平成15年6月
水産物表示検討会
生鮮魚介類の生産水域名の表示のガイドライン
1.趣旨
(1)現行の生鮮食品品質表示基準では、国産生鮮魚介類の原産地は生産水域名(又は養殖地名)を記載することが原則となっており、水域名の記載が困難な場合は、例外として水域名に代えて水揚げ港名又はその属する都道府県名を記載することができることになっている。
(2)消費者は、食品の安全性や品質の重視から、購入する魚介類がどこの水域で漁獲されたものかという生産水域に関する情報を求めるようになっている。しかし、実際には、生産・流通・販売の各段階において生産水域に関する情報伝達が不十分、水域名をどのように記載すればよいかが必ずしも明確でない、水揚げ港地の記載が最も容易等の事情から、大半の品目で水揚げ港の属する都道府県名が表示されているため、消費者のニーズに十分対応できていないほか、同一水域で漁獲されても水揚げ地によって都道府県名の表示が異なったり、都道府県名が水揚げ港地を示すのか又はその沖合などの生産水域を示すのか、わかりにくいといった指摘がなされている。
(3)このため、生鮮魚介類の生産水域名の表示のガイドラインを策定し、これを指針として、現行の水産物の原産地表示の基準に基づく生産水域名の表示を推進する。
2.ガイドラインの位置付け
このガイドラインは、生鮮食品品質表示基準第4条に基づき、生鮮魚介類の生産水域名の表示を行う上での指針であり、この指針に沿って生産・流通・小売の各段階において生産水域名の記録・伝達・表示を行うものとする。
また、今後の運用状況や関係者の意見等を踏まえ、必要に応じその内容の見直しを行うとともに、生産・流通・小売の各段階における生産水域名の記録・伝達・表示の適正な実施が確保された段階で品質表示基準の見直しを検討する。
3.生鮮魚介類の生産水域名の記載方法扱い
各々の漁業実態に応じて、次に掲げる水域名のうち、実際の生産水域を表し、かつ一般に理解される水域名を記載する。
(1)我が国周辺の水域名(別紙1)
ア 一般に知られている地名+沖(近海、地先、沿岸等)の水域名
(例)千葉県沖、銚子沖、北陸沖、山陰沖等
イ 一般に知られている個別水域の名称
(例)陸奥湾、富山湾、紀伊水道、玄界灘、琵琶湖、石狩川等
ウ 我が国漁獲統計海区に準じた水域名
(2)世界の水域名(別紙2)
ア 「FAO漁獲統計海区」(FAO Fishing Area)の水域名
イ 国名+沖(水域、近海)の水域を表す名称(当該国の領海又は排他的経済水域の海域で生産されたものに限る。)
(例)ニュージーランド沖、ペルー沖等
ウ 一般に知られている個別水域名
(例)地中海、黒海、黄海、オホーツク海等
(3)留意事項
ア 広域な漁場で操業する漁業種類の水域名(別紙3)
広域な漁場を移動しながら漁獲し、漁獲物を水域ごとに区分せずに一括して船上保管や水揚げを行う場合は、実際の漁獲水域を表し、かつFAO漁獲統計海区や我が国漁獲統計海区よりも広範な水域名を記載することができる。
(例)日本海、インド洋、北太平洋等
イ 国際的な漁獲証明制度の対象となっている魚種の水域名(別紙4)
国際漁業管理機関による漁獲証明制度が導入されている魚種(メロ、冷凍めばちまぐろ、冷凍みなみまぐろ、冷凍くろまぐろ)については、それらの漁獲証明制度の水域区分に準じた水域名を記載することができる。
(例)冷凍くろまぐろ(ICCAT)→太平洋、インド洋、地中海、大西洋等
4.実施方法
(1)生鮮食品品質表示基準第4条に基づき、
ア 国産水産物については、生産水域名を表示する際は本ガイドラインに沿って生産水域名を表示する。(この際、生産水域名に水揚げ港名又は水揚げ港が属する都道府県名を併記することができる。)
イ 輸入水産物については、原産国名(義務)の記載とあわせ、本ガイドラインに沿った生産水域名の併記(任意)を推進する。
(2)生産者、卸売・仲買業者等の小売販売業者以外の販売業者は、生産水域名を外箱等の包装容器、送り状、伝票等の書類に記載し、販売先に伝達するものとする。
(3)小売販売業者は、生産水域名を包装容器や商品に近接した掲示等により表示するとともに、売り場に生産水域を示す図を掲示する等消費者にわかりやすい表示に努めるものとする。
別紙1:我が国周辺の水域名
各々の漁業実態に応じて、次に掲げる水域名のうち、実際の生産水域を表し、かつ一般に理解される水域名を記載する。
1 一般に知られている地名+沖(近海、地先、沿岸等)の水域名
例:青森県沖、香川県沖、大分県沖、銚子沖、下田沖、明石沖、北陸沖、三陸沖、東北沖太平洋、山陰沖、四国沖等
2 一般に知られている個別水域の名称
(1)海洋
例:陸奥湾、富山湾、伊勢湾、相模湾、有明海、八代海、紀伊水道、豊後水道、周防灘、遠州灘、熊野灘、玄界灘、津軽海峡、対馬海峡等
(2)内水面(湖沼、河川等)
例:琵琶湖、浜名湖、サロマ湖、猪苗代湖、宍道湖、石狩川、利根川、信濃川、大井川、紀ノ川、吉野川、筑後川等
3 我が国漁獲統計海区に準じた水域名(別紙)
海区番号 |
水域名 |
1 |
北海道沖 (北海道沖太平洋) (北海道沖日本海) (オホーツク海) |
2 |
日本太平洋北部 |
3 |
日本太平洋中部 |
4 |
日本太平洋南部 |
5 |
日本海北部 |
6 |
日本海西部 |
7 |
東シナ海 |
8 |
瀬戸内海 |
(注)広域な漁場を移動しながら漁獲し、漁獲物を水域ごとに区分せずに一括して船上保管し水揚げを行う場合は、実際の漁獲水域を表す漁獲統計海区よりも広範な水域名を記載することができる。(例:日本海、北日本太平洋等)
別紙2:世界の水域名
各々の漁獲実態に応じて、次に掲げる水域名のうち、実際の生産水域を表し、かつ一般に理解される水域名を記載する。
1.FAO漁獲統計海区(FAO Fishing Area)の水域名
海区番号 |
海区名(英名) |
水域名(和訳名) |
18 | Arctic Sea | 北極海 |
21 | Atlantic, Northwest | 北西大西洋 |
27 | Atlantic, Northeast | 北東大西洋 |
27.3 | Baltic Sea | バルト海 |
31 | Atlantic, Western Central | 中西大西洋 |
34 | Atlantic, Eastern Central | 中東大西洋 |
37 | Mediterranean | 地中海 |
37.4 | Black Sea | 黒海 |
41 | Atlantic, Southwest | 南西大西洋 |
47 | Atlantic, Southeast | 南東大西洋 |
51 | Indian Ocean, Western | 西インド洋 |
57 | Indian Ocean, Eastern | 東インド洋 |
61 | Pacific, Northwest | 北西太平洋 |
67 | Pacific, Northeast | 北東太平洋 |
71 | Pacific, Western Central | 中西太平洋 |
77 | Pacific, Eastern Central | 中東太平洋 |
81 | Pacific, Southwest | 南西太平洋 |
87 | Pacific, Southeast | 南東太平洋 |
48 | Atlantic, Antarctic | |
58 | Indian Ocean, Antarctic | 南極洋 |
88 | Pacific, Antarctic |
(注)広域な漁場を移動しながら漁獲し、漁獲物を水域毎に区分せずに船上保管や水揚げを行う場合は、実際の漁獲水域を表すFAO漁獲統計海区よりも広範な水域名を記載することができる。(例:北太平洋、インド洋、大西洋等)
2.国名+沖(水域、近海)の水域を表す名称(当該国の領海又は排他的経済水域の海域で生産されたものに限る。)
(例)ニュージーランド沖、ペルー沖等
3.一般に知られている個別水域名
(例)地中海、黒海、黄海、オホーツク海等
別紙3:広域な漁場で操業する漁業種類の水域名の記載例
漁業種類 |
対象魚種 |
主な操業水域 |
水域名の記載例 |
大中型いか釣り漁業 (大臣許可) |
いか類 |
a 太平洋北部~北海道沖太平洋 b 日本海北部~北海道沖日本海 c 北海道沖日本海~北海道沖太平洋 d 日本海北部~太平洋北部 e FAO統計海区61、67、77 f ニュージーランド沖 g ペルー沖 h アルゼンチン沖 |
a 三陸・北海道沖、北日本太平洋、太平洋北部・北海道沖 b 日本海、北日本日本海、日本海北部・北海道沖 c 北海道沖 d 北日本近海、日本海・三陸北海道沖 e 北太平洋、太平洋 f ニュージーランド沖 g ペルー沖 h アルゼンチン沖 |
かじき流し網漁業 (大臣届出) |
かじき類 | 太平洋北部~北海道沖太平洋 | 北日本太平洋、太平洋北部・北海道沖 |
さけ・ます漁業 (大臣許可) |
さけ・ます類 |
a 能登~稚内沖日本海
c ロシア200海里内2海区(太平洋)、2a海区(オホーツク海) |
a 北日本日本海、日本海、日本海北部・北海道沖 b 北海道沖、北海道沖太平洋 c ロシア水域 (注)日露民間協定に基づき操業水域別に魚倉で区分して出荷 |
大中型まき網漁業 (大臣許可) |
いわし・あじ・さば・かつお・まぐろ類 |
a 北海道・東北沖太平洋、道東、八戸沖、金華山沖、仙台湾 b 鹿島灘、銚子沖、 c 伊豆七島周辺、駿河湾、熊野灘 d 豊後水道、日向灘 e 種子島・屋久島周辺 f 天草灘、五島西沖、尖閣諸島周辺、東海、済州島沖、対馬沖(西側) g 対馬沖(東側)、見島沖、隠岐周辺、若狭湾、能登半島周辺 h 秋田~新潟沖 |
a 秋田~新潟沖 b 千葉・茨城沖 c 太平洋中部
d 豊後水道周辺 e 鹿児島県沖 f 東シナ海
g 日本海西部
h 日本海北部 |
海外まき網漁業 | かつお・まぐろ類 | 中西太平洋~北西太平洋 | インド洋全域 太平洋 インド洋 |
遠洋まぐろ漁業 (大臣許可) |
まぐろ類 |
a 太平洋(FAO統計海区61、67、71、77、81、87) b インド洋(FAO統計海区51、57、87) c 地中海(FAO統計海区37) d 大西洋(FAO統計海区21、27、31、34、41、47、48)
|
a 太平洋
c 地中海
d 大西洋 (注)冷凍まぐろは船上で魚体の尾鰭に水域別・時期別の色リボンを付け区分して出荷 |
(注)これらの水域名の記載例に代えてより詳細な水域名を記載することができる。
別紙4:国際漁獲証明制度の対象となっている魚種の水域名の記載例
対象魚種 |
証明制度管理機関 |
証明制度の水域区分 |
水域名の記載例 |
メロ | CCAMLR(南極海洋生物資源保存委員会) |
FAO統計海区又はCCAMLR統計海区 |
FAO漁獲統計海区の水域名を記載 |
冷凍めばちまぐろ | IOTC(インド洋まぐろ類委員会) | 大西洋、太平洋、インド洋の3区分 めばちまぐろ統計証明書 |
遠洋まぐろ漁業の記載例と同様に、太平洋、インド洋、大西洋と記載 |
冷凍みなみまぐろ | CCSBT(みなみまぐろ保存委員会) |
1~13のCCSBT漁獲水域番号 |
遠洋まぐろ漁業の記載例と同様に、太平洋、インド洋、大西洋と記載 ア CCSBT1、2、8海区 →南インド洋 イ CCSBT3、4、5、6、7海区 →シドニー・タスマン沖 ウ CCSBT9、10海区 →ケープ沖 CCSBT11,12,13海区は漁獲実績がほとんどない。 |
冷凍くろまぐろ | ICCAT(大西洋まぐろ類保存国際委員会) |
ICCAT漁獲水域(東大西洋、西大西洋、地中海、太平洋) |
遠洋マグロ漁業の記載例と同様に、太平洋、インド洋、地中海、大西洋と記載 |
(注)これらの水域名の記載例に代えてより詳細な水域名を記載することができる。
参考1:水産物表示検討会委員名簿
敬称略・五十音順(※印は座長)
氏名 |
所属・役職名 |
稲垣友三郎 |
全国水産加工業協同組合連合会常務理事 |
大熊 礼子 |
主婦連合会常任委員 |
小笠原荘一 |
日本チェーンストア協会常務理事 |
窪田 冨 |
(財)食生活情報サービスセンター専務理事 |
佐藤 安男 |
日本鰹鮪漁業協同組合連合会総合対策部長 |
松野 照男 |
(社)全国中央市場水産卸協会常務理事 |
里口 勤 |
全国水産物卸組合連合会専務理事 |
下村 政雄 |
(社)日本水産物貿易協会専務理事 |
白石 吉平 |
(財)食品流通構造改善促進機構常務理事 |
白石ユリ子 |
ウーマンズフォーラム魚(WFF)代表 |
鈴木 英雄 |
日本百貨店協会品質管理研究会副委員長 |
高浜 彰 |
全国漁業協同組合連合会漁政部長代理 |
田中 寿雄 |
日本生活協同組合連合会生鮮部事業企画担当 |
西村 肇 |
(社)大日本水産会常務理事 |
村井 光治 |
全国水産物商業協同組合連合会専務理事 |
〈専門委員〉 |
|
奥谷 喬司 |
東京水産大学名誉教授/日本貝類学会会長 |
坂本 一男 |
おさかな普及センター資料館館長/日本魚類学会評議員 |
渡邊 精一 |
東京水産大学教授/日本甲殻類学会員 |
お問合せ先
水産庁漁政部加工流通課
担当者:企画調査班
代表:03-3502-8111(内線6618)
ダイヤルイン:03-3591-5613
FAX:03-3508-1357