（1）世界の漁業・養殖業生産

ア 世界の漁業・養殖業生産量の推移

〈世界の漁業・養殖業生産量は2億2,322万t〉

世界の漁業と養殖業を合わせた生産量は増加し続けています。令和4（2022）年の漁業・養殖業生産量は2億2,322万tとなりました。このうち漁業の漁獲量は、1980年代後半以降横ばい傾向となっている一方、養殖業の収獲量は急激に伸びています（図表4-1）。

漁獲量を主要漁業国・地域別に見ると、EU・英国、米国、我が国等の先進国・地域は、過去20年ほどの間、おおむね横ばいから減少傾向で推移しているのに対し、インドネシア、ベトナムといったアジアの新興国をはじめとする開発途上国の漁獲量が増大しており、中国が1,318万tで世界の14％を占めています。

また、魚種別に見ると、ニシン・イワシ類が1,826万tと最も多く、全体の20％を占めていますが、多獲性浮魚類は環境変化により資源水準が大幅な変動を繰り返すことから、ニシン・イワシ類の漁獲量も増減を繰り返しています。タラ類は、1980年代後半以降減少傾向が続いていましたが、2000年代後半以降増加しました。マグロ・カツオ・カジキ類及びエビ類は、長期的に見ると増加傾向で推移しています（図表4-2）。

図表4-1 世界の漁業・養殖業生産量の推移

資料：FAO「Fishstat（Global capture production、Global aquaculture production）」（日本以外）及び農林水産省「漁業・養殖業生産統計」（日本）に基づき水産庁で作成

エクセルデータ（CSV：2KB）

図表4-2 世界の漁業の国別及び魚種別漁獲量の推移

資料：FAO「Fishstat（Global capture production）」（日本以外）及び農林水産省「漁業・養殖業生産統計」（日本）に基づき水産庁で作成

エクセルデータ（CSV：6KB）

他方、養殖業の収獲量を国別に見ると、中国及びインドネシアの増加が顕著であり、中国が7,539万tで世界の58％、インドネシアが1,463万tで世界の11％を占めています。

また、魚種別に見ると、コイ・フナ類が3,216万tで最も多く、全体の25％を占め、次いで紅藻類が2,038万t、褐藻類が1,600万tとなっており、近年、これらの種の増加が顕著となっています（図表4-3）。 このうち、紅藻類の多くは、食品その他の工業で使用される増粘剤等となるカラギーナンの原料となっています。

図表4-3 世界の養殖業の国別及び魚種別収獲量の推移

資料：FAO「Fishstat（Global aquaculture production）」（日本以外）及び農林水産省「漁業・養殖業生産統計」（日本）に基づき水産庁で作成

エクセルデータ（CSV：6KB）

コラム世界の海藻養殖市場の成長可能性を示す世界銀行のレポート

令和5（2023）年8月、世界銀行は、世界の海藻の養殖市場を分析した、「海藻養殖の新しい世界市場2023年版」を公表しました。

同報告書は、現在大半は食用、養殖魚類の餌料等となっている養殖で生産された海藻について、比較的新たな用途として市場機会が大きい10部門を取り上げ、これらは令和12（2030）年までに最大118億ドルの市場規模に達する可能性があるとしています。

短期的に有望な新市場として、バイオスティミュラント^＊、動物飼料添加物、ペットフード等が挙げられ、同年までに市場規模44億ドルに達する可能性があること、中期的には、栄養補助食品、代替タンパク質、バイオプラスチック及び繊維が有望とみられ、60億ドル規模に達する可能性があること、長期的には、医薬品と建設資材への活用で14億ドルに達する可能性があることを予測しています。

これらの海藻の新たな部門は、技術、コスト、規制上の課題に加え、安定供給や品質等の課題の克服が求められるものの、海藻は、現在の市場を超えた成長の可能性があります。また、短期間に再生が可能で潜在的に生態系の再生に貢献し得る資源であり、このような環境等における利点が、潜在的な新市場の成長の追い風になり得ると分析しています。

1. 同報告書によると、バイオスティミュラントは、生物学的活性を高めることにより、非生物的ストレスを緩和し、植物の生産性を高める農業資材であり、肥料の使用量を増やしたりすることなく、作物の収穫量と品質を維持又は向上させることができるため、作物生産を向上させる革新的な選択肢として、その認知度が高まっている。

令和12（2030）年までに予測される海藻の市場規模（百万ドル）と市場が確立する可能性

資料：世界銀行「Global Seaweed: New and Emerging Markets Report, 2023」

イ 世界の水産資源の状況

〈生物学的に持続可能なレベルにある資源は65％〉

国際連合食糧農業機関（FAO）は、世界中の資源評価の結果に基づき、世界の海洋水産資源の状況をまとめています。これによれば、持続可能なレベルで漁獲されている状態の資源の割合は、漸減傾向にあります。昭和49（1974）年には90％の水産資源が適正レベル又はそれ以下のレベルで利用されていましたが、令和元（2019）年にはその割合は65％まで下がってきています。これにより、過剰に漁獲されている状態の資源の割合は、10％から35％まで上昇しています。また、世界の資源のうち、適正レベルの上限まで漁獲されている状態の資源は57％、適正レベルまで漁獲されておらず生産量を増大させる余地のある資源は7％にとどまっています（図表4-4）。

図表4-4 世界の資源状況

資料：FAO「The State of World Fisheries and Aquaculture 2022」に基づき水産庁で作成

ウ 世界の漁業生産構造

〈世界の漁業・養殖業の従事者は約5千9百万人〉

FAOによると、世界の漁業・養殖業の従事者は、令和2（2020）年時点で約5,900万人となっています。このうち、約3分の2に当たる約3,800万人が漁業の従事者、約2,100万人が養殖業の従事者です。過去、漁業・養殖業の従事者は増加してきましたが、近年は横ばい傾向で推移しています（図表4-5）。

図表4-5 世界の漁業・養殖業の従事者数の推移

資料：FAO「The State of World Fisheries and Aquaculture 2022」に基づき水産庁で作成