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水産庁

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(1)遠洋漁業等をめぐる国際情勢


(遠洋漁業の発展と縮小)

国際的に利用される資源を漁獲している漁業としてまず挙げられるのは、遠洋漁業です。我が国の漁業は、第2次世界大戦後、沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へと漁場を外延的に拡大することによって発展してきました。この結果、我が国の遠洋漁業生産量は、ピークの昭和48(1973)年には400万トンに迫り、我が国の漁業生産量全体の約4割を占めるまでになりました。

特に、北太平洋水域の遠洋底びき網漁業は、冷凍すり身技術の開発に伴って、かまぼこ原料としてのスケトウダラの需要が増大したこともあり、昭和40年代に飛躍的に発展し、ピーク時には遠洋底びき網漁業のみで約320万トンの漁獲を記録しました(図1−2−1)。

しかしながら、遠洋底びき網漁業がピークを迎えていた昭和40年代後半、南米、アジア及びアフリカ諸国を中心に、沿岸国の利益の保護を目的として、沿岸200海里内での漁業等に関する沿岸国の排他的な管轄権を主張する動きが急速に強まりました。昭和52(1977)年には、米国及びソビエト連邦をはじめカナダや欧州共同体(EC)諸国も200海里水域の設定に踏み切り、これにより、事実上200海里時代が到来しました。

200海里時代の到来により、諸外国の200海里水域での操業を継続するためには、沿岸国との間で漁場や漁獲割当てを確保するための交渉が必要となりました。しかしながら、沿岸国側では、自国の漁業の発展に伴い、漁業振興のために外国漁船の受入れを縮小する傾向が強まり、入漁をめぐる状況は次第に厳しさを増してきました。このため、我が国の遠洋漁業は漁場からの撤退や操業規模の縮小を余儀なくされてきました。平成27(2015)年の遠洋漁業生産量は36万トン、我が国の漁業・養殖業生産量全体に占める割合は8%となっています。



(近年の我が国の遠洋漁業をめぐる情勢)

近年、我が国の遠洋漁業の中心となっているのは、カツオ・マグロ類を対象とした海外まき網漁業、遠洋まぐろはえ縄漁業、遠洋かつお一本釣り漁業等であり、カツオ・マグロ類が我が国の遠洋漁業生産量の約9割を占めています。

我が国の遠洋漁船は、公海水域のほか、太平洋島嶼(とうしょ)国やアフリカ諸国等の各国の排他的経済水域(EEZ)においても操業を行っています。次節において詳述しますが、カツオ・マグロ類をはじめとする高度回遊性魚類等については、地域漁業管理機関と呼ばれる国際機関を中心とした管理がなされており、我が国の遠洋漁船も各地域漁業管理機関が定めるルールに従って操業しています。また、各国のEEZ内では、我が国と入漁先国との間に締結された政府間協定又は民間による入漁契約に基づき、操業が行われています。

こうした入漁先国の中で、特に太平洋島嶼国のEEZは重要な漁場です。平成26(2014)年に太平洋島嶼国のEEZで我が国の遠洋漁船が漁獲したカツオ・マグロ類は約18万トンと、沿岸まで含めた我が国のカツオ・マグロ類漁獲量全体の約4割を占めました(図1−2−2)。しかしながら、こうした国々への入漁環境は、近年急速に厳しさを増しています。太平洋島嶼国8か国から成る「ナウル協定加盟国(PNA)」では、これらの国々のEEZに入漁する外国まき網漁船に対し、1隻1日当たりの入漁料を事前に課す「隻日数(VD)制度」を統一的に実施しています。島嶼国の利益の最大化を目指し、PNAでは平成24(2012)年漁期よりこのVDに対して最低価格を導入しましたが、これにより、平成23(2011)年までは1,200~2,500米ドル程度であった1日当たりの入漁料は、平成24(2012)年には5千米ドル以上となり、更に平成27(2015)年漁期以降は8千米ドル以上まで大幅に引き上げられてきています。また、PNAでは、将来的にはえ縄漁船にもVD制度を適用する動きがあり、一部の国では平成28(2016)年から適用を始めています。加えて、自国の漁業の発展を目指す島嶼国側は、入漁条件として現地の加工場への投資や合弁会社の設立等を求めており、他の遠洋漁業国と比べて小規模な経営体が多い我が国の遠洋漁業にとっては、対応が困難な状況となりつつあります。


図1-2-2 我が国のカツオ・マグロ類漁獲量に占める太平洋島嶼国EEZ内の漁獲量の割合

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