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水産庁

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(1)水産業における復旧・復興の状況

 

〈震災前年比で水揚金額76%、水揚量69%〉

平成23(2011)年3月11日、三陸沖(宮城県牡鹿おしか半島の東南東約130km付近)を震源として「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」が発生しました。この地震の規模は我が国の観測史上最大のマグニチュード9.0を記録し、この地震により、東北地方太平洋側をはじめとする全国広範囲の沿岸に津波が到達するとともに、地盤沈下も発生しました。水産関係の被害は太平洋側では北海道から沖縄までの広範囲に及びました。特に、全国の漁業・養殖業生産量の5割を占める三陸地域を中心とする北海道から千葉県での沿岸で甚大な被害となりました。

同年7月に政府が策定した「東日本大震災からの復興の基本方針」においては、復興期間を令和2(2020)年度までの10年間と定め、平成27(2015)年度までの5年間を「集中復興期間」と位置付けた上で復興に取り組んできました。令和3(2021)年3月には、「東日本大震災からの復興の基本方針」が、令和2(2020)年6月の「福島復興再生特別措置法*1」の改正(令和3(2021)年4月施行)等を反映させた「第2期復興・創生期間以降における東日本大震災からの復興の基本方針」に改訂されました。また、平成27(2015)年6月には「平成28年度以降の復旧・復興事業について」を決定し、平成28(2016)年度からの後期5年間を「復興・創生期間」と位置付けて復興を推進してきました。令和3(2021)年3月で、東日本大震災の発生から10年間が経過しましたが、この間、被災地域では、漁港施設、漁船、養殖施設、漁場等の復旧が積極的に進められてきました(図表6-1、図表6-2、図表6-3、図表6-4)。令和2(2020)年6月5日には、令和3(2021)年3月末までとなっていた復興庁の設置期限を10年間延長すること等を内容とする「復興庁設置法等の一部を改正する法律*2」等が国会で成立しました。

国では、引き続き、被災地の水産業の復旧・復興に取り組むこととしています。

  1. 平成24(2012)年法律第25号
  2. 令和2(2020)年法律第46号

図表6-1 復旧・復興関連方針等に関する動き

図表6-1 復旧・復興関連方針等に関する動き

図表6-2 被災3県における漁港の復旧状況の例

図表6-2 被災3県における漁港の復旧状況の例

図表6-3 集中復興期間及び復興・創生期間における水産業の復興状況の概要

図表6-3 集中復興期間及び復興・創生期間における水産業の復興状況の概要

図表6-4 水産業の復旧・復興の進捗状況(令和3(2021)年3月取りまとめ)

図表6-4 水産業の復旧・復興の進捗状況(令和3(2021)年3月取りまとめ) 図表6-4 水産業の復旧・復興の進捗状況(令和3(2021)年3月取りまとめ)

事例被災地における新規就業者確保の取組

宮城県石巻いしのまき市では、震災後に漁業者が激減したことに加え、半島沿岸部では就業希望者が独自に住まいを確保することが困難な状況にありました。こうした状況を乗り越え、次世代に漁業をつなげるべく、石巻市は平成27(2015)年から「水産業担い手育成事業」を一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンに委託し、宮城県漁業協同組合と連携して行っています。

本事業では、(一社)フィッシャーマン・ジャパンが漁師になってみたい人等からの問い合わせ窓口になるほか、就業前の短期研修の実施や1泊2日の漁師学校の運営、地域の空き屋等を水産業担い手センターとして改修し新規就業希望者に研修中の住まいを提供するなど、就業しやすくなるような環境を整えることで、就業希望者を支援しています。

こうした取組により、石巻市では令和3(2021)年2月現在、本事業による新規就業者は合計35名(現就業者数はその内21名)の実績を挙げ、うち2名が正組合員資格を得るなど、石巻地域の水産業の活性化に寄与しています。

研修風景
シェアハウスの内装

事例復興を目指し協業新会社を設立(気仙沼けせんぬまかなえ漁業株式会社)

水産業を基幹産業とする気仙沼地域では、東日本大震災の津波の被害で漁港の陸上施設が破壊され、漁獲物の魚価も低迷するなど、水産業に関して大きな被害を受けました。気仙沼遠洋漁業協同組合はこうした厳しい状況において、地域の主産業の1つである近海まぐろ延縄漁業を長期的に自立可能なものにすることで地域経済の復興を目指しています。

そのための取組の1つが近海まぐろはえ縄漁業を営む複数の会社による漁業の協業化です。地域の船団8隻による計画的な集団操業及び航海日数の短縮や、漁具資材等を一括購入することによる経費の削減等、効率的な漁業を目指して取り組んでいます。その結果、平成28(2016)年4月~31(2019)年4月においては、3年間平均で航海日数は約7日間の短縮(34.5日→27.4日)、漁具資材購入費は単独購入と比較して4.8%の削減といった成果が得られています。

また、更なる経営合理化と代船建造による船団維持を図るため、協業化に参加した漁業会社6社により、平成30(2018)年に気仙沼かなえ漁業株式会社が設立されました。令和元(2019)年には新造船「かなえ丸」が建造され、同船には船内のWi-Fiインターネット環境の導入や船室の拡大等、船内環境の改善に向けた取組も行われています。気仙沼かなえ漁業(株)はこうした取組によって若者にも魅力ある漁業を目指し、次世代に気仙沼の漁業をつなぐために努力するとしています。

気仙沼かなえ漁業の新造船「かなえ丸」

事例震災をきっかけに厳格な漁業管理に取り組む(株式会社臼福うすふく本店)

宮城県気仙沼市に所在する(株)臼福本店は遠洋まぐろ延縄漁業を専門とした水産会社です。

臼福本店は東日本大震災により社屋や倉庫を破壊されるなど、大きな被害を受けました。同社社長が被災により食料の確保が困難となり、食の大切さを改めて実感したことを契機として、同社は厳格な漁業管理体制の再構築に取り組んできました。

例えば、毎日の漁獲情報を船上から水産庁及び大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)に報告しながら漁獲管理を行っています。また、漁獲されたタイセイヨウクロマグロは漁獲日時と場所を記録できる電子タグを取り付けられ、生産履歴が不透明なマグロと区別されます。このように生産及び流通における厳格な管理を行うことで、令和2(2020)年8月、タイセイヨウクロマグロを対象とした漁業では初となるMSC認証を取得しました。

同社はこのMSC認証取得を機に、マーケット側にもより⼀層⽔産資源への関⼼と理解を深めるべく努め、次世代に伝統ある⽇本の漁業と限りあるマグロ資源をつないでいきたいとしています。

エコラベル付のタイセイヨウクロマグロ

事例震災を契機に魚のポテンシャルを引き出し、量から質に転化する(株式会社ダイスイ)

宮城県の北東部に位置する石巻市で平成13(2001)年に起業した(株)ダイスイは、牡⿅半島や⾦華⼭沖で漁獲された天然活魚や高級鮮⿂を提供し、多くの顧客から評価を得ています。

かつては大量に買って大量に売るという商売をしていた仲買人でもある同社代表の大森圭おおもり けい氏ですが、東日本大震災では工場・活魚設備一切を流出し、活魚車一台のみが残るという大変な経験をしました。また、震災の影響により、漁獲もままならない苦しい状況に陥ったことを契機に、漁業を「量」から「質」に転化させ、本来魚が持つ味を最大限に引き出す処理の仕方で、魚の価値を高めて売る取組により業績を伸ばしています。

その取組の特徴は徹底した「お手当」にあります。神経締め等の下処理のほか、その魚が食べてきた餌を排泄物から判断することで、1匹1匹のコンディションを把握し、それぞれの潜在能力を最大限発揮できるような処理を行っています。さらに、大森氏は料亭をはじめとした顧客がそれぞれどのような調理をするのか把握しており、それぞれの調理に適した「お手当」を施した魚を提供しています。販売後にも実際に提供したお店に出向き、その店に適したオンリーワンの処理を目指し、旨味の最上を追求しています。

こうした取組は高く評価されており、仲買人にもかかわらず料亭から大森氏を指名する発注も多数あります。その活動は石巻市にとどまらず、関東や九州からも指名を受けています。

近年漁獲量が減少する中で、個々の魚の価値を高めて顧客へ提供する大森氏の取組は、被災地のみならず全国的にも新たな方向性を示唆するものとして注目されています。

神経締めの様子

事例自然環境に配慮した海岸堤防の復旧・復興

海岸堤防の復旧・復興に当たっては、自然環境に配慮するとともに、地元の方々と調整しながら整備を進めています。

(1)志津川しづがわ地区(志津川漁港海岸、宮城県南三陸みなみさんりく町)

宮城県南三陸町の志津川地区は、東日本大震災により、甚大な被害が発生し、志津川漁港の防潮堤も津波により破壊されました。同地区の復旧・復興に当たっては、志津川地区まちづくり協議会が、旧防潮堤等を震災遺構として残すとともに旧防潮堤跡地に震災後に形成された干潟も残すことで、永続した防災教育・自然教育に活用する方針を打ち出しました。まちづくり協議会の方針を尊重するため、事業実施主体である宮城県は、同協議会と協議を重ね、防潮堤の復旧に当たっては、防潮堤の位置を陸側に変更することで、復旧工事を進めているところです。

志津川地区における旧防潮堤と干潟

(2) 白浜漁港海岸(岩手県宮古市)

岩手県宮古市の宮古漁港海岸の海岸堤防工事においては、地元より、宮古湾に流れ込む地下水は海洋生物等の栄養に良い影響があるため流れを遮断しないようにして欲しいとの要望があったことを受け、海岸堤防の陸側から海側への地下水浸透を阻害しない透水性矢板が採用されました。

透水性の矢板

(3) 船越漁港海岸(岩手県山田町)

エゾノコウボウムギは、高さ20~30cmで、全体にざらつきのある多年草です。国内では岩手県のほか北海道、秋田県、国外ではサハリン・千島・オホーツク沿岸等に分布し、海岸の砂浜に生育しています。岩手県内では、平成20(2008)年に発見されましたが、海岸清掃による引き抜きや、海岸堤防の建設に伴い、絶滅が危惧されています。このような状況に配慮して、船越漁港海岸の護岸の復旧については、同種の群生地を避けることとして、工事が実施されています。

希少生物調査

被災した漁港のうち、水産業の拠点となる漁港においては、流通・加工機能や防災機能の強化対策として、高度衛生管理型の荷さばき所や耐震強化岸壁等の整備を行うなど、新たな水産業の姿を目指した復興に取り組んでいます。このうち、高度衛生管理型の荷さばき所の整備については、流通の拠点となる8漁港(八戸はちのへ釜石かまいし大船渡おおふなと、気仙沼、女川おながわ、石巻、塩釜しおがま銚子ちょうし)において実施し、令和2(2020)年3月末現在、全漁港で供用が開始されています。

事例被災した漁港や水産加工施設の整備

東日本大震災では漁港施設において、319漁港、8,230億円の被害が発生し、水産物の生産・流通に甚大な被害を与えました。例えば、東北地方太平洋沿岸における主要な漁港である宮城県の気仙沼漁港では、津波により漁港施設が壊滅したほか、約1mの地盤沈下により、満潮時には、岸壁や水産加工団地へ海水が流入して冠水が生じるなど、漁港としての機能を失いました。

こうした厳しい状況を踏まえ、国は、被災地における生産・流通の拠点となる漁港の陸揚げ機能等の早期回復を目指し、復旧・復興に向けた整備を進めました。

気仙沼漁港では、被災した漁港施設の復旧とあわせて、用地の嵩上げや高度衛生管理に対応した荷さばき所の整備を実施しました。平成26(2014)年3月には南気仙沼地区や鹿折ししおり地区の一部を水産加工場等の集積地として整備するための用地の嵩上げ工事が完了し、同年5月には、主要な陸揚岸壁の整備が完了しました。また、平成31(2019)年4月には、高度衛生管理に対応した荷さばき所の供用が開始されるなど、復旧・復興のための漁港の整備がなされました。

被災した漁港については、漁港の復旧事業により、平成29(2017)年度までに、全ての漁港において陸揚げ機能が回復したところです。また、令和3(2021)年1月末現在、被災した漁港施設の95%が復旧済みであり、国としては、引き続き早期の漁港施設の復旧に向け取り組んでいるところです。

嵩上げした集積地(南気仙沼地区)、復旧した岸壁と荷さばき所
高度衛生管理に対応した荷さばき所の内部写真

一方、被災地域の水産加工業においては、令和3(2021)年1~2月に実施した「水産加工業者における東日本大震災からの復興状況アンケート(第8回)の結果」によれば、生産能力が震災前の8割以上まで回復したと回答した水産加工業者が約7割となっているのに対し、売上が震災前の8割以上まで回復したと回答した水産加工業者は約5割であり、依然として生産能力に比べ売上の回復が遅れています。県別に見ると、生産能力、売上とも、福島県の回復が他の5県*1に比べ遅れています(図表6-5)。また、売上が戻っていない理由としては、「販路の不足・喪失」、「原材料の不足」及び「人材の不足」の3項目で回答の約6割を占めています(図表6-6)。このため、国では、引き続き、加工・流通の各段階への個別指導、セミナー・商談会の開催、省力化や加工原料の多様化、販路の回復・新規開拓に必要な加工機器の整備等により、被災地における水産加工業者の復興を支援していくこととしています。

  1. 青森県、岩手県、宮城県、茨城県、千葉県

図表6-5 水産加工業者における生産能力及び売上の回復状況

図表6-5 水産加工業者における生産能力及び売上の回復状況

図表6-6 水産加工業者の売上が戻っていない理由

図表6-6 水産加工業者の売上が戻っていない理由

事例復興を第二の創業と位置付け新商品開発に取り組む(株式会社モリヤ)

宮城県気仙沼市に所在する(株)モリヤは、地元で水揚げされる魚を用いた水産加工会社です。同社は被災により本社と工場が流出しましたが、復興を第二の創業と位置付け、新たな取組を始めました。

同社は震災前には単純加工の切り身を主力としていました。しかし、同社社長の「単純加工が中心の利益率では経営は厳しい」という考えから、震災後は付加価値の高い商品の開発に臨み、「骨まで食べれるふっくらシリーズ」が開発されました。同シリーズは、前浜で水揚げされる新鮮な魚を活用して骨ごと食べられ、魚本来の味と栄養も損なわないといった特徴を持ち、試験販売開始以降は新しい顧客を獲得して売上を伸ばしています。また、機器導入も行いながら、顧客が要望する少量・多品種・短納期に応える製品作りに取り組んでいます。

同社の売上は、令和元(2019)年5月末時点で震災前の約60%まで回復しました。今後は輸出も目指すとしており、平成30(2018)年にはHACCP認定も受けました。

「骨まで食べれるふっくらシリーズ」を用いたアレンジレシピ(サンマご飯)
新たに導入した深絞り真空包装機

事例震災をきっかけとした加工業者等の協業化(石巻うまいもの株式会社)

東日本大震災では、北海道から千葉県にかけて水産加工業に甚大な被害が生じました。中でも宮城県の石巻地区では、沿岸部の水産加工団地内に200社ほどの水産関連の施設があり、津波等により壊滅的な被害を受けました。

こうした中、宮城県石巻市の水産加工業者等10社が、東日本大震災をきっかけに手を取り合い協力し合う目的で石巻うまいもの(株)を立ち上げました。メンバー企業は業態も得意な魚種も異なっており、協業によって様々な知識、ノウハウ、加工設備を共有することで、設備投資のコストを削減しつつ加工方法の選択肢を増やしています。

同社がまず挑戦したのがお茶漬けの商品開発です。味だけにこだわるのではなく、消費者の目線を意識した高級路線のパッケージにしたり、石巻市の樹木や石巻市の象徴である金華山をモチーフに取り込むなど、マーケティングにも力を入れました。こうして生まれたのが「石巻金華茶漬け」シリーズです。「石巻金華茶漬け」シリーズの各商品には各社の得意な魚種が盛り込まれ、売れ筋商品になっています。

このように各社が持つ強みを活用することによって、コストを抑えて石巻の水産物のおいしさと安心・安全に妥協せず商品開発することが可能となっています。

「石巻金華茶漬け」シリーズ

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344
FAX番号:03-3501-5097