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水産庁

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(2)沿岸漁業におけるICTの活用

沿岸漁業において、ICTは、養殖業と同様に水温等のデータを測定して海の状況を把握することに加え、過去の漁獲データを基にした漁場予測や漁獲予測、更には資源管理等のための活用が期待されています。養殖業に比べると、ICTの活用は、事例は少ないもののタブレット端末の導入など、近年、急速に進んでいる関連機器の小型化などにより、漁獲量や水揚金額等に関する情報の収集や分析、流通業者や消費者との情報共有が行われることによって、適切な資源管理や効率的な操業、流通の合理化につながることが期待されます。

事例北海道留萌るもい市におけるナマコの資源管理

北海道留萌市の沿岸域では、中国市場の開拓によって単価が上昇したナマコの漁獲意欲が高まり、ナマコ資源が急激に減少しましたが、漁業者は自分の漁獲状況からしか資源状況を推測できなかったため、資源管理に向けての合意形成ができませんでした。そこで、ナマコ桁網漁船全16隻がお互いの位置情報と漁獲情報を共有することでナマコの資源状況をより正確に把握し、資源管理に取り組んでいます。

平成22(2010)年からは、公立はこだて未来大学が中心となってタブレット端末による操業日誌のデジタル化に取り組み、漁業者がタブレット端末からリアルタイムで送信した曳網時刻と漁獲データをもとに稚内わっかない水産試験場が資源量を推定し、結果を漁業者に報告するというシステムを構築しました。その報告を目にした漁業者が資源量減少を実感して資源保護に取り組んだ結果、この沿岸域でのナマコの資源量は平成22(2010)年度59トンから平成27(2015)年度96トンへと順調に回復を続けています。

なお、北海道内の他の地域でも、公立はこだて未来大学が中心となって、ICTの導入を始めています。奥尻町おくしりちょうでは、ウニ、アワビ等の磯根資源の漁獲と保護の状況を可視化するとともに、海洋情報と漁船のGPS情報からベテラン漁師の技を継承できる担い手育成のための技術開発や位置情報と潮流情報から海難救助体制を構築する取組を始めています。また、函館市はこだてしでは、いか釣りや定置網で漁場予測システムの導入が検討されています。

タブレット端末での漁獲情報の入力画面の写真
漁船の航行記録画面の写真
ナマコを水揚げする様子の写真

事例宮崎県日向灘ひゅうがなだにおける浮魚礁で得られた沿岸海況情報の提供

宮崎県日向灘沖に設置されている複数の浮魚礁は、回遊性魚類の優れた漁場を形成するとともに、水温、流速等を計測する機器が取り付けられており、これらの情報は定期的に陸上の観測基地に送信され、水産試験場により海況情報の基礎データとして利用されています。また、収集された海況情報は、カツオ一本釣りや曳縄の漁業者の効率的な操業に役立つよう、浮魚礁の位置とともにweb上で公開されています。

沿岸海況情報の提供にも資する浮魚礁の写真
浮魚礁で得られた海況情報(風向・風速・流向・流速等)を提供している宮崎県水産試験場のWebサイトの画面

事例宮城県東松島市における効率的な定置網漁業の取組

宮城県東松島市の定置網漁業では、網の中の魚の入り具合で出漁の必要性の有無を判断したり、出漁時に船の数や人手の適正化を図る取組を進めています。

漁業者が定置網の海中にカメラを設置して、送信されてくる海中画像を漁業者がスマートフォンで確認できるシステムを導入するとともに、水温等を計測できるセンサーを取り付けたブイを浮かべて海洋データの収集を行っています。

また、海洋データと過去の漁獲データを解析して漁獲量を予測する取組も行っており、現在はその的中精度を高める研究を行うとともに、漁獲情報等を小規模飲食店にもオープンにすることで漁業者と直接取引を行う新しい水産物産地直送も目指しています。

これらのシステム導入により、将来的には買い手の需要に応じた漁獲や漁獲予測を踏まえた漁獲規制等漁業の効率化が図られることが期待されます。

海洋観測ブイからのデータをタブレット端末で確認している写真

事例山口県日本海域におけるマアジやケンサキイカの漁場予測システム

山口県では、近年、海水温の上昇による環境の変化等もあり、マアジ、ケンサキイカの来遊量や漁場形成が不規則になっている中、県内の関係する漁業者の操業の効率化やコスト削減のため、JAFICとの共同研究により、これらの魚種を対象にした漁場予測システムの運用を平成29(2017)年7月から開始しています。

沿岸域の海水温観測データ等と過去の漁獲記録を解析して、形成される漁場を予測(主漁期(5~11月)においては10日ごとに漁場予測を更新)し、インターネットで情報提供しています。

図:8月下旬のケンサキイカの漁場予測図

山口県沿岸域における8月下旬のケンサキイカの漁場予測を4段階で示した図。対馬海流付近に集まっている。

図:8月下旬のマアジの漁場予測図

山口県沿岸域における8月下旬のマアジの漁場予測を4段階で示した図。対馬海流付近に集まっている。

事例九州北部水域での漁場予測システム

九州北部水域では、九州大学が中心となって、漁業者参加型の海域観測網を整備した上で、観測データを用いた高精度の沿岸海域モデルを開発し、漁場形成の鍵となる潮目や水温分布の情報を高い頻度で漁業者に提供する仕組みを構築しています。そのため、関係県や民間が連携して、漁業者自身がリアルタイムで、自分が出漁した海域の情報(水温、塩分等)を取得することができる、安価で簡易な小型計測機器の開発を行っています。

また、取得した観測データ等を用いて、今後、周辺海域のどこに漁場が形成されるのかを予測するモデルを開発するとともに、これを使った予測情報を漁業者の携帯端末等に配信するアプリの開発も行っています。

これにより、沿岸海域の水質や潮流の変化を正確に予測するとともに、携帯端末等を用いて「漁場の見える化」を図り、経験が少なくても、より効果的な漁業ができるようになることが期待されます。

CTD試作機の写真
CTDから得られたデータをスマートフォンに表示している写真
  1. Conductivity Temperature Depth:電気伝導度、水温及び深度を測定する機械。