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水産庁

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(5)漁業・養殖業に関する新たな技術の開発と導入


漁業・養殖業の競争力の強化を図るためには、新しい技術の開発と漁業現場への導入が重要な役割を果たします。国立研究開発法人水産研究・教育機構や大学、各地の研究機関等では、省エネ・省コスト化、漁業労働の軽減等を通じたより効率的な漁業・養殖業のための技術の研究開発が行われています。

例えば、従来、経験や勘に頼って行われてきた漁場の探索について、それらを補足するため、ドローンによる効率的な魚群探索に向けた研究開発や、情報通信技術(ICT)を用いて、水温や塩分、潮流等の漁場環境に関する情報の可視化に向けた研究開発が進められています。

また、漁業者との連携の下、いか釣り漁船へのLED漁灯の導入の実証試験等も進められており、こうした新たな技術の導入によって、環境への負荷を抑制しつつ収益性の向上が図られることが期待されます。

養殖業に関しても様々な技術開発が行われています。例えば、気候変動に対応した高温耐性の高いノリの育種素材の開発や、病気に強く成長が早いブリの選抜育種等が推進されています。また、資源の減少が問題となっているニホンウナギや太平洋クロマグロについて、資源の回復を図りつつ天然資源に依存しない養殖種苗の安定供給を確保するため、人工種苗を量産するための技術開発が進められています。さらに、カキやホタテガイ等における正確な貝毒検出方法に関する技術開発等、消費者の安全・安心につながる技術開発も行われています。


コラム:養殖の未来を広げるか、ゲノム編集

ゲノム編集のマダイ(上)と通常のマダイ(下)
ゲノム編集のマダイ(上)と
通常のマダイ(下)
(写真提供:(研)水産研究・教育機構)

「ゲノム編集」と呼ばれる最先端の技術がこの数年で急速に発達しています。ゲノム編集とは、生物の遺伝情報をつかさどるDNAの塩基配列の狙った場所に変異を起こさせる技術です。これまでの育種は、非常に長い年月とコストをかけて有用な形質を持つ個体を選抜することにより行われてきました。ゲノム編集は、育種改良を短期間のうちに行うことを可能とすることから、育種を飛躍的に進展させる画期的な技術として世界の注目を集めています。

水産分野においても、この技術を魚類養殖に応用することで、短期間で効率よく養殖に適した魚をつくり出そうとする研究が進められています。

京都大学、近畿大学、(研)水産研究・教育機構等の研究グループでは、ゲノム編集技術を用いて、成長の早いトラフグや筋肉量の多いマダイの作出に取り組んでいます。このマダイの研究では、筋肉の発達を抑制する遺伝子をゲノム編集によって不活化することで、通常の1.2倍程度体重が増加することが確認されています。

また、完全養殖技術の開発が進むクロマグロでは、養殖中の衝突死が大きな課題となっていますが、その要因となる光などの外部刺激に対する感受性や、刺激に反応して狂奔して泳ぎ回る行動をゲノム編集で抑制することにより、養殖中の衝突死を減らそうという研究が行われており、養殖効率の向上に寄与することが期待されています。

なお、ゲノム編集によって作出された生物の取扱いは、生態系への影響や食品としての安全性について、最新の科学的な知見や国際的な動向を踏まえつつ、今後、慎重に検討する必要があります。

 

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