2 新たな資源管理の着実な推進
(1)資源管理の全体像
新たな資源管理の推進に当たっては、関係する漁業者の理解と協力が重要であり、適切な管理が、収入の安定につながることを漁業者等が実感できるよう配慮しつつ、ロードマップに盛り込まれた行程を着実に実現すべく取組を進めました。
(2)TAC魚種の拡大
改正漁業法においては、TAC(漁獲可能量)による管理が基本とされており、令和3(2021)年漁期から8魚種について、改正漁業法に基づくTAC管理が開始されました。さらに、ロードマップ及びTAC魚種拡大に向けたスケジュールに従い、令和5(2023)年度までに漁獲量ベースで8割をTAC管理とすべく、TAC魚種の拡大を推進しました。
具体的には、MSYベースの資源評価結果が公表された水産資源については、資源管理手法検討部会を開催し、論点や意見を整理しました。カタクチイワシ、ウルメイワシ、マダラ等については、ステークホルダー会合を開催し、TAC魚種拡大に向けた議論を進めました。
また、クロマグロの資源管理の着実な実施に向け、混獲回避・放流の支援等を行いました。
(3)IQ管理の導入
IQ(漁獲割当て)による管理については、ロードマップ及びTAC魚種拡大に向けたスケジュールに従い、令和5(2023)年度までに、TAC魚種を主な漁獲対象とする沖合漁業(大臣許可漁業)への導入することを目指した取組を進めました。
具体的には、令和3(2021)年漁期からIQ管理を導入した大中型まき網漁業(サバ類)に加え、令和4(2022)年漁期からは、近海まぐろはえ縄漁業(クロマグロ)、大中型まき網漁業(マイワシ、クロマグロ)に、令和5(2023)年漁期からは、かじき等流し網漁業(クロマグロ)にIQ管理を導入したほか、さんま漁業(サンマ)、いか釣り漁業(スルメイカ)で試験的なIQ管理を実施しました。
(4)資源管理協定
国や都道府県による公的規制と漁業者の自主的取組の組合せによる資源管理推進の枠組みは今後も存続し、自主的な取組を定める資源管理計画は、改正漁業法に基づく資源管理協定に移行することになっていることから、令和5(2023)年度までに、現行の資源管理計画から改正漁業法に基づく資源管理協定への移行を完了すべく取組を進め、TAC魚種を対象とした大臣許可漁業における資源管理計画を資源管理協定に移行(8協定)しました。
(5)遊漁の資源管理
これまでも遊漁における資源管理は、漁業者が行う資源管理に歩調を合わせて実施するよう求められてきましたが、水産資源管理の観点からは、魚を採捕するという点では、漁業も遊漁も変わりはないため、今後、資源管理の高度化に際しては、遊漁についても漁業と一貫性のある管理を目指すべく取組を進めました。
遊漁に対する資源管理措置の導入が早急に求められ、令和3(2021年)年6月から小型魚の採捕制限、大型魚の報告義務付けを試行的取組として開始したクロマグロについては、引き続き、この取組を進めるとともに、その運用状況や定着の程度を踏まえつつ、TACによる数量管理の導入に向けた検討を進めました。
また、漁業における数量管理の高度化が進展し、クロマグロ以外の魚種にも遊漁の資源管理、本格的な数量管理の必要性が高まっていくことが予見されることから、アプリや遊漁関係団体の自主的取組等を活用した遊漁における採捕量の情報収集の強化に努め、遊漁者が資源管理の枠組みに参加しやすい環境整備を進めました。
(6)栽培漁業
「沿岸漁場整備開発法」(昭和49年法律第49号)に基づき、水産動物の種苗の生産及び放流並びに水産動物の育成に関する基本方針を定め、令和4(2022)年7月1日に公表しました。
放流した地先で漁獲されるアワビ等の地先種は、環境要因に適応した受益者負担を伴う種苗放流の継続を図りつつ、資源造成効果や施設維持、受益者負担等に関して将来の見通しが立ち、安定的な運営ができる種苗生産施設については、整備を推進しました。
都道府県の区域を越えて広域を回遊し漁獲される広域種において、資源造成の目的を達成した魚種や放流量が減少しても資源の維持が可能な魚種については、種苗放流による資源造成から適切な漁獲管理措置への移行を推進しました。資源回復の途上の広域種であって適切な漁獲管理措置と併せて種苗放流を実施している魚種については、放流効果の高い手法や適地での放流を実施するとともに、公平な費用負担の仕組みを検討し、種苗生産施設においては、複数県での共同利用や、状況によっては、養殖用種苗生産を行う多目的利用施設への移行を推進しました。
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