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水産庁

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(4)各国・地域による国際的な保存管理措置の実施


(旗国による漁業の管理)

関係国・地域の協力の下で国際的な資源の管理のための措置を策定するのは地域漁業管理機関の役割ですが、策定された保存管理措置を漁業者が守るよう実施に移すのは、それぞれの国・地域の役割です。原則的に、EEZ内で操業する漁船に関しては沿岸国が、公海水域で操業する漁船に関しては船籍国(旗国)が管轄権を有しています。それぞれの国・地域が、自国のEEZにおける操業と自国を旗国とする漁船の操業の双方に関し、保存管理措置に対する遵守とその実効性を確保する責任を負っているのです。

一方、地域漁業管理機関を構成する国・地域には先進国もあれば開発途上国もあり、漁業種類や漁業の規模、政治的な背景、国内での実施体制等も様々です。以下にみるように、国・地域により様々な事情を背景とする実施上の課題があり、それぞれの国・地域が旗国としての管理責任を果たすための取組を続けていくことが必要です。


○インドネシアにおける国際的な漁業の管理

インドネシアは世界最大のカツオ・マグロ漁獲国であり、IOTC、WCPFC及びCCSBTに加盟しています。同国の周辺水域は、カツオや熱帯性マグロ類(メバチ及びキハダ)の漁場となっており、また、ミナミマグロが産卵のために回遊する水域でもあります。このため、大型漁船による商業的漁業だけでなく、沿岸零細漁業を含む多様な漁業が、そのEEZの内外においてカツオ・マグロ類を漁獲しています。

インドネシアでは、同国の漁業法に基づく法的な枠組みの下で漁業の管理が行われており、5トン以上の漁船を使用して行われる漁業は全て中央政府又は地方政府からの漁業許可を必要とします。

インドネシアの小規模漁港での水揚げ風景
インドネシアの
小規模漁港での水揚げ風景
(写真提供:(公財)海外漁業協力財団)

一方、有人離島だけでも6千を数えるといわれる同国では、多数の島々において、多数の沿岸零細漁業者が漁業活動に携わっており、漁業の全容を把握しづらいといった実情があります。このため、例えば、厳格なTACの管理が求められているミナミマグロ漁業においても、大型漁業による漁獲については管理が強化される一方で、沿岸零細漁業による漁獲実態については十分な把握が困難であるなどの課題があります。漁業実態が十分に把握できなければ、遵守上の問題が生じるだけでなく、漁業を通じて収集されるデータにも不備が生じることとなり、科学的な側面からも問題です。こうした状況を踏まえ、インドネシアは、我が国からの協力を得て、魚種別の漁獲量や漁業経営体数、経営状況等、漁業に関する統計や情報収集の強化・改善に取り組んでいます。

また、同国水域においては、監視・取締体制が弱いことを背景とした違法漁業の存在が問題となってきました。近年では、インドネシアEEZ内で違法操業を行った外国船を拿捕して爆破するなど、漁業に関する監視・取締体制の強化が図られています。


○中国における国際的な漁業の管理

中国は、近年、遠洋漁業を急速に発展させています。中国漁業年鑑によれば、平成26(2014)年には多数の新造された遠洋漁船が操業を開始し、イカ釣り漁業、遠洋底びき網漁業、サンマ漁業等を中心として、遠洋漁業の生産量は前年から約50%の著しい伸びを示しました。

中国は、CCSBTを除くカツオ・マグロ類の地域漁業管理機関に加え、NPFCやSPRFMO等にも加盟しています。国際的な保存管理措置に従った操業と効果的な漁業の監視のため、遠洋漁業への参入は許認可制とされており、毎年の年次審査が行われます。また、漁獲報告やVMSによる監視等の制度も導入されています。

一方、中国の漁業においては、有効な漁業許可証、漁船登記証及び漁船検査証を持たずに非合法な漁業に従事する「三無漁船」と呼ばれる漁船の存在が大きな問題となっています。平成25(2013)~26(2014)年に沖縄や小笠原等の周辺海域に出現した宝石サンゴの密漁船も、こうした違法漁船であるとみられます。中国当局は平成26(2014)年には浙江省(せっこうしょう)だけで約9千隻の「三無漁船」を取り締まったとしており、問題の規模の大きさをうかがわせます。これらの漁船は中国のEEZ外においても違法な操業を行っていますが、その全容は明らかでなく、NPFC等における資源管理の上でも大きな懸念事項となっています。こうしたことから、我が国としても、引き続き、中国に対して違法漁船の監視・取締体制の強化を強く求めています。


○韓国における国際的な漁業の管理

韓国は代表的な遠洋漁業国の一つであり、全てのカツオ・マグロ類の地域漁業管理機関に加盟していることに加え、底魚類を管理する多くの地域漁業管理機関にも参加しています。

韓国では、遠洋漁業に従事する漁船は、船ごとに許可を得ることとなっています。しかしながら、平成22(2010)年頃より、西アフリカ沖や南極海等において、韓国の遠洋漁船が無許可操業や漁獲枠の大幅超過等の違法操業に従事していたことが相次いで発覚し、国際的にも大きな問題となりました。このため、平成25(2013)年には、米国及びEUが韓国をIUU国家に予備指定しました。この制度は、IUU漁業の廃絶を目指した米国やEUによる一方的措置で、IUU国家として予備指定された国は、一定期間内に改善を認められなければ、米国又はEU域内への水産物輸出が制限されることとなります。こうした事態を受け、韓国は、遠洋漁業を管理する国内法を大幅に改正し、VMSと24時間監視の導入、違法操業に対する罰則の強化等、監視・取締体制を強化しています。

一方、我が国のEEZにおいては、「日韓漁業協定」に基づき韓国漁船による操業が行われていますが、協定発効以来、韓国はえ縄漁船による漁獲量の虚偽報告等の違法操業が後を絶ちません。このため、平成27(2015)年1月に行われた日韓漁業共同委員会の協議では、韓国漁船の違法操業の根絶のための対策を強化することで合意しました。しかし、その後も、違法操業の状況が改善されていないことから、現在行われている協議において、韓国側に対して更なる違法操業対策の強化を強く求めています。


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