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水産庁

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(3)消費者への情報提供や知的財産保護のための取組

ア 水産物に関する食品表示

消費者が店頭で食品を選択する際、安全・安心、品質等の判断材料の1つとなるのが、食品の名称、原産地、原材料、消費期限等の情報を提供する食品表示で、食品の選択を確保する上で重要な役割を担っています。水産物を含む食品の表示は、平成27(2015)年より「食品表示法*1」の下で包括的・一元的に行われています。

食品表示のうち、加工食品の原料原産地表示については、平成29(2017)年9月1日に「食品表示法」に基づく「食品表示基準」の一部を改正する内閣府令が公布・施行され、国内で作られる全ての加工食品について、製品に占める重量割合上位1位の原材料の原産地を表示義務の対象とすることとなりました。さらに、国民食であるおにぎりののりについては、重量割合としては低いものの、消費者が商品を選ぶ上で重要な情報と考えられること、表示義務付けの実行可能性があると見込まれることなどから、表示義務の対象とされています。

  1. 平成25(2013)年法律第70号

イ 機能性表示食品制度の動き

機能性を表示することができる食品は、これまで国が個別に許可した特定保健用食品(トクホ)と国の規格基準に適合した栄養機能食品に限られていましたが、機能性を分かりやすく表示した商品の選択肢を増やし、消費者の方々がそうした商品の正しい情報を得て選択できるよう、平成27(2015)年4月に、新しく「機能性表示食品制度」が始まりました。

食品に含有する成分の機能性について、安全性と機能性に関する科学的根拠に基づき、食品関連事業者の責任で表示することができる機能性表示食品制度では、「生鮮食品を含め全ての食品*1」が対象となっており、平成31(2019)年3月現在、生鮮食品の水産物としては、DHA・EPAの機能が表示されたカンパチ「よかとと 薩摩カンパチどん」及びブリ「活〆黒瀬ぶりロイン200g」の2件が届出されています。

  1. 特別用途食品、栄養機能食品、アルコールを含有する飲料及び脂質、飽和脂肪酸、コレステロール、糖類(単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないものに限る。)及びナトリウムの過剰な摂取につながるものを除く。

ウ 水産エコラベルの動き

エコラベルとは資源の持続的利用や環境に配慮して生産されたものであることを消費者に情報提供するためのラベルの総称です。水産業界においても、資源の持続性や生態系に配慮して生産された水産物を認証することで、商品に「水産エコラベル」を貼付ちょうふし、活用する動きが、欧米を中心として、世界的に広がりつつあります。

世界には様々な水産エコラベルが存在し、それぞれの水産エコラベルごとに民間団体が運営しています。日本国内では主に、一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会による漁業と養殖業を対象とした「MEL*1」(Marine Eco-Label Japan)、一般社団法人日本食育者協会による養殖業を対象とした「AEL*1」(Aquaculture Eco-Label)、英国に本部を置く海洋管理協議会による漁業を対象とした「MSC」(Marine Stewardship Council)、オランダに本部を置く水産養殖管理協議会の養殖業を対象とした「ASC」(Aquaculture Stewardship Council)の4つの水産エコラベルが活用されており、それぞれによる漁業と養殖業の認証実績があります(図3-4-14、図3-4-15)。

  1. (一社)日本食育者協会のAELと(一社)マリン・エコラベル・ジャパン協議会のMELは、平成30(2018)年3月、双方が運営する養殖業の認証スキームをMELに統合することで基本合意した。

図3-4-14 我が国で主に活用されている水産エコラベル認証

図3-4-14 我が国で主に活用されている水産エコラベル認証

図3-4-15 国内の水産エコラベルの認証状況

図3-4-15 国内の水産エコラベルの認証状況

水産エコラベルは、FAO水産委員会が採択した水産エコラベルガイドラインに沿った取組を指すことが基本です。しかし、世界には様々な水産エコラベルがあることから、水産エコラベルの信頼性確保と普及改善を図るため、「世界水産物持続可能性イニシアチブ(GSSI:Global Sustainable Seafood Initiative)」が平成25(2013)年に設立され、GSSIから承認を受けることが国際的な水産エコラベル認証スキームとして通用するための潮流となっています。MSCは平成29(2017)年に、ASCは平成30(2018)年にGSSIからの承認を受けており、MELについても平成30(2018)年9月にGSSIに承認の申請がされました。

水産エコラベルの取組が欧米を中心に世界的に広がりつつある中、多様性に富んだ我が国の漁業や養殖業が、水産エコラベルの認証を受けることで、持続可能な漁業・養殖業であることを国内外の消費者に向け発信していくことが容易になります。また、国産水産物の輸出を含めた販路拡大や消費の増加に向けた取組にも役立ちます。この実現のためには、まずは日本国内の水産エコラベルの認知度向上が必要であり、水産エコラベルが貼付された水産物が店頭に置かれ、消費者の目に触れる機会が増えることにより、水産エコラベルそのものが定着することが期待されます。

また、認証の取得を促進するための取組として、(研)水産研究・教育機構を代表とする共同機関が認証審査に必要な資料の収集・整理・登録を容易にし、認証取得に要する費用や時間の縮減を支援するシステム「水産エコラベル認証審査支援システム(MuSESC)」を開発し、運用に向けた準備を進めています。

一方で、日本の水産物が持続可能で環境に配慮されたものであることを消費者に情報提供し、消費者が水産物を購入する際の判断の参考とするための取組として、(研)水産研究・教育機構が「SH"U"N(Sustainable, Healthy and "Umai" Nippon seafood)プロジェクト」を始動・拡大させており、魚種ごとに資源や漁獲の情報、健康と安全・安心といった食べ物としての価値に関する情報を、順次webサイトに公表しています。

エ 地理的表示保護制度

地理的表示保護(GI)制度は、品質や社会的評価等の特性が産地と結び付いている産品について、その名称を知的財産として保護する制度です。我が国では、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)*1」に基づいて平成27(2015)年からスタートしました。この制度により、生産者にとっては地域ブランド産品としての付加価値の向上やその名称の不正使用からの保護が図られるほか、消費者にとっても、地理的表示保護制度により保護された名称の下で流通する一定の品質が維持された産品を選択できるという利点があります。また、地理的表示と併せて「GIマーク*2」を付すことで我が国の真正な特産品であることが明示され、海外展開にも寄与することが期待されます。

地理的表示法は、平成28(2016)年には、諸外国と地理的表示を相互に保護することを可能にする改正が行われ、また、平成30(2018)年7月17日に署名した日EU・EPAの適確な実施を確保するため、先使用期間の制限、広告等における特定農林水産物等の名称の表示の規制等の規定を整備する改正が行われ、協定発効の日(平成31(2019)年2月1日)から施行されました。このように、海外でも我が国の地理的表示産品が保護されることで、農林水産物・食品の輸出促進が期待されます。

水産物に関しては、平成31(2019)年3月末までに、「下関しものせきふく」、「十三湖じゅうさんこ大和やまとしじみ」、「みやぎサーモン」、「田子の浦たごのうらしらす」、「若狭小浜わかさおばま小鯛こだいささ漬」、「岩手野田村のだむら荒海あらうみホタテ」、「小川原湖おがわらこ大和やまとしじみ」及び「越前えちぜんがに」の8件が地理的表示に登録されています(表3-4-2)。

  1. 平成26(2014)年法律第84号
  2. 登録された産品の地理的表示と併せて付すもので、産品の確立した特性と地域との結び付きが見られる真正な地理的表示産品であることを証するもの。

表3-4-2 登録されている水産物の地理的表示(平成31(2019)年3月末現在)

表3-4-2 登録されている水産物の地理的表示(平成31(2019)年3月末現在)