(4)漁村の活性化


〈伝統的な生活体験や漁村地域の人々との交流を楽しむ「渚泊」を推進〉
漁村は、豊かな自然環境、四季折々の新鮮な水産物や特徴的な加工技術、伝統文化、親水性レクリエーションの機会等の様々な地域資源を有しています。漁村の活性化のためには、それぞれが有する地域資源を十分に把握し最大限に活用することで、観光客等の来訪者を増やし、交流を促進することも重要な方策の一つです。そのため、全国の漁港及びその背後集落には、令和2(2020)年度末現在で約1,500の水産物直売所等の交流施設が整備されています(図表5-6)。このような取組を推進するためには、1)地域全体の将来像を描くとともに、交流の目的を明確にし、解決すべき地域の課題等を整理し戦略を立てること、2)交流に取り組むメンバーの役割分担を明らかにし、地域の実情に即して実践・継続可能な推進体制をつくること、3)取組の実践と継続を意識し、交流により地域の問題解決を目指すこと、が重要です。また、地域の観光推進組織と連携することで、より効果的に取組を展開することも可能になります。
さらに、マイクロツーリズムやワーケーションといった新たな交流の取組も推進しています。加えて、今後は、交流においても持続可能性の視点が重要であり、交流を通じて、地域の水産業を中心とした経済活動や、地域の生活・歴史・文化、自然環境等を保全していくことが求められます。
このような中、国は、我が国ならではの伝統的な生活体験や農山漁村地域の人々との交流を楽しむ滞在である「農泊(のうはく)」(農山漁村滞在型旅行)をビジネスとして実施できる体制を持った地域を、令和3(2021)年度までに599地域創出しました。このうち、漁村地域においては「渚泊(なぎさはく)」として推進しており、地域資源を魅力ある観光コンテンツとして磨き上げる取組等のソフト面での支援や、古民家等を活用した滞在施設や農林漁業・農山漁村体験施設等のハード面での支援を行っています。
さらに、地域の漁業所得向上を目指して行われている浜の活力再生プラン及び浜の活力再生広域プランの取組により、漁業振興を通じた漁村の活性化が図られることも期待されます。
このような取組により、地域における雇用の創出や漁家所得の向上だけでなく、生きがい・やりがいの創出や地域の知名度の向上等を通して、地域全体の活性化につながることが期待されます。
図表5-6 全国の漁港及びその背後集落における水産物直売所等の交流施設

〈漁港ストックの最大限の活用による海業等の振興〉
漁港機能の再編・集約等により空いた漁港の水域や用地等が増養殖や水産物直売所等の海業等に活用され、漁村の活性化に寄与しています。
平成31(2019)年3月現在、144漁港において陸上養殖が、385漁港において水域を活用した養殖等が行われています。この一層の利用促進を図るため、水産庁は、「漁港水域等を活用した増養殖の手引き」(令和2(2020)年9月策定)を周知しました。
また、令和3(2021)年12月現在、60漁港において、水産物直売所等として漁港施設用地が活用されているほか、漁港施設の貸付けにより、民間事業者によって製氷施設等が整備され、漁港機能の高度化が図られています。
このような漁港の有効活用をより一層推進するため、水産庁は、実践的なノウハウや豊富な事例を取りまとめた「漁港施設の有効活用ガイドブック」を令和3(2021)年8月に公表しました。


コラム「海業」について
新たな水産基本計画及び漁港漁場整備長期計画において、「海業」という言葉が盛り込まれました。
この言葉は、昭和60(1985)年に神奈川県三浦(みうら)市により提唱されたもので、「海の資質、海の資源を最大限に利用していく」をコンセプトに、漁業や漁港を核として地域経済の活性化を目指すとされています。
両計画において、海業は「海や漁村の地域資源の価値や魅力を活用する事業」と定義されています。漁村の人口減少や高齢化等、地域の活力が低下する中で、地域資源と既存の漁港施設を最大限に活用し、水産業と相互に補完し合う産業である海業を育成し、根付かせることによって、地域の所得と雇用の機会の確保を目指しています。
漁港における海業としては、用地等を活用した水産物等の販売・提供、プレジャーボートの受入れ、陸上養殖を行う事業、水域を活用した蓄養・養殖、漁業体験、海釣りを行う事業等が挙げられます。
以下の五つの漁港では、海業が展開されることによって、漁港が海業振興の拠点としての役割を果たし、漁村の活性化に寄与しています。
お問合せ先
水産庁漁政部企画課
担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344
FAX番号:03-3501-5097