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水産庁

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(5)多国間の漁業関係

(地域漁業管理機関)

国連海洋法条約では、沿岸国及び高度回遊性魚種を漁獲する国は、資源の保存及び利用のため、EEZの内外を問わず地域漁業管理機関を通じて協力することを規定しています。

この地域漁業管理機関では、沿岸国や遠洋漁業国などの関係国・地域が参加し、資源評価や遵守状況の検討を行った上で、漁獲量規制、漁獲努力量規制、技術的規制などの実効ある資源管理の措置に関する議論が行われます。

特に、高度に回遊するカツオ・マグロ類は、世界の全ての海域で、それぞれの地域漁業管理機関による管理が行われています。また、カツオ・マグロ類以外の水産資源の管理についても、底魚を管理する北西大西洋漁業機関(NAFO)等の既存の地域漁業管理機関に加え、近年、サンマ・マサバ等を管理する北太平洋漁業委員会(NPFC)などの新たな地域漁業管理機関も設立されています。

我が国は、責任ある漁業国として、我が国漁船の操業海域や漁獲対象魚種に関し設立された地域漁業管理機関に加盟し、資源の適切な管理と持続的利用のための活動に積極的に参画しています。

(カツオ・マグロ類の地域漁業管理機関の動向)

世界のカツオ・マグロ類資源は、地域又は魚種別に5つの地域漁業管理機関によって全てカバーされています。このうち、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)、全米熱帯まぐろ類保存委員会(IATTC)、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)及びインド洋まぐろ類委員会(IOTC)の4機関は、それぞれの管轄水域内においてミナミマグロ以外の全てのカツオ・マグロ類資源について管理責任を負っています。また、南半球に広く分布するミナミマグロについては、みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)が一括して管理を行っています。

図2-3-11 カツオ・マグロ類を管理する地域漁業管理機関と対象水域

中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)(平成16年),全米熱帯まぐろ類保存委員会(IATTC)(昭和25年),大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)(昭和44年),インド洋まぐろ類委員会(IOTC)(平成8年),みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)CCSBT(平成6年)の対象地域を示した世界地図。

○西太平洋におけるカツオ・マグロ類の管理(WCPFC)

太平洋の西側でカツオ・マグロ類の資源管理を担うWCPFCの水域には、我が国周辺水域が含まれ、この水域においては、我が国のかつお・まぐろ漁船(はえ縄、一本釣り及び海外まき網)約570隻のほか、沿岸はえ縄漁船、まき網漁船、一本釣り漁船、流し網漁船、定置網、ひき縄漁船等がカツオ・マグロ類を漁獲しています。

北緯20度以北の水域に分布する太平洋クロマグロ等の資源管理措置に関しては、WCPFCの下部組織の北小委員会で実質的な協議を行っています。特に、太平洋東部の米国やメキシコ沿岸まで回遊する太平洋クロマグロについては、太平洋全域での効果的な資源管理を行うために、北小委員会と東部太平洋のマグロ類を管理するIATTCの合同作業部会が設置され、北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)*1の資源評価に基づき議論が行われます。その議論を受け、北小委員会が資源管理措置案を決定し、WCPFCへ勧告を行っています。

太平洋クロマグロの親魚資源量は、減少傾向には歯止めがかかっているものの、現在歴史的に低い水準(平成26(2014)年は約1.7万トン)にあるとのISCの資源評価を踏まえ、第1節でも述べたように、WCPFCでは、<1>2024年までに、少なくとも60%の確率で歴史的中間値(約4.1万トン)*2まで親魚資源量を回復させることを暫定回復目標とすること、<2>30kg未満の小型魚の漁獲を平成14(2002)~16(2004)年水準から半減させること、<3>30kg以上の大型魚の漁獲を同期間の水準から増加させないこと等の措置が実施されています。

平成29(2017)年12月に開催されたWCPFC第14回年次会合では、8~9月に開催された第13回北小委員会で合意されたとおり、<1>現在の目標である「暫定回復目標」を達成した後の目標として、10年以内に60%以上の確率で初期資源量*3の20%(約13万トン)まで資源を回復させること、<2>資源評価において、「暫定回復目標」の達成確率が60%を下回った場合には漁獲上限の削減など管理措置を厳しくする一方、逆に75%を上回った場合には漁獲上限の増加が検討可能となる「漁獲制御ルール」が、全会一致で採択されました。

  1. 日本、中国、韓国、台湾、米国、メキシコ等の科学者で構成。
  2. 親魚資源量推定の対象となっている昭和27(1952)~平成26(2014)年の推定親魚資源量の中間値。
  3. WCPFCの資源評価では、資源評価上の仮定を用いて、漁業がない場合に資源が理論上どこまで増えるかを推定した数値。

カツオ及び熱帯性マグロ類(メバチ及びキハダ)の資源管理に関しては、我が国が、近年日本沿岸へのカツオやメバチの来遊量の減少の主要因は、熱帯水域における外国の大型まき網漁船の漁獲増大にあり、大きな問題であると受け止めている一方で、WCPFCにおいてはカツオの資源状況は良好と評価され、加盟メンバーの大半を占める太平洋島しょ国等は、更なる措置の強化は不要とするなど、我が国の立場とは大きな隔たりがあります。このため、我が国の主張が理解を得られることは難しい状況ですが、平成17(2005)年以降、我が国は一貫して熱帯水域のまき網漁業の管理強化を主張してきた結果、小型魚を多く漁獲してしまう集魚装置(FADs)を用いたまき網漁業の操業の段階的な規制強化や先進国の大型まき網漁船の隻数凍結の措置がとられてきました。

平成29(2017)年8月のWCPFC第13回科学小委員会において、メバチの資源は乱獲状態ではなく、過剰漁獲状態でもないが、資源が減少傾向にあり、また、資源評価結果には大きな不確実性があるため、漁獲死亡率を増やすべきではないとの管理勧告がなされました。これを受け、平成29(2017)年12月の第14回年次会合では、我が国は、科学委員会の勧告に基づき漁獲死亡率を増やすべきではないという主張を行ったことに対し、その他の国は、科学委員会の勧告の「乱獲状態ではなく、過剰漁獲状態でもない」という側面から、規制を緩和すべきとの主張を行い各国の意見の一致が見られませんでした。我が国は、平成29(2017)年末にそれまでの資源管理措置が失効するため、まずは合意に至ることを最重視して議論を主導した結果、平成30(2018)年の1年間の暫定措置として、熱帯水域のまき網漁業については、FADsを用いた操業の禁止期間が緩和される一方、FADsの個数についての年間上限の設定や公海での操業日数の制限を受ける対象船の拡大とともに、従来どおり、先進国の大型まき網漁船の隻数凍結等を内容とする措置が合意されました。また、はえ縄漁業については、メバチの漁獲上限が平成27(2015)・28(2016)年水準に増加(我が国の漁獲上限は1万6,860トンから1万8,265トン)することとなりました。

○東太平洋におけるカツオ・マグロ類の管理(IATTC)

太平洋の東側でカツオ・マグロ類の資源管理を担うIATTCの水域では、我が国のまぐろはえ縄漁船約70隻が、メバチ及びキハダを対象に操業しています。

太平洋クロマグロについては、IATTCはWCPFCと協力して資源管理に当たっており、平成28(2016)年の年次会合では、<1>商業漁業については、平成29(2017)年及び平成30(2018)年の年間漁獲上限3,300トンを原則とし、2年間の合計が6,600トンを超えないように管理すること、<2>漁獲のうち30kg未満小型魚の比率が50%以下となるよう努力すること等の保存管理措置が合意されました。

また、平成29(2017)年7月の年次会合では、メバチ及びキハダに関して、まき網漁業の禁漁期間の拡大、はえ縄漁業の国別の漁獲上限の継続(我が国漁獲枠は3万2,372トン)等の措置がとられました。

○大西洋におけるカツオ・マグロ類の管理(ICCAT)

大西洋のカツオ・マグロ類等の資源管理を担うICCATの水域では、我が国のまぐろはえ縄漁船約80隻が、大西洋クロマグロ、メバチ、キハダ、ビンナガ等を対象として操業しています。

ICCATにおいては、大西洋クロマグロの資源状態の悪化を受け、平成19(2007)年から、西経45度より東側の資源の30kg未満の未成魚を原則禁漁にするなどしてTACを大幅に削減する等の厳しい保存管理措置をとってきました。その後、資源の回復がみられ(図2-3-12)、平成29(2017)年のICCAT科学委員会において、TACを大幅に増加させることが可能と評価されました。これを受け、平成29(2017)年の年次会合で、東側資源は、平成30(2018)年からの3年間で、平成29(2017)年の2万3,655トンから、段階的に引き上げること(平成30(2018)年で2万8,200トン、平成31(2019)年で3万2,240トン、2020年で3万6,000トン)が合意されました。

図2-3-12 ICCAT 大西洋クロマグロの東側資源の産卵親魚量の推移

大西洋クロマグロの東側資源の産卵親魚量の年次推移を示した図。減少傾向が続いていたが、平成19年からTACを大幅削減して小型規制を強化したため、その後は回復基調にある。

○インド洋におけるカツオ・マグロ類の管理(IOTC)

インド洋のカツオ・マグロ類の資源管理を担うIOTCの水域では、約50隻の我が国のかつお・まぐろ漁船(はえ縄及び海外まき網)が、メバチ、キハダ、カツオ等を漁獲しています。

平成29(2017)年の年次会合では、キハダの保存管理措置について、まき網漁船1隻当たりのFADsの数を制限する措置が強化された一方、カジキ類の保存管理措置については、関係国間で合意に至らず採択されませんでした。

なお、IOTCにおいては、熱帯性マグロを対象として、公海における漁業種類ごとの操業隻数を平成18(2006)年レベルに抑制する漁獲能力規制に加え、キハダの漁獲量規制等が導入されています。

○ミナミマグロの管理(CCSBT)

南半球を広く回遊するミナミマグロの資源はCCSBTによって管理されており、また、同魚種を対象として我が国のまぐろはえ縄漁船約90隻が操業しています。

CCSBTでは、資源状態の悪化を踏まえ、平成19(2007)年からTAC*1を大幅に削減したほか、漁獲証明制度の導入などを通じて資源管理を強化してきた結果、近年では資源は回復傾向にあると評価されています。平成29(2017)年の年次会合では、前年に合意されたとおり、平成30(2018)年からの3年間、各年のTACを3千トン増の1万7,647トン(日本の割当は約1,400トン増の6,165トン)とすることが確認されました。

  1. CCSBTでは、資源再建目標を達成するため平成23(2011)年から3年ごとに管理方式(漁獲データなどの資源指標から自動的にTACを算出する漁獲制御ルール)に基づきTACの決定が行われている。

(NPFC等の地域漁業管理機関の動向)

カツオ・マグロ類以外の水産資源についても各地域漁業管理機関で管理措置がとられています(図2-3-13)。

図2-3-13 カツオ・マグロ類以外の資源を管理する主な地域漁業管理機関と対象水域

北太平洋漁業委員会(NPFC)(平成27年),南太平洋漁業管理機関(SPRFMO)(平成21年),北西大西洋漁業機関(NAFO)(昭和54年),北東大西洋漁業委員会(NEAFC)(昭和57年),南東大西洋漁業機関(SEAFO)(平成15年),地中海漁業一般委員会(GFCM)(昭和27年),南インド洋漁業協定(SIOFA)(平成24年)の対象地域を示した世界地図。

特に、平成27(2015)年に発効した北太平洋漁業資源保存条約は、サンマ、マサバ、クサカリツボダイ等の水産資源の保存と持続的利用を目的としており、同条約に基づき設置された北太平洋漁業委員会(NPFC)において、我が国は、関係国等と協調しつつ、主導的な役割を果たしています。

平成29(2017)年7月に開催された第3回会合において、サンマの国別漁獲上限を設定する我が国の提案は時期尚早等の理由から合意が得られませんでしたが、遠洋漁業国・地域による許可隻数の増加を禁止する提案については合意されました。本措置は1年限りとし、平成30(2018)年の次回会合で再度議論されることとなっています。マサバについては、我が国の提案により、可能な限り早期に資源評価を完了し、それまでの間、公海でマサバを漁獲する許可漁船の隻数の増加を禁止する措置が合意されました。さらに、我が国の提案をもとにIUU*1漁船リストが採択され、無国籍船23隻の掲載が決定しました。

  1. 本項(5)多国間の漁業関係(109ページ)参照

引き続き、将来的なサンマ資源の減少に対する我が国の懸念を強く訴え、漁獲量の適切な制限等、保存管理措置の更なる強化を働き掛けていきます。

コラム日本に馴染みのあるサンマやマサバが地域漁業管理機関で議論される理由

日本近海で漁獲される、我々に馴染み深いサンマとマサバがなぜ公海水域を対象とするNPFCで議論されているのでしょうか。

サンマはマグロ類と同様、高度回遊性魚種と呼ばれ、北太平洋の公海を広く回遊する魚種です。日本は従来、日本EEZ内に回遊してきたサンマを漁獲するとともに、国内での資源管理を推進してきました。しかし、近年は公海域における中国、台湾等の漁獲が多くなり、国際的な資源管理の必要性が高まってきました。

一方、マサバ(太平洋系群)は、日本EEZ内を中心に生息する魚種で、日本はサンマと同様、国内の資源管理を進めてきました。その結果、近年は資源が増加期に入り、日本EEZの外側まで資源がしみ出すようになりましたが、中国等の外国による同一資源の漁獲が増加しており、資源への影響が懸念されています。

以上のように、どちらの魚種も公海域に資源が存在するため、NPFCにおいてこれらの魚種の資源管理が議論されているのです。

図1:サンマの生態分布と回遊

サンマの生態分布と回遊を示した図。春~夏:北の海域に回遊し、餌をたくさん食べる,夏~秋:日本近海に来遊しながら南下,冬:南の海域に回遊して産卵する。

図2:マサバ(太平洋系群)の生態分布と回遊

マサバの生態分布と回遊を示した図。春:主に伊豆諸島周辺地域で産卵,春~秋:0歳魚は東方に広く回遊,春~夏:成魚は日本の沿岸を北上・資源が増えると索餌場が東方へ拡大,秋~冬:日本の沿岸を南下。

(IUU漁業の撲滅に向けた動き)

各国や地域漁業管理機関が国際的な資源管理に努力している中で、規制措置を遵守せず無秩序な操業を行うIUU漁業*1は、水産資源に悪影響を与え、適切な資源管理を阻害するおそれがあるため、抑制・根絶に向けた取組が国際的に進められています。

  1. FAOは、無許可操業、無報告又は虚偽報告された操業、無国籍の漁船、地域漁業管理機関の非加盟国の漁船による違反操業など、各国の国内法や国際的な操業ルールに従わない無秩序な漁業活動をIUU漁業としている。

例えば、各地域漁業管理機関においては、正規の漁業許可を受けた漁船等のリスト化(ポジティブリスト)やIUU漁業への関与が確認された漁船や運搬船等をリスト化する措置(ネガティブリスト)が導入されており、さらに、ネガティブリストに掲載された船舶の一部に対して、国際刑事警察機構(ICPO)が各国の捜査機関に注意を促す「紫手配書」を出すなど、IUU漁業に携わる船舶に対する国際的な取締体制が整備されてきています。また、いくつかの地域漁業管理機関においては、漁獲証明制度*1によりIUU漁業由来の漁獲物の国際的な流通を防止しています。

  1. 漁獲物の漁獲段階から流通を通じて、関連する情報を漁獲証明書に記載し、その内容を関係国の政府が証明することで、その漁獲物が地域漁業管理機関の保存管理措置を遵守して漁獲されたものであることを確認する制度。

二国間においても、我が国とロシアとの間で平成26(2014)年にロシアで密漁されたカニが我が国に密輸出されることを防止する二国間協定が発効したほか、我が国はEU、米国及びタイとIUU漁業対策の推進に向けた協力を確認する共同声明を出すなど、IUU漁業の抑制・根絶を目指した取組を行っています。

こうした中、平成28(2016)年6月、違法漁業防止寄港国措置協定が発効しました。この国際協定は、締約国がIUU漁業に従事した外国漁船の寄港を禁止すること等の寄港国措置を通じて、IUU漁業を抑制・根絶し、水産資源の持続的利用を確保することを目的としています。本協定は、平成29(2017)年5月10日、我が国国会で承認され、同年6月18日に我が国について効力が発生しました。この協定により、広い洋上でIUU漁業に従事している船を探すよりも効率的、効果的な寄港地での取締りが可能となり、IUU漁業の抑制・根絶につながることが期待されます。