3 加工・流通・消費に関する施策の展開
(1)加工
ア 環境等の変化に適応可能な産業への転換
特定魚種の不漁や漁獲される魚種の変化に適応するため、資源量が増えている又は資源状況が良い加工原料への転換や多様化を進めることにより、環境等の変化に適応可能な産業に向けた取組を促進しました。
また、環境対策としては、環境負荷低減に資する加工機器や冷蔵・冷凍機器の導入等を通じた温室効果ガスの発生抑制及び省エネルギーへの取組を推進しました。
イ 国産加工原料の安定供給等
漁業経営の安定に資するため、水産物の価格の著しい変動を緩和し、加工原料を水産加工業へ安定的に供給するなど、水産物供給の平準化の取組を推進しました。
また、国民に対する水産物の安定供給を図るため、輸入原材料から国産原材料へ転換する水産加工業者に対して、国産原材料を安定的に供給する漁業者団体等の取組を支援しました。
ウ 中核的水産加工業者の育成
地域の意欲ある経営者を中核的水産加工業者として育成し、それぞれの知恵やノウハウを持ち寄り、1社ではできない新製品開発や新規販路開拓等の経営改善に資する取組を促進することにより、各中核的水産加工業者の経営体力強化を図りました。
また、後継者不足により廃業が見込まれる小規模な事業者の持つブランドや技術を中核的水産加工業者や次世代に継承する取組を促進しました。
エ 生産性向上と外国人材の活用
外国人材に過度に依存しない生産体制を構築するため、先端技術を活用した省人化・省力化のための機械の導入により、生産性向上を図りました。
また、機械では代替困難な業務を外国人材が担えるよう育成するとともに、外国人材の地域社会での円滑な受入れ及び共生を図るための受入環境整備の取組を行いました。
(2)流通
ア 水産バリューチェーンの構築
沿岸漁業で漁獲される多種多様な魚については、消費地に近い地域では直接届け、消費地から遠い地域では一旦ストックして加工するなど地域の特徴を踏まえ、消費者に届ける加工・流通のバリューチェーンの強化を図りました。
加工流通システムの中で健全なバリューチェーンの構築を図るため、マーケットインの発想に基づく「売れるものづくり」を促進し、生産・加工・流通が連携したICT等の活用による低コスト化、高付加価値化等の生産性向上の取組を全国の主要産地等に展開しました。
イ 産地市場の統合・重点化の推進
我が国水産業の競争力強化を図るため、市場機能の集約・効率化を推進し、漁獲物を集約すること等により価格形成力の強化を図りました。
また、広域浜プランとの連携の下、水産物の流通拠点となる漁港や産地市場において、高度な衛生管理や省力化に対応した荷さばき所、冷凍・冷蔵施設等の整備を推進しました。
水産物の流通については、従来の多段階流通に加え、消費者や需要者のニーズに直接応える形で水産物を提供するなど様々な取組が広がっています。このため、最も高い価値を認める需要者に商品が効率的に届くよう、ICT等の他産業の新たな技術や最新の冷凍技術を活用し、多様な流通ルートの構築により取引の選択肢の拡大等を図りました。
ウ 水産物等の健全な取引環境の整備
水産物が違法に採捕され、それらが流通することで水産資源の持続的な利用に悪影響を及ぼすおそれがあります。したがって、輸出入も含め違法に採捕された水産物の流通を防止する必要があるとともに、水産物の食品表示の適正化やビジネスと人権との関係等、健全な取引環境の整備を図っていく必要があります。
このため、IUU漁業の撲滅に向けて、IUU漁業国際行動計画やPSM協定等に基づく措置を適切に履行しました。また、令和4(2022)年12月に施行された水産流通適正化法に基づき、対象水産物についての取扱事業者間における漁獲番号等の情報の伝達や輸出入時の適法採捕を証する証明書の添付等の措置の適正な運用を推進し、違法に採捕された水産動植物の流通の防止を図りました。
さらに、水産物の産地における食品表示の適正化に向け、適切な指導を行いました。
くわえて、近年、重要性がより一層増してきている人権問題に関するサプライチェーンの透明性について、サプライチェーンのビジネスと人権に関する透明性の確保を企業に促すための啓発等を行いました。
(3)消費
ア 国産水産物の消費拡大
天然魚、養殖魚を問わず国産水産物の活用を促進するための地産地消の取組及び低・未利用魚の有効活用の取組等に併せて、学校給食向け商品の開発や販路開拓、若年層・学校栄養士等に対する魚食普及活動等を推進しました。
また、内食における簡便化志向、地域ブランドへの関心の高まり等の多様化する消費者ニーズに対応した水産物の提供を促進しました。
さらに、水産物の消費機運を向上させるため、民間企業の創意工夫によって行われる消費拡大の取組等と連携し、消費者に対する国産水産物の魅力や「さかなの日」の情報発信を推進しました。
イ 水産エコラベルの活用の推進
我が国の水産物が持続可能な漁業・養殖業由来であることを示す水産エコラベルの活用に向けて、水産加工業者や小売業者団体への働きかけを通じて、傘下の水産物加工業者・流通業者による水産エコラベル認証の活用を含めた調達方針等の策定を促進しました。
また、インターナショナルシーフードショーをはじめとする国際的なイベント等において、日本産水産物の水産エコラベル認証製品を積極的に紹介し、海外での認知度向上を図るとともに、マスメディアやSNS等の媒体等を通じ、国内消費者に対し取組への理解の促進を図りました。
お問合せ先
水産庁漁政部企画課
担当者:動向分析班
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