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水産庁

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(3)沿岸漁業等をめぐる国際情勢


(我が国沿岸における国際的な資源の利用)

近年、国際社会との関わりの重要性が急速に増しているのは、沖合漁業だけではありません。我が国の漁業者の約8割が従事する沿岸漁業においては、サンマやサバ類、カツオのほか、太平洋クロマグロ等も漁獲されており、こうした資源の管理と利用に当たり、国際的な視点を踏まえた取組がますます重要となってきています。


○太平洋クロマグロに関する状況

太平洋クロマグロは、我が国周辺水域を含む太平洋を広く回遊する国際資源です。漁獲国は、我が国、韓国、台湾、米国及びメキシコと太平洋の東西にわたりますが、我が国が全体の約6割を漁獲する最大の漁業国となっています(図1−2−9)。我が国においては、まぐろはえ縄漁業、大中型まき網漁業、小型漁船によるひき縄漁業や釣り漁業、定置網漁業等の様々な漁業が太平洋クロマグロの漁獲に携わっています。



近年、太平洋クロマグロの資源量は、これまでの最低水準に近い状況にあり、国際的な協力の下で資源の回復を図ることが喫緊の課題となっています。我が国では、WCPFCにおける国際合意に基づき、平成22(2010)年より、太平洋クロマグロを漁獲する大中型まき網漁業やひき縄漁業等、また、天然で採取された太平洋クロマグロを養殖種苗として用いる養殖業について、管理を順次強化してきました。平成27(2015)年からは、WCPFCにおいて小型魚の年間漁獲量を平成14(2002)~16(2004)年水準から半減させる措置や、同様に大型魚の年間漁獲量を平成14(2002)~16(2004)年水準を超えないようにする措置が導入されました。これに伴い、小型魚について、我が国の年間漁獲上限となる4,007トンを大中型まき網漁業と沿岸漁業等(ひき縄漁業、定置網漁業等)に割り振り、沿岸漁業については全国を6ブロックに分けて小型魚の漁獲量の管理を開始しました。また、大型魚についても、我が国全体として、年間漁獲上限となる4,882トンを超えないよう漁獲量の管理をしています。

平成27(2015)年1月~28(2016)年6月の第1管理期間においては、全体として我が国の漁獲上限を超過することはなかったものの、太平洋北部ブロックではブロック別の漁獲上限を超過して操業自粛が要請され、日本海北部ブロックにおいてもブロック別の漁獲上限近くまで漁獲が進むなど、漁場の偏りにより特定の地域において漁獲量の管理が困難な状況が生じました。また、魚の通り道に網を設置して中に入り込んだ魚を漁獲する定置網漁業は、魚種を選択して漁獲することが難しいため、魚種別の漁獲量の厳格な管理が困難であることが課題として改めてはっきりしました。

こうした点を踏まえ、平成28(2016)年7月~29(2017)年6月の沿岸漁業の第2管理期間においては、地域間の漁獲の偏りに弾力的に対応できるよう、定置網において広域の共同管理枠を設けて漁獲の管理を実施しました。また、「海洋生物資源の保存及び管理に関する法律(TAC法)(*1)」に基づくTAC制度に準じ、試行的にクロマグロの数量管理に関する国の基本計画及び各都道府県の計画を策定して管理強化に取り組んできました。このような中、平成28(2016)年12月に、沿岸くろまぐろ漁業において、広域漁業調整委員会指示に基づく承認を得ない操業や漁獲量の未報告等があったことから、沿海地区の全都道府県に対し、広域漁業調整委員会指示に基づく承認制の周知徹底とともに、漁獲量の報告体制の再調査を求めました。

また、第2管理期間は、近年の中では良好な魚群の来遊があり、漁業者は、休漁や生きた魚の再放流等、漁獲抑制にも取り組んだものの、普段あまり太平洋クロマグロを漁獲しない漁業者による漁獲が多く発生し、その結果、平成29(2017)年3月末時点で、小型魚の年間漁獲上限となる4,007トンの超過が目前となる事態となりました。このため、同年6月までの沿岸漁業の第2管理期間終了まで、漁獲管理の実施を徹底するとともに、正確で速やかな漁獲状況の把握と漁業現場への伝達を行い、超過分が最小限となるよう抑制していくこととしています。一方で、漁業現場では、太平洋クロマグロ以外の魚種を狙った操業の際の混獲、定置網漁業による避けられない漁獲等、一定程度の漁獲は認めざるを得ず、結果的に生じる超過分は、WCPFCのルールに基づき、第3管理期間の漁獲上限から差し引くこととしています。

我が国は、太平洋クロマグロの持続的な利用に大きな責任を負っており、これらの状況を踏まえつつ、今後とも、関係者の理解を得ながらWCPFCの措置を着実に実施していくことが肝要です。このため、第2管理期間で試行的に実施中のクロマグロの数量管理の結果を踏まえ、平成30(2018)年からクロマグロについてTAC法に基づくTAC制度の導入を図ることにより、漁獲量のより正確で速やかな把握を行いつつ、太平洋クロマグロ資源の適切な管理を推進していくこととしています。


*1  平成8(1996)年法律第77号

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