1 国内の資源管理の高度化
(1)適切な資源管理システムの基礎となる資源評価の精度向上と理解の醸成
ア 資源評価の精度向上と対象種の拡大
水揚情報の収集、調査船による調査、海洋環境と資源変動の関係解明、操業・漁場環境情報の収集等の資源調査を実施するとともに、資源評価の精度向上を図るため、人工衛星を用いた海水温や操業状況の解析、新たな観測機器を用いた調査等により情報収集体制の強化に取り組みます。
資源調査の結果に基づき、資源量や漁獲の強さ等の評価を行うとともに、資源管理目標の案や目標とする資源水準までのプロセスを定める漁獲シナリオの案を提示します。
資源評価対象種の拡大に向けては、関係都道府県との連携を強化しつつ、200種程度について資源調査を実施します。
併せて、漁業協同組合(以下「漁協」という。)・産地市場から電子的に水揚情報を収集するための体制整備を進めます。
加えて、生産から流通にわたる多様な場面で得られたデータの連携により、資源評価・管理を推進するとともに操業支援等にも資する取組を推進します。
さらに、データの利活用を適切かつ円滑に行うことを可能とするため、データポリシーの確立やデータの標準化に向けた検討を進めていきます。
イ 水産資源研究センターによる資源評価の実施と情報提供
国立研究開発法人水産研究・教育機構に設置された水産資源研究センターにおいて、独立性・透明性・客観性・効率性を伴う資源評価を実施するとともに、漁業関係者のみならず消費者も含めた国民全般が資源状況と資源評価結果等について共通の認識を持てるよう、これらの情報を理解しやすい形で公表します。
(2)数量管理の推進
「漁業法等の一部を改正する等の法律」第1条に基づく改正後の漁業法(以下「改正漁業法」という。)の下、MSY(持続的に採捕可能な最大の漁獲量)を目標として資源を管理し、管理手法はTAC(漁獲可能量)を基本とする新たな資源管理システムに移行していきます。
令和2(2020)年9月には、科学的な資源調査・評価の充実、資源評価に基づく漁獲可能量による管理の推進等の具体的な行程を示したロードマップを公表しました。
実施に当たっては、漁業者をはじめとする関係者の理解と協力を得るために、主要な漁業地域・漁業種類をカバーする現地説明会を実施します。
今後は、地域ごとの漁業の実態を踏まえつつ、新しい資源管理に対する関係者の理解を得ながら、目標の達成に向けてロードマップに盛り込まれた行程を1つ1つ実行していきます。
また、令和3(2021)年3月にTAC魚種拡大に向けたスケジュールを示すとともに、現場の漁業者を含む関係者の意見を十分に聞き必要な意見交換を行うため、水産政策審議会資源管理分科会の下に資源管理手法検討部会を設置しています。資源評価結果が公表された後、順次この部会での議論を開始し、令和5(2023)年度までには、漁獲量の8割をTAC管理とすることを目指し、TAC魚種の拡大を進めていきます。
IQ(漁獲割当て)方式については、TAC対象魚種を主な漁獲対象とする大臣許可漁業において、準備が整ったものから順次、改正漁業法に基づくIQによる管理に移行し、令和5(2023)年度までにTAC魚種を主な漁獲対象魚種としている大臣許可漁業には、原則IQ管理を導入します。
なお、これらの推進に当たっては、水揚地において漁獲量を的確に把握する体制整備を検討します。
大半の漁獲物がIQの対象となった漁業については、既存の漁業秩序への影響も勘案しつつ、その他の方法による資源管理措置を確保した上で、漁船の規模に係る規制を定めないこととします。
このほか、漁業許可等による漁獲努力量規制、禁漁期及び禁漁区等の設定を行うほか、都道府県、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理委員会が実施する沿岸・内水面漁業の調整について助言・支援を行います。
(3)自主的な資源管理を資源管理協定に移行
資源管理指針・計画に基づいて実施されていた漁業者自身による自主的な資源管理については、科学的知見に基づく資源管理措置の検討や資源管理計画の評価・検証等、資源管理の高度化を推進するとともに、令和5(2023)年度までに、改正漁業法に基づく資源管理協定へと順次移行することとします。
(4)密漁対策の強化
改正漁業法により罰則が強化された特定水産動植物に指定されたアワビ、ナマコ等をはじめ沿岸域の水産資源の密漁については、都道府県、警察、海上保安庁及び流通関係者を含めた関係機関との緊密な連携等を図るとともに、密漁品の市場流通や輸出からの排除に努めるなどの対策を実施します。
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水産庁漁政部企画課
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