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水産庁

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(6)捕鯨をめぐる新たな動き

ア 商業捕鯨の再開の決定

我が国は、科学的根拠に基づいて水産資源を持続的に利用するとの基本姿勢の下、昭和63(1988)年以降中断している商業捕鯨を令和元(2019)年7月から再開することとし、平成30(2018)年12月26日に、国際捕鯨取締条約からの脱退を通告しました。令和元(2019)年6月30日に脱退の効力が生じ、同年7月から、我が国は、大型鯨類*1を対象とした捕鯨業を再開する予定です。

IWC(国際捕鯨委員会)は、国際捕鯨取締条約の下に設置された、「鯨類の保存」と「捕鯨産業の秩序ある発展」という2つの目的を持った資源管理機関です。しかしながら、鯨の持続的利用を支持する国と反捕鯨国との間の長年にわたる対立から、鯨の管理についても保護についても決められない状況が続いています。我が国は、IWCに鯨類資源管理機関としての機能を回復させることを目指し、30年以上にわたって、解決策を模索してきました。その中で、反捕鯨国は、科学的根拠の如何に関わらず捕鯨を認めないこと、つまり、鯨の持続的利用を支持する国とは、鯨と捕鯨に対する基本的な考えや立場が異なることが明らかになりました。

平成30(2018)年9月にブラジルのフロリアノポリスで開催されたIWC第67回総会では、我が国は、鯨と捕鯨に対する基本的な立場を異にする加盟国がIWCの中で「共存」できることを目指したIWC改革案を提案しました。しかしながら、鯨の保護のみを重視し、持続的利用の必要性を認めない国々からの歩み寄りは見られず、我が国の改革案は否決され、そこに至る議論では、異なる意見や立場が共存する可能性すらないことが明らかとなりました。

以上のような経緯に鑑み、我が国は、IWC加盟国としての立場の根本的な見直しを行い、あらゆるオプションを精査した結果、IWCからの脱退を決定しました。

  1. IWCの管理対象となっている、ミンククジラ、イワシクジラ等。

コラム「商業捕鯨モラトリアム」後のIWCの正常化に向けた取組

昭和57(1982)年に採択されたいわゆる「商業捕鯨モラトリアム」の規定は、捕鯨の禁止規定ではなく、持続的な鯨類の利用を実現するための道筋を定めたものです。同規定では、平成2(1990)年までに規定の修正とゼロ以外の捕獲頭数の設定を検討するとされていますが、修正が行われないまま現在に至っています。我が国は30年以上にわたり、同規定に定められた「道筋」に沿って商業捕鯨を再開すべく、IWCで真摯かつ誠実に対応してきました。

我が国は、科学面では、平成4(1992)年のRMP(改訂管理方式:非確実性を踏まえた安全な鯨類管理手法)の完成に貢献しました。しかしながら、RMP完成後、平成4(1992)年から18(2006)年まで行われたRMS(監視取締システムを含む総合的管理制度)交渉で、反捕鯨国は、科学的議論を踏まえず、資源管理とは関係のない要素(動物愛護など)の議論を提起するなど、RMS完成に向けた取組を妨害し、交渉は頓挫しました。

平成19(2007)年から、米国のホガース議長とその後任のチリのマッキエラ議長の主導の下で進められた「IWCの将来」プロセスでは、我が国と米国・チリ・ニュージーランドなどが協力し、持続的利用支持国と反捕鯨国との妥協点を追求しました。平成22(2010)年のアガディール会合では、「南極海での捕獲調査段階的縮小と限定的な捕鯨の容認」の提案が議論されましたが、最終局面でのオーストラリアとラテンアメリカ諸国の「あらゆる捕鯨を認めない」との頑なな態度から、このプロセスも頓挫しました。本会合の議長レポートには、ニュージーランドによる、米国と我が国の解決に向けた努力を称賛した発言が残されています。
https://archive.iwc.int/pages/search.php?search=%21collection49&k= AnnRep2010(Chair62) p8

平成26(2014)年のポルトロージュ(スロベニア)会合後、我が国は捕鯨再開に反対する国々に、その理由・根拠の提示を求める質問書簡を送付しました。それにより、反捕鯨国が「科学的・法的な根拠ではなく、鯨と捕鯨に関する政策的立場に基づき、捕鯨に反対している」ことが明らかになりました。つまり、反捕鯨国は、理屈ではなく、1頭たりとも鯨を捕るべきでないと捕鯨に反対しているわけです。そして、我が国は、平成28(2016)年以降、持続的利用支持国と反捕鯨国とが、鯨と捕鯨に対する根本的な立場を異にすることを踏まえて、IWCの機能回復を目指す「IWCの今後の道筋」議論を主導してきました。

平成30(2018)年のフロリアノポリス(ブラジル)会合で、我が国は、「IWCの今後の道筋」の議論を踏まえ、鯨と捕鯨に対する立場の異なる国がIWCの傘の下で共存できることを目指すIWC改革案を提案しました。しかしながら、今回も、反捕鯨国は商業捕鯨は一切認めないとする頑なな態度を変えず、改革案は否決されました。

イ 捕鯨に対する我が国のスタンス

国際捕鯨取締条約から脱退しても、国際的な海洋生物資源の管理に協力していくという我が国の考えは変わりません。IWCにオブザーバーとして参加するなど、国際機関と連携しながら、科学的知見に基づく鯨類の資源管理に貢献していきます。また、「水産資源の持続的な利用」という我が国の立場を共有する国々との連携を更に強化し、このような立場に対する国際社会の支持を拡大していくとともに、IWCが本来の機能を回復するよう取り組んでいきます。

30年ぶりに再開される捕鯨業は、我が国の領海と排他的経済水域(EEZ)で、十分な資源が存在することが明らかになっているミンククジラ、イワシクジラ、ニタリクジラを対象に、100年間捕獲を続けても健全な資源水準を維持できる、IWCで採択された方式(RMP(改訂管理方式))により算出される捕獲枠の範囲内で、沿岸域操業と母船による沖合域操業によって行われる予定です。

IWC第67回総会で我が国の立場を説明する谷合農林水産副大臣(当時)の写真
IWC管轄外のツチクジラ等を我が国沿岸で捕獲している小型捕鯨船の写真

コラム鯨類科学調査の成果

我が国は、鯨類資源の適切な管理と持続的利用を図るために、南極海と北西太平洋で鯨類科学調査を実施して、資源管理に有用な情報を収集してきました。

昭和62(1987)年から開始した南極海での調査(南極海鯨類捕獲調査(JARPA)及び第二期南極海鯨類捕獲調査(JARPA2))では、南極海のミンククジラは北半球のミンククジラとは遺伝的に異なる別種(クロミンククジラ(Balaenoptera bonaerensis)であること、また、調査海域とした南極海Ⅳ区とⅤ区(図参照)では東西に独立した系群(インド洋系群及び太平洋系群)が来遊していることを明らかにし、資源管理に必要な基礎的な知見の獲得に貢献しました。さらに、クロミンククジラについて、若齢個体が多い年齢組成(資源増大型)を示していること、成熟年齢は約12歳から約7歳まで低下して早熟化が進み安定していること、妊娠率は依然として高い割合(成熟メスの90%以上)を維持していることなどが判明し、資源が健全な状況にあることを明らかにしてきました。目視調査からは、クロミンククジラの資源が高水準にあることや過去の商業捕鯨で数を減らしたナガスクジラやザトウクジラ資源が急速に回復してきており(表参照)、南極海生態系に変化が起こりつつあることなど、南極海において鯨類資源を持続的に利用するために有用な科学的知見が深まりました。

平成6(1994)年から開始した北西太平洋での調査(北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPN)及び第二期北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPN2))では、ミンククジラ・イワシクジラ・ニタリクジラについて系群構造の知見が深まり、特に、ミンククジラについては、日本近海には2つの系群(オホーツク海-西太平洋系群(O系群)及び日本海・黄海・東シナ海系群(J系群))が存在することを強く示唆する結果を得ました。さらに、ミンククジラはサンマやカタクチイワシなどのほか、スケトウダラ、スルメイカ、シマガツオを利用するなど幅広い食性を持つ一方、ニタリクジラはツノナシオキアミとカタクチイワシ、イワシクジラは魚類に加えて動物プランクトンの一種であるカイアシ類に嗜好しこう性が強いなど、鯨種によって利用する餌生物が異なること、3鯨類による5~9月の摂餌量が毎年100万トン以上に達すること、また、ミンククジラでは漁業との競合の可能性があることなど、鯨類の摂餌生態を明らかにするとともに生態系の解明に必要な科学的知見が深まりました。

鯨類科学調査は、令和元(2019)年6月末に我が国のIWCからの脱退に伴い中止されますが、我が国は引き続き、北西太平洋や南極海での非致死的調査や、商業的に捕獲された全ての個体からの科学的データの収集を行い、これまでの調査で収集してきた情報の積み重ねを継続し、鯨類資源の保全と持続的利用に有用な科学的情報の収集と活用を続けていきます。

図:南極海での鯨類科学調査の調査水域(緑色のⅢ区~Ⅳ区)

図:南極海での鯨類科学調査の調査水域(緑色のⅢ区~Ⅳ区)

表:我が国の調査で明らかになった南極海での大型鯨類の年間増加率

表:我が国の調査で明らかになった南極海での大型鯨類の年間増加率

コラム鯨肉の栄養価

鯨の赤肉は、牛や豚のような畜肉に比べて高タンパク・低脂肪で低カロリーです。鯨の赤肉は、筋トレやダイエットに理想的なタンパク源とされている鶏ささみと同等のカロリーであり、タンパク質の含有率は鶏ささみを上回り、脂肪分はその約半分です。

また、ひげ鯨の赤肉に多く含まれるバレニンという成分には、筋肉耐久力アップ、疲労防止・回復・抗酸化・活性酸素の除去機能などの働きがあるといわれており、また、認知症への効果について研究が行われるなど、健康食品として注目されています。

鯨の赤肉は低脂肪の食材ですが、一方、畝須うねすや本皮などは脂肪分が多い部位です。こうした部位には、魚介類と同じく多価不飽和脂肪酸(EPA、DHA、DPAなど)が含まれており、これらの脂肪酸を摂ることが血流の改善につながると言われています。

特に、DPA(ドコサペンタエン酸)は、海産ほ乳類に多く含まれています。DPAの血液の流れを良くする効果はEPA・DHA以上と報告されています。

鯨製品の部位の写真
顎から腹にかけての「畝須」と呼ばれる部分はベーコンなどに利用の写真