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水産庁

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(6)野生生物による漁業被害と対策

ア 海洋における野生生物による漁業被害

(トド管理に必要な「採捕数の設定」等の規定を改正)

海洋の生態系を構成する生物の中には、漁業・養殖業に損害を与える野生生物(有害生物)も存在し、漁具の破損、漁獲物の食害などをもたらします。各地域で被害をもたらす有害生物に対しては、都道府県等が被害防止のための対策を実施していますが、都道府県の区域を越えて広く分布・回遊する有害生物で、広域的な対策により漁業被害の防止・軽減に効果が見通せるなど一定の要件を満たすもの(大型クラゲ、トド、ザラボヤ等)については、国が出現状況に関する調査と漁業関係者への情報提供、被害を効果的・効率的に軽減するための技術の開発・実証、駆除・処理活動への支援等に取り組んでいます(図1-16)。

特に、北海道周辺では、トド等の海獣類による漁具の破損等の被害が多く発生していますが、水産庁が平成26(2014)年に策定した「トド管理基本方針*1」では、管理の開始から5年後に所要の見直しを行うこととされていることから、専門家からなる「トド管理基本方針の見直しに向けた検討会」を3回開催し、トドの管理に関する考え方等について科学的・技術的見地から助言を得て、令和元(2019)年8月に、今後のトド管理に必要な「採捕数の設定」等の規定を改正しました。

  1. 10年後に来遊する個体群の個体数を平成22(2010)年の水準の60%まで減少させることを目標に、採捕数の設定や各種調査が実施されている。

イ 内水面における生態系や漁業への被害

(オオクチバス等の外来魚やカワウの防除の取組を推進)

内水面においては、オオクチバス等の外来魚やカワウによる水産資源の食害が問題となっています(図1-16)。このため、国では、「内水面漁業の振興に関する基本方針」に基づき、カワウについては、被害を与える個体数を令和5(2023)年度までに半減させる目標の早期達成を目指し、カワウの追い払いや捕獲等の防除対策を推進しています。また、外来魚については、その効果的な防除手法の技術開発のほか、電気ショッカーボートや偽の産卵床の設置等による防除の取組を進めています。

図1-16 国が行う野生生物による漁業被害対策の例

図1-16 国が行う野生生物による漁業被害対策の例

コラムカワウ対策は日進月歩 ~カワウ対策最前線から~

カワウは、日本全体に分布しており、アユを始めとする内水面の水産資源を大量に捕食(1日に500g/羽)するため、全国の内水面漁業者を悩ませています。

このため、内水面漁業者は、カワウ被害対策として、1)銃器による捕獲、2)案山子かかしやロケット花火を使った追い払い、3)釣竿を使用した樹木へのテープ張りや梯子はしごを使った巣中へのドライアイス投入による繁殖抑制を行っています。しかし、カワウもさるもの、既存の手法が使えない地域(例えば、高木、ダムサイド、銃器が使用できない場所)での増加がみられるようになりました。

さらに、漁業者の高齢化・減少が進んでいることもあいまって、営巣木が高所で届かない、近づけない、又は対策を行いたい場所が危険等の理由から対応困難となっている現場もあります。

そこで、水産庁では、平成28(2016)年度よりドローン等を活用したカワウ繁殖抑制技術の開発を進め、これまでにドローンを活用した1)テープ張り及びドライアイス投下手法による繁殖抑制、2)スピーカーによる追い払い技術が開発されています。これら技術についてはマニュアル化され、内水面漁業者の安全かつ効率的な被害対策の実施、負担軽減に役立っています。

カワウは在来種であり、今後も人間との共生を図っていかなければなりません。まだカワウ対策に関する技術開発は始まったばかりであり、今後、技術が進歩し、より効率的なカワウ対策が期待されます。

なお、カワウは人がいるところには寄り付きません。釣りに行くことはカワウ対策にもなるということです。休日は釣りを楽しみつつカワウ対策に貢献してみませんか。。

カワウマニュアルの写真

図:効率的なカワウ対策

図:効率的なカワウ対策

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344
FAX番号:03-3501-5097