(6)漁業協同組合の動向
(漁業協同組合の役割)
漁業協同組合は、各地の漁業者による協同組織として、組合員のために販売、購買、信用、共済等の事業を実施しています。また、漁業者が所得向上に向けて主体的に取り組む「浜の活力再生プラン」等の取組をサポートし、地域の水産物の加工や販売を通じて付加価値の向上を図ったり、輸出先の販路開拓を行ったりするなど、漁業経営の改善に様々な形で貢献しています。さらに、漁業権の管理や組合員に対する指導を通じて水産資源の適切な利用と管理に主体的な役割を果たしているほか、浜の清掃活動、河川の上流域での植樹活動、海難防止活動等に積極的に取り組み、漁村の地域経済や社会活動を支える中核的な組織としての役割を担っています。
愛媛県今治市にある桜井漁業協同組合の桜井漁業青年部会では、小型機船底びき網漁業に従事している会員がほとんどで、日頃から漁網に混入するごみの多さに悩まされていました。
このような状況の中、平成23(2011)年4月に部会の会員が地元ラジオのパーソナリティを引き受けたことをきっかけに、番組を通じて知り合った地元のNPOと共同で海浜清掃を実施することになりました。
海浜清掃に当たっては、ラジオを通して広く市民に参加を呼びかけ、子どもから大人までが楽しみながら参加できるイベントにしています。海浜清掃の前には、どのようなごみが多いのか、どこから流れてくるのか等の説明とともに、ヒョウモンダコ等の海の危険な生物の話等、開催ごとにいろいろな内容の講義を行っています。皆で浜のごみ拾いをした後には、部会のメンバーが漁獲した魚介類を使った昼食会。食材や調理方法は毎回変えており、子どもたちもおいしそうに食べているそうです。さらに、昼食後はビーチサッカーを行い、参加者全員で自分たちが清掃した砂浜をはだしで駆け回りながら楽しみます。
この活動は毎回約70人の参加者を集めており、地域の人たちの間に環境保全の輪を広げるのに役立っています。
(漁業協同組合の経営と組織再編の状況)
漁業協同組合の経営は、漁業者数が減少傾向にある中で厳しい状況に置かれており、沿海地区漁業協同組合のうち約7割の組合で事業利益が赤字となっています。平成27(2015)年度においては、魚価の回復により沿海地区漁業協同組合全体での事業利益の総額は55億円の黒字となりましたが、引き続き自主的な経営改善を推進していく必要があります(図2−2−21)。また、漁業協同組合全体でみると、過去に、多額の欠損金が累積していました(平成18(2006)年度に450億円超)が、平成20(2008)年度から本格的に実施してきた欠損金の解消に向けた取組の結果、平成27(2015)年度には200億円程度まで減少してきています。
今後とも漁業協同組合が漁業・漁村の中核的組織としての役割を果たしていくためには、組織及び基盤を強化し、事業を効率的かつ効果的に運営していく必要があります。このため、県域ごとの実情に応じた広域での漁業協同組合の合併、欠損金の解消等、経営・事業基盤強化のための改革を引き続き推進していく必要があります。平成28(2016)年3月末現在の組合数は962組合となっています(図2−2−22)。