はじめに
四面を海に囲まれている我が国では、多種多様な水産物に恵まれ、古くから水産物は国民の重要な食料として利用されてきており、地域ごとに特色のある料理や加工品といった豊かな魚食文化が形成され、現在まで継承されてきています。
水産業は、国民の健康を支える水産物を供給する機能を有するとともに、水産加工業や高鮮度な水産物を国民に供給するために発達した流通業も含め、地域経済の発展に寄与している重要な産業です。
しかしながら、水産資源の減少による漁業・養殖業生産量の長期的な減少傾向や漁業者の減少という課題に直面していることから、水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化を両立させ、漁業者の所得向上と年齢バランスの取れた漁業就労構造の確立を図るため、「水産政策の改革」に取り組んできました。
さらに、近年顕在化してきた海洋環境の変化、少子・高齢化や人口減少、持続可能な開発目標(SDGs)やカーボンニュートラルの取組の広がり、デジタル化の進展等、自然環境や社会経済に変化が生じつつあります。
このような情勢の変化を踏まえて、水産基本法(平成13(2001)年法律第89号)に掲げる水産物の安定供給の確保と水産業の健全な発展という基本理念を実現するため、令和4(2022)年3月に新たな水産基本計画が閣議決定されました。本報告書では、この「新たな水産基本計画」を特集の一つのテーマとし、これまでに策定した水産基本計画を概観した上で、新たな水産基本計画について記述しています。
また、新型コロナウイルス感染症が世界的な大流行となり、世界の経済・社会に多大な影響を及ぼし続けています。我が国においても、外出や密集を避ける生活様式が常態化し、外食から内食へと食の需要が変化する中で、水産物の需要も大きく影響を受けています。他方で、水産物の流通・販売における新たな動きも見られています。これらのことから、「新型コロナウイルス感染症による水産業への影響と対応」をもう一つの特集のテーマとして、記録・分析しています。
特集に続いては、「我が国の水産物の需給・消費をめぐる動き」、「我が国の水産業をめぐる動き」、「水産資源及び漁場環境をめぐる動き」、「水産業をめぐる国際情勢」、「安全で活力ある漁村づくり」、「東日本大震災からの復興」の章を設けています。
また、本年度から新たに、各所にQRコードを掲載し、関連する農林水産省Webサイト等を参照できるようにしています。
本書を通じて、水産業についての国民の関心がより高まるとともに、我が国の水産業への理解が一層深まることとなれば幸いです。
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