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水産庁

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(5)捕鯨をめぐる新たな動き

ア 大型鯨類を対象とした捕鯨業の再開

(令和元(2019)年7月から大型鯨類を対象とした捕鯨業が再開)

我が国は、科学的根拠に基づいて水産資源を持続的に利用するとの基本方針の下、令和元(2019)年6月末をもって国際捕鯨取締条約から脱退し、同年7月から大型鯨類(ミンククジラ、イワシクジラ、ニタリクジラ)を対象とした捕鯨業を再開しました。

再開した捕鯨業は、我が国の領海とEEZで、十分な資源が存在することが明らかになっているこれら3種を対象とし、100年間捕獲を続けても健全な資源水準を維持できる、国際捕鯨委員会(IWC)で採択された方式(RMP(改訂管理方式))に沿って算出される捕獲可能量の範囲内で実施しています。なお、このRMPに沿って算出される捕獲可能量は、通常、鯨類の推定資源量の1%以下となり、極めて保守的なものとなっています。

このように決定された令和元(2019)年の捕獲枠と捕獲実績、令和2(2020)年の捕獲枠は以下の表のとおりです(表3-1)。

表3-1 捕鯨業の対象種・捕獲枠(大型鯨類)

表3-1 捕鯨業の対象種・捕獲枠(大型鯨類)

コラム捕鯨業の再開を祝う出港式と初捕獲

令和元(2019)年7月1日、およそ31年振りに大型鯨類を対象とした捕鯨業が再開される記念すべき日に、捕鯨母船日新丸船団が出港する山口県下関しものせき市と、小型捕鯨船5隻が出港する北海道釧路くしろ市において、それぞれ出港式が開催されました。下関市の出港式には、漁業関係者のほか、吉川よしかわ農林水産大臣(当時)、国会議員、県議会議員、下関市長等が、釧路市の出港式には、漁業関係者のほか、国会議員や水産庁長官等が出席し、各船を盛大に見送りました。

この日、再開後初の捕獲となったのは、千葉県南房総みなみぼうそう市を拠点とする第五十一純友丸が釧路沖において捕獲した、体長8mを超える大きなミンククジラでした。そのほか、和歌山県太地たいじ町を拠点とする第七勝丸も体長6mを超えるミンククジラを捕獲し、幸先の良いスタートを切りました。また、捕鯨母船日新丸船団も、3日後の7月4日に、紀伊きい半島沖で体長12mを超えるニタリクジラを初捕獲しました。これら捕鯨業で捕獲されたクジラは、御祝儀相場もつき、おおむね高値で取引され、市場から歓迎される状況となりました。

「母船式捕鯨船団出港式」にて挨拶を行う吉川農林水産大臣(当時)(山口県下関市)の写真
再開した捕鯨業で捕獲された鯨肉のセリの様子の写真

イ 鯨類科学調査の実施

(北西太平洋や南極海における非致死的調査を継続)

我が国は鯨類資源の適切な管理と持続的利用を図るため、昭和62(1987)年から南極海で、平成6(1994)年からは北西太平洋で、それぞれ鯨類科学調査を実施し、資源管理に有用な情報を収集し、科学的知見を深めてきました。

我が国は、令和元(2019)年6月末をもって国際捕鯨取締条約から脱退しましたが、国際的な海洋生物資源の管理に協力していくという我が国の方針は変わらず、引き続き、IWC等の国際機関と連携しながら、科学的知見に基づく鯨類の資源管理に貢献していきます。

例えば、我が国とIWCが共同で実施している「太平洋鯨類生態系調査プログラム(IWC-POWER)」については、平成22(2010)年から、我が国が調査船や調査員等を提供し、北太平洋において毎年、目視やバイオプシー(皮膚片)採取等の調査を行っており、その結果、イワシクジラ、ニタリクジラ、シロナガスクジラ、ナガスクジラ等の資源管理に必要な多くのデータが得られています。また、ロシアとも平成27(2015)年からオホーツク海における共同調査を実施しています。我が国は、こうした共同調査を今後も継続していくこととしており、令和元(2019)年5月に開催されたIWC科学委員会において、IWC-POWERにおける我が国のこれまでの貢献と今後の調査継続に対して謝意が表明されています。

これら共同調査に加え、我が国がこれまで実施してきた北西太平洋や南極海における非致死的調査を継続するとともに、商業的に捕獲された全ての個体から科学的データの収集を行い、これまでの調査で収集してきた情報と合わせ、関連の国際機関に報告すること等を通じて、鯨類資源の持続的利用及び保全に貢献していきます。

我が国とIWCとの鯨類共同調査海域の写真
IWCとの共同鯨類調査で活躍した第二勇新丸の写真
目視調査で確認されたシロナガスクジラの親子の写真
バイオプシー機器と採取した皮膚片の写真

ウ 「鯨類の持続的な利用の確保に関する法律」のスタート

(国際捕鯨取締条約からの脱退及び捕鯨業の再開を受け、法改正を実施)

令和元(2019)年12月5日、「商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律の一部を改正する法律*1」が、超党派の議員立法により、衆議院本会議で全会一致で可決され、成立しました。

今般の我が国の国際捕鯨取締条約からの脱退及び大型鯨類を対象とした捕鯨業の再開を受け、捕鯨業の再開を目指し安定的に捕獲調査を実施することを目的とした「商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律*2」が改正され、名称を「鯨類の持続的な利用の確保に関する法律」に改めるとともに、鯨類科学調査について、捕獲を伴うとの位置付けを変更し、捕鯨業の適切な実施等を確保するために引き続き重要な役割を担うものとして、その実施体制を整備すること、捕鯨業(イルカ漁業を含む。)について、科学的知見に基づき適切に行われることを明確にするとともに、その円滑な実施のための措置を定めること等が盛り込まれました。

  1. 令和元(2019)年法律第73号
  2. 平成29(2017)年法律第76号

コラムおいしい鯨肉をもっと身近に!

令和元(2019)年は、「初物」として、市場では高値で取引された鯨肉ですが、一方で、大型鯨類を対象とした捕鯨業を中断しておよそ31年が経過し、鯨肉に触れる機会が一部の地域や飲食店に限られ、必ずしも一般的な食べ物とはなっていない状況にあります。今後、捕鯨業が漁業として成り立っていくためには、クジラを食したことがない若年層の方々を含め、いかにして消費者が鯨肉を購入できる機会や食べる機会を増やし需要を拡大していくかが、大きな課題となっています。

そのための取組として、日本捕鯨協会により、鯨肉を提供している飲食店や商店を紹介したサイト「くじらタウン」が令和元(2019)年9月に開設されました。同年12月6日現在、日本全国のクジラが食べられるお店は575軒、買えるお店は175軒が掲載されています。(くじらタウン:https://www.kujira-town.jp/[外部リンク])

また、鯨肉輸入業者が開設した飲食店向けの「くじら肉原料販売サイト(くじらにく.com)」では、鯨肉の紹介だけでなく、ローストホエールといったこれまでの鯨料理のイメージを変える斬新な料理マニュアルを紹介しています。(くじらにく.com:https://www.kujiraniku.com/[外部リンク])

鯨肉は、いろいろな調理方法によりおいしく食べることができるだけでなく、高タンパク・低脂肪といった栄養面のほか、バレニンやn-3(オメガ3)系多価不飽和脂肪酸(EPA、DHAなど)といった機能成分を含有していることが注目されており、多くの人に、おいしくて健康に良い鯨肉を食べる機会が増えることが期待されます。

鯨肉調理マニュアルの写真
Webサイト 「くじらタウン」の写真

コラム鯨肉に含まれる水銀について

鯨や魚の肉は、良質なタンパク質や血管障害の予防等に有効とされる多価不飽和脂肪酸を多く含み、健康的な食生活を営む上で重要な食材です。一方で、これらの肉には、食物連鎖によって自然界に存在する水銀が取り込まれ、生態系の高次に位置する鯨類等は、自然界の食物連鎖を通じて、他の魚介類と比較して、水銀濃度が高くなるものが見受けられます。

古式捕鯨の発祥の地とも言われている和歌山県太地町では、伝統的な食文化の1つとして鯨肉が多く食されています。同町は、鯨肉に含まれる水銀による町民の健康への影響を調査するため、国立水俣病みなまたびょう総合研究センター等の協力を得て、平成21(2009)~23(2011)年度は成人を対象に、平成24(2012)~29(2017)年度は小学生を対象に、毛髪及び神経学的検査を実施しました。この結果、水銀による健康影響は認められず、むしろ、健康のためにはn-3(オメガ3)系多価不飽和脂肪酸を多く含む鯨肉を食べた方が良いとの結果が得られました。この結果は、令和元(2019)年11月21日に太地町における「水銀と住民の健康影響に関する報告会」で報告されました。

なお、水銀に関する近年の研究報告において、低濃度の水銀摂取が胎児に影響を与える可能性を懸念する報告がなされていることを踏まえ、妊娠中の魚介類の摂取について、厚生労働省が「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」を公表しています。

令和元(2019)年11月21日 太地町における「水銀と住民の健康影響に関する報告会」の写真

(参考)
太地町による調査結果:http://www.town.taiji.wakayama.jp/suigin/suiginkekka.html[外部リンク]
国立水俣病総合研究センターによる研究成果:http://nimd.env.go.jp/kenkyu/nenpo/nenpo_h30.html[外部リンク]
厚生労働省(妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項):https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/index-a.pdf[外部リンク]

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344
FAX番号:03-3501-5097