このページの本文へ移動

水産庁

メニュー

(4)資源を積極的に増やすための取組

(種苗放流の取組)

多くの水産動物は、産卵やふ化の後に捕食されるなどして、成魚まで育つものはごくわずかです。このため、一定の大きさになるまで人工的に育成し、ある程度成長してから放流することによって資源を積極的に増やしていく種苗放流の取組が各地で行われています。

現在、都道府県の栽培漁業センター等を中心として、ヒラメ、マダイ、ウニ類、アワビ類等、全国で約70種を対象とした水産動物の種苗放流が実施されています(表2-1-2)。

表2-1-2 種苗放流の主な対象種と放流実績(単位:万尾)

 

平成20年度
(2008)

21
(2009)

22
(2010)

23
(2011)

24
(2012)

25
(2013)

26
(2014)

27
(2015)

地先種

アワビ

2,414

2,470

2,318

1,362

1,251

1,250

1,458

2,190

ウニ

6,781

6,618

7,066

5,799

6,325

5,876

6,503

6,065

ホタテガイ

326,668

326,369

318,334

318,095

329,632

318,183

320,770

350,303

広域種

マダ

1,402

1,407

1,424

1,223

1,104

1,012

994

960

ヒラ

2,364

2,191

1,994

1,589

1,549

1,632

1,424

1,414

クルマエビ

10,519

10,727

10,634

10,795

13,284

12,422

10,730

9,251

サケ(シロザケ)

181,000

185,200

180,500

164,300

162,000

177,500

174,800

177,000

また、国では、計画的かつ効率的な種苗放流を推進するため、放流された種苗を全て漁獲することを前提とするのではなく、親魚となったものの一部を獲り残して次世代の再生産を確保する「資源造成型栽培漁業」の取組を引き続き推進しています。また、ヒラメ、マダイ及びトラフグのように都道府県の区域を越えて移動する魚種については、全国を6地区に分けて設立された「海域栽培漁業推進協議会」の下、放流適地や関係都道府県の連携による種苗生産のあり方などを定めた「広域プラン」を策定し、それぞれの海域で効率的かつ効果的な種苗生産と放流を進めています。

また、「秋ざけ」として親しまれている我が国のサケ(シロザケ)は、親魚を捕獲し、人工的に採卵、受精、ふ化させて稚魚を河川に放流するふ化放流の取組により資源が造成されていますが、近年、放流した稚魚の回帰率の低下により、資源が減少しています。気候変動による海洋環境の変化が、海に下がった後の稚魚の生残に影響しているとの指摘もあり、国では、環境の変化に対応した放流手法の改善の取組等を支援しています。

事例第37回全国豊かな海づくり大会

全国豊かな海づくり大会は、水産資源の保護・管理と海や湖沼・河川の環境保全の大切さを広く国民に訴えるとともに、つくり育てる漁業の推進を通じて、明日の我が国漁業の振興と発展を図ることを目的として、昭和56(1981)年から毎年開催されています。

平成29(2017)年は、「育もう うみ ひと 地域ちいき みんなの未来」をテーマに福岡県で開催されました。

当日予定されていた海上歓迎・放流行事は、荒天のため中止となりましたが、式典行事では、天皇皇后両陛下による稚魚等のお手渡しが行われ、お手渡しを受けた稚魚等は、後日、福岡県内の各海区にて放流等が行われました。

次回の第38回大会は、「森・川・海 かがやく未来へ 水の旅」をテーマに高知県で開催される予定です。

稚魚等をお渡しになる天皇皇后両陛下の写真

(沖合域における生産力の向上)

沖合域は、アジ、サバ等の多獲性浮魚類、スケトウダラ、マダラ等の底魚類、ズワイガニ等のカニ類など、我が国の漁業にとって重要な水産資源が生息する海域です。これらの資源については、種苗放流によって資源量の増大を図ることが困難であるため、生息環境を改善することにより資源を積極的に増大させる取組が重要です。

これまで、各地で人工魚礁等が設置され、水産生物に産卵場、生息場、餌場等を提供し、再生産力の向上に寄与しています。また、国では、沖合域における水産資源の増大を目的として、保護育成礁や、鉛直混合*1を発生させることで海域の生産力を高めるマウンド礁の整備を実施しており、水産資源保護・増殖に大きな効果がみられています。

  1. 上層と底層の海水が互いに混ざり合うこと。鉛直混合の発生により底層にたまった栄養塩類が上層に供給され、植物プランクトンの繁殖が促進されて海域の生産力が向上する。

図2-1-9 国のフロンティア漁場整備事業の概要

フロンティア漁場整備事業

図1:整備箇所

保護育成礁(日本海西部地区),マウンド礁(隠岐海峡地区,対馬海峡地区,大隅海峡地区,五島西方沖地区)の整備場所を示した西日本の地図。

図2:保護育成礁で捕獲された水産動物

ズワイガニのイメージ
アカガレイのイメージ

図3:マウンド礁のメカニズム

マウンド礁造成により栄養塩濃度の分布が広がっている図。栄養塩の増加により、植物プランクトン,動物プランクトン,小型魚類,大型魚類が増加する。また、デトリタス(糞、死骸等有機物)の沈降により、ベントス類,魚介類も増加する。

(内水面における資源の増殖と漁業管理)

河川・湖沼等の内水面では漁業法に基づき、魚類の採捕を目的とする漁業権の免許を受けた漁業協同組合には資源を増殖する義務が課される一方、その経費の一部を賄うために遊漁者から遊漁料を徴収することが認められています。これは、一般に海面と比べて生産力が低いことに加え、遊漁者等漁業者以外の利用者も多く、漁獲が資源に与える影響が大きいためです。こうした制度のもと、内水面の漁業協同組合が主体となってアユやウナギ等の種苗放流や産卵場の整備を実施し、資源の維持増大や漁場環境の保全に大きな役割を果たしています。