このページの本文へ移動

水産庁

メニュー

1 国内の資源管理の高度化と国際的な資源管理の推進

(1)国内の資源管理の高度化

我が国の漁業生産量の減少が続いていることを踏まえ、アジ、サバなどで実施しているTAC(漁獲可能量)制度の適切な運用を図るとともに、「漁業法等の一部を改正する等の法律」の施行に向けて、資源を現在の環境下において持続的に採捕可能な最大の漁獲量を達成できる水準に維持又は回復させることを目標にするとともに、その目標を実現していくため、TACを基本とする新たな資源管理システムの構築に向けた検討を進めます。また、新たな資源管理措置への移行に伴って、必要となる場合の減船・休漁等を支援します。

(2)資源管理指針・資源管理計画体制の推進

資源状況等に即した適切な資源管理をより一層推進するため、漁業者、試験研究機関及び行政が一体となって取り組む資源管理指針・資源管理計画を実施する体制の整備等を支援します。

また、この体制の下、資源状況等に応じ、科学的知見に基づいた資源管理措置の検討や、資源管理計画の評価・検証による資源管理指針の見直しや資源管理計画の高度化の推進等を支援します。

さらに、資源管理計画を確実に実施する場合に、漁業収入安定対策によって、漁業者の収入の安定等を図ります。また、大宗(我が国漁業者のおおむね9割に相当)の漁業者が資源管理計画に基づく資源管理に参加するよう促します。

加えて、資源管理計画等の対象魚種について、水産関係公共事業を重点的に実施するほか、資源管理計画等に基づく漁獲努力量削減の取組等を支援します。

(3)数量管理等による資源管理の充実

新たな資源管理システムの導入及びこれに基づく各種施策に見合った漁獲を達成するため、漁業許可等による漁獲努力量規制、禁漁期及び禁漁区等の設定を行うほか、都道府県、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理委員会が実施する沿岸・内水面漁業の調整について助言・支援を行います。

また、TAC対象魚種の資源動向を踏まえ、漁業経営その他の事情に配慮しつつ、中期的な管理方針に基づいて、TACの設定・配分を行うとともに、その円滑な実施を図り、計画的・効率的なTAC管理を通じて資源管理を推進します。

TAC対象魚種の拡大については、漁獲対象魚種が多く定置網をはじめ魚種選択性の低い漁法が多い我が国漁業の操業実態、資源の状態やそれを取り巻く情勢、科学的知見の蓄積状況等を踏まえつつ、国民生活上又は漁業上重要な広域資源等に関して、関係者の意見を聴きながら、検討を進めます。

IQ(漁獲割当て)方式については、1)責任が明確化されることにより、より確実な数量管理が可能となるとともに、2)割り当てられた漁獲量を漁業者の裁量で計画的に消化することで効率的な操業と経営の安定が促されるといったメリットがあります。このため、準備が整った漁業・海域からIQの導入を検討します。

この際、沿岸漁業については多種多様な資源を来遊に応じて漁獲し、船舶の数も多いという特性があるため、漁獲量の把握が難しいという問題を解消しつつ、導入の可能性を検討します。

なお、数量管理の充実に当たっては、水揚地において漁獲量を的確に把握する体制整備を検討します。

また、我が国周辺の漁場においては、異なる漁業種類の多数の漁船が輻輳しながら操業している実態にあり、資源管理や漁業調整上の必要性から漁船のトン数制限等の様々な規制が存在し、これが効率的な操業の実現を妨げている側面があります。このため、沖合漁業については、既存の漁業秩序への影響も勘案しつつ、IQの導入やその他の方法による資源管理措置を確保した上で、漁船の規模にかかる規制の在り方等について引き続き検討を行います。

(4)適切な資源管理措置の基礎となる資源評価の精度向上と理解の醸成

ア 資源評価の対象種の拡大と精度向上

既に資源評価を実施している沖合の主要魚種に関しては、数量管理の拡充を念頭に、評価精度向上を図るため、これまでの調査船調査や漁獲物調査を確実に継続することに加え、我が国排他的経済水域近辺で操業する外国漁船の動向把握等や新たな観測機器等を用いた調査により情報収集体制の構築に向けた取組を引き続き実施します。

また、沿岸魚種に関しては、資源評価の対象となっていない有用資源全体をカバーしていくため、関係都道府県との連携を強化しつつ、資源評価を行うために必要な操業・海洋観測データ等を収集できる体制を強化します。

これらの実施には、大量の漁獲・調査情報の迅速かつ効率的な収集・蓄積が必要であり、これらの情報を活用して資源評価の高度化を図ることを可能とする「資源・漁獲情報ネットワーク体制」の構築に向けた取組を引き続き実施します。

加えて、これらの活動を含め、生産から流通にわたる多様な場面で得られたデータの集積・共有を、法人や個人情報の取扱に配慮しつつ可能とし、データのフル活用による効率的・先進的な「スマート水産業」の実現に資する仕組みの検討を行います。

イ 資源評価に対する理解の醸成

国民の資源評価・管理への関心の高まりを踏まえ、資源評価を実施している国立研究開発法人水産研究・教育機構等関係機関による資源評価の独立性の確保に努めるとともに、資源評価会議を公開で開催する等により、その評価手法や結果の透明性の確保に努めます。

また、漁業関係者のみならず消費者も含めた国民全般が資源状況と資源評価・管理の方向性について共通の認識を持てるよう、行政及び研究機関が協力して説明を行うとともに、これらの情報を水産庁webサイト等に理解しやすい形で積極的に公表します。

(5)資源管理のルールの遵守を担保する仕組みの推進

重要な輸出品目であるナマコ等を含む沿岸域の密漁については、悪質・巧妙な事例や広域での対応が必要となる事例もあることから、都道府県、警察、海上保安庁及び流通関係者を含めた関係機関との緊密な連携等を図るとともに、密漁品の市場流通や輸出からの排除に努める等、地域の特性に応じた効果的な対策を引き続き実施します。

また、財産上の不正な利益を得る目的による採捕が漁業の生産活動等に深刻な影響をもたらすおそれが大きい水産動植物(以下「特定水産動植物」という。)の採捕を原則として禁止し、違反した者に対する罰則を強化したところであり、今後、ナマコ等について特定水産動植物の指定に向けた検討を進めます。

さらに、資源管理について、資源状況に関する科学的な知見を基礎としつつ、漁場特性、魚種、漁業種類及び地理的条件等を総合的に勘案しながら、沿岸漁業者と沖合漁業者との間をはじめとする漁業者間の協議や相互理解を促進します。

(6)海域や魚種ごとの国際的な資源管理の推進

ア 公海域等における資源管理の推進

1) 太平洋クロマグロ、カツオ、マサバ及びサンマをはじめとする資源の管理の推進について、魚種ごとに最適な管理がなされるよう、各地域漁業管理機関において、議論を主導するとともに、IUU漁業対策を強化するため、関係国等との連携・協力、資源調査の拡充・強化による適切な資源評価などを推進します。

2) 太平洋クロマグロについては、引き続き、都道府県及び関係団体と協力してWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の平成26(2014)年の第11回年次会合において採択された30kg未満の小型魚に係る漁獲量の削減措置及び30kg以上の大型魚に係る漁獲量の抑制措置を遵守するよう取り組みます。

3) ウナギについては、引き続き、中国、韓国及び台湾と共に養殖用種苗の池入れ数量制限に取り組むとともに、法的拘束力のある国際的な枠組みの作成を目指します。

イ 太平洋島しょ国水域での漁場確保

我が国かつお・まぐろ漁船にとって重要漁場である太平洋島しょ国水域への入漁について、厳しさが増していることから、安定的な入漁を確保するため、地域漁業管理機関を通じた国際資源の持続的な利用確保を図りつつ、二国間漁業協議等を通じて我が国漁業の海外漁場の確保を図ります。

ウ 我が国周辺国等との間の資源管理の推進

我が国の周辺水域における適切な資源管理等を推進するため、韓国、中国及びロシアとの政府間協定に基づく漁業交渉を行います。

また、韓国、中国及び台湾との間の民間協議を支援します。これらの取組とともに、我が国周辺水域における安定的な操業秩序を確保するため、違法操業対策の一層の強化を図ります。

さらに、国際協力を戦略的・効果的に活用することにより、二国間漁業協議等を通じた我が国漁業の海外漁場の確保を図るほか、地域漁業管理機関を通じた国際資源の持続的な利用確保を図ります。

エ 捕鯨政策の推進

令和元(2019)年7月から大型鯨類(ひげ鯨)を対象とした商業的な捕鯨業が30年ぶりに再開されることに伴い、IWC(国際捕鯨委員会)で採択された方式に基づき捕獲枠を設定するとともに、漁場の探査や捕獲・解体技術の確立などについて必要な支援を行います。

また、非致死的調査の実施や、捕鯨業を実施する中での科学的データの収集など、鯨類の資源管理に必要な科学的情報の収集をさらに推進します。

IWC科学委員会にオブザーバーとして参加するなど、国際機関と連携しながら、科学的知見に基づく鯨類の資源管理に貢献していきます。

水産資源の持続的な利用という我が国の立場を共有する国々との連携を更に強化していきます。

さらに、各地で行われている食の観点も含めた鯨に関する文化を打ち出した取組を支援するとともに、国内外への我が国の鯨類の持続的な利用に関する考え方について情報発信を行います。

オ 海外漁業協力等の推進

国際的な資源管理の推進及び我が国漁業者の安定的な入漁を確保するため、我が国漁業者にとって重要な海外漁場である太平洋島しょ国を中心に海外漁業協力を効果的かつ戦略的に実施します。また、入漁国の制度等を踏まえた多様な方式での入漁、国際機関を通じた広域的な協力関係の構築等を推進します。

(7)漁場環境の保全及び生態系の維持

ア 藻場・干潟等の保全・創造

水産生物の生活史に対応した良好な生息環境を創出することにより生態系全体の生産力を底上げし、水産資源の回復・増大と持続可能な利用を図るため、漁場の生物相の変化等に対応して漁場の管理や整備事業の在り方を適切に見直していく順応的管理手法を取り入れた水産環境整備を推進するとともに、我が国排他的経済水域における水産資源の増大を図るためのフロンティア漁場整備事業を実施します。

また、実効性のある効率的な藻場・干潟の保全・創造を推進するための基本的考え方を示した「藻場・干潟ビジョン」に基づき、各海域の環境特性を踏まえ、広域的な観点からハード・ソフトを組み合わせた対策を推進するとともに、漁業者や地域の住民等が行う藻場・干潟等の保全活動を支援します。

磯焼け等により効用の低下が著しい漁場においては、海域環境変動に応じた手法による藻場・干潟等の保全・創造と併せて、ウニ・アイゴ等の食害生物の駆除や海藻類の移植・増殖に対して支援を行うとともに、サンゴに関しては、厳しい環境条件下におけるサンゴ礁の面的保全・回復技術の開発に取り組みます。

このほか、生物多様性国家戦略2012-2020(平成24(2012)年9月28日閣議決定)及び農林水産省生物多様性戦略(平成24(2012)年2月2日改定)を踏まえ、藻場・干潟等を含む漁場環境の保全の推進等により、里海・海洋の保全施策を総合的に推進します。

イ 生物多様性に配慮した漁業の推進

海洋の生態系を維持しつつ、持続的な漁業を行うため、各地域漁業管理機関において、サメ類の資源状況及び漁獲状況の把握、完全利用の推進及び保存管理の推進を行います。

また、海域ごとの実態を踏まえたはえ縄漁業の海鳥混獲回避措置の評価及び改善を行うほか、はえ縄漁業等におけるウミガメの混獲の実態把握及び回避技術の普及に努めます。

ウ 有害生物や赤潮等による漁業被害防止対策の推進

1) トド、ヨーロッパザラボヤ及び大型クラゲ等の有害生物による漁業被害は、漁業経営のみならず地域経済にも影響を及ぼしていることから、国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、トドによる漁業被害軽減技術の開発・実証、我が国、中国及び韓国から成る国際的な枠組みの中で行う大型クラゲのモニタリング調査、有害生物の出現状況・生態の把握及び漁業関係者等への情報提供並びに有害生物の駆除・処理及び改良漁具の導入等の取組が効果的かつ効率的に推進されるよう支援します。

2) 沿岸漁業・養殖業に被害をもたらす赤潮・貧酸素水塊については、海洋微生物解析による早期発生予測技術、その他の赤潮の予察・防除技術の開発及び人工衛星による有害赤潮の種判別を可能とする技術開発を進めます。また、赤潮・貧酸素水塊を早期にかつ的確に把握するため、自動観測装置をネットワーク化し広域な海域に対応したシステムの開発を支援します。

赤潮等への対策と並行して、漁業生産力の低下が懸念される海域における栄養塩と水産資源の関係の定量的な解明及び適正な栄養塩管理モデルの構築に必要な調査を推進します。

さらに、冬季のノリの色落ち被害を防止するために必要な栄養塩を確保する漁場環境改善等の技術開発を支援します。

エ 海洋プラスチックごみ問題対策の推進

漁業・養殖業用プラスチック資材について、環境に配慮した素材への転換の検討等を行います。また、既存の技術及び新たな成果を用いた削減方策について、漁業者も含めた地域での意見交換等を行い、漁業者への普及に努めます。さらに、浮遊するマイクロプラスチックを摂食した魚介類の生態的情報の調査を行います。

オ 産卵場の保護や資源回復手段としての海洋保護区の積極的活用

海洋保護区は漁業資源の持続的利用に資する管理措置の一つであり、漁業者の自主的な管理によって、生物多様性を保存しながら、資源を持続的に利用していくような海域も効果的な保護区となりうるという基本認識の下、海洋保護区の必要性の浸透を図りつつ、海洋保護区の適切な設定と管理の充実を推進します。

カ 気候変動の影響への適応

海洋環境調査を活用し、海洋環境の変動が水産資源に与える影響の把握に努めることにより、漁場予測や資源管理の基礎となる資源評価の精度向上を図るとともに、これらの結果を踏まえ、環境の変化に対応した順応的な漁業生産活動を可能とする施策を推進します。