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水産庁

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(3)実効ある資源管理のための取組

ア 我が国の沿岸等における密漁防止・漁業取締り

(漁業者以外による密漁の増加を受け、大幅な罰則強化)

水産庁が各都道府県を通じて取りまとめた調査結果によると、平成30(2018)年の全国の海上保安部、都道府県警察及び都道府県における漁業関係法令違反の検挙件数は、1,569件(うち海面1,484件、内水面85件)となりました。近年では、漁業者による違反操業が減少している一方、漁業者以外による密漁が増加し、反社会的勢力等による密漁は悪質化・巧妙化しています(図1-9)。

アワビ、サザエ等のいわゆる磯根資源は、多くの地域で共同漁業権の対象となっており、関係漁業者は、種苗放流、禁漁期間・区域の設定、漁獲サイズの制限等、資源の保全と管理のために多大な努力を払っています。一方、こうした磯根資源は、容易に採捕できることから密漁の対象とされやすく、反社会的勢力による資金獲得を目的とした組織的な密漁も横行しています。また、資源管理のルールを十分に認識していない一般市民による個人的な消費を目的とした密漁も各地で発生しています。このため、一般市民に対するルールの普及啓発を通じ密漁の防止を図るとともに、関係機関が緊密に連携して取締りを強化していくことが重要です。

我が国では、海上保安官及び警察官とともに、水産庁等の職員から任命される漁業監督官や都道府県職員から任命される漁業監督吏員が取締任務に当たるとともに、各地の漁業者も、漁協を中心として、資源管理のルールの啓発、夜間や休漁中の漁場の監視や通報等の密漁防止活動に取り組んでいます。

さらに、密漁の抑止や密漁品の流通の防止のため、多くの都道府県において体長制限等の資源管理のルールに従わずに採捕されたアワビやナマコ等の所持・販売が禁止されており、一部の都道府県では、漁業者と流通業者が連携し、漁協等が発行した証明書のないものは市場で取り扱わないとするなどの流通対策も行われています。

以上のような背景を踏まえ、新漁業法では、犯罪者に対して効果的に不利益を与え、密漁の抑止を図るため、特定の水産動植物を採捕する者への罰則を新設するなど、大幅な罰則強化が図られました。新設された採捕禁止違反の罪、密漁品譲受等の罪に科される3千万円という罰金額は個人に対する罰金としては最高額であり、密漁の抑止に大きな効果が期待されます(表1-1)。

図1-9 我が国の海面における漁業関係法令違反の検挙件数の推移

図1-9 我が国の海面における漁業関係法令違反の検挙件数の推移

表1-1 新漁業法に基づく罰則強化の概要

表1-1 新漁業法に基づく罰則強化の概要

イ 外国漁船の監視・取締り

(我が国の漁業秩序を脅かす外国漁船の違反操業に厳正に対応)

我が国の周辺水域においては、二国間の漁業協定等に基づき、外国漁船がEEZにて操業するほか、EEZ境界線の外側付近においても多数の外国漁船が操業しており、水産庁は、これら外国漁船が違反操業を行うことのないよう、漁業取締りを実施しています。水産庁による令和元(2019)年の外国漁船への取締実績は、立入検査8件、拿捕だほ1件、我が国EEZで発見された外国漁船によるものとみられる違法設置漁具の押収37件でした(図1-10)。また、サンマやサバなどを管理する北太平洋漁業委員会(NPFC)において、外国漁船に対する公海乗船検査ができることになったことから、NPFCの資源管理措置の遵守を確認するため、3件の乗船検査を実施しました。

日本海大和堆やまとたい周辺の我が国EEZでの北朝鮮及び中国漁船による操業については、違法であるのみならず、我が国漁業者の安全操業の妨げにもなっており、極めて問題となっています。このため、我が国漁業者が安全に操業できる状況を確保することを第一に、水産庁は、多数の北朝鮮漁船等の操業を防止するためには、放水等の厳しい措置により我が国EEZから退去させることが最も効果的であると考え、漁業取締船を同水域に重点的に配備するとともに、海上保安庁とも連携し、対応しています。令和元(2019)年の水産庁による退去警告隻数は延べ5,122隻でした。そのような中で、令和元(2019)年10月7日、大和堆周辺の我が国EEZにおいて漁業取締船が退去警告を行っていたところ、北朝鮮籍とみられる漁船と接触し、当該漁船が沈没したため乗組員を救助する事案が発生しました。

我が国としては、周辺水域における外国漁船の違法操業に対応するため、平成30(2018)年1月に「漁業取締本部」を設置したところであり、さらに、令和元(2019)年度には55年ぶりに新造した1隻と、既存の取締船を大型化して更新した1隻の合わせて2隻の新型漁業取締船を新潟及び境港さかいみなとに配備するなど、漁業取締体制の強化を図っているところです。

水産庁では、引き続き、違反操業が多発する水域・時期において重点的かつ効果的な取締りを実施することによって、我が国の漁業秩序を脅かす外国漁船の違反操業に厳正に対応することとしています。

図1-10 水産庁による外国漁船の拿捕・立入検査等の件数の推移

図1-10 水産庁による外国漁船の拿捕・立入検査等の件数の推移
日本海大和堆周辺水域において中国漁船に対し放水する漁業取締船の写真
北太平洋公海において乗船検査のため移乗する漁業監督官の写真

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344
FAX番号:03-3501-5097