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(4)水産物貿易の動向

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ア 水産物輸入の動向

〈水産物輸入金額は1兆4,640億円〉

我が国の水産物輸入量(製品重量ベース)は、国際的な水産物需要の高まりや国内消費の減少等に伴っておおむね減少傾向で推移しており、令和2(2020)年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、前年から8.7%減の225万トンとなりました(図表1-14)。また、令和2(2020)年の水産物輸入金額は、前年から15.9%減の1兆4,640億円となりました。

図表1-14 我が国の水産物輸入量・輸入金額の推移

図表1-14 我が国の水産物輸入量・輸入金額の推移

輸入金額の上位を占める品目は、サケ・マス類、カツオ・マグロ類、エビ等です(図表1-15)。輸入相手国・地域は品目に応じて様々ですが、サケ・マス類はチリ、ノルウェー等、カツオ・マグロ類は台湾、中国、韓国等、エビはベトナム、インド、インドネシア等から多く輸入されています(図表1-16)。

図表1-15 我が国の水産物輸入相手国・地域及び品目内訳

図表1-15 我が国の水産物輸入相手国・地域及び品目内訳

図表1-16 我が国の水産物輸入相手国・地域及び品目内訳

図表1-16 我が国の水産物輸入相手国・地域及び品目内訳

イ 水産物輸出の動向

〈新型コロナウイルス感染症拡大の影響により水産物輸出金額が大きく減少〉

我が国の水産物輸出金額は、平成20(2008)年のリーマンショックや平成23(2011)年の東京電力福島第一原子力発電所の事故による諸外国の輸入規制の影響等により落ち込んだ後、平成24(2012)年以降はおおむね増加傾向で推移してきました。

令和2(2020)年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、主要品目である真珠が、主な輸出先である香港における宝飾展が中止・延期されたことで、輸出金額が令和元(2019)年の329億円(輸出金額全体の11.5%)から令和2(2020)年の76億円(輸出金額全体の3.3%)に大幅に減少しました。また、ブリは、近年、主に米国の外食市場向けに輸出が拡大していましたが、現地の外食需要が落ち込んだことにより輸出金額が減少しました。これらの結果、輸出量(製品重量ベース)は前年から0.9%減の63万トンでしたが、輸出金額は前年から21%減の2,276億円となりました(図表1-17)。

図表1-17 我が国の水産物輸出量・輸出金額の推移

図表1-17 我が国の水産物輸出量・輸出金額の推移

主な輸出相手国・地域は香港、中国、米国で、これら3か国・地域で輸出金額の約5割を占めています(図表1-18)。品目別では、中国等向けに輸出されるホタテガイや主に東南アジアやアフリカ向けに輸出されるサバが上位となっています(図表1-19)。

我が国の水産物の輸出は、これまで主に海外の外食需要等に支えられて増加してきましたが、外出制限による需要減退等新型コロナウイルス感染症拡大の影響を直接受けており、今後は海外の内食向け等への対応が求められることが明らかになりました。

図表1-18 我が国の水産物輸出相手国・地域及び品目内訳

図表1-18 我が国の水産物輸出相手国・地域及び品目内訳

図表1-19 我が国の主な輸出水産物の輸出相手国・地域

図表1-19 我が国の主な輸出水産物の輸出相手国・地域

ウ 水産物輸出の拡大に向けた取組

〈水産物輸出目標は、令和12(2030)年までに1.2兆円〉

国内の水産物市場が縮小する一方で、世界の水産物市場はアジアを中心に拡大しています。このため、我が国の漁業者等の所得向上を図り、水産業が持続的に発展していくためには、水産物の輸出の大幅な拡大を図り、世界の食市場を獲得していくことが不可欠です。

このような中で、海外市場の拡大を図るため、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)による輸出総合サポート、日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)による戦略的プロモーションや民間団体・民間事業者等によるPR・販売促進活動等が行われています。加えて、輸出先国・地域の衛生基準等に適合した輸出環境を整備するため、国では、欧米への輸出時に必要とされる水産加工施設等のHACCP*1対応や、輸出増大が見込まれる漁港における高度な衛生管理体制の構築、海外の規制・ニーズに対応したグローバル産地形成の取組等を進めています。

令和2(2020)年4月に施行された「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律*2」は、我が国で生産された農林水産物・食品の輸出の促進を図り、農林水産業・食品産業の持続的な発展に寄与することを目的としており、本法に基づき、同年4月に「農林水産物・食品輸出本部」を農林水産省に創設しました。この本部においては、輸出を戦略的かつ効率的に促進するための基本方針や実行計画(工程表)を策定し、進捗管理を行うとともに、関係大臣等が一丸となって、輸出先国に対する輸入規制等の緩和・撤廃に向けた協議、輸出証明書発行や施設認定等の輸出を円滑化するための環境整備、輸出に取り組む事業者の支援等を実施しています。

また、令和2(2020)年3月6日に開催された「農林水産物・食品の輸出拡大のための輸入国規制への対応等に関する関係閣僚会議」において、令和12(2030)年までに農林水産物・食品の輸出額を5兆円とする新たな目標が示され、同月31日に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」において位置付けられました。この目標の中で、水産物の輸出額は1.2兆円とされています。さらに、令和2(2020)年12月に「農林水産業・地域の活力創造本部」において、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を決定し、令和12(2030)年までに農林水産物・食品の輸出額を5兆円とする目標と、その中間年にあたる令和7(2025)年の2兆円の中間目標を実現するため、速やかに実行する施策、令和3(2021)年夏までに実行する施策を実行戦略としてとりまとめています。同戦略では、海外で評価される日本の強みがあり、輸出拡大の余地が大きい品目として、27品目*3の重点品目(水産物では、ぶり、たい、ホタテ貝及び真珠の4品目)を選定して、これらの品目について、主として輸出向けの生産を行う輸出産地を令和2(2020)年度中にリスト化することとしており、水産物については、12産地が掲載されています。

  1. Hazard Analysis and Critical Control Point:原材料の受入れから最終製品に至るまでの工程ごとに、微生物による汚染や金属の混入等の食品の製造工程で発生するおそれのある危害要因をあらかじめ分析(HA)し、危害の防止につながる特に重要な工程を重要管理点(CCP)として継続的に監視・記録する工程管理システム。FAOと世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス)委員会がガイドラインを策定して各国にその採用を推奨している。
  2. 令和元(2019)年法律第57号
  3. 牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、牛乳・乳製品、果樹(りんご)、果樹(ぶどう)、果樹(もも)、果樹(かんきつ)、野菜(いちご)、野菜(かんしょ等)、切り花、茶、コメ・パックご飯・米粉及び米粉製品、製材、合板、ぶり、たい、ホタテ貝、真珠、清涼飲料水、菓子、ソース混合調味料、味噌・醤油、清酒(日本酒)、ウイスキー、本格焼酎・泡盛。

コラム食品製造業で輸出・海外進出の取組が進む

食品製造業において輸出の取組が拡大しています。株式会社日本政策金融公庫が実施した、食品関係企業を対象とした「食品産業動向調査(令和2年1月調査)」によると、令和2(2020)年1月時点で食品製造業者の41.1%が輸出又は海外進出に取り組んでおり、平成25(2013)年7月時点の24.5%に比べて16.6ポイント増加しました(図1)。

また、「輸出のみ」又は「輸出・海外進出ともに有り」と回答した企業の割合の合計は、水産食品の製造業者では45.1%であり、食品製造業者の全体平均の38.5%を6.6ポイント上回りました(図2)。

さらに、「今後、輸出に取り組む予定あり」又は「今後、輸出・海外進出ともに取り組む予定あり」と回答した企業の割合の合計は、水産食品の製造業者では17.0%であり、食品製造業者の全体平均の12.1%を4.9ポイント上回りました(図3)。

このように、輸出の取組が進められている食品製造業の中でも、水産食品の製造業者の動きは比較的先行しており、今後も食品の輸出拡大の流れを牽引していく可能性があります。

* 本調査における海外進出とは、海外法人への出資や業務提携、もしくは海外での法人・店舗等の設立をいう。

図1 輸出・海外進出に取り組んでいる割合

図1 輸出・海外進出に取り組んでいる割合

図2 取扱品目別 現在の輸出・海外進出の取組状況

図2 取扱品目別 現在の輸出・海外進出の取組状況

図3 取扱品目別 今後の輸出・海外進出の取組予定

図3 取扱品目別 今後の輸出・海外進出の取組予定

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344
FAX番号:03-3501-5097