以降頭打ちとなっています。その背景には、前述のように、多くの海洋水産資源が適正レベルの上限まで、又はそれを超えて利用されるようになっていること、また、新たな資源の開発が困難となっていること等があるものと考えられます。

世界の漁獲量の上位を占める魚種をみると、ペルーカタクチイワシ(アンチョビー)やマサバ等の多獲性浮魚類は、環境変動により資源水準が大幅な変動を繰り返すことから、漁獲量も増減を繰り返しています(図1−1−11)。スケトウダラ及び大西洋タラの漁獲量は回復傾向にありますが、ピーク時と比べれば低水準となっています。カツオ及びキハダの漁獲量は、増加傾向で推移しています。FAOによれば、世界の漁獲量において10位までを占める資源の多くが既に満限まで利用されているか過剰漁獲となっており、今後、これらの魚種の漁獲量を持続的に大きく増やす余地はありません。



主要漁業国・地域別の漁船漁業生産量をみると、EU、米国、我が国等の先進国・地域の漁獲量は過去20年ほどの間おおむね横ばいから減少傾向で推移してきています(図1−1−12)。これに対し、中国、インドネシア、ベトナム等といったアジアの新興国をはじめとする開発途上国による漁獲量の増大が続いています。特に中国の漁獲量は、1980年代から急激に増加し、平成11(1999)~13(2001)年に一旦減少しましたが、その後再び増加に転じ、平成27(2015)年には1,785万トンと世界の漁獲量の19%を占めるに至っています。



(拡大する養殖業生産)

過去20年ほどの間、世界の漁業・養殖業生産量の増大を担ってきたのは養殖業であり、養殖業生産量は海面及び内水面の双方で大きく増加してきました(図1−1−13)。平成27(2015)年の世界の養殖業生産量のうち、54%が海面養殖業、46%が内水面養殖業によるものとなっています。



海面養殖業で特に生産量を大きく増加させているのは藻類養殖で、平成27(2015)年の海面養殖業生産量の約5割を占めています。なお、養殖されている海藻類のおよそ半分は、ゲル化剤、増粘剤等を抽出するための工業用原料となる種のものです。また、アサリ、ハマグリ、カキ等の貝類養殖、エビ等の甲殻類養殖、サケ・マス類を中心とした魚類養殖も大幅な増加傾向で推移していますが、特に、給餌の必要のない二枚貝の養殖業の伸びが大きくなっています(図1−1−14)。

内水面養殖業では、魚類養殖が全体の約9割を占めており、そのうちの約6割はコイ・フナ類です。コイ・フナ類には、ハクレンやコクレン等、水中のプランクトンを食べて育つため給餌の必要がない魚類も含まれており、このこともこれらの魚種の養殖の拡大を後押ししているものと考えられます。また、ティラピア類やサケ・マス類といったその他の魚類養殖、エビ等の甲殻類の養殖も増加してきています。



養殖生産においても、開発途上国のシェアが大きく拡大しており、近年では世界の養殖業生産量の9割以上を開発途上国による生産が占めています。特に中国は、海面養殖及び内水面養殖の双方において突出した生産量を上げており、平成27(2015)年には6,154万トンと世界全体の養殖業生産量の58%を占めるまでになっています(図1−1−15)。中国の養殖生産のうち、海面養殖においてはコンブ等の海藻類が生産量の約5割を、また、内水面養殖においてはコイ・フナ類が約6割を占めています。

また、このほか、海面養殖においては工業用原料となる海藻類を多く生産するインドネシアやフィリピン、サケ・マス類で大きなシェアを持つノルウェー、チリ等が生産量を増加させています。一方、我が国及びEUの海面養殖業生産量は、2000年代前半以降横ばいから漸減傾向で推移しています。内水面においては、中国のほか、インド、インドネシア、ベトナム等がコイ・フナ類等の魚類養殖で生産量を伸ばしています。



(今後の世界の漁業・養殖業)

養殖業生産量が大幅に増加してきた結果、平成25(2013)年にはついに養殖業生産量が漁船漁業生産量を上回りました。世界の水産物生産の主力は漁船漁業から養殖業に移りつつあり、今後の世界の水産物需要の増加に対応していくのは、主に養殖業であると考えられます(図1−1−16)。

しかしながら、FAOは、今後、<1>水質の良い水、<2>養殖適地、<3>十分な量・質の養殖用種苗と餌料が入手できるかどうか等が制限要因となり、世界の養殖生産量の増加のスピードはこれまでより落ちると予測しています。また、漁船漁業は、技術的あるいは経済的な理由から養殖の対象とはならない魚種を含め多くの水産物の供給を担っています。さらに、養殖用餌料・飼料として用いられる魚粉の原料となるのは、主に漁船漁業で漁獲される多獲性浮魚類であり、漁船漁業なくして成り立たない養殖業種は数多くあります。こうしたことから、今後とも、世界の水産物供給においては、引き続き漁船漁業と養殖業の双方が重要な役割を果たしていくであろうと考えられます。



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