4 海洋環境の変化への適応
(1)気候変動の影響と資源管理
気候変動の影響も検証しつつ、MSYに基づく新たな資源評価の着実な実施、不漁等海洋環境の変化が資源変動に及ぼす影響に関する調査研究の実施等の科学的な資源評価を推進するとともに、これに基づき、数量管理を前提とした漁業構造の構築を図りつつ、TAC等による数量管理の取組を進めました。
さらに、産官学の連携により、人工衛星による気象や海洋の状況の把握、ICTを活用したスマート水産業による海洋環境や漁獲情報の収集等、迅速かつ正確な情報収集とこれに基づく気候変動の的確な把握と、これらを漁業現場に情報提供する体制の構築を図りました。
このほか、国内外の気象・海洋研究機関との幅広い知見の共有や共同研究も含めた調査研究のプラットフォームの検討、気候変動に伴う分布・回遊の変化等の資源変動等への順応に向けた漁船漁業の構造改革を進めました。
(2)新たな操業形態への転換
ア 複合的な漁業等操業形態の転換
大臣許可漁業について、IQ化の進捗を踏まえ、漁業調整に配慮しつつ、漁獲対象種・漁法の複合化、複数経営体の連携による協業化や共同経営化、兼業等による事業の多角化等の複合的な漁業への転換等操業形態の見直しを段階的に推進しました。
また、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量削減により、海洋環境の変化の一因である地球温暖化の進行を抑えていくため、衛星利用の漁場探索による効率化、グループ操業の取組、省エネルギー機器の導入等による燃油使用量の削減を図りました。
イ 次世代型漁船への転換推進
複合的な漁業や燃油使用量の削減等、新たな漁業の将来像に合致し、地球環境問題等の中長期的な課題に適応した次世代型の漁船を造ろうとする漁業者による漁業構造改革総合対策事業(以下「もうかる漁業事業」という。)の活用等を通じ、多目的漁船や省エネルギー型漁船の導入を推進しました。
また、漁船の脱炭素化に適応する観点から、
1) 必要とする機関出力が少ない小型漁船を念頭に置いた水素燃料電池の活用、
2) 国際商船や作業船といった漁業以外の船舶向けで活用されている技術を漁船向けに応用することも視野に入れた漁船の脱炭素化の研究開発を推進しました。
(3)サケに関するふ化放流と漁業構造の合理化等
ア ふ化放流の合理化
近年の海洋環境の変化により回帰率が低下し、漁獲量及び漁獲金額が減少傾向にあるため、環境変化に適応したふ化放流技術開発を進めるとともに、活用可能な既存施設において養殖用種苗を生産してサーモン養殖と連携するなど、ふ化放流施設の有効活用や再編・統合も含めた効率化を図りました。
また、漁獲量及び漁獲金額が減少している現状を踏まえた持続的なふ化放流体制を検討しました。
イ さけ定置漁業の合理化等
漁獲量が増加している魚種(ブリやサバ類等)の有効活用を進めるとともに、漁具・漁船等や労働力の共有等を通じた協業化、経営体の再編や合併等による共同経営化、操業の効率化・集約化の観点からの定置漁場の移動や再配置、ICT等の最新技術の活用等による経費の削減等、経営の合理化を推進しました。
また、地域振興として新たに養殖業を始める地域における必要な機器等の導入を促進しました。
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