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水産庁

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(4)水産物貿易の動向

(水産物輸入の動向)

我が国の水産物輸入量(製品重量ベース)は、平成13(2001)年に382万トンでピークとなった後、国際的な水産物需要の高まりや国内消費の減少等に伴っておおむね減少傾向で推移していますが、平成29(2017)年は前年から4%増の248万トンとなりました(図2-4-18)。また、平成29(2017)年の水産物輸入金額は、前年から11%増の1兆7,751億円となりました。

図2-4-18 我が国の水産物輸入量・金額の推移

輸入量,輸入金額の年次推移を示した図。輸入量は減少傾向にあり、平成29年で248万トン。輸入金額は増加傾向にあり、平成29年で1兆7,751億円。

輸入金額の上位を占める品目は、サケ・マス類、エビ、マグロ・カジキ類等です(図2-4-19)。輸入相手国・地域は品目に応じて様々ですが、サケ・マス類はチリ、ノルウェー等、エビはベトナム、インド、インドネシア等、マグロ・カジキ類は台湾、中国、韓国等から多く輸入されています(図2-4-20)。

図2-4-19 我が国の水産物輸入相手国・地域及び品目内訳

輸入相手国・地域(中国,米国,チリ,ロシア,ベトナム,タイ,ノルウェー,インドネシア,韓国,その他),輸入品目(サケ・マス類,エビ,マグロ・カジキ類,イカ,エビ調製品,カニ,タラ類,その他)を示した図。中国,米国,チリ等からの輸入が多い。サケ・マス類,エビ,マグロ・カジキ類等の輸入が多い。農林水産物総輸入額に占める割合は18.9%。

図2-4-20 我が国の主な輸入水産物の輸入相手国・地域

サケ・マス類(チリ,ノルウェー,ロシア等),エビ(ベトナム,インド,インドネシア等),マグロ・カジキ類(台湾,中国,韓国等),カニ(ロシア,カナダ,米国等),タラ類(米国,ニュージーランド,アルゼンチン等),イカ(中国,タイ,ベトナム等)の輸入相手国・地域を示した図。

(水産物輸出の動向)

我が国の水産物輸出金額は、平成20(2008)年のリーマンショックや平成23(2011)年の東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「東電福島第一原発」といいます。)の事故による諸外国の輸入規制の影響等により落ち込んだ後、平成24(2012)年以降はおおむね増加傾向となっており、平成29(2017)年の輸出量(製品重量ベース)は前年から11%増の60万トン、輸出金額は前年から4%増の2,749億円となりました(図2-4-21)。

図2-4-21 我が国の水産物輸出量・金額の推移

輸出量,輸出金額の年次推移を示した図。輸出量は平成20年と平成23年に落ち込んだが、平成24年以降は増加傾向にある。輸出量は平成29年で60万トン。輸出金額は平成29年で2,749億円。

主な輸出相手国・地域は香港、中国、米国で、これら3か国・地域で輸出金額の約6割を占めています(図2-4-22)。品目別には、中国等向けに輸出されるホタテガイ、主に香港向けに輸出される真珠等が上位となっています(図2-4-23)。

図2-4-22 我が国の水産物輸出相手国・地域及び品目内訳

輸出相手国・地域(香港,中国,米国,ベトナム,タイ,台湾,韓国,その他),輸出品目(ホタテガイ,真珠,サバ類,ブリ,ナマコ調製品,マグロ・カジキ類,その他)を示した図。香港,中国,米国等への輸出が多い。ホタテガイ,真珠,サバ類等の輸出が多い。農林水産物総輸入額に占める割合は34.1%。

図2-4-23 我が国の主な輸出水産物の輸出相手国・地域

ホタテガイ(中国,米国,香港等),真珠(香港,米国等),サバ類(ナイジェリア,エジプト,ガーナ等),ブリ(米国等),ナマコ調製品(乾燥以外)(香港等),マグロ・カジキ類(タイ,ベトナム,香港等)の輸入相手国・地域を示した図。

(水産物輸出の拡大に向けた取組)

国内の水産物市場が縮小する一方で、世界の水産物市場はアジアを中心に拡大しています。世界市場に向けて我が国の高品質で安全な水産物を輸出していくことは、販路拡大や漁業者等の所得向上にもつながる重要な手段であり、我が国の水産業の体質強化を図る上で欠かせない視点です。国では、平成28(2016)年5月に「農林水産業の輸出力強化戦略」を取りまとめました。輸出の取組の主役である農林漁業者等のチャレンジや創意工夫が一層引き出され、意欲的な取組が行われるよう側面から支援していくとともに、外国の規制等に対しては政府として全力で対応することとしています。この中で、水産物の輸出力強化に関しては、適切な資源管理により資源を増大しつつ、高品質な冷凍水産物の生産のための新技術の導入等を支援することや、自然災害等があっても養殖品の輸出が落ち込むことのないよう、養殖生産の一層の拡大と安定した生産体制の構築を図り、輸出の拡大に向けた国内の生産体制を整備していくこととしています。

また、海外市場の拡大を図るため、平成27(2015)年に発足した「水産物・水産加工品輸出拡大協議会」によるオールジャパンでのプロモーション活動や商談会の開催等の輸出促進の取組を支援しています。平成29(2017)年度からは、農林水産物・食品のブランド化やプロモーション等を行う組織として新たに創立された「日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)」とも連携した取組を行っています。

さらに、輸出先国・地域の衛生基準等に適合した輸出環境を整備することも重要です。このため、国では、欧米への輸出時に必要とされる水産加工施設等のHACCP対応や、輸出拠点となる漁港における高度な品質・衛生管理体制の構築等を支援しています。また、東電福島第一原発事故に伴う輸入規制を維持している国・地域に対しては、規制の撤廃・緩和を粘り強く働き掛けるとともに、輸出先国・地域によって必要とされる衛生証明書や漁獲証明書等の輸出に関する証明書類の発行手続の簡素化・迅速化にも取り組んでいます。

平成28(2016)年8月に閣議決定された「未来への投資を実現する経済対策」では、平成31(2019)年に農林水産物・食品輸出額1兆円を達成することを目指すこととされており、その中で水産物については、輸出額を3,500億円とすることを目指しています。

事例「マーケットイン」の発想で挑む水産物輸出(三重県尾鷲おわせ市 尾鷲物産株式会社)

世界的に「和食」に対する関心が高まり、オールジャパンで農林水産物の輸出拡大に取り組む中、三重県尾鷲市の尾鷲物産(株)は国内で構築した独自のビジネスモデルを海外にも展開することで、中国、シンガポール、ベトナム、タイ等へのブリの輸出を伸ばしています。ここ30年で大幅に輸出を伸ばしているノルウェーサーモンの事例を参考にしようと、アジア各国でサーモン等がどのように食べられているかを調べたところ、生食需要が高いことやブリの需要もあることが分かり、生鮮ブリのシェアを拡大する戦略で臨んでいるとのことです。

尾鷲物産(株)は、創業以来、買い手側の立場に立つ「マーケットイン」の発想で、ブリを「トロ」「カマ」「中骨カット」といった部位ごとに加工する独自技術によって、買い手のニーズに応じた商品を供給できる体制を確立しています。

このような日本で確立した仕組みを海外でも実現するため、現地にコールドチェーンを持つ企業と連携することで、品質・規格・輸送にかかる日数等について国内と同一の流通体制を構築しています。また、輸出先国によって異なる規制やニーズに対応するため、HACCP及びHACCPより厳格なSQF(Safe Quality Food)といった国際的な認証の取得、差別化できるオリジナル商品の開発や食べ方の提案に取り組んでいます。

尾鷲物産(株)の取組でもう一つ特筆すべきことは、会社自らが三重県で養殖業に参入してブリを生産していることです。このことによって、新鮮で安全・安心な原料を安定的に調達できるだけでなく、地元漁業者と調和しながら地域経済にも貢献しています。

こうした取組が評価され、「平成28(2016)年度輸出に取り組む優良業者表彰」農林水産大臣賞を受賞し、水産物輸出の先進的な事例として注目されています。

図:尾鷲物産(株)の輸出量及び輸出額の推移

輸出量,輸出金額の年次推移を示した図。輸出量は平成25年で100トン程度,平成28年で250トンを超えている。輸出額は平成25年で1億円程度,平成28年で3億円近くになっている。
尾鷲物産(株)の養殖区画(須賀利(すがり)沖)の写真