水産業・漁村地域の活性化を目指して ―令和3(2021)年度農林水産祭受賞者事例紹介―
天皇杯受賞(水産部門)
産物(水産加工品)
枕崎(まくらざき)市漁業協同組合(代表:市田(いちだ) 恵八朗(けいはちろう) 氏)
鹿児島県枕崎市は、薩摩(さつま)半島南岸中央部に位置し、黒潮が育む栄養豊かな海域に集まるカツオをはじめ、青物を中心に多くの魚が漁獲されています。
受賞品である「かつおボニートチップス」は、鹿児島県立鹿児島水産高等学校食品工学科の学生が課題研究授業として、枕崎市漁業協同組合と連携し、発案、包材デザイン、販売方法までプロデュースした商品です。試行錯娯を繰り返した結果、幅広い年代に食べてもらえるよう、いつでも手ごろに利用できる価格の商品開発を目指しました。
また、同組合は、地域の取りまとめ役として、水産高校や水産加工業者をはじめとした地域の水産バリューチェーン関係者との連携を主導した結果、地元の遠洋かつお一本釣り漁船で漁獲、船上で急速冷凍、超低温で保管した高鮮度の生食用カツオを使用し、伝統的なかつおぶし製法である燻(いぶし)の工程を取り入れ、水産高校生の独創的なアイデアを盛り込んだ商品の開発に成功しました。
「かつおボニートチップス」は、スナックやおつまみ、うどんのトッピング等、子供や若い世代をはじめとする幅広い年代向けに開発された、魚離れの歯止めに寄与する商品であり、今後の普及が期待されています。また、本品をプロデュースした水産高校では、入学希望者も増加傾向となっているほか、後輩にノウハウを継承するなど、継続的な好循環も生まれています。
内閣総理大臣賞受賞(水産部門)
技術・ほ場(資源管理・資源増殖)
山口県漁業協同組合浮島(うかしま)支店(代表:平野(ひらの) 和生(かずお) 氏)
山口県の南東部に位置する周防大島町(すおうおおしまちょう)は、屋代(やしろ)島や浮島等、瀬戸内海に浮かぶ30の島から構成され、漁業が重要な産業となっています。山口県漁業協同組合浮島支店に所属する漁業者は、いわし網漁業、刺し網漁業、小型底びき網漁業等に携わっています。
同支店は、小型底びき網漁業の重要魚種であったナマコの不漁により漁業の経営環境が悪化した事態を打開するため、代替魚種としてアカガイの種苗放流に取り組むこととし、取組を重ねた結果、漁業者の年間の漁獲量及び生産額が向上しました。また、アカガイの放流時期や放流方法の改良、アカガイを捕食する生物の駆除や海洋プラスチックごみの回収等を行うことにより、食害対策を徹底し、アカガイの生育環境を確保するとともに、品質と規格の管理や漁獲後の選別・検査を丁寧に行うことにより、資源管理や付加価値向上を図っています。
これらの取組の結果、アカガイの生産が順調に推移していること等により、後継者の確保につながっており、漁業者の若返りも図られています。
このように、地域に根差した小型底びき網漁業の取組が地域の維持に貢献することを見いだし、資源管理に対する意識改革や後継者確保につなげた本取組は、モデルケースとして他地域にも多くの示唆を与えるものになり得ると評価されています。
日本農林漁業振興会会長賞(水産部門)
産物(水産加工品)
株式会社髙岡商店(代表:髙岡(たかおか) 陽市朗(よういちろう) 氏)
和歌山県新宮(しんぐう)市は、三重県との県境を流れる熊野川の河口に位置し、その沖合は熊野灘と呼ばれ、黒潮に乗って回遊するカツオ、マグロ等の大型回遊魚からアジ、サバ等の小型魚が集まる良質な漁場として古くから知られています。
明治34(1901)年に創業した株式会社髙岡商店は、カツオやマグロの加工を生業とし、「目で見て美味(おい)しい、食べて美味しい」をモットーに、地域の消費者や漁業関係者に貢献し続け、和歌山県から 100 年企業表彰を受けています。
同社は、カツオの焼節の製造において、焙乾(ばいかん)技術の中でも最も歴史が古く高度な技術と経験を必要とする「手火山式(てびやましき)焙乾法」を採用しています。この製法の特色は、カツオを火の近くで燻蒸(くんじょう)させるため、香りが強く、うま味や栄養素を中に閉じ込められることです。受賞品の「鰹(かつお)の焼節 柚(ゆず)しょうゆ味」の原料には、脂質分の少ないカツオを厳選の上、漁獲後に高濃度食塩水等で急速冷凍して保管した鮮度の良いカツオを使用しています。この高鮮度・高品質のカツオをヤマモモの木を使用して燻蒸加工し、地元の契約農家から厳選した香りの強いゆずで香り付けすることで、他社製品にはない鮮やかなピンク色と独特の香気をまとわせた気品のある商品となっています。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により健康食品が注目を集める中、本品は低カロリー高たんぱく質で、9種の必須アミノ酸を全て含む食品であることから、先細りしているなまり節の販売促進に寄与する商品となっています。また、廃棄ロス削減のため、飼料会社にカツオやマグロの残さの回収を委託しており、水産業とSDGsの親和性を検討するに当たり、有用なモデルケースとして評価されています。
お問合せ先
水産庁漁政部企画課
担当者:動向分析班
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