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アオリイカ

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アオリイカ


学名:Sepioteuthis lessoniana
分類:ツツイカ目ヤリイカ科アオリイカ属
英名:Oval squid Big-fin reef squid

最も美味とされ、高級イカの中でも不動の地位を誇るイカの王様。
近年ではエギングという釣りのターゲットとしても人気です。
見た目も美しく、アオリイカの可愛らしさを見てイカ好きになる人が多いです。
水族館で生体と出会える機会も多く、イカ好きの初恋はアオリイカになりがちです。

体の特徴

卵型の外套膜の全体について優雅に波打つヒレが特徴です。
ヒレがぐるりと胴を一周しているのでコウイカと間違われることもありますが、アオリイカはヤリイカの仲間です。
背中の模様で雌雄を見分けることができます。
線状の模様がオス、点状の模様がメスです。
体の透明感が極めて高く、目の上が鮮やかなエメラルドグリーンで美しいイカです。

今までアオリイカは1種と思われていましたが、最近になって別種レベルに異なる3種が見付かりました。
まだ和名はきまっていないので便宜上、アカイカ、シロイカ、クワイカと呼ばれています。

シロイカ

3種の中では最も広く分布しており、日本海から北海道函館、近年は宮城県でも漁獲されています。
外套背長は最大で50cm4kg以上になります。春の産卵期と秋の成長期に漁獲されます。
名前は「シロ」イカですが、体色は白というより黄色や褐色であることが多いです。
産卵水深は220mで、海藻類に卵を産み付けます。


アカイカ

3種の中では最も大きくなり、外套背長60cm以上、最大で5kg以上に成長します。
日本では和歌山県以南の太平洋側に生息しています。漁獲時期は1月から5月です。
近年では長崎県五島列島でも発見されました。今後も釣り人たちの報告によって、新しい分布域が見付かる可能性があります。
その名の通り、体色は鮮やかな赤色。
釣り業界では「アカ系」や「レッドモンスター」と呼ばれ、その力強い釣りごたえと迫力のある見た目から、人気のターゲットとなっています。
産卵水深は30100m以深と3種で最も深いです。


クアイカ

3種の中でもっとも小型で、外套背長13cm150g程度で成熟します。
外套膜の斑紋や目の上のエメラルドグリーンが強いことが特徴です。
分布はアカイカとほぼ同じで、和歌山県以南の太平洋岸に生息しています。小
型のため漁業者や遊漁者から関心が低く、まだわかっていないことが多いです。
産卵は水深10mより浅いテーブルサンゴの裏に、2個の卵が入った卵嚢を産み付けます。
シロイカとアカイカの卵は魚から食べられることはないですが、クアイカの卵は食べられてしまうと言われています。


生態、分布

分布は赤道を中心に日本からニュージーランド北部、ハワイから南アフリカと広範囲です。
寿命は1年で、高水温を好みます。
水温15度以下になると捕食しなくなり死んでしまうため、15度以下の低水温を嫌います。
また20度を下回ると卵の孵化率が急激に下がるので、アオリイカの適温は20度以上と言われています。
水温25度では卵は約1ヶ月で孵化します。

アオリイカの漁獲時期は大きく2回あります。
1回目は春の産卵期です。冬から春にかけて水温が上昇すると生殖腺が発達し、産卵が始まります。
産卵のため浅場に群れで来遊したところを、定置網や釣りによって漁獲されます。
春から夏にかけて孵化した個体が成長し、盛んに餌を食べる秋から冬に2回目の漁獲時期が訪れます。
太平洋岸は水温の変化が小さいので、年間を通して漁獲されています。
沿岸性のイカで、産卵は主に春から秋にかけて浅場の沿岸域にて見られます。
漁獲は春から秋にかけて、九州から本州の太平洋岸で多いです。


釣り

アオリイカは、特に釣り人によく親しまれているイカではないでしょうか。
アオリイカ釣りは、生きた餌を使う方法と、疑似餌を使う方法に分けられます。
生き餌釣りでは、主に生きたアジなど小魚を使います。
「泳がせ」と呼ばれる釣法では、アジに直接針をつけて泳がせます。アジに飛びつくとウキが沈むので、視覚的にアタリがわかりやすいです。
ヤエン釣りは、アジの尾びれ付近に道糸を直接結び、自由に海を泳がせてイカを誘う釣法です。
イカがアジを抱いている間に、ヤエンという掛け針を糸伝いに投入します。ヤエンがイカに到達して、イカが逃げるためにと後ろに下がろうとすると針にかかる仕組みです。
ヤエン釣りは、アユの友釣りと並んで釣り界でも屈指の難しい釣りといわれていますので、上級者向けですね。


疑似餌を使う方法は、エギングと呼ばれて近年人気が高まっています。
アオリイカ釣りに使う疑似餌、餌木(エギ)の歴史は古く、江戸時代後期までさかのぼると言われています。
エビや小魚を模したボディにカエシのない針がついている形は当時から今まで変わっていません。
カラーバリエーションも豊富なので、コレクションしている方も多いようです。


資源保護

アオリイカは養殖や種苗放流が行われていないため、市場や水族館でみかけるアオリイカはすべて天然のものです。
天然のアオリイカは水温変化、台風、磯焼けなどの要因で個体数が変動しますし、さらに産卵基質となる海藻は磯焼けや護岸整備などで近年減少しています。
そこでアオリイカが卵を産み付ける場所を人工的に増やして、アオリイカの産卵量を増やそうとする活動が行われています。
減少する産卵場を補おうと、漁業者は自ら進んで繁殖サポートを行っています。
木材を利用した人工産卵礁を、特に「イカ柴」と呼びます。

有名な水揚げ地

シロイカ:長崎、三重、徳島、鹿児島
アカイカ:和歌山、種子島、屋久島、奄美大島、沖縄
クアイカ:奄美大島、沖縄、石垣島

地方名、市場名

モイカ、バショウイカ、クツイカ、ミズイカ、イズイカ、シルイチャー、アカイチャ―

味、食感、食べ方

イカの王様と呼ばれるだけあって旨味が非常に強いです。
身は厚く、寝かせるとねっとり柔らかで口の中で甘みが溶けだします。
刺身、寿司、天ぷらなど、どのように調理しても美味しいです。


アオリイカには3種いることに驚いた方も多いのではないでしょうか。
今後さらに研究が進み、各種の知られざる生態が明らかになるのが楽しみですね。

参考文献

Alexander I. Arkhipkin, Paul G. K. Rodhouse, Graham J. Pierce, Warwick Sauer, Mitsuo Sakai, Louise Allcock, Juan Arguelles, John R. Bower, Gladis Castillo, Luca Ceriola, Chih-Shin Chen, Xinjun Chen, Mariana Diaz-Santana, Nicola Downey, Angel F. González, Jasmin Granados Amores, Corey P. Green, Angel Guerra, Lisa C. Hendrickson, Christian Ibáñez, Kingo Ito, Patrizia Jereb, Yoshiki Kato, Oleg N. Katugin, Mitsuhisa Kawano, Hideaki Kidokoro, Vladimir V. Kulik, Vladimir V. Laptikhovsky, Marek R. Lipinski, Bilin Liu, Luis Mariátegui, Wilbert Marin, Ana Medina, Katsuhiro Miki, Kazutaka Miyahara, Natalie Moltschaniwskyj, Hassan Moustahfid, Jaruwat Nabhitabhata, Nobuaki Nanjo, Chingis M. Nigmatullin, Tetsuya Ohtani, Gretta Pecl, J. Angel A. Perez, Uwe Piatkowski, Pirochana Saikliang, Cesar A. Salinas-Zavala, Michael Steer, Yongjun Tian, Yukio Ueta, Dharmamony Vijai, Toshie Wakabayashi, Tadanori Yamaguchi, Carmen Yamashiro, Norio Yamashita & Louis D. Zeidberg (2015) World Squid Fisheries, Reviews in Fisheries Science & Aquaculture 23:2, p92-252, DOI: 10.1080/23308249.2015.1026226

上田幸男,海野徹也『アオリイカの秘密にせまる』成山堂書店,2013
奥谷喬司(編著)『新鮮イカ学』東海大学出版会,2010
奥谷喬司『イカはしゃべるし、空も飛ぶ―面白いイカ学入門 〈新装版〉』講談社,2009
奥谷喬司『新編世界イカ類図鑑』全国いか加工業協同組合,2015
小西 英人 (編著),土屋 光太郎 (監修),西潟 正人 (料理)『イカ・タコ識別図鑑』エンターブレイン,2010
土屋 光太郎,山本 典暎,阿部 秀樹『イカ・タコガイドブック』TBSブリタニカ,2002
笘野哲史『頭足類の集団遺伝研究:アオリイカの隠れた3種を研究事例に』海洋と生物253113-1182021
Roger Hanlon, Mike Vecchione & Louise Allcock Octopus, Squid, and Cuttlefish University of Chicago Press, 2018(ロジャー・ハンロン,マイク・ベッキオーネ,ルイーズ・オールコック,水野裕紀子(訳),池田謙(監訳)『世界一わかりやすいイカとタコの図鑑』化学同人,2020


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