このページの本文へ移動

水産庁

メニュー

(1)漁村の現状と役割

(漁村の現状)

海岸線の総延長が約3万5千km*1に及ぶ我が国の国土は、約7千の島々から成り立っており、この海岸沿いの津々浦々に2,860の漁港と6,298の漁業集落*2が存在しています。漁業集落の多くは、リアス海岸、半島、離島に立地しており、漁業生産に有利な条件である反面、自然災害に対して脆弱であるなど、漁業以外の面では不利な条件下に置かれています。漁業集落のうち漁港の背後に位置する漁港背後集落*3の状況をみると、半島地域にあるものが34%、離島地域にあるものが19%となっており、また、その立地特性においては、背後に崖や山が迫る狭隘きょうあいな土地にあるものが59%あり、急傾斜地にあるものが27%を占めています(表2-5-1、図2-5-1)。

  1. 国土交通省「海岸統計」による。
  2. 漁港及び港湾を核として、当該港の利用関係にある漁業世帯の居住する範囲を、社会生活面の一体性に基づいて区切った範囲。
  3. 漁港の背後に位置する人口5千人以下かつ漁家2戸以上の集落。
表2-5-1 漁港背後集落の状況

漁港背後集落総数

離島地域・半島地域・過疎地域の
いずれかに指定されている地域

 

うち
離島地域

うち
半島地域

うち
過疎地域

4,130

3,177

786

1,421

2,802

(100%)

(76.9%)

(19.0%)

(34.4%)

(67.8%)

図2-5-1 漁港背後集落の立地特性

集落背後地形,集落立地の立地特性を示した図。前者は「崖や山が迫る」58.8%(2,428集落)、後者は「急傾斜地」27.3%(1,128集落)を占めている。

このような立地条件にある漁村では、高齢化率が全国平均を約10ポイント上回っているとともに、人口は一貫して減少してきており、平成29(2017)年3月末現在の漁港背後集落人口は192万人となっています(図2-5-2)。

図2-5-2 漁港背後集落の人口と高齢化率の推移

漁港背後集落の人口、及び漁港背後集落の高齢化率,日本の高齢化率の年次推移を示した図。漁港背後集落の人口は減少し続けている。漁港背後集落の高齢化率は日本の高齢化率よりも10%ほど高く、どちらも上昇を続けている。

(漁業・漁村が有する多面的機能)

漁業及び漁村は、漁業生産活動を行い、国民に魚介類を供給する役割だけでなく、<1>自然環境を保全する機能、<2>国民の生命・財産を保全する機能、<3>交流等の場を提供する機能、及び<4>地域社会を形成し維持する機能等の多面的な機能も果たしており、漁業者や漁村の住民に留まらず、国民一般が、このような多面的機能の恩恵を享受しています(図2-5-3)。

図2-5-3 漁業・漁村の多面的機能

自然環境を保全する機能(貝類の死骸の除去,アマモの栄養株の移植・播種,サンゴを食害する生物の除去,ヨシ帯前面に保護柵を設置,外来植物の駆除,カキ養殖),国民の生命・財産を保全する機能(流出油の回収,転落者・漂流者の救助),交流等の場を提供する機能(体験乗船,干潟観察会,潮干狩り,川の魚とり),地域社会を形成し維持する機能(奉迎船の海上神事,磯ねぎ漁,キビナゴの伝統的鍋料理)を示した図。

このように、漁業・漁村の多面的機能は、人々が漁村に住み、漁業が健全に営まれることによってはじめて発揮されるものですが、漁村の人口減少や高齢化が進めば、漁村の活力が衰退し、多面的機能の発揮にも支障が生じます。このため、国では、藻場や干潟の保全、海難救助や国境・水域監視等の漁業者等が行う多面的機能の発揮に資する活動を支援しており、各地で活発な活動が行われています。

事例漁村と漁業者による国境監視機能

海上保安庁によると、我が国の領海とEEZを合わせた面積は447万km2とされており、その広大な水域では約24万隻の漁船が操業しており、3万5,300kmにも及ぶ海岸線には約6,300の漁村があります。昨今、国籍不明の木造船が我が国沿岸に漂着する事案が発生していますが、漁業者や漁村に住む人々がこのような船を発見し通報する場合が度々あります。このことは全国津々浦々に漁村と漁業者による巨大な海の監視ネットワークが形成されていて、漁業活動を含めた日々の生活が国境監視機能を併せ持っていることを示しています。

このような漁村や漁業者が有する多面的機能について、漁村人口の減少や漁業者の高齢化等によりその機能の発揮に支障が生じることがないよう、国は漁業者等による活動を支援しています。

鳥取県岩美町いわみちょう網代あじろ港地区ではイカ釣りや底びき網漁業が盛んで、操業海域は領海からEEZの広範囲に及びます。

この地区の海洋環境保全対策活動組織では、日々、不審船(国籍不明船)や漂流漁具を発見した場合の連絡体制の確認や通報訓練等を行っており、こうして構築された地域の取組は不審船の視認・通報などに活かされています。

監視活動を行う漁業者(網代港地区)の写真