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水産庁

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4水管第57号
令和4年4月14日

都道府県知事殿

  水産庁長官

海区漁場計画の作成等について


令和5年9月から予定されている漁業権の次期一斉切替えに当たり、都道府県が行う事務に関し、留意すべき点を別添のとおり取りまとめたので通知します。
この通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言です。

第1 基本的考え方

令和5年9月から予定されている漁業権の次期一斉切替えは、令和2年12月1日に施行された改正後の漁業法(昭和24年法律第267号。以下「法」という。)に基づき行われる、初めての一斉切替えとなる。

新たな海面利用制度の運用については、既に、「海面利用制度等に関するガイドライン」(令和2年6月30日付け2水管第499号水産庁長官通知。以下「海面利用ガイドライン」という。)において通知しているところである。

また、新たな漁業権を免許する際の手順等については、既に、「新たな漁業権を免許する際の手順及びスケジュールについて」(令和3年9月7日付け3水管第1529号水産庁資源管理部管理調整課長・増殖推進部栽培養殖課長連名通知。以下「免許手順等通知」という。)において通知しているところである。

本通知は、漁業権の次期一斉切替えに向けて、海面利用ガイドライン及び免許手順等通知を基本としつつ、制度の適切かつ円滑な運用が行われ、もって水面の総合的な利用が図られるよう、都道府県水産部局の免許等事務を行う担当者が留意すべき点を取りまとめたものであるので、業務執行の参考とされたい。

第2 海区漁場計画の作成

1.海区漁場計画

(1)要件
都道府県知事は、その管轄に属する海面について5年ごとに海区漁場計画を、その管轄する内水面について5年ごとに内水面漁場計画を定めるものとされている(法第62条第1項及び第67条第1項)。

海区漁場計画(内水面については、内水面漁場計画。以下同じ。)は、それぞれの漁業権が海区に係る海面の総合的な利用を推進するとともに、漁業調整その他公益に支障を及ぼさないように設定され、また、活用漁業権があるときは、類似漁業権が設定されていることを要件とする(法第63条第1項第1号及び第2号並びに法第67条第2項)。

(2)活用漁業権
活用漁業権であるか否かの判断は、海面利用ガイドライン別紙1のチェックシートにより行うこととされたい。なお、法第91条の指導又は勧告を受けているか否かに関わらず、当該チェックシートにより適切かつ有効ではないと判断された漁業権は活用漁業権とはならないので、注意する必要がある。

また、活用漁業権ではないと判断された場合は、類似漁業権として海区漁場計画には設定されず、水面の総合的な利用の観点から、その漁場の取扱いについて検討することとなる。

この際、当該漁場を漁場の区域とする漁業権を引き続き海区漁場計画に設定する場合には、漁業権者は漁場を適切かつ有効に活用するよう努める責務があることも踏まえ、漁業権の内容の必要な見直しを行った上で、類似漁業権ではないものとして海区漁場計画に設定することとなる。

(3)類似漁業権
活用漁業権があるときは、法第63条第1項第2号の規定に基づき、類似漁業権が海区漁場計画に設定されていなければならない。

類似漁業権の考え方は、海面利用ガイドラインに示しているとおりであり、実質的に判断することが適当である。この考え方に基づいて行われる漁業権の内容の調整は可能であるので、漁場の状況や利用実態等を踏まえ、適切に対応されたい。

なお、活用漁業権があるときに、切替えのタイミングで個別漁業権から団体漁業権に、またその逆の変更をしようとすることはおおむね等しいの範囲を超えており、類似漁業権とはみなせないので注意されたい。

海区漁場計画(海区漁場計画の案を含む。)を作成して公表する際、類似漁業権ではないものとして設定する漁業権(以下「新規の漁業権」という。)については、新規の漁業権である旨を明示した上で公表することとされたい。

(4)その他
他の法令により漁業の操業が禁止されている水面で操業しようとするもの、免許しても漁海況条件等からみて操業されそうにないもの等については、漁業権として海区漁場計画に含めるべきではない。

2.利害関係人の意見聴取

(1)手続
新たに利害関係人の意見聴取の手続を行うこととしているので(法第64条第1項から第3項まで)、必ず行うよう注意する必要がある。

利害関係人の意見聴取に当たっては、庁舎の掲示板や公報にこだわらず都道府県ホームページへの掲載など利害関係人による閲覧が容易な方法を活用することが適当である。また、この際には、海区漁場計画の案として想定している内容を、その時点で可能な限り具体的に示すことが望ましい。

また、検討の結果の公表に当たっては、提出された意見及びそれに対する都道府県の回答又は考え方を併記されたい。加えて、公表の際は、事業計画や環調査結果など、どのような根拠に基づき判断したのか等、検討プロセスを明らかにすることが適当である。

このほか、この手続については、行政手続法(平成5年法律第88号)の意見公募手続の方法を参考として実施されたい。

(2)意見の検討
利害関係人として意見を述べようとする際は、当該事案について利害関係であることを疎明されていることが必要である(漁業法施行規則(令和2年農林水産省令第47号)第22条)。

提出された意見については、利害関係であるとする疎明内容を踏まえ、利害関係人に当たるかを確認した上で、その意見が法第63条第1項の要件に該当するものか否か、新規の漁業権については同条第2項の海面全体の最大限の活用につながるものか否かにより検討されたい。

この利害関係の有無の判断に際して確認すべき点については、免許手順等通知別紙1で整理しているので、参考にされたい。

(3)留意事項
上記のほかにも、手続のポイントや留意事項等(調整が難航する場合の対応等)を免許手順等通知により整理している。

事前段階における希望者による相談への対応も含め、客観性・公平性・透明性に留意しつつ、漁業調整その他公益に支障を及ぼさないようにしながら、誠実に、かつ、責任をもって対応されるよう配慮いただきたい。

3.委員会との関係

漁業秩序は、漁業者及び漁業従事者(以下「漁業関係者」という。)自身の意志によって維持されるべきであり、都道府県知事は、海区漁業調整委員会又は内水面漁場管理委員会(以下「委員会」と総称する。)との緊密な連絡のもとに海区漁場計画を作成すべきである。

漁場の利用に関する漁業関係者の声を十分把握し、委員会と相互の意見交換等密接な連絡を保ちつつ種々の検討を加え、海区漁場計画案として責任あるものを委員会に示し、その意見を聴いた上で海区漁場計画を決定し公表するという手続が必要である。この場合、委員会に対する諮問の際は必ず具体案を示し、それについて委員会の意見を聴くこととされたい。

なお、海面利用ガイドラインにも記載したとおり、海区漁場計画の策定過程、資源管理の議論等について、一層の透明性を図るため、法第145条第4項の規定により委員会の議事録をインターネット等により公表しなければならない。また、漁業法施行規則第47条第1項の規定により、当該議事録の公表については、会議の終了後、遅滞なく行わなければならない。議事録の内容については、簡易な概要ではなく、委員の発言内容や議論の過程等が分かるものとすることが適当である。

 
4.海区漁場計画の公示

海区漁場計画の公示の例を別紙1に示すので、参考とされたい。インターネットで行うほか、都道府県公報や条例に基づいて行うことも可能である。
また、漁業法施行規則第24条各号に掲げる海区漁業調整委員会の意見の概要及び当該意見の処理の結果、漁場図等も併せて公表する。


5.漁業権の条件

(1)条件を付すことの適否
漁業権に付けた条件に違反して漁業を営んだ者には罰則が適用されることから、規制内容の適否については、漁業取締り上の観点から必要に応じて各地方検察庁と協議するなど、十分慎重に検討されたい。

特に共同漁業については、法第68条の規定から漁業権に基づかない操業は禁止されておらず、同じ行為をした場合でも漁業権に基づかない場合と著しいアンバランスが生ずることを考慮すると、安易に条件を付すことは適当でなく、規制の必要があれば、原則として委員会指示や漁業権行使規則により対応されたい。

(2)条件の内容
条件として不適当な例として以下のものが挙げられる。

1)将来予想される埋立工事のため免許期間を制限 する旨、将来における埋立工事を予想して漁業被害に対する補償要求をしてはならない旨等の条件は、法の目的から逸脱しており、付けることができない。

2)共同漁業の漁場が漁業の種類により著しく異なるときは、たとえ関係地区が同一であっても、別個の漁業権の漁場の区域として考えるべきであり、これらを単一の漁業権としておいて、その中のある漁業についてだけ条件で操業区域を縮小するようなことは、適当ではない。また、漁業時期についても同様に考えるべきである。

3)共同漁業権について、「〇〇地区の組合員のみ操業する」というような形で組合員行使権者を特定しているようなものは、条件でなく漁業権行使規則で規定すべきである。

4)「〇〇組合の入漁を拒んではならない」というような入漁に関する条件を付けることは、適当ではない。入漁を認められるべき者として「〇〇地区」や「〇〇組合」等のように明示できるものは、海区漁場計画の作成の際に当然関係地区に含めて公表できる性質のものであって、関係地区に含める方法がとれないものである場合は、入漁に関する条件よりも委員会指示又は入漁権の裁定等により措置することが望ましい。

5)免許の条件によって、漁業経営に他人を参画させることを強いるのは不適切である。

6.その他

(1)緯度経度の表記について
海面における漁業権の漁場の区域(法第62条第2項第1号イ)は、次期一斉切替え時から、対応が困難な事情がある場合を除き、緯度経度による表記により定めることとされたい。

内水面における漁業権の漁場の区域は、堰堤や橋梁など緯度経度表示よりも基点による表記の方がわかりやすい場合も多いため、併記する方法のほか、実態に応じて柔軟に対応することとして差し支えない。

(2)海区漁場計画の変更について 
海区漁場計画を作成した後においても、都道府県知事が、海面の総合的な利用や漁場利用の高度化を促進するため、漁場利用の変化、社会経済的状況や海況の変化に応じて海区漁場計画を検討し、見直すことは重要である。漁場を適切かつ有効に活用している既存の漁業権者の漁場利用を確保しながら、円滑な規模拡大や新規参入による生産性の向上や漁場の有効活用を図ること及び規模拡大や新規参入に関するニーズを踏まえ、漁業権の一斉切替えの時期によらずとも、新規の漁業権を免許する手続を行うことに努められたい。

新規の漁業権を免許するための海区漁場計画の変更の手続は免許手順等通知によりとりまとめているので参照されたい。

なお、漁業権の免許を受けた者が、当該漁業権の存続期間中に放棄する場合もあるが、それのみをもって直ちに海区漁場計画を変更する必要はなく、例えば、新規の漁業権の海区漁場計画への設定等の際に併せて手続をすることで差し支えない。

(3)海区漁場計画の中間年の取扱い
共同漁業権の存続期間が10年となっている一方で、海区漁場計画は5年ごとに作成することとされているため、切替えのための海区漁場計画作成の際、存続期間中の共同漁業権を含んだ海区漁場計画が定められることになる。

特に、内水面漁場計画については、5年ごとに作成する際に、存続期間の終期を迎える漁業権が無い場合も想定される。

しかし、その場合であっても、法第63条の趣旨に則り、水面の総合的な利用を推進するため、5年ごとに、海区漁場計画の作成に係る手続きとして法第64条の手続きを行う必要がある。その際に、具体的な新規の漁業権等の要望があったときには、法第63条により適切に判断されたい。

都道府県によっては、一部の漁業権について免許の満了時期がずれている場合があるが、この場合は、まとめて海区漁場計画を作成するか、海区漁場計画の変更により対処されたい。

(4)沖合の水域や都道府県境付近の水域を含む海区漁場計画について
農林水産大臣による指示(令和2年11月27日付け農林水産省指令2水管第1626号。以下「大臣指示」という。)によるとおり、現に漁業の免許が行われていない沖合の水域又は都道府県境付近の水域の全部又は一部を漁場の区域を海区漁場計画として定める場合には、当該水域に関係する大臣許可漁業、知事許可漁業又は漁業権漁業への影響に配慮するとともに、国又は関係する都道府県と必要な事項について協議を行い、その了解を得た上でこれを行わなければならないことに留意されたい。

(5)漁業補償契約等による「漁業権の変更」について
漁業補償の際に、漁業協同組合(以下「組合」という。)の総会の議決を経た上で、事業者との間で「漁業権の変更(一部放棄)」等を約する旨の契約が交わされる事例が見受けられるが、かかる契約行為はあくまでも当事者間の民事上の問題であり、法第76条の規定上、このことにより漁業権が当然に変更されるものではない。

なお、かかる私法上の契約行為といえども、組合が当該事項の意思決定をしようとする際には水産業協同組合法(昭和23年法律第242号。以下「組合法」という。)第50条の総会の特別決議が必要とされることは言うまでもなく、この場合、団体漁業権に係るものにあっては、当該議決に先立ち法第108条の組合員の同意が必要となる。

第3 漁業権の免許

1.免許の申請

(1)審査、応答
海区漁場計画の作成及び公表の後、漁業権の免許を受けようとする者(以下「申請者」という。)から都道府県知事に対して申請があった場合には、行政手続法第7条の規定に基づき審査を開始されたい。この場合、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請期間内に行われたものであること等申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請者に対し期間を定めて当該申請の補正を求めるか、不免許処分(免許を拒否する処分)をすることととされたい。申請を「受け付けない」、「受理しない」等の取扱いをすることは違法である。

なお、法第71条第1項各号のいずれかに該当することが明らかな場合でも、委員会の意見を聴くことなく申請に対する不免許処分をすることは違法であるため留意されたい。

(2)申請期間
申請期間の変更に法第64条第8項の規定は適用されないが、仮に申請期間を変更する必要が生じた場合には、委員会の意見を聴いた上で、行うこととされたい。

ただし、公示された申請期間が満了した後で遡及して変更することや、申請期間満了前であっても申請期間中に適法な申請が1件でもあった場合に変更することは、適法な申請を行った者への免許の可否に影響を及ぼすこととなるため、適当ではない。

(3)申請者について相続等があった場合
申請者について相続、合併又は分割があった場合は、当該申請者の相続人、合併後の存続する法人若しくは合併により設立された法人又は分割により当該申請者の事業を承継した法人(以下「相続人等」という。)は、当然には当該申請者の地位を承継することにはならない。この場合、相続人等が直ちに申請内容を修正したときは、当該相続人等を含めて、免許の適格性の審査、法第73条第2項第1号に該当する者か否かの判断及びこれに該当しない場合は第2号に該当する者として審査を行い、免許に関する処分をして差し支えない。また、死亡した者又は解散した法人に対する免許は無効であり、このような免許を有効な漁業権として相続人等に承継させることはできない。

(4)申請に際しての添付書類等
申請は、公表された海区漁場計画の漁業権の公示番号ごとに申請書で行うこととされたい。

また、申請に際して添付することが必要な書類として、別紙2のとおり例を示すので、各都道府県の実情、漁業権の種類を踏まえ、適宜取捨選択されたい。

なお、申請手続を簡素化する観点から、添付書類はなるべく簡単にすることや、電子申請を活用することについても検討されたい。漁業法施行規則第63条に規定するとおり、同一申請者が複数の申請を同時に行う場合には、共通する書類の省略を認めることなどは差し支えない。

また、共同申請により行う場合には、代表者を選定し行政庁(都道府県知事)に届け出ることとなるが(法第5条第1項)、加えて、各自の持分、代表者の権限の範囲等を明確化し、後々問題が生じることのないよう指導されたい。

このほか、団体漁業権の免許の申請に当たっては、免許の申請と同時に漁業権行使規則の認可の申請を行わせるよう指導されたい。

2.審査及び事務の進め方

(1)審査資料の整備
免許をすべき者の決定の妥当性を第三者に納得させるに足る客観的資料の整備に努められたい。

特に、漁業権ごとの申請者の一覧表、申請者ごとにその者が申請した漁業権の一覧表を作成されたい。これらは、漁業権の不当な集中(法第71条第1項第3号)の判断のための資料となるものである。

また、申請書の添付書類について、事実確認が必要な事項については、更に調査することとされたい。

(2)委員会の議事
委員会の議事内容、審査の経過等は、必ず詳細に記録し、保存することとされたい。

審査に当たっては、法に規定する審査事項を省略しないよう留意されたい。

委員会の会議で一度決議したことを再び審議することは望ましくない。再審議は避けることとし、やむを得ず再審議する場合には、前の決議を取り消す旨の決議をした上で行われたい。

審査は漁業権ごとに行うべきであることから、同一人の申請による複数の種類の漁業の免許の申請を一括して審査を行うことがないようにされたい。

(3)免許の公示
都道府県知事が免許又は不免許の処分を行ったときは、次の事項について、別紙3を参考として公示されたい。
インターネットで行うほか、都道府県公報や条例に基づいて行うことも可能である。

1)海区漁場計画の公表の際の公示番号
2)免許番号
3)漁業権者の住所及び氏名(法人にあっては、名称及び代表者の氏名)
4)漁場の位置
5)漁場の区域
6)漁業の種類及び漁業時期
7)存続期間
8)個別漁業権又は団体漁業権の別
9)条件

(注) 4)から8)までは、「令和年月日に公表した海区漁場計画のとおり」とすることや、都道府県ホームページにおける海区漁場計画公表の該当ページのリンクを付すなどして簡略化してもよい。

(4)免許状の交付
免許された者には免許状(指令書)を、免許されなかった者にはその旨の指令書を速やかに交付されたい。

免許状又は不免許の指令書の交付に当たっては、行政不服審査法(平成26年6月13日法律第68号)第82条第1項の規定に基づき、当該処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨の教示をされたい。

また、不免許の処分をする場合は、行政手続法第8条第1項の規定に基づき、申請者に対し、当該処分の理由を示すこととされたい。

(5)免許しない場合
委員会は、法第71条第1項各号のいずれかに該当する旨の意見を述べようとするときは、申請者に対して公開による意見の聴取を行わなければならない(法第71条第5項)。この場合の意見聴取を行う申請者に対する通知文書は、書留又は配達証明郵便等確実な方法で送達されたい。

3.適格性

(1)法第71条関係
法第71条第1項各号のいずれかに該当するときは、漁業の免許をすることができない。この場合であっても委員会の意見を聴かなければならないことに留意されたい。

また、免許を受けようとする漁場の敷地が他人の所有に属する場合又は水面が他人の占有に係る場合は、その所有者又は占有者の同意がなければ免許できないこととされており、当該同意又はこれに代わる裁判所の許可がないにもかかわらず、都道府県知事が免許することは違法である(法第71条第1項第4号及び第2項)。

(2)法第72条第1項関係
法第72条第1項第1号は、漁業に関しては、法又は法に基づく政省令若しくは法第57条第1項並びに第119条第1項及び第2項並びに水産資源保護法(昭和26年法律第313号)第4条第1項の規定に基づいて定める規則(以下「調整規則」という。)等の漁業関係法令を遵守せず、かつ、引き続き遵守することが見込まれない者をいい、労働に関しては、労働基準法(昭和22年法律第49号)、船員法(昭和22年法律第100号)、船舶安全法(昭和8年法律第11号)等の労働関係法令を遵守せず、かつ、引き続き遵守することが見込まれない者をいう。

法第72条第1項第2号から第4号までの暴力団の介入の排除に関しては、「知事許可漁業、漁業権漁業等における暴力団の介入の排除について」(令和2年11月20日付け2水管第1591号水産庁長官通知)において照会の手続等を定めているので参照されたい。

(3)法第72条第2項第1号関係
関係地区ごとに団体漁業権の内容たる漁業を営む者を組合員と非組合員とに分けて、それぞれの住所及び氏名(世帯別)を調査されたい。

また、調査に当たっては、漁業を営む者が法人であるときの世帯の数の計算は、法第72条第3項を参照することとされたい。

(4)法第72条第2項第2号関係
関係地区ごとに1年に90日以上沿岸漁業を営む者(河川以外の内水面における漁業の免許にあっては当該内水面において1年に30日以上漁業を営む者、河川における漁業の免許にあっては当該河川において1年に30日以上水産動植物の採捕又は養殖をする者)を組合員と非組合員とに分けて、それぞれの住所及び氏名(世帯別)を調査されたい。

また、調査に当たっては、定置、刺し網漁船等の乗組員で他に経営者として漁業を営まない者は漁業従事者であり、「沿岸漁業を営む者」に含まれないことに留意されたい。

4.免許をすべき者の決定

(1)法第73条第2項第1号
同一の漁業権について免許の申請が複数あるときについて、その申請者が法第73条第2項第1号の場合に該当するか否かの判断は、海面利用ガイドライン別紙2のチェックシートにより判断することとされたい。

仮に、当該チェックシートにより、適切かつ有効に活用しているとは認められなかった場合には、法第73条第2項第2号により判断することとなる。

(2)法第73条第2項第2号

1)基本
同一の個別漁業権について免許の申請が複数あるときについて、当該漁業権が新規の漁業権である場合や、類似漁業権について満了漁業権を有する者からの申請が無かった場合には、法第73条第2項第2号の規定に基づき、地域水産業の発展に最も寄与すると認められる者に免許をすることとなる。

2)判断基準
この判断基準については、行政手続法第5条第1項の規定に基づき、あらかじめ審査基準を定め、公表することとされたい。

この審査基準は、各地域の水産業の実情を踏まえて作成されるべきであり、同じ都道府県内でも、地域によって審査基準が異なることもあり得る。地域の水産業の将来を見据え、実効性のある審査基準とするよう検討し、委員会にもあらかじめ示すこととされたい。

なお、この審査は都道府県知事が行うものであることから、既存の漁業権者の同意の有無等をもって判断するものとはならないように留意して審査基準を作成されたい。地域の水産業の発展に最も寄与すると認められる者を判断するための審査基準であるとの前提に立ち、複数の審査項目を設け総合的に判断するものとなるよう努められたい。

3)審査方法
漁業法施行規則第25条において、免許の申請には、事業計画書を添付しなければならないものとされている。

都道府県知事は、地域水産業の発展に寄与することの審査のため、免許の申請をしようとする者が添付する事業計画書に、法第73条第2項第2号に例示するように、漁業生産の増大、漁業所得の向上、就業機会の確保など新たな漁業権を有することとなった場合の計画を記載させることなどが考えられる。どのような書類を提出させるのかも含め、あらかじめ審査基準において明らかにすることとされたい。

なお、類似漁業権について満了漁業権を有する者が申請する場合には、基本的には申請が複数あっても法第73条第1項第1号の場合に該当することとなるため、必ずしも法第73条第2項第2号に例示するような内容を記載させる必要はない。ただし、仮に免許の申請が複数あるときであって、当該満了漁業権を有する者が海面利用ガイドライン別紙2のチェックシートにより適切かつ有効ではないと判断された者である場合には、同項第2号の審査を行うこととなる。この場合には、その申請者に対して地域水産業の発展に寄与することの審査に必要な書類の提出を求め審査することとされたい。

提出書類のみによる審査が困難であった場合には、必要に応じて、申請者へのヒアリングなどを併用しながら審査を行うことが適当である。

また、都道府県知事は、委員会にこれらの審査結果を説明することとされたい。十分な審査の期間を確保するため、免許の手続は時間的な余裕をもって進めることとされたい。

5.その他

(1)免許状の記載
免許状(指令書)の様式及び記載例は、別紙4を参照されたい。

記載すべき事項を第1面に全て記載できない場合には、「第2面のとおり」とし、第2面に記載されたい。

なお、免許をしたときは、漁業登録令(昭和26年政令第292号)第41条第1号の規定により職権で登録し、同令第38条第2項の規定により、登録名義人に登録済証を交付することとされている。この際、免許状の余白に登録の年月日及び登録が済んだ旨を記載し、登録庁の印を押して、申請者に交付することとされたい。

(2)漁場図の作成
漁業登録令第8条第3項の規定により備え付けなければならない免許漁業原簿の漁場図の写しを、免許状(指令書)交付の際、参考として添付するようにされたい。

(3)免許後の行使状況等について

1)資源管理の状況等の報告、委員会への報告並びに指導又は勧告の手続
法第90条の資源管理の状況等の報告について、都道府県知事は、報告に係る事項に関する意見を付して、1年に1回以上、委員会に報告するものとされている。

その意見の内容には、法第91条の指導又は勧告をしようとするときに都道府県知事は委員会の意見を聴かなければならないこととされていることを踏まえ、適切かつ有効な活用が図られているか、指導又は勧告を行うべきかの判断を含めることが適当である。

この判断には、海面利用ガイドライン別紙3のチェックシートを活用することとされたい。この報告及び判断は、漁業権単位で行われる手続であることに留意されたい。

2)その他
新規の漁業権について新規参入者に免許をした後は、免許の申請時に当該者が提出した事業計画と照らし合わせ、適切に漁業が行われているかについて定期的に点検を行うことが望ましい。
必要に応じて、法第90条に基づく資源管理の状況等の報告とは別に、法第176条に基づく報告徴収を活用することや、法第86条第1項に基づく条件として漁場活用状況に関する報告を求めることとするなど、地域の水産業の発展に寄与するとされた事業計画の実行が図られているかについて確認することとされたい。

第4 漁業の種類別の留意事項

1.定置漁業権

(1)総論
定置漁業は、漁具を敷設する位置がその漁獲を大きく左右し、その周辺において操業する他種漁業及び他の定置網の操業によって大きな影響を受ける一方、広い漁場を独占し、他漁業にも影響を及ぼすものである。したがって、漁場の位置、区域及び統数を定めるに当たっては、他種漁業との調整を十分に行った上で特に慎重に検討されたい。

(2)漁場の区域
土俵又は錨は漁場の区域からはみ出して差し支えないが、定置漁業の漁場の区域は、漁具を敷設し得る一定区域の水面とすべきであり、漁場の区域を広くとり、その中で任意に漁具の敷設位置を決めさせることは適当ではない。また、1つの漁場の区域内に敷設される漁具は、1つの身網と垣網の組合せをもって一ヶ統の漁具として取り扱うこととされたい。

(3)漁業時期
定置漁業の漁業時期は、実際に土俵、錨等を入れて建込みを始める時から取り除き終わる時とすべきであり、漁期に変動があるものについては、漁業時期を比較的長くとり、必要ある場合はその年の漁況により委員会指示によって調整されたい。


2.区画漁業権

(1)総論
沿岸漁場においては、漁業者の減少・高齢化の進行等を背景に、漁場の持つ生産力を十分に利用できていない可能性があるため、漁場の有効利用を促進し、養殖業の成長産業化を推進する観点から、今回の切替えに当たっては、自然的現状や社会的経済的現状とともに、特に漁場の利用状況の十分な調査点検を踏まえ、海区漁場計画を作成されたい。

また、民間企業による参入ニーズもあるところ、これらのニーズに応え得る漁場環境、当該漁場における区画漁業の実績、漁場周辺のインフラ等、参入の際に参考となる情報の積極的な発信に努めるとともに、漁業者や関係組合等の意向を的確に把握しつつ、漁業者や組合等と企業とのマッチングを推進し、海区漁場計画を柔軟に検討していくことも必要である。

加えて、養殖場として利用されていない地先沖合水面について、漁業関係者から海区漁場計画の作成について要望がある場合には、同水域で操業を行う漁船漁業関係者との調整や漁場の調査を行い、水面の総合利用を図り漁業生産力を発展させるという観点から妥当であれば、合理的な海区漁場計画を作成するよう努められたい。

なお、海面利用ガイドラインに示しているとおり、海区漁場計画において団体漁業権として区画漁業権を設定するかどうかは、既存の団体漁業権がある場合にあっては適切かつ有効に活用されている漁業権(活用漁業権)であるかどうか、新規の漁業権を設定しようとする場合にあっては法第63条第1項第4号のとおり団体漁業権として設定することが漁業生産力の発展に最も資すると認められるかについて検討及び整理を行った上で判断することとなることに十分留意されたい。

(2)漁業権の内容

1)漁業の種類
区画漁業権の漁業の名称については、従来、養殖対象種を特定することにより、漁業調整に資する趣旨で、一漁業権一漁業種類の原則をできるだけ堅持することを基本としてきたところであるが、近年、新たに秋から春に海面で行われるさけ科魚類の養殖の取組が増えていることや、海洋環境変化に対応するため既存の養殖漁場で新しい魚種の養殖への取組などが各地で試みられていることを踏まえ、こうした現場の取組を阻害することのないよう、必ずしも魚種を一種類に限定しないことや、「魚類」のように魚種を指定しないこととしても差し支えない。

これに当たって、従前は一漁業権一漁業種類の漁業権としていたものについて、例えば「まだい小割り式養殖業」を「魚類小割り式養殖業」に、「わかめ垂下式養殖業」を「藻類垂下式養殖業」に変更し、これを類似漁業権として海区漁場計画に設定することは差し支えない。

なお、この場合に、実際に養殖されている魚種や操業状況を把握しておくことは漁場を管理する上で重要であり、持続的な養殖生産には環境負荷を考慮することが必須である。漁業権の内容と漁場管理の実行性及び管理手法とをあわせて具体的に検討した上で海区漁場計画の作成を進めることが適当である。また、持続的養殖生産確保法(平成11年法律第51号)に基づく漁場改善計画制度の積極的な活用を進めるとともに、資源管理の状況等の報告においては、魚種ごとに、養殖生産量、組合員行使権者の数、生産規模等を求め、都道府県において養殖実態を正確に把握することとされたい。

2)漁業時期
区画漁業の漁業時期は、養殖業を営む期間について定められるもので、漁業時期を外れて営んだ場合は、定置漁業と同様、法第68条違反となる。

しかし、いかだ、ひび、いけす等を固定するための支柱・杭等が漁業時期終了後もそのまま残されている場合は、それのみで漁業を営む行為とはいえないため、法第68条違反に該当するとはいえない。したがって、漁場利用の面から問題が生ずるおそれがあるときには、漁業時期内又は漁業時期終了後一定時間内に撤去するよう委員会指示等によって処理されたい。

3)関係地区
団体漁業権の関係地区については、後述の共同漁業権の関係地区の箇所を参照の上、十分に検討されたい。

4)漁場環境保全等のための措置
漁場内に敷設できる漁具の規模や数について、漁具の過剰敷設により漁場環境の悪化を招くことを防ぐため、筏数、養殖尾数、給餌方法(生餌の禁止等)等の制限を行う場合には、単に従前どおりの規制として固定的な制限とせず、養殖技術の進歩や漁場環境の変化に応じて制限内容を見直し、漁場環境の悪化を防ぎつつ海面全体の最大限の活用につながるよう適切な措置を講ずる必要がある。魚病の発生、まん延等が懸念される場合には、過密養殖の是正等を併せて指導することが必要である。

なお、漁場環境の悪化を引き起こしているような場合には、その実態に応じて、法第91条第1項に基づき必要な措置を講ずべきことを指導することや、持続的養殖生産確保法第7条に基づき養殖漁場の改善のために必要な措置をとるべき旨の勧告を行うことを検討されたい。

(3)養殖業への円滑な新規参入の促進
地先水面を総合的かつ高度に利用するため、企業等の新規参入が円滑に進むよう留意されたい。この際、新規参入を希望する企業等のニーズと関係する漁場の共同漁業権又は区画漁業権を有する組合等との間の仲介・マッチングの推進に積極的に取り組むことが重要である。

(4)試験操業について
水産試験場等の地方公共団体の試験研究機関が本来の試験研究のために、又は水産業改良普及職員がその職務のために行う場合は、法第68条の漁業を営む行為に該当しないが、これら以外の者にあっては一連の行為が営利的要素を含む場合が非常に多く、営む行為であるか否かの判断が極めて困難であるので、原則として免許を受けて実施させるようにされたい。特に、民間企業が養殖行為を行う場合は、生産物を売れば営利となるため、このような行為を漁業権の免許を受けずに行うことはできないので、必要な場合は海区漁場計画を変更するようにされたい。

なお、試験研究機関等が行う試験操業のため、漁場の使用に関し調整をする必要がある場合には、原則として委員会指示により対応されたい。

(5)増殖との関係

1)区画漁業は、養殖目的物を逸散させずその区域内に保有でき、これを把握・管理できるように他の水面から区画された水面において、収穫の目的をもって養殖目的物の発生、成育を助長させる特別の人為的手段を反復継続して施すことを要するものであり、第三種区画漁業たる貝類養殖業においても同様である。

単に放苗するだけのものや年に1、2回まき換えをする程度のもの等、計画的・集約的な管理及び収穫が行われていない増殖程度のものについては、第三種区画漁業たる貝類養殖業ではなく、第一種共同漁業として取り扱うこととされたい。

2)かんがい用溜池等に設定されている内水面の区画漁業権においても、内水面漁場計画の作成に際しては、種苗確保の計画性、積極的投餌等によって水産動植物の個体の量等を顕著に増進させ、かつ、計画的、集約的に収穫し得るよう、常に漁業権者の高度の管理下に置かれるものであるかどうか慎重に検討することとされたい。

3.共同漁業権

(1)総論
共同漁業は、組合による漁場管理がなされ、その漁業権の関係地区の漁業者が共同して漁場を利用するというところにその特徴がある。このため、免許を受けた組合が自主的に漁場管理及び資源の増殖管理を行う必要があることはその概念に当然に包含されるものであり、海区漁場計画の作成に当たっては、このように漁場を組合の管理に委ねることが漁業生産力の発展という制度趣旨に照らして妥当か否かという観点から検討すべきである。

(2)漁場の区域

1)共同漁業権の漁場の区域は、一般的にはその漁業に必要な最小限度の海面で、組合が管理できる範囲内で定めるべきであり、この際他種漁業との調整にも十分注意を払う必要がある。

2)共同漁業権の漁場の区域の境目についても、あくまで漁場の利用及び管理の実態に基づいて定められるべきであり、組合の地区や陸上の行政区画にとらわれるべきものではない。特に組合の地区が非常に大きくなっているような場合には、ある程度分割した漁場の区域を定める方が適当な場合が多いと考えられる。

ただし、逆に漁業の対象となる水産動植物の性質上分割すると繁殖保護に不都合をきたすおそれのある場合又は複雑な入会関係があって漁場の分割が困難な場合は、状況に応じた漁場の区域を海区漁場計画に設定することとされたい。

3)内水面における第五種共同漁業権は、従来から「一河川一漁業権」を原則としてきており、今回の漁業権の一斉切替えに当たっても、この方針を維持し、その漁場の区域は河川における増殖及び漁場の管理面から考えてその河川全体とすることを原則とすることが適当である。

ただし、河川の性状、水産動植物の棲息、分布、増殖等の条件及び流域の社会経済的条件からみて「一河川一漁業権」の原則を適用することが困難と考えられる場合は、実情に沿って区分することもやむを得ない。

(3)関係地区

関係地区の法上の意義は、法第72条の免許についての適格性の判定に係る組合員の範囲、法第106条の漁業権行使規則(区画漁業権又は第一種共同漁業権)の制定及び改廃に当たっての同意を要する組合員の範囲、及び法第108条の組合がその有する団体漁業権の分割、変更又は放棄を行おうとするときに事前に同意を要しなければならない組合員の範囲を規定するものである。また、関係地区ごとに設置される組合の総会の部会において、総会に代わり漁業権の得喪又は変更等に関する意思決定を行うことができることとされている(組合法第51条の2)。

海区漁場計画の作成に当たっては、このような関係地区の意義を踏まえ、特に以下の点に留意しつつ、十分な検討を加えることとされたい。

1) 組合の地区等との関係
関係地区は、漁場利用の観点から、自然的及び社会経済的条件により決定するものであり、組合の地区や陸上の行政区画にこだわるべきものではない。したがって、合併により組合の地区が大きくなっている場合であっても、漁場利用の観点からは、原則として従来どおりの関係地区を定める方が漁場管理を行う上で適当であると考えられる。さらに、既に合併後の組合の地区に合わせて関係地区を統合している場合であっても、行使及び漁場管理を旧組合単位で漁場を分割して行っている場合には、実態に合わせ関係地区を見直すことを検討されたい。

2) 部会制度の活用
組合法第51条の2の規定により、組合は、団体漁業権を有しているときは、総会(総代会は除く。以下同じ。)の議決を経て、当該団体漁業権に係る関係地区ごとに総会の部会を設け、当該漁業権に関し、その得喪又は変更、漁業権行使規則の制定又は変更等についての総会の権限を部会に行わせることができる。

組合が部会を設置できるのは、同条の規定により「団体漁業権を有しているとき」であるため、漁業権の一斉切替え時については、基本的には一旦組合が都道府県知事から漁業権の免許を受けた後に部会を設置することとなる。ただし、具体的な手続としては、漁業権取得のための組合の総会において「漁業権の免許を受けた場合は免許の日から当該漁業権の関係地区に部会を設置する。」旨の停止条件付きの議決を行う方法が最も簡便かつ適当である。

また、組合が団体漁業権を有しているときであって、その存続期間満了後に切れ目なく当該漁業権の切替えが行われ、海区漁場計画の作成によりそれまで部会が設置されていた関係地区が変更されず、かつ、切替え後の漁業権の漁場の位置及び区域、漁業の種類並びに漁業時期が切替え前の漁業権のものと同じである場合については、既に存在している部会の設置に関する総会の議決において、既に存在している部会を切替え後も存続させ、権限を与え事務を行わせるとの合意があるものと解されるときには、既に存在している部会を引き続き存続させることができる。この場合、漁業権の一斉切替え時に、切替え後の団体漁業権に関し、組合法第48条第1項第8号から第10号までに掲げる事項(第9号にあっては漁業権行使規則又は遊漁規則の制定)、具体的には漁業権の取得や漁業権行使規則の制定については、既に存在している部会の権限により行うことが可能である。ただし、部会設置時の総会の議事録は、部会廃止の時まで保存する。

なお、団体漁業権の存続期間中に、漁業権を変更して漁場を拡大したり、漁業の種類を追加したりする場合は、現に設置されている部会で漁業権の変更の決議を行い、変更後の海区漁場計画の公示に基づき漁業権変更の免許申請(法第76条)を行うこととなる(組合法第48条第1項第8号)。

3) 共有の場合
複数組合にまたがる関係地区を定める場合は、当該漁業権は当該複数組合の共有となるが、管理主体が不明確とならないよう慎重に取り扱う必要がある。具体的には、漁業の対象となる水産動植物の性質や複雑な入会関係の都合上、漁場の区域及び関係地区を大きく設定することが真にやむを得ない場合以外は、安易にこのような選択をすることは避けるべきである。

なお、現在共有で漁業権の免許を受けているにもかかわらず、行使及び漁場管理を各組合が漁場を分割して行っているものについては、1)と同様の観点から検討を行う。

4) その他
関係地区は、第一種、第二種等の漁業権の種類ごとに分けて考えるべきものである。特に、第一種共同漁業権と第五種共同漁業権の漁場の区域及び関係地区については、おのずとその範囲に大きな差があるものと考えられるため、結果的に免許を受ける組合が同一であることが予想されるからといってこれらをまとめて同一の関係地区として取り扱うことは適当ではない。

(4)第一種共同漁業について

1)第一種共同漁業は、その前提として漁業関係者による資源の保護培養と自治的な漁場管理を特に必要とするものであるから、これらに対する漁業関係者の意欲を重視して対象水産動植物を選定し、海区漁場計画をとりまとめる必要がある。

2)対象となる水産動植物のうち、法第60条第5項第1号の農林水産大臣が指定する水産動物の種については、「漁業法第60条第5項第1号の農林水産大臣の指定する定着性の水産動物を定める件」(令和2年7月8日農林水産省告示第1276号)により指定している。

第一種共同漁業の対象種として適当な種は、地域ごとに多様性があることから、漁業権の免許事務が都道府県の自治事務であることに鑑み、上記告示の解釈運用に当たっては、地域の実情を踏まえ、告示の範囲内において柔軟に対応することとされたい。

(5)第二種共同漁業について

1)従来漁業権の内容として取り扱ってきた漁業でも、漁具、操業方法等の変化によりむしろ知事許可漁業として扱った方が好ましい場合もあるので、このような漁業を漁業権として海区漁場計画に含めるべきかどうか慎重に検討する必要がある。

2)漁場の区域については、他の漁業との調整上、特に必要最小限にとどめるべきである。

3)ナマコ及びアワビは、法第132条の規定により特定水産動植物として指定され、基本的に、許可に基づく場合又は漁業権に基づく場合を除いて採捕してはならないこととされている。この管理と第二種共同漁業との関係を明確化するため、第二種共同漁業によるナマコ又はアワビの採捕を禁止する場合には、漁業権に条件を付すことにより対応することや、漁業権行使規則においてナマコ又はアワビの採捕を禁止する旨の規定を入れるなどにより対応されたい。

(6)第三種共同漁業について

1)地びき網漁業について、実際の操業実績がほとんどなく活用漁業権でないものは海区漁場計画から除外し、規制の必要がある場合には知事許可漁業として取り扱うこととされたい。

2)つきいそ漁業とは、その漁法のいかんを問わず漁業関係者によって管理又は設置された魚礁に集まる魚を対象として行われる漁業であるが、海区漁場計画の作成に当たっては、次の点に注意されたい。

ア  「つきいそ」とは本来人工的に設置された魚礁をいい、何ら人為的なものが加えられていない天然の魚礁や沈船の周囲の好漁場で漁業を行うものは、つきいそ漁業とはいえない。

イ  漁場の区域の設け方については、原則として魚礁を中心とする必要最小限の区域とすべきで、他の共同漁業権の漁場と同様の広い範囲に漁場の区域を定めることはしないようにする。

ウ  国の補助事業により設置した魚礁については、漁業調整その他公益上支障がなく、漁業生産力の維持発展に資すると認められる場合には、つきいそ漁業として海区漁場計画に設定しても差し支えない。ただし、これらの事業の性格を十分考慮し、漁場の位置は原則として既存の共同漁業権漁場内に限るとともに、遊漁との調整についても十分配慮する必要がある。

既存の共同漁業権の漁場の区域外の魚礁は、関係する組合が広範囲にわたり、入会的利用状況となっていることが多いため、海区漁場計画への設定については慎重に対応する。このような魚礁については、資源管理を充実させ、魚礁設置の目的を十分達成させるため、漁業関係者による自主的な取決め、漁場利用協定、委員会指示等により魚礁利用のルール化を図る。

(7)第五種共同漁業について

1)内水面における第五種共同漁業の免許には、法第168条の規定により、当該内水面が増殖に適していること及び免許を受けた者が増殖を行うことが必要である。

2)法第168条でいう「増殖」とは、採捕の目的をもって、人工ふ化放流、卵、稚魚又は親魚の放流等の積極的人為手段により水産動植物の数及び個体の重量を増加させる行為に加え、産卵床・産卵場の造成や、河川において移動が妨げられている滞留魚の汲み上げ放流や汲み下ろし放流もこれに含まれるものとし、養殖のような高度の人為的管理手段は必要とはしない。ただし、漁場や資源の利用調整を目的とする漁具、漁法、漁期、漁場及び採捕物に係る制限又は禁止等の消極的行為に該当するものは、含まれない。

3)増殖に当たっては、漁場の環境収容力や利用状況に応じて、適切な採捕規制や漁場環境の保全・改善を実施し、これにあわせて2)の積極的人為手段による増殖行為を行うようされたい。

4)漁場管理又は漁業取締り上、漁業権の対象魚種と密接な関係がある魚種であっても、その魚種自体を増殖する行為がなければ漁業権の免許対象とはならないことに注意されたい。
なお、当該魚種について繁殖保護等の必要があれば、調整規則による採捕の制限若しくは禁止措置又は委員会指示によって規制することとされたい。

5)第五種共同漁業は、漁業権者が増殖をする場合でなければ免許されず、また、漁業権者が増殖を怠った場合にはその漁業権を取り消さなければならないものであるため、以下の事項に留意されたい。

ア  免許時の増殖指針の公表
水産動植物の種類、増殖方法、増殖規模等を内容とする増殖指針について、免許の可否の基準として都道府県知事が別途公表する。
ただし、この指針は、免許する際の一応の基準なのであって、免許期間中、固定化して考えるべきものでない。

イ  毎年度の目標増殖量等
漁業権の免許をした後は、漁業権者が計画的に資源の増殖を行うよう、委員会が、毎年その年度の目標増殖量等を各漁業権者に示し、かつ、委員会名でこの目標増殖量等をインターネットなど適切な方法で一括公示する。

委員会が目標増殖量等を決定するに当たっては、漁場環境の変化、天然再生産、災害による漁場の荒廃等、技術的な調査、専門家の意見、過去の実績、漁業権者の経済的負担能力(有害生物の防除の実施等に伴う追加経費負担の状況も含む。)等を十分勘案し、適正なものとするよう考慮する。

また、稚魚放流に偏重することなく内水面の豊度に応じた卵放流や親魚放流のほか、産卵床・産卵場の造成等繁殖のための施設の設置、滞留魚の汲み上げ・汲み下ろし放流等による水産資源の遡上の確保等、その効果に根拠があると認められる手法について、これらの組合せ等についてもあわせて検討する。

このほか、目標増殖量等を稚魚放流の数量で示すに当たり、卵放流、親魚放流、産卵床・産卵場造成を組み合わせて行う場合には、その効果を稚魚放流の数量に変換して置き換える方法も検討する。あるいは、目標増殖量等を、増殖行為にかける金額に置き換えて示すことも検討する。

一方、震災、原発事故又は豪雨等の天災による漁場の荒廃の影響により、漁業権者が従来と同様の増殖行為を行うことが困難な場合がある。目標増殖量等の設定に当たっては、これらの影響に配慮するとともに復旧の状況に応じて目標増殖量等を柔軟に見直すこと等により、実効性のある増殖を行うよう漁業権者を指導する。

都道府県知事及び委員会は、漁業権者がこの目標増殖量等を達成するよう指導するとともに、毎年、漁業権者から増殖実施状況等の報告を求める。

ウ  法第169条の増殖計画
漁業権者の増殖実施が目標増殖量等を達成していない場合には、都道府県知事は、当該目標増殖量等を検討し、当該年度における水面の生産力、種苗供給状況、当該漁業権者の経済的負担能力等を勘案して、委員会の意見を聴いて増殖計画を定め、当該漁業権者に対し当該計画に従って増殖するよう命じる。

なお、震災、原発事故又は豪雨等の天災による漁場の荒廃の影響により、増殖を行う意思があっても、漁業権者の責めに帰することができない事由により、実際に増殖行為を行うことができない場合については、法第169条第1項で規定する「免許を受けた者が当該内水面における水産動植物の増殖を怠っていると認める」必要はない。

6)水面固有の在来個体群は遺伝的多様性の保全の観点から重要であるため、在来個体群が生息している場合には、人工ふ化放流、卵、稚魚又は親魚の放流に際しては、当該河川湖沼における在来個体群の繁殖保護に留意されたい。

7)組合による増殖事業は内水面の水産資源の維持及び増大に大きな貢献をしているところであり、この努力を広く国民に知らしめるとともに、内水面の現場において遊漁者の理解を得ることは漁業制度を円滑に運用する上で極めて有用である。

ついては、水産動植物の増殖や漁場の管理の内容等を組合発行の遊漁承認証の裏面を活用して公表する等、組合による積極的な情報開示について指導されたい。

8)内水面における漁場の管理に関して、水産動植物の繁殖保護又は漁業調整のため必要な場合には、組合、地域住民、遊漁者等に対し、密放流等の違反に関する情報提供等についての協力依頼、関係者に対する委員会の指示、さらに委員会と連携した適時適正な指導が行われるよう配慮されたい。

第5 沿岸漁場管理

1.制度の運用

(1)基本
都道府県知事は、保全沿岸漁場を海区漁場計画に設定し、法第109条第1項に基づき、組合若しくは漁業協同組合連合会又は一般社団法人若しくは一般財団法人を沿岸漁場管理団体として指定することができることとされた。

海区漁場計画の要件として、漁業権の内容たる漁場の使用と調和しつつ、水産動植物の生育環境の保全及び改善が適切に実施されるように設定されていることとされている。また、沿岸漁場管理団体は、沿岸漁場管理規程を定め、都道府県知事の認可を受けなければならない。当該規程には、保全活動に要する費用の見込みに関する事項を規定することとされ、この際、当該費用の一部について保全活動の受益者に対して協力を求めようとするときの金額を記載することとされている。

これらの内容や考え方は、海面利用ガイドラインに記載しているとおりである。

(2)制度の活用推進
保全活動の受益者から、その保全活動の費用の一部の負担を求めているような場合には、沿岸漁場管理制度の下で行われることが適当である。その際、沿岸漁場管理規程にその額及び算定の根拠並びに使途を示し、手続の透明性と信頼性が確保されるよう、制度の積極的な活用を進めることとされたい。

また、漁場の保全活動について、沿岸漁場管理制度によらず組合等の自主的な活動として行う場合には、従前どおり実施することが可能であるが、自主的な活動として行う場合であっても、漁場における保全活動の取組を世間に発信する意味において沿岸漁場管理制度は有用である。組合職員や組合員が行う地道な保全活動の取組は、世間から認知されにくい面もあるところ、この制度を有効に活用することによって、その活動の運営体制の適正化・透明化が図られることが期待されるため、このような観点からも制度の活用について検討することとされたい。

(3)存続期間
保全沿岸漁場は、法第63条第1項第6号にあるように、漁業権の内容たる漁業に係る漁場の使用と調和しつつ、水産動植物の生育環境の保全及び改善が適切に実施されることが必要である。このため、保全沿岸漁場の存続期間については、法的な定めは無いものの、保全沿岸漁場が設定される漁場の漁業権の存続期間と同じ又はそれよりも短い期間となるように定められたい。

2.指定の申請

第3の1の免許の申請に準じて対応されたい。なお、指定の申請については、次に掲げる事項を記載した申請書を都道府県知事に提出させることが適当である。

(1)申請者たる法人の名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地

(2)申請に係る保全沿岸漁場の内容

(3)その他参考となるべき事項

また、申請書には、次に掲げる書類を添付させることが適当と考えられるので参考にされたい。

(4)定款

(5)登記事項証明書

(6)法第109条第1項の基準に適合することを証する書面(法110条第1号及び第2号にあっては、これらに該当しないことを誓約する書面)

(7)その他必要と認める書類

このほか、指定の申請に当たっては、指定の申請と同時に沿岸漁場管理規程の認可の申請を行わせるよう指導されたい。

 
3.基準への適合性

沿岸漁場管理団体に指定されるためには、法第109条第1項の基準に適合する必要がある。以下にその確認の考え方を示すので参考とされたい。

(1)法第109条第1項第1号
暴力団員等については、漁業権の免許の申請手続きに準ずる。

また、保全活動を適切に実施するために必要な能力を有すると認められない場合として、例えば、経理担当者が不在であるなど収支状況の管理が出来ないこと、保全活動に必要となる船舶等の資材が確保されていないこと、沿岸漁場管理規程において金銭徴収の根拠が適切に示されていないこと、同規程の記載内容を適切に実施できると認められないこと等が挙げられる。

(2)法第109条第1項第2号
役員又は職員の構成が保全活動の実施に支障を及ぼすおそれがある場合として、例えば、保全活動の内容に照らして必要な人員が確保されていないなど必要な能力を有しないこと、活動従事者の所在地が遠方にあること等が挙げられる。

(3)法第109条第1項第3号
保全活動以外の業務を行うことによって保全活動の適正かつ確実な実施に支障を及ぼすおそれがある場合として、例えば、保全活動以外の業務の状況が示されないこと、指定の期間中に継続して保全活動を実施することが困難となる可能性があること等が挙げられる。

第6 スケジュール

漁業権の一斉切替えの予定は各都道府県のそれぞれの事情により相違しているが、例えば、令和5年8月31日に漁業権の存続期間が満了するものについては、次のようなスケジュールが適当と考えられるので、参考とされたい。

(1)漁業関係者の要望及び漁場条件の調査令和4年9月まで

(2)利害関係人の意見聴取及び結果の公表令和4年11月まで

(3)海区漁場計画の案の作成  令和4年12月

(4)委員会への諮問令和5年1月

(5)委員会からの答申令和5年2月

(6)海区漁場計画の作成及び公表、漁業の免許予定日及び沿岸漁場管理団体の指定予定日の公示令和5年3月

(7)申請期間  令和5年3月から5月まで

(8)審査及び答申令和5年8月中旬まで

(9)免許 令和5年9月1日

 
法第64条第7項の規定により、漁業の免許予定日等は、免許予定日等の公示の日から起算して3月を経過した日以後の日としなければならないので、都道府県知事は、委員会における公聴会の開催、答申の作成等に要する期間を勘案の上、早めに海区漁場計画に諮問する必要がある。

また、公示の時期については、申請者が組合又は漁業協同組合連合会である場合は、海区漁場計画が作成され漁場が確定された後に漁業権の取得等につき総会の議決をする必要があるので、十分余裕をもって定める必要がある。

このほか、免許手順等通知別添1及び2においても、各手続のポイント等を整理しているので、あわせて参考とされたい。

第7 その他

1.震災被害に対応した関係地区の考え方

東日本大震災や、原発事故による影響により漁業者が一時的に他地域に避難している場合には、震災前の地区をそのまま関係地区として維持することもできる。この場合、法第72条第2項第2号の免許についての適格性の住所要件が問題となるものの、一時的に避難生活をしている沿岸漁業者が当該免許に係る漁業権の内容たる漁業を継続する意思を表示している場合又は一時的に他地域に在住している沿岸漁業者が当該漁業を再開し現に営んでいる場合には、当該免許の関係地区に住所を有している者として取り扱うことは差し支えない。法第72条第2項第1号の免許についての適格性の住所要件も、これに準じて取り扱うこととして差し支えない。

ただし、これはあくまでも震災等に伴う緊急措置であるため、これに基づく運用を継続するか、従来と異なる関係地区を定め漁業権行使規則に規定する組合員行使権を有する者の資格の内容により対応して運用するか、各地域における震災後から現在に至るまでの状況の変化を踏まえ判断されたい。なお、従来と異なる関係地区を定める場合には、漁業権行使規則に「組合員行使権を有する者は平成○○年○○月○○日の漁業権の免許の切替時点において○○地区に住所を有していた者に限る。」との規定を入れるなど対応に留意されたい。


2.他法令等との関係

(1)港湾法、河川法等との関係
水面を漁業に利用する場合には、法による規制があるほか漁業の用に供する施設等について港湾法(昭和25年法律第218号)、河川法(昭和39年法律第167号)等他の諸法令によってもそれぞれの法の目的によって重複的に規制を受けることになる。したがって、海区漁場計画を作成する場合には、これらの諸法令を考慮に入れ、必要に応じて関係機関と連絡のうえ、調整を図るように措置されたい。
なお、次の事項については、特に留意されたい。

1)漁場の区域の全部又は一部が、港湾法第2条第3項の港湾区域内にあるときは当該区域を管理する港湾管理者の長に、港則法(昭和23年法律第174号)の港の区域内その他船舶交通のふくそうする水域内にあるときは当該区域を管轄する海上保安監部長又は海上保安部長(特定港にあっては港長)に、あらかじめ協議して調整を図る。

2)港湾法第12条第5項の規定により公示された水域施設内又は船舶交通のふくそうする水域内においては、漁具を固定してする漁業は原則として海区漁場計画に漁業権として設定しない。

3)河川又は海岸保全区域における海区漁場計画の作成に際しては、漁場の区域等免許の内容及び免許に当たり漁業権に付される条件について、あらかじめ河川法による河川管理者又は海岸法(昭和31年法律第101号)による海岸管理者(直轄事業区域にあっては当該河川又は海岸の管理者及び地方整備局長又は北海道開発局長)との間で調整を図る。

(2)公有水面埋立法との関係
漁場区域の全部又は一部が、公有水面埋立法(大正10年法律第57号)による埋立免許のなされている水域内にあるときは、埋立権者の同意を得た上で海区漁場計画に漁業権として設定することとされたい。

(3)知事許可漁業及び都道府県漁業調整規則との関係
共同漁業権の内容となっている漁業が知事許可漁業でもある場合に、当該漁業が許可されれば、その許可の効力は当該漁業を内容とする漁業権の漁場の区域にも及ぶこととなる。したがって、漁業権の内容たる漁業と知事許可漁業との間で調整上の問題があるときは、知事許可漁業に付する条件や委員会指示によって措置することとされたい。

また、調整規則の禁止区域、禁止期間等についての規定は、漁業権の内容たる漁業に対しても当然適用される。例えば、漁業権の漁業時期であっても、調整規則の禁止期間中は免許漁業を行使することはできない。したがって、調整規則の禁止期間を含んで海区漁場計画を作成する際には、漁業権の漁業時期が調整規則の禁止期間だけとならないように注意する。

(4)漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法との関係
定置漁業又は区画漁業の法人経営化については、漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法(昭和51年法律第43号)第4条の規定により改善計画の認定を受けた個人である漁業者であって定置漁業権又は区画漁業権を有する者が、当該改善計画に従い法人化する場合には、都道府県知事が委員会の意見を聴いてこれを認可したときは、同法第10条の規定により当該法人に対して漁業権を移転することが認められている。このため、この制度の活用により免許期間途中での法人化も可能であることを十分理解の上、実情に応じて漁業関係者に対して法人化を指導することとされたい。

 
3.特定の水産動植物に関する留意事項

(1)くろまぐろ定置漁業及び養殖業への対応
くろまぐろに関しては、以下のとおり大臣指示をしているので、これに従い対応されたい。

1)くろまぐろを漁獲する定置漁業について
海区漁場計画を作成又は変更するに当たっては、くろまぐろの漁獲量が増加することのないよう十分配慮するとともに、特に、くろまぐろを主たる漁獲物とする定置漁業については、現に免許されている数を超えて海区漁場計画を作成してはならない。

2)くろまぐろ養殖業を内容とする区画漁業について

ア  くろまぐろ養殖業を内容とする区画漁業について、1年当たりの天然種苗の活込尾数が、平成23年に当該区画漁業で用いられた天然種苗の活込尾数よりも増加することのないよう、海区漁場計画の作成又は変更を行わなければならない。

イ  生簀の規模拡大により、当該くろまぐろ養殖業を内容とする区画漁業で用いられる1年当たりの天然種苗の活込尾数が、平成23年に当該区画漁業で用いられた天然種苗の活込尾数よりも増加することのないよう、漁業権に生簀の形状、規格及び台数に係る条件を付けなければならない。

ウ  都道府県の間で、これらの都道府県におけるくろまぐろ養殖業を内容とする区画漁業で用いられる1年当たりの天然種苗の活込尾数の合計が、平成23年に当該区画漁業で用いられた天然種苗の活込尾数の合計よりも増加しない範囲内となるよう調整を行うことは差し支えない。ただし、当該区画漁業で用いられる1年当たりの天然種苗の活込尾数が、調整後の天然種苗の活込尾数よりも増加することのないよう、海区漁場計画の作成又は変更を行い、かつ、漁業権に生簀の形状、規格及び台数に係る条件を付けなければならない。

エ海区漁場計画を作成又は変更する場合には、漁業の種類及び漁業の名称において、くろまぐろ養殖業を内容とするものと、くろまぐろ養殖業以外の魚類の養殖業を内容とするものに区分しなければならない。

このほか、人工種苗を対象とした養殖漁場は大臣指示の対象外であるが、その場合は、条件により、例えば人工種苗による活込みに限る旨の適切な規定を明記するとともに、活込みの際に職員が立ち会う、納品書により人工種苗の購入先を確認するなど実効ある遵守措置により人工種苗のみであることが担保されるようにされたい。また、実効ある管理に資するため、明確な識別が困難な状況で天然種苗と人工種苗とを同一の養殖生簀で養殖しないよう、免許の条件等により担保されたい。

(2)ウミガメの採捕等の情報収集及び混獲回避
ウミガメ類は、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の附属書A.掲載種であり、保護の機運が世界的に高く、国内においても絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令(平成5年政令第17号)において国際希少野生動植物種に指定されている。また、漁業の許可及び取締り等に関する省令(昭和38年農林省令第5号)第88条に基づき、ひめうみがめ及びおさがめの採捕は禁止されている。

ウミガメは、その生活史のほとんどを海洋で過ごすため、偶発的な捕獲による死亡をいかに減らしていくかが、漁業とウミガメの保護との両立のために重要である。

このため、これまで定置漁業におけるウミガメの混獲実態の把握及び回避技術の開発・普及を行ってきたところである。今後とも、ウミガメの産卵地周辺等、混獲が多い水域に設置され、かつ、中底層網を使用する定置網においては、ウミガメの脱出口の設置等を免許の条件とすることについて積極的に検討されたい。また、各都道府県において、産卵ふ化放流等を行っている場合には、年間の種別上陸数、産卵数等の情報を収集するとともに、ウミガメの年間の種別採捕数及び混獲数等の情報収集に努められたい。


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